クロスゴールド 雷鳴が奏でる輪舞   作:愛剣

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第四話

 

 

 

アウラの民の指揮官、近衛中将サラマンディーネ。

フレイヤ一族の巫女姫である彼女は責任ある立場ゆえに、聡明で他の者からの厚い信頼を受ける。

しかし、そんな彼女だが、ここ数日は自らの感情を持て余していた。

その原因は分かっている。

突然、この世界に迷い込んだ過去から来た戦士、空蝉丸だ。

彼と出会ってからサラマンディーネの心は振り回されてばかりだった。

 

しかし、何故そんな気持ちになるのか分からなかった。

 

そして、現在も目の前の光景に何故か穏やかな気持ちにはなれなかった。

 

 

 

アウラを守る近衛兵が訓練を行う修錬場。

その場に二人の人間がサラマンディーネの目の前で訓練を行っていた。

一人は棍棒を持っている彼女の側近、ナーガ。

もう一人は木刀を持っている空蝉丸。

 

「はぁああああっ」

 

「ふっ」

 

振り下ろされるナーガの棍棒を空蝉丸は木刀で横へ弾く。

そして、上段から木刀を振り下ろした。

 

「はぁっ」

 

「クッ」

 

今度はナーガが空蝉丸からの攻撃を棍棒で防ぐ。

しかし、防げたのは間一髪のタイミングであり、バランスがかなり崩れてしまう。

その隙を付き、空蝉丸は彼女の右脚を内側から払った。

 

「きゃっ!?」

 

すると、ナーガはかわいい悲鳴を上げながら、尻餅をついた。

慌てて顔を上げれば、そこには自分の首筋に木刀に突きつけていた。

 

「参った。私の負けだ・・・」

 

やれやれ、とため息を吐くナーガ。

 

「貴殿は本当に凄いな。今日まで幾度も挑んだが、一度も勝てなかった」

 

「いや、そんな事はござらぬ。拙者も冷や汗をかく場面が幾度もござった」

 

そう言って、空蝉丸はナーガへ手を差し伸べる。

 

「全て捌いておいて良く言う」

 

差し伸べられた手を握り立ち上がり微笑むナーガ。

 

その様子に何故か羨ましいと思ってしまうサラマンディーネ。

 

(本当に良く仲良くなったものですね)

 

訓練場でお互いの健闘を称えあう不思議な光景のそう思わずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 

空蝉丸がケガから回復してから、街に出るようになると、最初の頃は皆が彼の事を疑っていた。

しかし、子供好きな性格と面倒見の良さから、まず子供からの人気が出た。

一緒になってダンスを踊っていたことを聞いたし、彼が教えたダンスは子供に大流行していた。

 

「ガブガブかみつけ、ガブティ~ラ!!」

 

「ガンガンうちまくれ、パラ~サガン!!」

 

「ゴッチーンとゲキトツ、ステゴッチ!!」

 

「ザクザクかたなで、ザクト~ル!!」

 

「ドリルでつっつけ、ドリケ~ラ!!」

 

「ゴロゴロかみなり、プテラゴ~ドン!!」

 

街を歩けば、この歌の歌詞を聴かない日がないほどだった。

子供が警戒心を解けば、自然と親たちからも気に入られる。

それから段々と街の人たちも彼への態度が柔らかくなっていった。

更に言えば、一番空蝉丸に対して厳しい態度を取っていたナーガでさえも。

ちなみに、言えば彼女の場合が―――

 

「良いか、サラマンディーネ様は頭が良く、聡明で、慈愛に深い素晴らしいお方だ。更に、その容姿も他の者をより逸脱しておられる。艶のある長い黒髪、綺麗かつ形のいい膨らみの胸部、なだらかで括れた腰、白く透き通った肌。まさに美の化身と言うに相応しいお方だ」

 

ああ、と頬を赤く染めながら、うっとりと酔いしれたように語るナーガ。

それを離れた場所で聞いていたカナメは呆れ、話題の人物であるサラマンディーネは軽く引いていた。

それが普通な態度だ。

なのだが、

 

「素晴らしいですぞ、ナーガ殿!!」

 

絶賛する空蝉丸に、先ほどまで引いていた二人だけでなくナーガさえも驚く。

 

「拙者も一人のお方に仕える武士でござったが、ナーガ殿ほど主君に対する敬愛を示しておりませんでした」

 

そう悔しそうに語る空蝉丸。

そんな彼にナーガは瞳に涙を溜めながら、

 

「お、お前は分かってくれるのかっ。異常だとは思わないのかっ」

 

「何をおっしゃる。敬愛とは、愛の文字を使うのでござる。そして、愛とは純粋かつ強いほうが良いに決まっている」

 

