ガンダムビルドファイターズ White&Black ChallengerS 作:ケンヤ
合宿2日目
初日に新人戦が行われると言う事が告知された事もあって、空気は昨日に増してピリピリしている。
新人戦への参加は自由だが、大半の1年生は新人戦に参加するようだ。
「今回から装備を変更したわ。今回の目的は新装備を実践でテストする事が目的よ。勝敗は気にする必要はないわ」
「分かった。だけど……せっかく、ハクアが新しい装備を用意してくれたんだ。そう簡単に負けられないな」
今回、ハクアはビルドアメイジングガンダムに新装備を用意している。
ハクアにとっては新人戦は新装備のテストの場でしかない。
だが、ヤクモはハクアが新装備を用意してくれた以上、そう簡単に負ける気は無い。
新人戦は毎回、抽選で対戦相手が決まる。
直前まで対戦相手が分からない為、事前に相手に合わせた策を用意する事は難しい。
「それじゃ、私は向こうにいるから」
「ああ。勝って来る」
新人戦はセコンドが付く事は許可されていない為、ハクアはバトルの直前までしかヤクモと打ち合わせは出来ない。
ヤクモは抽選の列に並んで順番を待つ。
抽選により、ヤクモの出番はすぐですぐさま指定されたバトルシステムのところに向かう。
抽選が一通り終わり、他のバトルシステムにもファイターが準備をしている。
バトルがすぐではない生徒や他の学年の生徒は自分の興味のあるファイターがバトルを行うバトルシステムの周りに集まっている。
ヤクモがバトルを行うバトルシステムの周りにも多くの生徒が集まっていた。
Gミューズやガンプラ学園で散々バトルをして来たが、ここまで観衆の中でバトルする事は初めてだ。
少し緊張するが、観衆の中にハクアやノブナガの姿を見つけて、親しい相手がいる事で少しは落ち着く。
「今更緊張しても仕方が無い。俺達は全力でバトルするだけだ」
ヤクモは新装備となったビルドアメイジングガンダムをバトルシステムにおいてGPベースをセットする。
「ビルドアメイジングガンダム。ナナセ・ヤクモ……行くぜ!」
一斉にバトルが始まり、新人戦が開幕する。
ヤクモの対戦相手のガンプラはドーベン・ウルフだ。
バトルフィールドは宇宙となっていた。
「見つけた! 射程はこっちの方が長い!」
相手のドーベン・ウルフは足を止めると、ビームライフルを胴体のメガ粒子砲と結合させて、メガランチャーで補足したビルドアメイジングガンダムに狙いを定める。
こちらに一直線に向かって来るビルドアメイジングガンダムに対してメガランチャーを最大出力で発射した。
ドーベン・ウルフの放ったメガランチャーのビームはビルドアメイジングガンダムに直撃したように見えた。
しかし、ビームはビルドアメイジングガンダムが破壊する事は無かった。
「馬鹿な!」
ドーベン・ウルフのビームの掃射が終わるとそこにはシールドを掲げてたビルドアメイジングガンダムが無傷で残っている。
ビルドアメイジングガンダムが掲げているシールドは以前の物とは違っていた。
「ビームが吸収された……アブソーブシールドか!」
ドーベン・ウルフのメガランチャーはシールドで受け止められたと言うよりも、シールドに吸収されたように遠目でも見えた。
それは7年前の世界大会においてセイが制作したスタービルドストライクガンダムに装備されたアブソーブシールドと同じ現象だ。
7年前は世界を驚かせた技術ではあるが、今では情報も出回り、ある程度なら簡単にアブソーブシステムを再現できるようにはなっている。
そして、ビルドアメイジングガンダムはアブソーブシールドを装備している。
それも、以前にスタービルドストライクガンダムが装備していたアブソーブシールドの改良型だ。
右手には専用のビームライフル、ヴァリアブルビームライフル、左のサイドアーマーにはビームサーベル、バックパックには2枚のウイングユニットを装備した中距離の高速戦闘を主眼に置いたDパッケージを装備している。
「これがアブソーブシールドか……あのレベルのビームでも無傷で防げるのか」
対戦相手だけではなく、ヤクモもアブソーブシールドの防御力に驚いていた。
事前にある程度はハクアから説明されていたが、実際に使って見ると予想以上であった。
「アブソーブシールドなら!」
アブソーブシステムの情報が出回っていると言う事は当然ながら、対抗策も出回っている。
アブソーブシールドはビームに対しては高い防御力を持つが、実弾にはただのシールドでしかない。
ドーベン・ウルフは対艦ミサイルをビルドアメイジングガンダムに向けて撃つ。
「やっぱ実弾で攻めて来るよな」
