ガンダムビルドファイターズ White&Black ChallengerS 作:ケンヤ
新人戦一回戦にてヤクモと同室のノブナガはカイトに敗れた。
ガンプラを完膚亡きまで破壊された。
それに対して憤りを感じヤクモは打倒カイトを心に決めた。
1回戦で半数の新入生が敗退したが、勝ち残った新入生はすぐに2回戦を行う予定だ。
「調整は万全よ」
「また違う装備か……使いこなして見せるさ」
ハクアから受け取ったビルドアメイジングガンダムは1回戦とは異なる装備を付けていた。
1回戦は機動力を重視したディスチャージパッケージだったが、今度は砲撃戦用のランチャーパッケージだ。
左手には身丈程もある大型の火器、メガビームランチャーを持ち、脚部の左右に3連装ミサイルポッドと6連装グレネードランチャーが付けられている。
両肩の上には砲身の短いガトリング砲と充実した火器を持つ事が特徴だ。
2回戦ともなると1回戦のバトルからある程度は対策を立てられている可能性もある為、機体特性を変えると言うのは有効な手段と言えた。
だが、その反面、ヤクモの負担も大きくなるが、この程度で躓いていてはあれだけの火器を自在に使ったカイトには及ばない。
「ビルドアメイジングガンダム、ランチャーパッケージ。ナナセ・ヤクモ。行くぜ!」
ヤクモは装備を確認し、2回戦に臨む。
2回戦のバトルフィールドは砂漠地帯だった。
地上ステージだが、足場が砂で出来ている為、動きが制限されかねない。
重力下での飛行能力を持つビルドアメイジングガンダムだが、ランチャーパッケージは重装備である為、空中戦は得意ではない。
「足場が悪いけど、こっちも余り動ける装備じゃないんだ」
ビルドアメイジングガンダムは砂地の着地する。
いつでもメガビームランチャーを打てるように構えながら周囲を警戒する。
今回のバトルフィールドは遮蔽物が少ない為、見通しが良い。
その上、ランチャーパッケージは機動力は低いが射程は長い。
敵のガンプラと対峙した際には先に射程に捉える事が出来るだろう。
「周囲に敵影は無い……どうなってんだ?」
幾ら待っても対戦相手のガンプラは見えない。
相手が接近するなら空中を飛んで来るか地上を進むしかない。
だが、どのどちらを警戒していても一向に相手のガンプラは見えない。
ヤクモは相手の位置を把握しかねていると、ビルドアメイジングガンダムの背後の砂から相手のガンプラが飛び出して来る。
「砂の中から!」
砂の中から飛び出して来た相手のガンプラはガンダムSEEDに登場するグーンの改造機のようだ。
水陸両用MSのグーンだが地中機動試験評価タイプやジオグーンのように地中を進めるように改造されているらしい。
右腕は刃が金属パーツで出来ているクローに変更され格闘戦にも対応可能となり、背部にはバクゥのレールガンが付けられている。
グーンは背後から奇襲をかけてクローを振るう。
とっさにビルドアメイジングガンダムは右腕のバックラーで受け流そうとするが、金属パーツで出来ているクローの刃の威力は見た目以上に大きく、バックラーに爪痕を残す。
ビルドアメイジングガンダムに一撃を喰らわせたグーンはすぐさま砂の中に飛び込む。
ビルドアメイジングガンダムは肩のガトリング砲と胸部のバルカンで追撃するが、砂の中に潜っているグーンに攻撃が届く事は無い。
「コイツなら!」
ガトリング砲やバルカンでは攻撃が届かない為、ビルドアメイジングガンダムは飛び上がりメガビームランチャーを放つ。
砂地に直撃して砂を巻き上げる物のグーンには当たらない。
「くそ!」
メガビームランチャーは並のガンプラなら一撃で破壊出来る程の威力を持つが連射速度は低い。
幾ら威力があっても攻撃が追いつかない。
それどころか砂を巻き上げてグーンの機影すらも見失っていた。
「やばい! 見失った!」
ヤクモは予想外の奇襲に加えて砂の中を進む相手に完全に翻弄される。
「来た!」
ビルドアメイジングガンダムが攻撃の手を休めると、物陰からミサイルが飛んで来る。
数は多いが、ガトリング砲とバルカンで十分に落とせる数だ。
ビルドアメイジングガンダムがミサイルを迎撃していると、背後からレールガンを撃ち込まれる。
「後ろから!」
相手はミサイルを囮に使い背後に回り込んで攻撃して来たようだ。
しかし、レールガンの威力ではビルドアメイジングガンダムには致命傷を与える事は出来ない。
それでも、相手は砂の中から距離を取って攻撃して来る。
「接近戦はして来ないのか?」
