ガンダムビルドファイターズ White&Black ChallengerS   作:ケンヤ

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Challenge14 「正面突破」

 新人戦もベスト4が出そろい残すも準決勝の2試合と決勝戦だけとなった。

 準決勝第一試合はナナセ・ヤクモとアンジェリカ・マスグレイヴの試合だ。

 ヤクモのビルドアメイジングガンダムは状況に応じて武装を変える万能機で対するアンジェリカのマグナガンダムは火力特化のガンプラだ。

 

「さて、彼女のガンプラを分析した結論としては……理解に苦しむわ」

 

 準決勝を明日に控えヤクモとハクアは次のバトルの対策を練っていた。

 ハクアがこれまでのアンジェリカのバトルを見た率直な意見がそれだ。

 

「元々、過剰火力とまで言われたカラミティを更に火器を増設した結果、機動力は無いに等しく格闘能力だって皆無よ」

 

 アンジェリカのマグナガンダムは元から火力に特化したカラミティガンダムを更に火力を強化している。

 それにより火力と言う一点では世界大会でも中々見る事の出来ないレベルの火力を有しているが、その反面まともに動く事もままならない。

 ハクアからしてみれば、そんな改造をする意図を理解出来ない。

 

「けど、ここまで勝ち進んで来たのも事実だろ?」

「分かっているわ」

 

 ハクアからすればあり得ない改造をしているが、現実としては新人戦をここまで勝ち続けている。

 実際に他の新入生とバトルして来たヤクモだからこそ、運だけでここまで勝ち残れないと言う事は分かる。

 それはハクアも認めざる負えない。

 

「この手のガンプラの対処法としては相手以上の火力で対抗するか、火器が使えないように距離を詰めるかだけど……」

 

 ハクアの言っている事は基本的な戦い方でヤクモも改めて言われずとも分かっている事だが、ハクアはの言い方は歯切れが悪い。

 

「あのガンプラ以上の火力を今から用意するのは難しいわ」

 

 ビルドアメイジングガンダムにも砲戦用のランチャーパッケージがあるが、マグナガンダムと正面から撃ち合っても勝てる見込みは少ない。

 時間が限られている以上、今からマグナガンダム以上の火力の装備を用意する事は不可能に近い。

 

「となれば近接戦闘か……」

「近接戦闘を仕掛けるやり方としてが機動力で翻弄しながら距離を詰めるか、攻撃を無力化しながら砲撃を突破するかだけど」

「ならディスチャージパッケージで決まりだな」

 

 ディスチャージパッケージには粒子を推力に回す事で圧倒的な機動力を得るスピードモードに相手のビームを粒子変換して吸収できるアブソーブシールドを持っている。

 それらを使えばマグナガンダムを接近戦に持ち込む事が出来るように思える。

 

「そうね。基本はそうなるわね。ただ、先の方法では行くのは難しいの。まずは機動力で翻弄しようにも向こうはまず乗って来ないでしょうね」

 

 ハクアはヤクモにある映像を見せる。

 それはアンジェリカの新人戦のバトルの様子のようだった。

 アンジェリカの対戦相手のガンプラはブレイブの改造機だ。

 ブレイブ特有の機動力でマグナガンダムを翻弄しようとしているのは分かるが、マグナガンダムは微動だにしない。

 相手の動きには全く意を介さずにマグナガンダムはその火力を持ってブレイブを圧倒して行く。

 始めは攻撃を回避していたブレイブも次第に回避しきれずに撃墜された。

 

「成程……あれだけの火力を同時に使われると避けるのは無理だろ。それに強引に突破するのも覚悟がいるな」

「さらに言えば火器の位置と稼動範囲を計算すると正面程にないにしても全方位に対して高い火力で攻撃する事が可能よ」

 

 マグナガンダムは正面に対してだけではなく、どの方向に対しても自身の向きを変える事なく対処できるとハクアは読んでいる。

 それが事実なら正面突破を避けて背後やバトルフィールドによっては上下など比較的火線の少ないところを狙うと言うのも余り有効的ではなさそうだ。

 

「本当に忌々しいわ。こんな無駄に火力ばかりのガンプラの癖に」

 

 ハクアはそう言い捨てる。

 ハクアにとってはバランスを無視した極端な性能を持つガンプラは嫌いなのだろう。

 それに関しては好みの問題である為、ヤクモは何も言う事は無い。

 

