どちらの原作にも関係ない、作者の遊びのような話ですが読んでもらえれば幸いです。
晴れ渡った快晴の天気。
燦燦と照りつける太陽の元で空蝉丸は高い櫓の上で、何故自分がこうしているのか考えながら、手に持ったそれを高らかに上げ、
「に~~し、クロガネ~~~」
軍配を西側に向けると、そこには重量感のある黒い体躯に巨大な角を持つ大型のドラゴンがおり、
彼の四股名を呼び上げれば巨大な脚を片方上げ、四股を踏むように土俵を踏みしめ吼えた。
「ひが~~し、ハクギン~~~」
次に軍配を東側に向けると、そこにも大型ドラゴンがいたが、大型の中では細めの体躯に翼を持つ白銀の鱗に覆われたドラゴン。
彼の四股名を呼び上げれば、同じく咆哮を上げ、気合を入れるかの用に自らの胸部を叩いた。
気合十分の両者。
二体のドラゴンが向かい合っても十分の巨大な土俵。
その中央に設置された櫓の上で空蝉丸は何故自分がこの場所にいるのか思い返していた。
事の始まりは数日前―――
サラマンディーネにこの世界の事情を聞かされてから暫く経過したある日の事だ。
空蝉丸はサラマンディーネの保障もあり、この世界に対する敵対の意思はないと認められ、
自由に行動することが認められた。
なのだが、
「ねぇ、コレ食べてみて」
「ずるい、私のも食べてみて」
「い、いや、じ、自分で食べられますゆえ・・・」
「そんな事言わないで、食べてよ」
現在、空蝉丸は数人の女性に囲まれていた。
遺伝子を操作し、男は皆ドラゴンとなったことで人型の男を見たことのない彼女たちには
空蝉丸の存在は物珍しく目立つものだった。
それゆえだろうか、行く先々で空蝉丸はこのように女性たちに囲まれていた。
今は昼飯時で空蝉丸は食事をしているのだが、半分はドラゴンが入って本能の部分が強く出ているのか、彼女たちの好奇心はお構いなしだ。
「本当に人型の男って、私達と違う作りをしているのね」
「お、各々方、離れてくだされ」
「もしかして、照れているの?」
「意外にかわいい~~~」
その言葉通り、女性の苦手な空蝉丸は照れていた。
只でさえ、彼女らの服装は露出が多く、ボディータッチも遠慮がない。
そんな状況では彼の顔が真っ赤になるのは無理からぬ事。
これが“弾丸の勇者”だったならば最高の狩場と思うだろう。
“鎧の勇者”ならば天国だと感じるのだろうが、
空蝉丸にとってはコレまでにないほど厳しい鬼門でしかないのだった。
そんな状況に空蝉丸が苦戦をしていると、
「皆、いい加減にして差し上げなさい」
新たに掛けられた声に群がっていた彼女たちの肩がビクッと跳ね上がる。
「サラマンディーネ様・・・・」
「姫様・・・・」
怯えながら振り返る彼女たちの前にいたのは、予想通りサラマンディーネがそこに立っていた。
その後ろにはいつものように側近のナーガとカナメがいたが、彼女たちも何故か怯えているかのように瞳が揺れている。
「空蝉丸殿が困ったおいでではないですか。遊びもそこまでにして、ゆっくり食事を召し上がらして上げなさい」
「は、はい!!」
表情は微笑んでいるのだが、何故か言い様のない威圧感を放つサラマンディーネの雰囲気に女性たちはそそくさとその場を後にした。
そして、彼女たちを蹴散らしたサラマンディーネは悠々と空蝉丸の隣に腰掛け、
「許してください、空蝉丸殿。彼女たちは人間の男を見るのが初めてなので、つい」
「い、いえ、お気になさらないで下され。・・・ただお恥ずかしい話、拙者は少々女子が苦手で・・・」
「あら、私も女なのですが」
恥ずかしげに言葉を紡ぐ空蝉丸に、サラマンディーネは少し悪戯気味に笑いながら口を尖らせる。
すると、空蝉丸は面白いように慌て、
「い、いやいや、もちろんでござる。サラマンディーネ殿も素晴らしく魅力的な女性だと思うでござるよ」
「・・・・・・・」
素直な気持ちで慌てながら口走った台詞。
その一言にサラマンディーネは黙り込んでしまった。
しかし、空蝉丸は間違いない本心を天然なぐらい真っ直ぐに言ったために、その後恥ずかしがる素振りを見せないので、逆に彼女の方が照れて顔を赤くした。
「サラマンディーネ殿?」
「い、いえ、何でもありません」
不思議そうに空蝉丸が問いかければ、今度はサラマンディーネの方が慌てていた。
そんな様子を面白そうに微笑みながら見るカナメと、何処か不機嫌そうな表情を浮かべるナーガ。
それから落ち着いた二人は何時のように他愛無い話をしていた。
サラマンディーネが近くにいると、他の者たちは遠慮してなのか空蝉丸に絡むことはないのだ。
「それにしても、本当に人間の男は拙者だけなのでござるな」