アブソーブシールドに対して、実弾が有効なのはヤクモも知っている。
相手の攻撃をアブソーブシールドで防げば相手が実弾を持っていれば使って来ると言う事はハクアの予想通りの展開だ。
そうなった時には一度、試すように言われている事がある。
向かって来る対艦ミサイルをビルドアメイジングガンダムは迎撃せずにアブソーブシールドで防ぐ。
「やったか!」
「ハクアの奴……言うのは簡単だけど、実際にやるには結構、勇気がいるんだよ」
対艦ミサイルがアブソーブシールドに直撃すた爆風が晴れるとそこにはビルドアメイジングガンダムがアブソーブシールドを掲げた状態でいる。
対艦ミサイルの直撃を受けたアブソーブシールドも傷一つついていない。
以前のアブソーブシールドとは違い、ビルドアメイジングガンダムに装備されている改良型のアブソーブシールドは粒子を吸収するだけではなく、吸収した粒子はガンプラに蓄積している粒子を使って、粒子フィールドをシールドの全面に展開する事で実弾に対しても十分な防御力を発揮する事が可能となっている。
「コイツなら!」
ドーベン・ウルフはバックパックのミサイルを一斉掃射する。
同時にインコムも射出する。
インコムはビームでミサイルは実弾。
ビームと実弾の同時攻撃ならアブソーブシールドはビームを吸収するか粒子フィールドで防ぐかのどちらかでしかない。
ビームを吸収してしまえば、ミサイルを防げないが粒子フィールドはビーム、実弾を問わずに防げる為、ビームを吸収する事よりも粒子フィールドで防ぐしかない。
だが、インコムは相手の正面以外からでも狙える為、防御の死角から攻撃する事が出来る。
「ハクアの読みがここまで的中すると相手を仕込んでそうで怖いな」
ビームと実弾の同時攻撃も事前にハクアから聞いていた事だ。
「シールドとは違ってこっちは流石に初めてだと扱い切れるか分からないけど……何とかなる!」
ビルドアメイジングガンダムのバックパックのウイングが開閉すると粒子の翼が展開される。
DパッケージのDはディスチャージシステムから取っている。
アブソーブシステムはディスチャージシステムのおまけに過ぎない。
そして、ディスチャージシステムも改良が加えられており、以前はプラフスキーパワーゲートを通る事で展開していたプラフスキーウイングが使用可能となり、膨大な粒子量からアブソーブシステムとの併用が基本だった、以前とは違い数回ならガンプラ内に蓄積してある粒子で使えるようになっている。
プラフスキーウイングを展開したビルドアメイジングガンダムは一気に加速する。
スタービルドストライクガンダムの時にもその速度からファンネル程度なら掠めただけで破壊出来る速度を出せるが、ビルドアメイジングガンダムもミサイルを掠った時に爆発よりも先に駆け抜けている為、ビルドアメイジングガンダムはミサイルの爆発のダメージを受けずにミサイルを突破する。
「なんて速さだ!」
プラフスキーウイングを展開しているビルドアメイジングガンダムは並のガンプラの高速飛行形態よりも速く、始めて使うヤクモには直線的にしかまともに扱う事は出来ないが、その余りの速さにドーベン・ウルフのインコムも狙いを付ける事は出来ない。
「そこだ!」
ビルドアメイジングガンダムはヴァリアブルビームライフルを放つ。
プラフスキーウイングを展開している速度での攻撃である為、狙いは甘くドーベン・ウルフのビームライフルを掠める程度だが、以前にハクアが用意したビームライフルと比べても威力は段違いで、掠めただけでもビームライフルを破壊した。
「ちぃ! それなら!」
ビームライフルが爆発する前にドーベン・ウルフはビームライフルを捨てる。
ビームライフルを捨てたドーベン・ウルフは両腕をパージする。
切り離した両腕を遠隔操作して、インコムと合わせてビルドアメイジングガンダムの進路を防ぐように攻撃する。
「そう簡単に決めさせてはくれないか!」
ビルドアメイジングガンダムはプラフスキーウイングを解除して、アブソーブシールドでビームを吸収する。
まだ、プラフスキーウイング展開時の速さになれていない為、この攻撃は足を止めてアブソーブシールドで防ぐしかない。
そこを狙って、ドーベン・ウルフはグレネードランチャーを撃ち込んで来る。
粒子フィールドの展開する事は出来ずにアブソーブシールドにグレネードランチャーが直撃する。
破壊はされなかったが、粒子の吸収口が破損して粒子の吸収量が一気に少なくなる。
そこに切り離した両腕とインコムに加えて、バックパックのビームキャノンと腹部のメガ粒子砲で一気に畳み掛けて来る。
「けど、粒子は十分にある!」