「まぁ良いわ。明日までに策は用意するから。次はナナセ君にも今まで以上に頑張って貰うから今日はこのまま体を休めて頂戴」

「そうだな。作戦の方は任せた」

 

 ハクアでも頭を悩ませている相手にヤクモが有効的な手段を思いつく事は出来そうには無い。

 ここで無理をして疲れを残したまま明日の準決勝に臨んでしまえば、ハクアが妙案を思いついてもヤクモが実戦出来ないかも知れない。

 ヤクモも作戦を練る事はハクアの役目だと割り切って明日の準決勝に備えて体を休める事にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、ハクアに言われた通りに体を休めただけだって、ヤクモには昨日の疲れは残っていない。

 一方のハクアは徹夜で対策を練って準備したのは少し疲れているように見える。

 

「少し強引だけどビルドアメイジングの性能ならやってやれない事は無いわ」

「だな。後は俺次第って事か」

 

 ヤクモは整備されたビルドアメイジングガンダムを受け取ってハクアから今回の作戦の説明を受けた。

 ハクアの考えた策は確かに強引で一歩間違えば、反撃すら出来ずに一方的なバトルになり兼ねない。

 しかし、現状ではそれしかない。

 

「やって見せるさ。ハクアがここまで用意してくれた相方である俺がミスって負ける訳には行かないからな」

「当然よ。この程度の相手に負けている訳にはいかないもの」

「入って来る」

 

 ヤクモはハクアと別れてバトルシステムに向かう。

 準決勝からは会場中央の大型バトルシステムで行われる。

 今までとは違いバトルは1試合つづ行う為、必然的に集まった生徒達の注目はヤクモとアンジェリカのバトルに向かっている。

 

「ナナセ・ヤクモ。お前と戦える日を楽しみにしていた」

「俺もだよ。今日はお互いに全力で戦おう」

「無論だ」

 

 互いにこれ以上言葉で語る事は無い。

 ヤクモはビルドアメイジングガンダムをバトルシステムに置く。

 今回は昨日話していた通りディスチャージパッケージだが、両肩にソードパッケージのマルチタクティクスソードを付けている。

 3つのパッケージはあくまでも機動力、火力、格闘能力を重視していると言うだけで状況に応じて武器だけを他のパッケージで装備させると言う使い方も出来る。

 

「ビルドアメイジングガンダム。ナナセ・ヤクモ! 行くぜ!」

 

 今回のバトルフィールドは中心部に市街地でその周囲には荒野が広がっている地上ステージだ。

 バトルが開始されると、ビルドアメイジングガンダムは建物の影に身を隠す。

 

「まずは相手の位置を見つける」

 

 相手は砲撃戦に特化している為、不用意に空中に留まっていると長距離から狙い撃ちにされる危険性がある。

 その為、まずは身を隠して相手の出方を見る。

 周囲に気を張り、アンジェリカの出方を見ていると不意にビームが市街地のビルを吹き飛ばす。

 このステージには攻撃系のギミックが無い為、攻撃はアンジェリカのマグナガンダムからの物で間違いない。

 そして、無数のビームが次々と市街地に飛んで来る。

 

「いきなり無差別攻撃か!」

 

 アンジェリカもヤクモが市街地に隠れていると予測し、マグナガンダムの火力を最大限に使って市街地を無差別に攻撃して来ているようだ。

 これならこっちの位置が分からずともいずれは当たる。

 

「くっそ! だけど攻撃の方向は分かった!」

 

 隠れていても無意味となった為、ビルドアメイジングガンダムはビルの影から飛び出て動き易い空中に逃れる。

 同時にビームの飛んで来る方向からマグナガンダムの方向を特定する。

 

「そっちか!」

 

 ビルドアメイジングガンダムはビームが飛んで来る方向にヴァリアブルビームライフルを向ける。

 しかし、マグナガンダムは市街地から遠く離れた荒野の端から砲撃を行っていた。

 これだけ距離が離れていてはビルドアメイジングガンダムの火力では途中でマグナガンダムの砲撃でビームが届く事は無いだろう。

 

「フィールドの端から……ハクアの最も厄介な状況に」

 

 事前にハクアからはアンジェリカの取ると思われる行動は聞いている。

 その中でもバトルフィールドの端に陣取られると言う状況は最も厄介なパターンだ。

 全方向に砲撃を行えると言っても正面に比べると背後や上下の方が火力は落ちる為、そこが狙い目ではあった。

 しかし、バトルフィールドの端に陣取られると、ヤクモは正面から攻めなくてはいけない。

 