ランチャーパッケージは見るからに砲戦用の装備だ。
砲戦用の装備に対して接近戦を仕掛けるのは有効な手段だ。
ビルドアメイジングガンダムが地上にいる限りはギリギリまで砂の中を進んで奇襲と共に金属の刃のクローで強力な一撃を食らわせてすぐさま砂の中に潜る事が出来る。
しかし、空中にいるビルドアメイジングガンダムに接近戦を仕掛けるには砂の中から飛び出してビルドアメイジングガンダムのいる場所まで飛ばなければならない。
地上に居る時に比べて長い時間砂の中から出る必要がある為、カウンターを食らうリスクが一気に跳ね上がる。
つまり、ビルドアメイジングガンダムが飛んでいる限りは相手は接近戦を仕掛けては来ないと言う事だ。
「けどよ。幾ら接近戦を仕掛けて来なくてもこっちだって攻撃を当てる術は無いんだ。どうする……考えろ」
レールガンの威力はクローに比べて低いが、一方的に攻撃を受け続けていてはいつかは限界が来る。
ここにハクアが居れば何か良い策を考えてくれるが、今は一人でバトルをしている。
この状況を打開できる方法を考える事が出来るのも自分だけだ。
「くそ! 何も思いつかない!」
ヤクモでは状況を打開する策は思いつかない。
ビルドアメイジングガンダムはグーンの攻撃に対してひたすら回避行動を取りながらガトリング砲とバルカンを砂に撃ち込む。
それで多少なりとも攻撃の手を緩めて、あわよくばグーンに当てるつもりではあったが、そうは上手くはいかない。
「どうする……相手は砂の中に隠れてこっちからは位置を特定する事が出来ない……それにこの装備じゃ火力はでかいけど、相手の動きには追いつけない……まてよ」
グーンの攻撃で被弾箇所が増えるなか、何とか状況を整理している中、ヤクモは一つの可能性を閃いた。
ビルドアメイジングガンダムは一気に加速して移動を始める。
「装備が重い!」
ビルドアメイジングガンダムは脚部のミサイルとグレネードランチャーをグーンが居そうなところに撃ち込んで少しでも軽くなろうとする。
その攻撃でグーンにダメージを与える事は出来ず逆にバックパックにレールガンを撃ち込まれた。
「スラスターが! だけど! 後少しなんだ……そこまで辿り付ければ何とかなる!」
バックパックの損傷でスラスターの出力が上がらずに速度が落ちてビルドアメイジングガンダムは次第に降下して行く。
地上に降りてしまえばグーンのクローの餌食となる。
ヤクモにはグーンの位置は分からないが、恐らくは地上に付いてしまえば接近戦に持ち込まれて終りだ。
窮地に追い込まれた中での唯一の逆転の可能性。
勝つ為には目的地まで辿り付くしかない。
「付いた!」
降下しながらもビルドアメイジングガンダムは指定されたポイントに到達した。
グーンは奇襲のチャンスを狙っているのかすぐには襲いかかっては来ない。
否、襲い掛かっては来ないのではない、襲い掛かれなかった。
ビルドアメイジングガンダムが到達したポイントはバトルフィールドの端だ。
相手はガンプラの性能差から正面からは攻撃してこない。
攻撃の為に少しでも顔を出すとそこ狙われ兼ねないからだ。
「相手の位置が分からないならフィールドごと焼き払えば良い! 簡単な事じゃないか」
ヤクモは初めは相手の位置を特定して反撃する策を考えていた。
だが、幾ら考えても策は思いつかなかった。
そこで位置を特定する事が今のヤクモでは無理だと割り切ってしまえば、別の手段を思いついた。
相手のガンプラは姿を隠しているだけで、バトルフィールドのどこかには必ず存在している。
ならば、バトルフィールド全体を攻撃してしまえば相手は逃げ場がない。
元より使い切れない程の膨大なプラフスキー粒子を内包しているビルドアメイジングガンダムの粒子を全てメガビームランチャーに集めての最大出力ならばバトルフィールドの端から端まで届く出力のビームを撃つ事が出来るとハクアから説明されている。
その時はメガビームランチャーの威力の凄まじさを分かり易く説明しただけだが、その説明が役に立った。
「少し過激だがな!」
ビルドアメイジングガンダムはメガビームランチャーを構える。
「メガビームランチャー! フルパワーだ!」
メガビームランチャーの出力が最大となった事でメガビームランチャーが放たれる。
圧倒的なビームが射線上の全てを飲み込み破壊して行く。
「このまま一気に!」
ビームを放出した状態でメガビームランチャーの砲身を動かす事でバトルフィールドをビルドアメイジングガンダムを中心にビームが焼き尽くす。