ビルドアメイジングガンダムがヴァリアブルビームライフルを構えると、銃口の前に小さなプラフスキーパワーゲートが生成される。
ヴァリアブルビームライフルのビームがゲートを通るとビームが拡散した。
これは以前のスタービルドストライクガンダムのディスチャージシステムにも出来た事だが、更に拡散したビームの一つ一つがロックしている対象に向かう「スプレッドバースト」だ。
拡散したビームがドーベン・ウルフのビームを相殺し、インコムと切り離した両腕を撃ち抜く。
「何だと!」
「もう一丁!」
ビルドアメイジングガンダムの撃った二発目のビームは拡散する事無く、威力が強化されて離れれる。
これはビームの威力を純粋に強化する「ハイパーバースト」だ。
ビルドアメイジングガンダムのハイパーバーストのビームをドーベン・ウルフはかわすが、下半身に直撃して下半身が破壊される。
下半身を破壊されながらも、ドーベン・ウルフはスモーク弾で煙幕を張って交代する。
そして、フィールド上に漂っている戦艦の影に隠れる。
「まだだ……まだ」
「コイツで決める!」
ヴァリアブルビームライフルの銃口に展開されたゲートが回転を始める。
ビルドアメイジングガンダムが撃ったビームがゲートを通ると、ビームに回転が加わる。
これはかつてマシロがディスチャージシステムを自身のガンダム∀GE-FXに取り入れた際にビームに回転を加える事で貫通力を増していたが、それを逆にセイも取り入れて貫通力を増した「ドッズバースト」だ。
回転を加えたビームは戦艦をぶち抜き、ドーベン・ウルフに直撃する。
戦艦は破壊された状態ではない為、装甲の耐久地はブリッジ等を除けば並の攻撃ではビクともしない事もあって相手のファイターは背を戦艦の方に向けて警戒していた。
まさか、幾ら性能が良くても戦艦をぶち抜いて狙って来るとは思っていなかった相手のファイターは反応仕切れずにビルドアメイジングガンダムのドッズバーストでドーベン・ウルフが撃ち抜かれた。
「よっしゃぁ!」
その一撃が致命傷となりヤクモはバトルに勝利する。
「ハクア!」
「良くやったわ」
バトルが終わり、ヤクモはハクアの元に駆け寄る。
今回のバトルでプラフスキーウイング展開時の操作に課題は残った物の手ごたえとしては十分だ。
相手もガンプラ学園に入学できるだけあってレベルは低くはないが、ハクアの助言を差し引いても十分に圧倒していた。
初めて使う装備でこれだけ戦えればハクアも文句はない。
「とは言っても勝ち進めばそれだけ相手の実力も上がって来るわ。新人戦は新装備のテストの絶好の場何だから一度勝ったくらいでは油断しないようにね」
「分かってる。次もしっかりやるさ」
今回は初戦と言う事もあって、今までとは違い装備を使って相手がこちらの情報が意味を成さない状態ではあったが、次からはビルドアメイジングガンダムが装備を変えて来る可能性を相手も考えている。
バトルの相手は毎回抽選で決まると言っても、相手が決まってから戦い方を考えるだけの時間が全くない訳ではない。
特にヤクモは入学以降、新入生の中では目立っている。
ガンプラ学園でのし上がろうとしている生徒にとっては、ヤクモは要注意人物となっている。
ヤクモは初戦を突破したが、それに満足する事無く気を引き締め直す。
「アレがビルドアメイジングガンダムか……」
ヤクモのバトルが終わり、バトルを見ていた観客達もまだ終わっていないバトルを見に行ったり、自分のバトルに備える為に散り散りになって行く。
昨日の夜にヤクモとバトルしたマキナもヤクモの初戦を観戦していた。
「ビルドバーニングがRGシステムを発展させているのに対して、ビルドアメイジングはディスチャージシステムを発展させたガンプラと言う事か」
マキナも実物を見た事は無いが、もう一体の王のガンプラであるビルドバーニングガンダムはスタービルドストライクガンダムに搭載されたRGシステムを発展させた格闘特化機と聞いている。
そして、ビルドアメイジングガンダムはRGシステム同様にスタービルドストライクガンダムに搭載されていたディスチャージシステムを発展させているのだろう。
「スタービルドストライクのRGシステムとディスチャージシステムをそれぞれ発展させた王のガンプラ。となると……」
マキナはそこまで考えるもそこで止めた。
それ以上の事は今考える必要はないからだ。
「ナナセ君。君はこの戦いをどこまで勝ち進めるか括目させて貰おう」
ヤクモのバトルは終わったが、新入生の数は多い為、全てのバトルが一度にやれる訳ではない。
空いたバトルシステムから次々と初戦が開始されて行く。