ガンダムビルドファイターズ White&Black ChallengerS 作:ケンヤ
新人戦準決勝第一試合はヤクモがギリギリのところでアンジェリカのマグナガンダムをバトルフィールドに押し出して勝利した。
次の第二試合はカイトが一方的に押す展開となっている。
「相変わらず強いな」
「うん。そうだね。やっぱり僕達一年の中では飛び抜けているよ」
ヤクモはノブナガとカイトのバトルを見ながら改めてカイトの実力を認識させられる。
アンジェリカとのバトルでビルドアメイジングガンダムは大きな損傷をしたが、ハクアによれば修理自体は明日の決勝までには何とかなりそうだと言う事で、ハクアは部屋に戻って修理を行っている。
「あれだけ様々なMSの特性を取り入れながらバランスを失ってはいない。ファイターとしての実力だけではなくビルダーとしても優秀なようだ」
ヤクモの隣でアンジェリカがカイトのザクⅡFCをそう分析する。
ザクⅡFCはジオン系のMSの特徴をいくつも取り入れている。
ガンプラの制作において多くの要素を取り入れようとすると、ガンプラのバランスを損ねる危険性が大きい。
アンジェリカのマグナガンダムは敢えてバランスを無視し、多くの火器による圧倒的な火力を持たせているが、カイトのザクⅡFCは多くのMSの特性を取りいれながらもきちんとバランスも考えて作られている。
純粋な完成度で言えばマグナガンダムよりもザクⅡFCの方が上だろう。
「完成度で言えばヤクモのガンプラの方が上だろうが、あれほどの完成度のガンプラならば最後に勝敗を分けるのはファイターの実力だろうな」
「ああ……」
ビルドアメイジングガンダムの完成度はガンプラ学園のガンプラでは上位に位置する。
完成度で言えばビルドアメイジングガンダムに分があるが、カイトのザクⅡFCの完成度ならば、大きなアドバンテージとなる事は無いだろう。
そうなれば、ファイターの実力が勝敗を分ける。
そして、カイトはビルダーとしての実力だけではなく、ファイターとしての実力も兼ね備えている。
「だけど、せっかくここまで来たんだ。勝ちたいな。ノブナガの仇討ちもあるし」
「当然だ。私に勝ったんだ。優勝してくれなければ困る」
ヤクモ自身、新人戦で優勝する事自体にそこまで興味がある訳ではない。
だが、ガンプラバトルが勝負である以上は勝ちたいと言う欲求はあり、このまま行けば決勝の相手はカイトになるだろう。
カイトはノブナガのガンプラを完膚なきまでに破壊した相手でだ。
「ヤクモ君。決まったようだよ」
「やっぱりカイトが勝ったか」
アンジェリカと話している間に第二試合が終わっていた。
バトルは第一試合のようなどんでん返しも無く、順当にカイトが勝ったようだ。
バトルに勝利したカイトはそれが当たり前のようにガンプラを回収している。
決勝の相手であるヤクモの事を一瞥するも、何かを言う訳ではなく会場から出て行く。
今日の予定は準決勝の二試合だけである為、後は自由時間となり、会場の生徒達は各々で今日の準決勝の感想や自分なりの分析で盛り上がり、決勝でも使われる中央のバトルシステムを除き他のバトルシステムも自由に使えると言う事もあって生徒達がバトルを始める。
ビルドアメイジングガンダムが修理中である為、ヤクモは部屋に引き上げて明日の決勝戦に備える事にした。
新人戦決勝戦当日を迎え、会場は今まで以上の賑わいを見せていた。
そんな雰囲気に否応なくヤクモも緊張していた。
「修理は万全よ」
「サンキューな」
ヤクモは修理したビルドアメイジングガンダムを受け取る。
「この装備は……」
「今回の相手は少し手強いからこれで行くわ」
受け取ったビルドアメイジングガンダムの装備はディスチャージ、ランチャー、ソードの3つのパッケージを同時に装備したフルパッケージだ。
元々、ビルドアメイジングガンダムの各部のハードポイントに装備している武器はそれぞれが干渉しないように計算されて3つの装備が作られている。
その為、3つのパッケージを同時に装備する事も可能だ。
尤も、手持ちの火器であるソードパッケージのビームガンは右のサイドアーマーに接続パーツを増設して装備している。
「使いこなして見せて」
「やってみるさ」
