サラマンディーネ達の都を離れ、南の孤島にて獣電竜たちの捜索にやって来た空蝉丸。
しかし、島に到着してから二週間が経過したが、その手がかりが全く無かった。
島全体をくまなく見たわけではないが、獣電竜がいた足跡などの痕跡すら見当たらない。
「もしも眠りについているのならば、火山が怪しいと思ったのだが」
危険だが噴火口付近まで接近してみたのだが成果が無かった。
「一体、何処に行ったのだ・・・」
ため息を付きながら空蝉丸は捜索でかいた汗を流す。
「まぁ、焦っても仕方のないことでござるし、今はこの温泉を楽しむとしますか」
獣電竜の捜索の中でたまたま見つけることが出来た温泉。
火山がある孤島ゆえに湧き出ていた源泉が川のように流れ、岩肌を削って滑らかにしながら小さな湖のように溜まった温泉だ。
念のため調べてみたが、汚染されていないらしく害は無いようだ。
恐らく、サラマンディーネ達の働きと地球自身の力が生み出したものなのだろう。
「地球の神秘でござるな」
丁度良い湯加減ゆえに沈んでいた気持ちがほぐされ、高揚したゆえに呟かれた一言。
だが、キョウリュウジャーである以前に武士だった空蝉丸はどんなにリラックスしていても完全に警戒を怠らない。
「・・・・・・・」
近寄ってくる気配に悟られぬようにゆっくりと『ザンダーサンダー』を手に取りながら、気配が誰なのか考える。
この島に来てドラゴンに一体も会わなかったわけではない。
危うく餌にされそうになったこともあった。
だが、この気配の大きさからしてドラゴンではない。
ならば、人型になれるメスのドラゴンか。
何者か分からないが、不幸にも手元にはサラマンディーネから貰った書状がない。
いきなり襲われることはないだろうが・・・
気配が茂みの向こうにあるのを感じた時、空蝉丸は立ち上がり『ザンダーサンダー』を構えた。
同時に、茂みの向こうから気配の人物が出てきた。
「っ!?」
「サ、サラマンディーネ殿!?」
茂みから出てきた彼女の姿に驚く空蝉丸。
サラマンディーネの方も空蝉丸の姿に驚き息を飲んでいる。
無理もない。
恐らく、空蝉丸の事を探していたのだろうが、見つけた空蝉丸が武器を構えていたのだから。
そう考えた空蝉丸だが、サラマンディーネの態度に何処か不審に感じていた。
なぜなら、彼女は頬を赤くして固まっていたからだ。
「っ!?」
だが、その理由はすぐに分かった。
自分は今まで温泉に入っていたのだ。
当然だが、服など着ているはずがない。
「も、申し訳ない!!」
驚き声を上げると共にしゃがみ込んでもう一度温泉に入る空蝉丸。
そこでサラマンディーネも漸く再起動を果たした。
「お、お見苦しいところお見せしたっ・・・・・・」
「いえ、私の方こそ」
恥ずかしさで顔を赤くする空蝉丸。
「な、何故サラマンディーネ殿が、ここに」
「ナーガとカナメの龍神器のテストです。それに空蝉丸殿に食料を届けにきました」
「そ、それはかたじけない」
それは本心だ。
この島に来てから焼いた魚と果物だけだったので、彼女の気遣いには感謝した。
「本当にありがた・・・」
もう一度彼女に礼を言う為に座ったまま振り返って、今度は空蝉丸が固まった。
「では、失礼します」
そう言って、彼女は温泉に入り、空蝉丸の隣に腰掛けた。
「って!?何をしているのでござる!!」
何時の間に服を脱いだのか、何故一緒に入ろうとしているのか、彼女の二つの行動に対する空蝉丸の切実な問いかけ。
余りの勢いにもう一度立ち上がってしまい、
「はっ!?」
気が付いて慌てて座り込む。
温泉のお湯がぬるく感じるほど体が火照っている空蝉丸。
だが、サラマンディーネは涼しい顔で、
「ここに来るのに私も汗をかいたので流そうと」
冷静に言葉を紡ぐサラマンディーネ。
マナーとして、温泉に入る前はお湯を掛けてからの方が良いのだが、その事を指摘する余裕は空蝉丸にはなかった。
最も、本当はサラマンディーネも同じなのか、恥じらいゆえか、温泉に浸かったからか頬を赤く染め、
「私が一緒は嫌でしょうか?」
と何故か涙目になって問いかける彼女。
その姿は色っぽく、温泉の色も透明に近いため彼女の方を向けば、自然と彼女の裸が見え、
「そ、そのようなことはっ!!」
己の煩悩に振り払うように背を向ける空蝉丸。
だが、それでも彼女の事を意識してしまい、とてものんびりとすることも出来ないので、
「せ、拙者は先に上がらせていただきまする!!」
「あら、もうですか?」
「い、いや、先ほどからずっと入っていたので・・・」
そう言って、空蝉丸は頭に乗せていたタオルで下を隠しながら温泉から上がると、そそくさと出て行くのだった。
「ふぅ・・・」
その後ろ姿が見えなくなってからサラマンディーネはホッと息を入った。
上辺こそ冷静にしていたサラマンディーネだが、内心では空蝉丸と同じぐらいドキドキしていたのだった。
温泉から上がった空蝉丸は手早く着替えながら気を落ち着かせる為に歩いていた。
「・・・こ、この時代の女子は皆、あんなに簡単に男に裸を見せるのか」
いや、人間の男は珍しいから、そう言った倫理がないのだろうか。
だから―――
そこまで考えると、彼の脳裏に先ほど温泉の中に入ったサラマンディーネの姿が見え―――
―――ガン!ガン!ガン!!