その事に男手は必要なのでは、と思っていたのだが、彼女たちは半分がドラゴンだからなのか、
600年前の一般男性よりも力が強く、電子機器など便利な道具も使う為に別段不住は無いそうだ。
「しかし、それだと『相撲』はないのでござるな」
そんな中で空蝉丸はそんな何気ない一言を放つのだった。
そして、その言葉にサラマンディーネが反応。
『相撲』とは何か。
それを空蝉丸が説明する。
すると、サラマンディーネが興味を持つ。
それからサラマンディーネは文献を引っ張りだし、相撲について調べぬいたのだった。
しかし、そこまでは良かったのだが。
そこから更に興味を引いてしまい、再現したい欲求を持つようになるのだった。
(そこからは一気でござったな・・・・)
まずは、大巫女に対して、相撲と言う物の説明。というより、プレゼンテーションを行い。
彼女にも興味を示してもらえるように行うと、見事味方につけ。
次に、屈強そうな男、この場合大型ドラゴンを募り、相撲についての事を説明。
この場合、彼女が説明したのは相撲のルールや技など。
それに平行して、戦いの場である土俵を作る作業を手伝わせた。
ちなみに、このとき彼女が男手を借りるために提案した言葉は単純に、
「力強い所を見せて、女性にアピールするチャンスですよ」
たったそれだけの言葉だった。
だが、その効果は絶大だったようで。
地球の汚染物質を食べることを仕事にする彼らだが、生殖機能が無くなったわけでもなければ、メスの好みもある。
当然、それを得るためにアピールをしたいわけなのだ。
まぁ、要するに、何時の時代も男は女の前で格好を付けて、モテたいと言う事なのだ。
それはともかくとして、僅か数日で土俵が完成し、男たちはメスへのアピールのために自分にあった戦い方、戦法、技を極め、この場に現れた。
第一回 龍大相撲の場へと。
そして、今回の空蝉丸の役目はその見届け人である行司であった。
開会の前にサラマンディーネに頼まれ、どうやって用意したのか行司の装束から軍配までと準備万端で渡されたのだった。
それから空蝉丸は役割を果たす為に櫓に上がった。
実際の相撲には必要ないものだが、相撲をとるのが巨大なドラゴンなので仕方なく。
更に言えば、彼の頭部にはインカムが装着されており、声を大きくして聞こえるようにしている。
(プテラゴードンがいれば、こんな物を付けなくても良いのでござろうが)
自らの相棒に何をさせるつもりなのか、と突っ込むものはいない。
因みに、サラマンディーネは土俵の廻りに作られた観客席でその様子を観戦していた。
最大限の安全を考慮して、観客席はドラゴンたちが投げ飛ばされても被害を受けずに済むように離され、
更に観戦しやすいように、モニターでその様子を見えるようにもしていた。
そのかい合ってか観客席は満員御礼。
「しかし、流石は姫様です。このような大掛かりな物を数日で作り上げるとは」
と、サラマンディーネの隣で観戦していたナーガ。
「皆が手を貸してくれたからですよ」
「それでも凄い事ですよ」
謙遜するサラマンディーネに隣に座るカナメが言葉を紡ぐと、反対側に座っているナーガが頷く。
「ところで、姫様。この戦いはどちらが勝つと思われますか?」
「そうですわね・・・・」
「クロガネですよね」
カナメの問いかけにサラマンディーネが答えを考えていると、それを追い抜いてナーガが言う。
「何で、そう思うのナーガ」
眉を寄せながら問いかけるカナメ。
しかし、ナーガは当然とばかりに、
「無論、クロガネはコレまでの戦いを、その力強い腕で薙ぎ払ってきた剛力の持ち主だ。
対して、ハクギンはコレまでの相手の中で一番細いのだぞ」
「力任せが好きだもんね、ナーガは。でも、ハクギンだって今までの相手を技でいなしてきたんだよ。力任せの戦いなんて通用しないよ」
「それは今までの相手だからだ。クロガネは間違いなく今大会ナンバーワンの力の持ち主だ。小手先だけの技など一瞬で振り払うさ」
「頭よりも、力任せなのもナーガ好みだもんね」
「お前はチマチマした物が好きだからな」
そうやって、サラマンディーネを挟んで睨みあう両者。
普通に考えれば不敬に値する行為だが、サラマンディーネは楽しそうに笑い、
「二人も相撲というものに嵌ったようですね」
「それで姫様はどちらなのですか?」
問いかけるナーガ。反対側のカナメも聞きたくてしょうがないようだ。
「そうですね。選び難い組み合わせですし、実際にぶつかってみれば分かりますよ」
そう言って、サラマンディーネは二人の追及から逃れると、正面の土俵を見る。
丁度、二体の大一番が始まるからだ。
「見合って、見合って」