数十秒後にはビームの掃射が止まるとそこには一面の焼野原が広がっていた。
「どうだ……」
全ての粒子を使い切った事でビルドアメイジングガンダムは膝を付きメガビームランチャーを構えている事も出来ない状態になっていた。
これでグーンを倒し切れていなければ終りだ。
だが、そんな心配を余所にバトルシステムはバトルの終了を告げた。
「ハァ……流石はガンプラ学園。一筋縄でいかないな。今回はランチャー装備じゃなかったらどうなっていた事か」
「勝てれば問題はないわ」
あくまでも機動力を重視しているディスチャージパッケージではここまでの火力で一気に敵を仕留める事は出来なかった。
ランチャーパッケージの圧倒的な火力だからこそ、砂の中に潜む相手を砂漠ごと倒す事が出来た。
強引な策だろうと緻密に計算された策だろうと、ハクアにとっては関係なく、勝ったと言う事実だけが重要らしい。
「次のバトルまでに万全な状態にしておくわ」
ハクアはビルドアメイジングガンダムを改修して状態を見る。
粒子こそは使い切っての勝利だが、損傷は思った程では無いらしい。
ヤクモが2回戦を勝利し、他の対戦カードも次々と消化して行く。
その中でカイトやアンジェリカも難なく2回戦を勝ち抜いていた。
2回戦を勝ち抜いたところでベスト8が出そろう。
今日の予定では3回戦まで行いベスト4が決める事になっている。
3回戦が始まり早々にカイトとアンジェリカは勝利を決め、ようやく3回戦最後のバトルとなる。
「今回は近接戦闘用か……」
「今までの2つよりかは扱い易い装備よ」
「簡単に言ってくれるな」
3回戦ではディチャージパッケージ、ランチャーパッケージに続く第三の装備であるソードパッケージを装備している。
その名の通り近接戦闘を重視した装備だ。
両肩のサイドに1本つづの刃が片方だけの刀に近い形をしている実体剣「MT(マルチタクティクス)ソード」に手持ちの火器として実体剣付きのビームガンと他の2つに比べると非常にシンプルだ。
しかし、シンプルが故に性能を最大限に引き出すにはファイターの実力が試される。
「けど使いこなして見せるさ」
ヤクモはビルドアメイジングガンダムを受け取るとバトルシステムに向かう。
そして、バトルが開始される。
今回のバトルフィールドは宇宙ステージだが、一般的な宇宙ステージではなく、艦隊戦の真っただ中での戦闘だ。
宇宙世紀の連邦軍のサラミスとジオンのムサイが多数配置され、ランダムパターンの主砲による砲撃が行われる。
相手のガンプラだけでなく、戦艦の主砲も注意しなければならない。
「接近戦用の装備じゃ戦い辛いな……」
ソードパッケージはビームガンを装備しているが、メインは接近戦でビームガンは近距離戦闘時に使う事を想定して、射程は短い。
戦艦の砲撃をかわしながら、自分の間合いに持っていくことは一般的なバトルステージよりは難しい。
「砲撃はランダムだから条件は相手も同じだと思いたいが」
相手もステージに合わせたガンプラ選びは出来ない以上、条件は互角だと思いたい。
だが、相手のガンプラによっては一方的に攻撃される危険性がある。
「居た。何だ……ピラミッドか?」
ヤクモは対戦相手のガンプラを見つけた。
遠目だが、そのシルエットだけでもガンプラを特定できる程の特徴的なガンプラだ。
ヤクモは例えたようにそのガンプラはピラミッドのような形状をしている大型MA「ユグドラシル」だ。
「あれはGレコのユグドラシルだろ。ヤバいな」
相手のガンプラが分かった瞬間にヤクモは自分が圧倒的に不利な状態になったと悟った。
相手のファイターもヤクモのビルドアメイジングガンダムを補足し、長距離から主武装のテンタクルビームを撃って来る。
射線上の戦艦はユグドラシルのビームで一層され、ビルドアメイジングガンダムは回避する。
しかし、ビームは枝のように別れてビルドアメイジングガンダムを四方から攻撃して来る。
「戦艦の主砲だけでも厄介なのに!」
ビルドアメイジングガンダムはビームガンを連射して迫るビームを撃ち落とすが、捌き切れずにビームガンにテンタクルビームが掠り破壊される。
「この!」
火器が破壊された事で仕方が無く、両肩のMTソードで切り払う。
枝分かれしているとは言っても、十分な威力を維持していたテンタクルビームだが、MTソードは難なくビームを切り裂いた。
「粒子変容塗料のお陰だな」
MTソードはただの実体剣と言う訳ではない。