湧き上がった煩悩を払うべく近くの木に頭をぶつける空蝉丸。
「う、空蝉丸殿!!」
「ど、どうしたんですか!?」
そんな姿を見て、驚きの声を上げる声が二つ。
ナーガとカナメだ。
だが、空蝉丸もその声に驚いていた。
「な、何でもありませぬ」
「そ、そうですか」
「ところで、姫様は何処に居られるか分からないか?」
「っ!?」
ナーガの問いかけに空蝉丸は驚き息を飲む。
だが、それを悟られまいと必死に平静を装って、
「・・・向こうに温泉があるので、そこに入られています」
「そうなんですかっ?」
空蝉丸の言葉に嬉々した表情を浮かべるカナメ。
「お二方も一緒に入られたらどうですか?」
「もちろん!行こう、ナーガ!!」
「ああ」
そう言って、二人はサラマンディーネの元に向かった。
二人の姿が見えなくなってから、
――――ガン!!ガン!!ガン!!!!
空蝉丸は悶々とした気持ちに苦しめられるのだった。
それから空蝉丸たちは景色のいい場所にシートを敷いて皆で食事を取っていた。
「それでどうですか?成果は上がりましたか?」
「・・・いえ、それが思わしくないのです」
カナメの問いかけに、ぎこちなく答える空蝉丸。
まだ温泉での出来事から完全に立ち直っていないのだ。
だが、その事を気にすることなく、今度はナーガが問いかけた。
「これから如何するつもりなのだ?」
「一先ず、別の場所を探そうと思います」
そう空蝉丸が答えると、サラマンディーネが微笑みながら、
「それでしたら、丁度良いですわ」
「と、言いますと」
「実は、空蝉丸殿の言った座標を調べたのですが、どうやら私達の都の近くだったのです」
「真でござるか?」
問いかければ、サラマンディーネは頷いた。
だが、その表情を空蝉丸は直視できなかった。
「では、今度はそちらに行こうと思います」
と、空蝉丸が言うが、三人は黙り込んでしまう。
「どうかしたのですか?」
「実は、その場所は少し問題があるのです」
それから数日。
あの後、サラマンディーネ達が戻ってから空蝉丸はモービルを使い教えてもらった座標へと訪れていた。
「ここがそうでござるな」
目的地に到着し、モービルから降り、ヘルメットを取る空蝉丸。
そして、目の前に広がる景色にサラマンディーネ達の言うように不可思議な光景に首を傾げた。
目の前に広がる廃墟となった街。
ビルやマンションなど高層の建物は全て風化しひび割れ、道路も煎餅のような有様。
普通に見れば悲惨な惨状なのだ。
一面に色とりどりの花が咲き誇っていなければ。
ひび割れた場所から綺麗な花が飛び出ているため凄惨な風景が神秘的なものになっていた。
だが、その美しすぎる光景が不気味さを感じさせる。
「サラマンディーネ殿たちの言うとおりでござるな」
真っ直ぐ歩きながら、広範囲を見回す。
彼女たちの言うとおり、不可思議な点がもう一つあった。
「遺体がない・・・」
サラマンディーネの話では500年前の大戦によって人類はほぼ全滅した。
生き残った者は僅かな人間が亡くなった者を供養できるはずがない。
そんな余裕も無かったはずだ。
考えられるとすれば、汚染された遺体も大型ドラゴンが丸呑みにしたかだが・・・
「まさか、人間が人間の遺体を食すはずもないでござろうし」
サラマンディーネ達も否定していたはず。
なにより、
「これは・・・」
目の前にある黒色の大きな石が立てられている。
「慰霊碑でござろうか」
顎に手を当てながら考える空蝉丸。
特にこの石の周りが花に溢れている。
「一体誰が・・・――――っ!?」
不審に思いながら空蝉丸はゆっくりと石に触れようとする。
しかし、その手を不意に止めると急ぎ背後を振り返りながら『ザンダーサンダー』を引き抜く。
「ハァッ!」
「くっ」
直後響き渡る甲高い金属のぶつかり合う音。
反射的に構えた『ザンダーサンダー』に上段から振り下ろされた刃が当たったのだ。