「砂漠でのバトルとは逆になったな」

 

 以前にヤクモも砂漠の中から攻撃して来る相手に対して、バトルフィールドの端に逃げて戦ったが今回は相手が同じやり方を取っている。

 あの時と違う事はビルドアメイジングガンダムは地中に潜る事が出来ないと言う事だ。

 

「けど……覚悟を決めろ。思い切ってやれば何とかなるかも知れない」

 

 ハクアから聞いていたと言う事もあって、ヤクモは相手がフィールドの端を陣取った事には動揺する事は無かった。

 少しでも火力の薄いところから攻めたいと言う気持ちはあったが、この状況で逆に正面から攻める覚悟を決める事が出来た。

 

「チャンスは一度だ!」

 

 ヤクモは機体を一気に加速させる。

 距離がある為、マグナガンダムの攻撃をかわして接近して行く。

 次第に距離が近くなり、回避は困難になって行く。

 そこで追加で装備して来たMTソードの出番となる。

 ヴァリアブルビームライフルを手放して両手にMTソードを持つとビルドアメイジングガンダムはビームを切り捨てながら突っ込んで行く。

 

「正面からビームを切り裂いて来るか! 面白い!」

 

 相手が正面から向かって来る事に対してアンジェリカも正面から迎え撃つ。

 マグナガンダムからの砲撃が更に強まって行く。

 それをビルドアメイジングガンダムはMTソードで切り捨てる。

 全てのビームに対処していては手数が圧倒的に足りない為、直撃するビームを見極める必要がある。

 少しでもミスをしてしまえば直撃を受けて後はやられるのを待つだけだ。

 

「集中しろ……」

 

 ヤクモは神経を限界まで研ぎ澄ましてビームを切り落とす。

 やがて、ビルドアメイジングガンダムはビームの雨を抜ける。

 

「やるな! しかし!」

 

 マグナガンダムの砲撃を突破する事に成功したが、アンジェリカには焦りが見えない。

 

「来るか!」

 

 すぐに接近戦に持ち込めるだけの距離になったが、マグナガンダムは胸部の小型ローエングリンの発射体勢を取っている。

 この距離では発射の阻止は間に合わない。

 そして、かわして距離を取る余裕も残されてはいない。

 ヤクモに残された道は一つだけだ。

 ビルドアメイジングガンダムはここまで来るのに多数のビームを切り裂いて刀身に塗られている粒子変容塗料の効果が薄くなっているMTソードを手放すとアブソーブシールドを掲げて突っ込む。

 マグナガンダムは小型ローエングリンを放ち、それをビルドアメイジングガンダムが正面からアブソーブシールドで受け止める。

 アブソーブシールドでビームを粒子変換して吸収を始めるが、ビームの威力でビルドアメイジングガンダムは殆ど前に進めない。

 

「なんて火力だ!」

「このまま押し切る!」

 

 ビームを吸収しているビルドアメイジングガンダムだが、すぐに粒子貯蔵用のコンデンサーの容量を吸収した粒子で一杯になりそうになる。

 ビルドアメイジングガンダムはバックパックのウイングを展開するとプラフスキーウイングを出す。

 それにより吸収した粒子を使いコンデンサーが満杯になる事を防ぎビームに逆らって前に進む。

 

「くっ!」

 

 だが、それでも吸収できる粒子の限界が確実に近づいて来る

 

「根競べだ!」

 

 何とか攻撃を受け切ろうとするビルドアメイジングガンダムだが、やがて限界を迎えたコンデンサーが壊れ、粒子が機体から漏れ始める。

 それでも尚、ビルドアメイジングガンダムは止まる事は無い。

 ここで止まれば確実にマグナガンダムの小型ローエングリンに飲み込まれて負ける。

 機体が破損しながらも、ヤクモは突破出来る事を信じて前に進み続ける。

 コンデンサーが限界を迎え、粒子が武装へと流れ込み、ビルドアメイジングガンダムの腕部のバックラーが吹き飛ぶ。

 更にはプラフスキーウイングを展開し続けていた負荷で、バックパックのウイングを壊れてしまう。

 プラフスキーウイングが使えなくなった事でビルドアメイジングガンダムの勢いは目に見えて落ちている。

 