「お、お前・・・いや、空蝉丸殿、貴殿もそう思うのだな」

 

漸く現れた理解者を愛おしむようにナーガは空蝉丸の手を握る。

 

「皆は私の敬愛は行き過ぎだと、言うのに。そんな風に言われたのは初めてだ」

 

そう嬉しそうにするナーガの手を空蝉丸も握り返すのだった。

 

 

 

 

 

 

そんなことがあり分かり合った二人は、幾度も修錬場にてお互いの腕を切磋琢磨する仲になったのだった。

そんな二人の関係にもサラマンディーネは何故かナーガに嫉妬にも似た感情になってしまう自身の感情に戸惑っていた。

 

「しかし、こうして貴殿と修練が出来る機会が残り僅かなのだな」

 

と、残念そうにナーガ。

 

「本当に都を離れるのですか?」

 

と、カナメも残念そうに問いかけるが、空蝉丸はハッキリと頷き、

 

「もう決めたことでござる」

 

そう言う空蝉丸だが、カナメは不満そうに横目で隣をこっそりと見てみる。

すると、そこには案の定、沈み込んでいるサラマンディーネの姿があるのだった。

 

 

 

 

 

事の始まりは龍大相撲の後、空蝉丸からサラマンディーネに提案されたことだ。

 

「獣電竜を捜索したい?」

 

「さよう」

 

以前、最初にこの世界の事を説明するのに使用した茶室にてお互いに向かい合いながら話すサラマンディーネと空蝉丸。

今回はナーガとカナメも参加しているのだが、二人も空蝉丸の言葉に驚いていた。

そんな三人に空蝉丸は落ち着いた口調で、

 

「サラマンディーネ殿には、拙者に出来ることを助力すると申したが、やはり生身では出来ることが限られる。拙者が十全に力を貸すには獣電池を再びチャージする必要があるのでござる」

 

そう言って、空蝉丸は一本の乾電池を取り出す。

以前、空蝉丸たちが変身をするのに必要な乾電池『獣電池』は最終決戦でその力の全てを失った。

 

「獣電竜たちの捜索と同時に、戦隊の基地である『スピリットベース』も見つける必要がありまする」

 

ゆえに、

 

「サラマンディーネ殿には心苦しいのですが、足となる乗り物を用意して貰えないだろうか」

 

その言葉はとても理に適っているものだった。

こちらは空蝉丸に助力を頼むのだから、逆の場合も可能でなければならないだろう。

空蝉丸は協力者なのだからそれは当然の権利だ。

 

「・・・当てはあるのですか?」

 

自身の中に渦巻く想いを持て余しながら問いかけるサラマンディーネ。

 

「一先ず、拙者の相棒が眠っていた島から調べてみる心算でござる。基地のゲートは街にござるが、600年も経てば様変わりし、位置も変わっているかも知れぬので」

 

と、即答する空蝉丸の態度は以前から考えていたことが容易に分かった。

だが、サラマンディーネは何故かそれを容易に頷くことが出来なかった。

何故、とサラマンディーネは自身に問いかけるが、その答えは中々見つからない。

だが、聡明な彼女は明確な理由が分からないにも関わらず、空蝉丸の頼みを無下に断ることも出来ず、結局は数日待ってくれ、と言うしかなかった。

 

 

それから数日、サラマンディーネは空蝉丸からの要望を聞きながら、足となる物の用意をしいた。

しかし、その作業は思ったよりも捗らない。

数日で相撲の舞台を完成させる手腕を持つ彼女が。

何故か、気持ちが乗り気ではない。

空蝉丸が街を出ることを聞いてから、頭から彼の事が離れない。

食事が喉を通らないこともあった。

本当に可笑しくなったのだろうか、不安にさえ思ってきたサラマンディーネ。

一体、なんなのだろうか・・・・

 

 

 

 

「恋煩いではないですか?」

 

「恋?」

 

そんなサラマンディーネの疑問に答えるように目の前の女医が淡々と告げる。

だが、その言葉にサラマンディーネは目を丸くして女医を見た。

彼女の名前は、ドクター・ゲッコー。

宮殿に仕える医師。性格に難は在るが、とても優秀な女医だ。

 

その彼女にサラマンディーネは今の病態の相談をしてみたのだ。

その結果、診断されたのだが。

 

「私が空蝉丸殿に恋をしていると?」

 

「はい。姫様から聞いた症状から考えて、旧世界からあるそれでないかと思われます」

 

「・・・私と彼が出会ってから一月も経っていないのですが」

 

と、彼女の診断を疑うサラマンディーネ。

しかし、ゲッコーは首を横に振り、他に異常はないと断言する。

 

「精神的なものは私の分野ではないので。一目惚れと言うものではないでしょうか?」

 