だが、驚愕に怯んでいる暇はない。
すぐに自らを襲った襲撃者の事を認識しなければならないからだ。
見ると、そこには黒いローブで全身を覆った相手であった。
「はぁっ!!」
鍔迫り合う刃を空蝉丸は跳ね除け、距離を取る。
そして、『ザンダーサンダー』を正面に構えた。
しかし、見ると襲撃者は真っ直ぐこちらに向かって駆け寄ってきていた。
「お主、一体何者だ!?」
『ザンダーサンダー』を構えなおしながら、問いただすように声を張りあげる。
答えなどは期待していなかった。
しかし、襲撃者は何かに気が付いたように立ち止まった。
「・・・?」
その行動に空蝉丸は不審に思う。
だが、
「キョウリュウゴールド?」
「なっ!?」
体を傾けながら問いかけてくる襲撃者に空蝉丸は驚愕した。
何故、それを知っているのか、と言う疑問が彼の中に湧き上がった。
しかし、襲撃者の半信半疑に掛けられた問いかけの声には聞き覚えがあった。
更に、良く見れば、襲撃者の手に持っている武器。
ハート型の大鎌には見覚えがあった。
「お、お主はまさか・・・」
驚愕で声が震える空蝉丸。
それが彼女の疑問の答えになったのか、相手は勢い良く身に纏っているローブを払いのけた。
「久しぶりねぇ~♪」
「お主はキャンデリラ!!」
ローブの中から出てきたのは、ハートを模様した怪人。
空蝉丸が戦っていたデーボス軍の幹部、喜びの戦騎、キャンデリラ。
しかし、戦いの中でデーボスと仲違いをし、デーボス軍と決別したものだ。
と、その時、
「キャンデリラ様~~~!!」
遠くの方から何処か幼さない子供のような声が響く。
こちらも聞き覚えがあった。
「あれ、もしかしてキョウリュウゴールド!?」
近寄ってきた声の主はこちらを見るとキャンデリラと同じく驚愕の表情を浮かべる。
だが、それはこちらも同じだった。
「何で、ここにいるンッスか?」
駆け寄ってきたのは魔法使いの帽子を被った悪戯好きの子供のようなぬいぐるみの怪人。
キャンデリラ直属の部下で、偵察役の楽しみの密偵、ラッキューロだった。
「それはこちらの台詞でござる。ラッキューロ、キュンデリラ、お主たちこそ何故・・・」
それからお互いは近くの座れる場所にて互いの事を話した。
「なるほど、それでキョウリュウゴールドはこの世界に飛ばされてきたんっすね」
「うむ。お主たちはあれから如何したのでござるか?」
腕を組んで空蝉丸の話に頷いたラッキューロに今度はこちらが質問を投げかける。
空蝉丸が彼らに最後に会った時、二人はデーボス軍に追われていた。
本当はもう一人戦騎も追われていたのだが、追っ手によって倒されてしまった。
そこへ自分達が助けたのだ。
「私たちはあの後、アナタ達に言われたとおり、この星で生きていたわ」
「最終決戦の後、はぐれた子を見つけて母親の元に返してあげてから、人間を笑顔にする楽しみを見つけたンッス」
「それから私達は人を楽しませることを生きがいに生きてきたの」
でも、とキャンデリラは言葉を一度切って俯く。
その時、いつも笑顔の彼女の表情が少し影が落ちたようだった。
「それが百年ぐらい経った後、戦争で皆が死んじゃった・・・」
その言葉に空蝉丸は何も言えず黙り込むしかなかった。
「ボク達がデーボス様の力で生み出されたから。人間に有害な汚染物質は効かなかったンッスけど」
「目の前で苦しむ人間の姿を見るのは心が痛んだわ」
とても地球を絶滅させようと企んだ悪の幹部とは思えない発現。
だが、その言葉は彼女たちが更生した証なのだろう。
「では、あの墓は、二人が?」
「ええ。亡くなった人たちを地面に横たわらせるのは可哀想だったから、お墓を作ってあげたの」
「そして、死んだ人たちが少しでもハッピーになれるようにって、キャンデリラ様と一緒に花の種を植えたンッス」
「そうだったのでござるな」