「まだだ! まだお前の力はこんな物じゃないはずだ!」

 

 ヤクモはただ信じるしかなかった。

 ビルドアメイジングガンダムの性能の限界はそんな物ではないと。

 しかし、ビームを吸収しきれなくなったアブソーブシールドは次第にひび割れやがて跡形もなく破壊される。

 アブソーブシールドが破壊され、左腕を吹き飛んだビルドアメイジングガンダムはビームに飲まれるが、完全に破壊される前にマグナガンダムの小型ローエングリンの掃射も止まる。

 

「耐えきったか! しかし!」

「何とかなった! 後は!」

 

 ボロボロになりながらもビルドアメイジングガンダムはマグナガンダムに突っ込む。

 マグナガンダムは小型ローエングリンで粒子の大半を使い切ったが、腰に装備されているビームライフルショーティーを使う分だけの粒子は残していた。

 それに頭部のバルカンを合わせて向かって来るビルドアメイジングガンダムを迎撃する。

 ビルドアメイジングガンダムに残された武器は胸部のバルカンだけだ。

 すでにまともに武器が残っていないビルドアメイジングガンダムだが、勢いを緩めることはない。

 

「これが……俺達の最後の!」

 

 被弾しダメージを受けるビルドアメイジングガンダムだが最後の力を振り絞ってバックラーの壊れている右腕を突き出す。

 マグナガンダムのビームが脚部に被弾し、バックパックもこれまでのダメージが祟ったのか煙を上げて推力の粒子が出なくなっていた。

 勢いが完全に殺されて倒れるビルドアメイジングガンダムだが、辛うじてマグナガンダムに右手が到達した。

 誰もがアンジェリカの勝利を疑わなかったが、マグナガンダムはグラりとバランスを崩れて後ろに倒れかける。

 

「機体に制御が!」

「成程……確かにバランスをガン無視してるな」

 

 マグナガンダムは火力を徹底的に特化し、機体のバランスは非常に悪い。

 自身の砲撃や攻撃をアビスのシールドで防いだ時はバランスを崩さないように計算し調整されているが、それ以外の衝撃に対しては少し押してやるだけで簡単にバランスが崩れてしまう。

 アンジェリカは懸命に機体を立て直そうとするが、重武装で重く、一度バランスを崩してしまえばそう簡単に持ち直す事は出来ない。

 そのままマグナガンダムは体勢を立て直せずに仰向けに倒れる。

 ビルドアメイジングガンダムは少し押しただけでマグナガンダムは無傷ではある為、倒れたくらいで戦闘不能になると言う事はない。

 だが、アンジェリカは相手が正面から攻めさせるようにする為に背後を取れないようにバトルフィールドの端に陣取っていた。

 つまり、マグナガンダムの背後はバトルフィールドの外と言う事だ。

 バランスを崩したマグナガンダムが倒れるのは必然的にバトルフィールドの外。

 ガンプラバトルのルールにおいてガンプラがバトルフィールドの外に出た場合、いかなる理由や損傷の度合いに関わらず強制的に敗北となる事は昔から変わっていない。

 バランスを崩して倒れているが、無傷のマグナガンダムとボロボロだが辛うじて戦闘不能と見なされていないビルドアメイジングガンダム。

 それだけみればマグナガンダムの勝利に見えるが、場外にマグナガンダムが出た事でバトルシステムはアンジェリカを敗北とし、ヤクモの勝利を告げた。

 

「やられたな」

 

 圧倒的に有利な状況でただ押されただけで負けたアンジェリカだったが、その表情に一変の悔いも感じられない。

 やられた事はただ押されただけだが、そこまで辿り付く事は至難の技でヤクモはそれをやり遂げた。

 

「私の負けだ」

「こっちもギリギリだったけどな」

 

 バトルにこそ勝ったが、ビルドアメイジングガンダムの損傷は酷い。

 マグナガンダムをバトルフィールドの外に押し出すと言うやり方は最後の手段として言われていた事だ。

 

「それでもお前は勝ったんだ。胸を張れ」

 

 例え最後の手段を使ってのギリギリ勝ったとはいえ、勝ちは勝ちで負けは負けだ。

 ヤクモとアンジェリカは固く握手をして互いの健闘をたたえ合う。

 準決勝第一試合はヤクモの勝利で終え、午後からはカイトの第二試合が行われる事になる。

 

 

 

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