かつて世界大会においてニルス・ニールセンが使用していた戦国アストレイが装備していたサムライソード同様に表面に特殊な塗料が塗られておりビームを切り裂く事が出来る。
「MAだけあってIフィールドも持っているようだし、戦艦の砲撃でやられてくれることは期待できそうにもないよな」
相手のユグドラシルにも先ほどから戦艦の主砲が直撃しているが、ビームは完全に弾かれている。
大型MAを使う際に表面にIフィールド効果を持たせる塗装をする事は今や常識だ。
「確か、こいつには色々な使い方が出来たよな」
事前にハクアから受けたMTソードの各形態を思い出す。
MTソードはその名の通り様々な形態にする事が出来る。
ヤクモは二本のMTソードの柄同士を連結させたナギナタモードにする。
そして、ナギナタモードのMTソードを持ったまま、左手を手首から回転させる。
左手を回転させた状態でビルドアメイジングガンダムはユグドラシルに突っ込む。
ユグドラシルもテンタクルビームで迎撃するが、正面からのビームは回転しているMTソードが弾く。
MTソードの各形態の中でも最も長いナギナタモードで回転させている為、多少枝分かれさせた程度では、ビルドアメイジングガンダムを捕える事が出来ずにMTソードに阻まれる。
テンタクルビームの掃射を正面から受け切ったビルドアメイジングガンダムはユグドラシルの懐に飛び込む。
右腕のバックラーからビームサーベルを出して切りつけるが、ユグドラシルの装甲には大した傷をつける事は出来ない。
「浅いか……けど、ここは俺達の距離だ!」
ナギナタモードのMTソードの連結を外すと、今度は峰同士を連結させた対艦刀モードにする。
「デカい相手にはこれだ!」
対艦刀モードのMTソードをビルドアメイジングガンダムは構える。
そして、機体内に蓄積している膨大なプラフスキー粒子をMTソードに流し込むと、バーストモードへとなる。
バーストモードとなったMTソードから超巨大なビーム刃が形勢された。
「いっけぇ!」
ビルドアメイジングガンダムはMTソードを振り下す。
ユグドラシルもテンタクルビームで迎え撃つが圧倒的な出力のバーストモードのビーム刃には対抗できず、ユグドラシルは真っ二つに両断され爆散し、バトルは終了する。
「一時はどうなるかと思ったけど……」
「当然の結果よ」
始めはバトルフィールドや相手との相性から劣勢だったが、結果を見ればヤクモは前回のグーンとのバトルよりも楽に勝利している。
ハクアは始めからこの結果は想定内かのようだ。
「これでベスト4ね。後2回勝てば終わりね」
「簡単に言ってくれるな」
ハクアにとっては新人戦は通過点に過ぎないのだろう。
だが、ヤクモにとっては一戦一戦が色々と考え、得る物も多いバトルだ。
これで新入生だけのバトルだと言うのだ、そんな中で頂点に立っているチームが全国大会を連覇するのも頷けた。
ヤクモが勝利しベスト4が出そろった。
「さて、お前らはここまでのバトルを勝ち抜いてベスト4に残った訳だ。準決勝は明日からやるから今日は明日に備えて策を練るなり体を休めるなり好きに使え」
ベスト4が出そろい檀上にはベスト4の4人が立っている。
進行役のエリカが明日からの日程を説明している。
準決勝と決勝は2日にかけて行われる。
明日は準決勝戦が2戦行われるだけだ。
「今から明日の対戦カードを決める」
エリカはそう言うと4枚のカードを取りだす。
それをベスト4の4人がゾれぞれ取る。
裏には数字が書かれており、ヤクモが引いたカードは1と書かれていた。
それが準決勝の組み合わせを決める。
「1番か……」
「なら私が相手と言う訳か」
ヤクモが自分の番号を確認していると同じくカードを確認したアンジェリカがそう言う。
アンジェリカはヤクモにも見えるようにカードを持っている。
そのカードにもヤクモのカードと同じ1の数字が書かれている。
「第一試合はナナセとマスグレイブか」
エリカが各自が引いたカードを確認する。
カイトともう一人のファイターが引いたカードには2と書かれている。
同じ数字を引いた者同士が対戦相手で数字がバトルの順番と言う事だ。
誰が相手だろうと一筋縄ではいかない事は今更考えるまでもない。
準決勝で対戦する事が決まりヤクモとアンジェリカの視線がぶつかり合う。
アンジェリカの表情からは自信が漲っている。
ヤクモは一瞬、飲まれそうになるがヤクモもここまでの戦いを勝ち抜いている。
そう簡単に負ける気は無い。
準決勝の組み合わせが決まり、その日の日程は終了した。