フルパッケージはそれぞれのパッケージの特性を同時に使用できるが、反面最も扱い難い装備でもある。
それをここで使わなければならないとハクアが判断する程の相手なのだろう。
ヤクモは今まで以上に気合を入れると決勝と言う今までにない大舞台の緊張も感じなくなって行く。
「行くぞ。お前を万全な状態に直してくれたハクアだけじゃない。アンジェリカやノブナガの為にもこのバトルだけは勝つぞ。ビルドアメイジングガンダム」
バトルをするのはヤクモだが、ビルドアメイジングガンダムを毎回のバトルごとに万全な状態に直して来たハクア、ここまで来るまでにヤクモと戦い破れて来たファイター達。
そんな彼らに恥じないバトルをしなければならないと思うと今までにない感覚がする。
「ビルドアメイジングガンダムフルパッケージ! ナナセ・ヤクモ。行くぜ!」
決勝戦の舞台となるバトルフィールドはコンペイ島宙域となる。
宇宙フィールドで舞台設定は宇宙世紀0083年の観艦式となり、宙域には大量の戦艦が配置されている。
戦闘中と言う設定ではない為、戦艦の砲撃はないが、多数の戦艦はその大きさや動いている事もあってデブリベルトとは違った戦い難さがある。
「この中から相手のガンプラを見つけるだけでも難しいな」
バトルフィールドのいたるところに戦艦が配置されている為、戦艦よりも小さいガンプラを見つける事は索敵に長けているガンプラでなければ難しい。
それはカイトも同様だとヤクモは気が緩むと近くで閃光が発生し、光に戦艦が飲まれて行く。
「カイトの奴! いきなり核をぶっ放して来たのか!」
バトルフィールドのギミックにこのような現象はない。
ヤクモが何もしていないと言う事はカイトが仕掛けて来たと言う事だ。
カイトが初戦でノブナガを破った際に止めに使用した核バズーカであるとヤクモもすぐに気が付いた。
核の閃光は次第に広がり、ビルドアメイジングガンダムの位置では核攻撃に巻き込まれる危険性がある。
ヤクモはすぐに核の光から離れようとする。
「装備が重すぎる!」
フルパッケージは全ての装備を同時に装備している為、どの距離での戦闘にも対応できるが、同時に全ての装備を持っている分、全体重量も重くなっている。
「けど、核でやられるよりはマシか!」
ビルドアメイジングガンダムはバックパックのウイングユニットを展開するとプラフスキーウイングを出して一気に加速する。
全部載せで重くなっているが、プラフスキーウイングを展開すれば十分な機動力を確保できる。
そのまま、ビルドアメイジングガンダムは戦艦を避けながら核の光から逃れ、核の余波が受けない場所まで逃げる。
やがて、核の光が消えるとそこには核の光に飲まれた戦艦の残骸だけが残されていた。
「何とか逃げ切れたが……」
バトル開始早々の核攻撃を何とか逃れたヤクモだが、とっさにビルドアメイジングガンダムに回避行動を取らせると、ビルドアメイジングガンダムの背後の戦艦に穴が開いた。
それがカイトからの攻撃だと考える間も無く次から次へと艦隊の隙間から弾丸が撃ち込まれる。
「こっちの位置がばれているのか! 何で!」
「ちっ……感の良い奴だ」
カイトが狙撃で優位に立っているものの、内心ではカイトは苛立っていた。
本来ならば、最初の一撃で決めるか最低でも直撃させて体勢を崩すなりしておきたかった。
その為に開始早々ザクⅡFCの最大攻撃力を誇る核バズーカを使った。
ビルドアメイジングガンダムが核に巻き込まれてやられてくれれば文句なしだが、そうでなくとも向こうは何かしらのアクションは起こすと読んでいた。
実際、カイトの読み通りヤクモは核から逃れる為にプラフスキーウイングを使用した。
プラフスキーウイングを使用した事で、粒子の翼の光からカイトはビルドアメイジングガンダムの位置を把握する事が出来た。
そして、核から逃れてプラフスキーウイングを消したところを狙って対艦ライフルで狙撃した。
狙撃のタイミングも核から逃れたと言う気が緩んだ瞬間を狙ったが、ヤクモは直感的に狙撃を回避した。
「弾切れか」
ビルドアメイジングガンダムを狙撃していた対艦ライフルの残弾が尽きるとザクⅡFCは対艦ライフルを手放す。
すると、ザクⅡFCの近くを高出力のビームが横切る。
ザクⅡFCからは少し離れている為、気にする程ではないが、明らかにこちらの位置をある程度は分かっている攻撃だ。