ざっくりと告げる彼女の言葉に未だに疑わしい視線を送るサラマンディーネ。

 

「彼が遠くに行く。つまり、彼が姫様から離れることが原因なのですから、外科的なアプローチはありませんよ」

 

そう告げて、彼女は机の書類に目を通す。

ちなみに、言えばサラマンディーネのカルテではない。

彼女の話を聞いた瞬間から、ゲッコーはサラマンディーネのカルテを作る作業を放棄した。

 

「まぁ、彼が街から離れるのは私も残念に思うのですが」

 

「?どうして、ドクターが残念がるのです?」

 

「彼には実験に協力してもらおうと思ったのです」

 

と、ゲッコーは資料に目を通す。

良く見れば、それは旧世界の男性に関しての事が書かれているように見える。

 

「資料の時代の男性が手近に現れたのです。男性の生殖器官についての検証に、人型での交尾の実験を試してみたいと思うのですが」

 

もし、サラマンディーネが空蝉丸に恋心を抱いているのならば、そんな話をしないが、本人はそれを否定しているので問題はないだろうと、ゲッコーは淡々と彼女に説明する。

 

「それで姫様。彼の出立は何時なのですか、日取りが分かるのならば、それまでに―――」

 

実験を開始したいのですが、と口にしようとし、ゲッコーは黙り込んでしまった。

声を発する筋肉が機能しなくなったからだ。

いや、それ所か全身の筋肉が強張りを起こしている。

極度の緊張から来る痙攣だろう、とゲッコーは意外にも冷静な頭でそう結論付けた。

そして、目の前に自らの体をこんなにした元凶に目を向ける。

 

「―――ドクター・ゲッコー」

 

「はい、姫様」

 

目の前にいるサラマンディーネは微笑みを浮かべている。

しかし、その目は明らかに笑っていないどころか、殺気を放っていた。

それを受けて、ゲッコーの中にある生存本能で奮い起こされるのを感じる。

 

「ドクターはこの宮殿に仕える優秀な医師のはずですよね」

 

「その通りです」

 

「では、そんな軽率なことを口になされないでください。彼は我々の捕虜でもなければ、奴隷ですらないのですから」

 

「・・・その通りですね。軽率な発言でした。申し訳ありません」

 

「分かっていただければ結構です」

 

そう言って、サラマンディーネは診察用の椅子から立ち上がると部屋から出て行った。

その後ろ姿が消えるのを確認してからゲッコーはため息を吐いた。

 

「今の発言が姫巫女としての立場からなのか、一人の女としての独占欲なのか、分かりませんが、恋をしていないなど良く言えますね」

 

と、本人の前では絶対に吐けないぼやきを口にしながら、ゲッコーは残念そうに資料を見るのだった。

何処かに別の実験体がいないものかと考えながら。

 

 

 

 

 

対して、部屋を飛び出したサラマンディーネも自身の行動に戸惑いを感じていた。

彼女がドクターに対して言った言葉は姫巫女としてのものだが、相談を聞いてくれたドクターに対して些か強く言いすぎた気が知れならないからだ。

 

(・・・まるで、何かで読んだ「俺の女に手を出すな」みたいですわね)

 

自分は女で、相手は男だが。

そんな事を考えながらサラマンディーネはため息を吐いた。

コレでは本当に自分は空蝉丸に一目惚れしているようではないか。

だが、心当たりが全く無いわけではなかった。

近衛中将という責任ある立場ゆえ、彼女は弱音を吐くことは出来ない。

そんな彼女が文献で知った『強き龍の者』はまさにヒーローだった。

そのヒーローが目の前に現れたのだ。

心が揺れても仕方がないだろう。

しかし、それが恋だと結論付けることは出来なかった。

もしかすれば、単なる憧れから来るものかもしれないのだから。

 

それはともかくとして、サラマンディーネは今後の事で頭を悩ませた。

 

空蝉丸が離れるだけで、自分はここまで乱れてしまうのだ。

この状態がずっと続くことなど、責任ある立場の自分には許されない。

だから、元の状態に戻してもらう為に相談したのだが・・・・

 

「あっ・・・」

 

そこであることを思いついた。

要は会えなくなるから駄目なのだ。

 

それならば、と思いついた方法を実践するためにサラマンディーネは歩きだした。

その足取りはいつもの彼女のように軽快なものだった。

 

 

 

 

 

 

 

そんな事があったとは知らず二日後、空蝉丸は大型ドラゴンの頭の上に乗せてもらい大空の風を感じていた。

 

「しかし、良かったのでござるか。送ってくれるのは嬉しいでござるが、見送りだけでよかったのでござるよ」

 