二人の行為に空蝉丸は感謝したくなった。
まさか、二人がここまで人間たちのために尽くしてくれていたとは思わなかったからだ。
「しかし、何故二人はずっとここにいたのでござるか。確かに、人間はほとんど絶滅に近い状態でござったが、姿を変えてこの世界にいる者がおるはず」
「それは知ってるんだけど・・・・」
「ドラゴンって怖いじゃないッスか」
と、ラッキューロの言葉に空蝉丸は苦笑した。
確かに、彼らの容姿を見れば、攻撃されかねないのだから無理からぬことだろう。
「所で、キョウリュウゴールドはどうしてここに戻って来たンッスカ?」
「それは実は・・・・」
そして、空蝉丸はラッキューロの問いかけに答えるために事情を説明した。
この世界に来て、サラマンディーネ達に助けられたこと。
彼女の力になる為に、獣電池の復活させるべくスピリットベースを探しに来たことを。
「なるほどね~」
「それで済まないが、スピリットベースのゲートが何処にあるか知っていたら教えてはもらえぬだろうか」
「知ってるッスよ」
と、ラッキューロが軽い口調で答える。
「ま、真でござるか」
「ええ。あれからキョウリュウジャー達とは彼らが寿命で無くなるまでに何度かあったことがあるの」
「それで、スピリットベースで遊んだこともあるンッス」
その言葉に空蝉丸は顔を輝かせた。
今日まで全く手がかりが無かったので、彼らの情報は本当に嬉しかったのだ。
それから空蝉丸は二人の案内でスピリットベースのゲートであるマンホールまでやって来た。
「ここがそうッス」
と、ラッキューロが指差した場所には目印であるエンブレムが刻まれたマンホールがあった。
「キョウリュウジャーが居なくなってから一度も来たことがないンッスよね」
「もしかしたら、中は埃まみれかもね」
と、冗談のように笑いながら言うキャンデリラの言葉に空蝉丸は自然と苦笑が漏れた。
だが、彼は気分が高揚していた。
漸く、故郷に帰省するのに似た感覚があったからだ。
「とにかく、中に入ってみるでござる」
はやる気持ちを抑えながら、空蝉丸はゲートにガブリチェンジャーを向けた。
すると、マンホールから光りが溢れ三人を吸い込むのだった。
しかし、中に入ったとき、空蝉丸の期待は粉々に崩れ去った。
「あ、あぁ・・・」
目の前の惨状に空蝉丸は言葉をなくした。
いつも明るく暖かい光りが降り注いでいたスピリットベース。
しかし、今そこは薄暗い冷たい凍らされた空間のようになっていた。
「ど、どうなってるンッスか、これ?」
一緒に来たラッキューロも驚きの声を上げている。
そのすぐ後に、
「ねえ、アレを見て!!」
と、同じく驚きの声を上げてキャンデリラが天井を指差した。
「ア、 アレは・・・っ!?」
その後に、空蝉丸も彼女の指差す方を見る。
その瞬間、驚愕し目を見開いた。
「獣電竜たちが凍りついているッス!!」
天井には空蝉丸が探していた獣電竜達が全員凍りついていたからだ。
「プテラゴードンっ!!」
思わず空蝉丸はその中の一体、自らの相棒である翼竜の獣電竜を呼ぶ。
しかし、完全に凍りついているのか、プテラゴードンは反応しなかった。
「い、一体・・・何があったのでござる!!!!」
そんな空蝉丸の声だけが虚しくベースに響いた。
何とか書き上げました。
昨日まで全く掛けてなかったので、一日で書き上げることになってしまいました。
そのため、文章がかなり荒かったかもしれません。
ただ、書き上げる為にキャンデリラの喜びの歌を流しながら書いたので・・・
歌詞が頭から離れません・・・・
キョウリュウジャーの歌は耳に残るものが多いのですが、これは来週まで残りそうです。
一先ず、今回は生き残った敵キャラを今度は味方として登場させてみました。
ここからサラマンディーネをどの段階で登場させるかで、面白くできそうです。
今日はここまでですが、又見てくれたら幸いです