空蝉丸の言葉に両者は向かい合い姿勢を低くする。
「ハッケヨイ!!」
その掛け声と同時に相手に突っ込む両者。
次の瞬間、両者のぶつかり合う衝撃が土俵を中心に響いた。
互いに最初に選んだのは力勝負。
しかし、この戦いはやはり体格で優位なクロガネに軍配があった。
互いに真っ直ぐ突っ込んだのだが、ハクギンの方が吹き飛ばされる。
大きく仰け反って後退するハクギン。当然だが、翼や尻尾を使うのは反則である。
そして、体勢の崩れた相手に止めを刺すべく、クロガネは自慢の剛力の腕で張り手を飛ばす。
その様子にカナメは悲鳴を上げ、ナーガは歓喜した。
これで決まりか、と思われた。
しかし、ハクギンは素早く体勢を立て直すと迫る張り手を掻い潜り、クロガネの懐へ潜り込んだ。
完全に目標を失ったクロガネ。
その隙にハクギンはクロガネの両脇に腕を入れて、下から押し出しに掛かった。
それに今度はナーガが「まずいっ!!」と声を上げ、カナメが「行けぇ!!」と声援を送る。
だが、クロガネもそれをさせまいとハクギンの体を捕まえ組み、再び力勝負へと持ち込んだ。
しかし、今回はクロガネにとって体勢が悪い。
完全に懐に入られたハクギンは並大抵の力では持ち上がらない。
むしろ、逆にクロガネの方が後ろに仰け反りそうになる。
そうして、そんな膠着状態が暫し続き、最初にクロガネが勝負に出た。
このままいてもジリ貧に感じたのだろう。
クロガネは力の全てを搾り出し、ハクギンを土俵から押し出しにでた。
咆哮を上げ、これまでにない迫力で勝負にでるクロガネ。
ハクギンも体勢こそ崩さないが、抵抗せずただ後退させられるのだった。
そして、まさに土俵際の勝負となった。
あと少しでハクギンが土俵から出るという瞬間だった。
ハクギンは組んでいるクロガネの片方の腕を振りほどくと、片足を軸に体を反転させながら、
片方の足でクロガネの脚を払った。
すると、クロガネは自らが生んだ勢いのまま土俵の外へと投げられてしまうのだった。
「勝負あり!!!」
空蝉丸の声が響き、決着が付いた。
見事に投げられ土俵の外で仰向けに倒れるクロガネ。
逆に、土俵の中で立っているハクギン。
誰が見ても結果は明らか、軍配はハクギンの方を向いていた。
その次の瞬間、観客席から溢れんばかりの拍手と歓声が響くのだった。
それから暫く、龍大相撲の興奮は冷めあがらず、誰もが口々に今大会で『横綱』となったハクギンを称えた。
「いや~、大盛り上がりでござったな」
「はい。空蝉丸殿もお疲れ様でございました」
空蝉丸を労うサラマンディーネ。
そこには彼女だけしか姿が無く、いつもいる側近の二人は他と同じく龍大相撲の事で未だに言い争っていた。
「しかし、ハクギンは大した者でございまするな。短い期間であそこまで技をものにするとは」
正直に言えば、空蝉丸はそれほど期待などしていなかった。
僅かな準備期間では精々、子供相撲のようなものになるのではないかと思っていたのだが。
思いのほか、プロのような相撲をドラゴンたちがとっていることに驚いたのだった。
「もう暫し、皆が稽古を積めば、もっと面白くなるでござるな」
「そうですね。今回のイベントは好評だったので、定期的に行うかもしれません」
「真でござるか!!」
「はい」
嬉しそうに問いかける空蝉丸にサラマンディーネは微笑んだ。
今回の龍大相撲は大型ドラゴンの娯楽になったらしく、次回の大会に向けて今から稽古を行っている者もいるそうだ。
「それに、私は髷を結った姿を見てみたいですし」
「・・・・・・・」
サラマンディーネのその一言に空蝉丸は黙り込んでしまった。
確かに、髷は相撲をとる力士の象徴だが、ドラゴンの毛は伸びるのだろうか。
それ以前に、似合うのだろうか。
そんな事を考えてしまう空蝉丸。
「どうかしましたか?」
「いえ・・・」
そんな彼の態度が気になったのか、問いかけるサラマンディーネ。
しかし、空蝉丸は顔を輝かせる彼女を気遣って、その事を指摘せずに話題を変えるべく、
「実は、サラマンディーネ殿」
「はい?」
「拙者、そなたにお願いしたいことがある」
己の決心を口にする空蝉丸。
しかし、彼の言った言葉はサラマンディーネを困惑させるのだった。
今回が二回目になります。
とりあえず、大型ドラゴンの見せ場を作っても良いかな、と言う建前に。
書いてみたかった怪獣相撲を書いてみました。
相撲は需要ありますよね・・・
ジャンプやチャンピオンで相撲漫画をやってますし・・・・
ちなみに、自分はチャンピオンの方が好きですが。
それはともかくとして、次からは遊びをいれずに話を進めて行きたいと思っています。
次回も見てもらえれば幸いです。