と、空蝉丸は少し離れた所で飛んでいるサラマンディーネに話しかける。

 

『構いませんよ。龍神器の飛行テストも兼ねての事ですから』

 

お気になさらないでください、と顔が見えないが微笑んでいるのであろう口調で話すサラマンディーネ。

今、現在、彼女は龍神器と言う起動兵器を操縦している。

これはサラマンディーネが世界を破壊したラグナメイルを元に完成させた機体だそうだ。

 

それから空蝉丸たちは南の孤島へと降り立つのだった。

ここは本来、ガブティラという獣電竜が生息する島だったが、訳あって空蝉丸の相棒のプテラゴウドンが一時期封印されていたことがあった。

もしも戦いが終わって獣電竜たちが眠りに付いたのならば、もしかすれば、ここにいるのではないかと思ったのだ。

 

そして、砂浜に下ろされた空蝉丸は足元の感触を確かめながら、サラマンディーネに向き合った。

 

「サラマンディーネ殿、ここまでの道のり真に感謝します」

 

そう言って、頭を下げる空蝉丸。

彼に対して、サラマンディーネは微笑みながら、

 

「いいえ、気になさらないでください。それよりも、機体の方は大丈夫ですか?」

 

「はい。パーフェクトでござる」

 

そう言って、空蝉丸は自分を乗せてくれたドラゴンが運んでくれたコンテナを見る。

そのコンテナを開ければ、一台のバイクの形をした機体がそこにあった。

空蝉丸の要望で『ディノチェイサー』のような機体で、水上も、地上も走行が可能なものだ。

 

「一応、それには通信機を付けてありますので何かあれば連絡をしてください。それと、念のためにこの書状を持っていてください」

 

そう言って、サラマンディーネは空蝉丸に書状を手渡す。

 

「それは私と大巫女様がしたためたものです。一応、この周囲の担当の者には連絡をしたのですが持っていれば安心です」

 

「分かりました。何から何まで本当にかたじけない」

 

もう一度、一礼する空蝉丸。

そんな彼に対して、「それから」とサラマンディーネは懐から一つのネックレスを取り出す。

 

「コレはお守りです。肌身に離さず持っていてください」

 

「そ、そんな、そのような物まで貰えませぬ!!」

 

と、拒絶とまではいかないが首を横に振る空蝉丸。

しかしサラマンディーネは少し強引に彼の首にネックレスを掛けさせる。

 

「貴方は私にとって大切な存在なのです。だから、どうか無事にいて欲しいのです」

 

「わ、分かりました。大切にさせてもらいます」

 

少し戸惑った言葉だったが、サラマンディーネは満足そうに微笑むと、

 

「では、お気をつけて」

 

そう言って、龍神器に乗り込むサラマンディーネ。

 

「サラマンディーネ殿も気をつけて帰られよ!!!」

 

飛び立とうとする龍神器に手を振りながら叫ぶと、もう一度だけサラマンディーネが機体から顔を出して微笑み、ドラゴンと共に去っていった。

その姿を見送った後、空蝉丸は振り返って、島の中心にある火山を見る。

 

「さて、始めるでござる」

 

気合を入れる掛け声と共に一人、獣電竜を捜索するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なのだが、その三日後、

 

「さぁ、空蝉丸殿。どうぞ」

 

と、自ら作った弁当を空蝉丸に渡すサラマンディーネ。

そんな彼女に空蝉丸は戸惑いながら、

 

「あ、あのサラマンディーネ殿。お仕事の方は大丈夫なのですか?」

 

「あら、コレも立派な仕事でしてよ。空蝉丸殿の身柄の管理は私の役目ですから」

 

さも当然のように、サラマンディーネが微笑む。

だが、一緒に来た側近のナーガとカナメも困惑していた。

 

ちなみに、サラマンディーネは定期的に空蝉丸の様子を見に来る名目で、侍女たちの指導の下で自ら作った弁当を届けるのだっだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




投稿する前に読み返してみたのですが、上手く書けていない気がしてなりません。

ナーガのサラマンディーネに対する過剰な敬愛を口にする場面もそうですが、
空蝉丸とサラマンディーネとの掛け合いも、もう少し甘く書いた方が良い気がしてなりません。
いきなり、甘くする訳にもいかないのですが・・・
二人の自分的なイメージだと、ここから角砂糖三つにメープルシロップとハチミツを加えるぐらいの甘さは想像できない・・・・

何処かの某魔法少女に出てくる女提督のお茶のような事が自分に出来ないように。

だから、サラマンディーネをお淑やかな肉食系ヒロインのように書きたかったのですが・・・
上手く行っている気がしない・・・・

一先ず、どうすれば良いのか考えながら書いていくので、これからも読んでもらえれば幸いです。
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