「当然か」
自分の方向が知られているが、カイトは焦る様子はない。
あれだけ狙撃をした以上、仕留めきれなければ自分のいる方向を把握されるのは当然だ。
ビルドアメイジングガンダムの砲撃はそれだけでは終わらない。
何度も高出力のビームが撃ち込まれるも、ザクⅡFCを捕える事は出来ない。
「見つけた!」
「接近していたのか」
度重なる砲撃は狙撃をしているザクⅡFCを狙っただけの物ではなかった。
メガビームランチャーをカイトのザクⅡFCのいると思われる方向に撃ちながらも、ビルドアメイジングガンダム自身が同じ方向に突撃して来ていた。
砲撃でザクⅡFCを捕える事が出来ずとも砲撃により射線上の障害物を排除しながら進む事が出来た。
「まぁ良いだろう」
ザクⅡFCはバックパックのウェポンバインダーからジャイアントバズを取りだす。
ようやく、相手を見つけたビルドアメイジングガンダムはヴァリアブルビームライフルを数発撃って、メガビームランチャーを向けて放つ。
メガビームランチャーから放たれたビームをザクⅡFCは軽々と避けるとビームはザクⅡFCの背後の戦艦をぶち抜いて破壊する。
「大した威力だが」
「狙いが!」
ザクⅡFCは戦艦を目暗ましに使う。
ビルドアメイジングガンダムもメガビームランチャーで戦艦をぶち抜いて攻撃するが、ザクⅡFCに当たる事は無い。
ビルドアメイジングガンダムのビームを掻い潜りザクⅡFCはビルドアメイジングガンダムの懐に入り込む。
メガビームランチャーは長距離砲撃用の装備でここまで接近されてしまうと長い砲身が仇となって狙う事が出来ない。
懐に飛び込んだザクⅡFCはビルドアメイジングガンダムを蹴り飛ばす。
ビルドアメイジングガンダムは受け身を取る事無く戦艦に叩き付けられる。
ビルドアメイジングガンダムが体勢を整えるよりも先にザクⅡFCはジャイアントバズを撃ち込む。
「そう簡単に!」
しかし、ビルドアメイジングガンダムはジャイアントバズの砲弾にメガビームランチャーを投げつけて防ぐとヴァリアブルビームライフルで反撃する。
ザクⅡFCはビームを回避し、ガトリングシールドで弾幕を張りながら後退する。
それをビルドアメイジングガンダムはビームを撃ちながら追撃する。
「粒子残量……少し使い過ぎたか」
ザクⅡFCを追撃しながらも、ヤクモはちらりと粒子残量を確認する。
開始早々の核攻撃から逃れる為にプラフスキーウイングを使い、接近する為にメガビームランチャーを多用した。
どちらもプラフスキー粒子の使用量が多い為、すでにビルドアメイジングガンダムに蓄積されている粒子量は半分を切っている。
これもフルパッケージのリスクで、本来はアブソーブシールドでリスクを軽減するのだが、ザクⅡFCにはビーム兵器を持っていない為、ビームを粒子変換して取り込む事も出来ない。
ヤクモが粒子残量を確認する一瞬を付いてザクⅡFCは攻勢に出る。
戦艦の物陰からザクⅡFCは出て来るが、その手には先ほどまで持っていたジャイアントバズではなく、ゲルググ用のビームライフルを持っている。
「ビームライフル!」
ザクⅡFCがビームを放ち、ヤクモはとっさにアブソーブシールドでビームを吸収する。
ビームの威力はさほど高くは無く、アブソーブシールドで問題なく、無効化して粒子を取り込む事に成功するも予想外の攻撃で、更なる隙が生まれる。
ビームとほぼ同時に肩のギャンのシールドからミサイルが一斉掃射されていた。
ビームを吸収する為に構えていたアブソーブシールドは粒子シールドを展開する間も無く、ミサイルの直撃を受ける。
そこに畳込むようにザクⅡFCは右腕の小型キャノンを撃ち込んでアブソーブシールドを破壊した。
「くっ!」
だが、ヤクモも負けじとヴァリアブルビームライフルで牽制しながら、左手にMTソードを持って切りかかる。
ザクⅡFCはギャンのシールドで受け止めようとするも、シールドは易々と切り裂かれる。
「想定の範囲内だ」
ビルドアメイジングガンダムがシールドを切り裂いている間にザクⅡFCはリアアーマーのパンツァーファウストを持っていた。
ビルドアメイジングガンダムがヴァリアブルビームライフルを構えるが、ザクⅡFCの方がワンテンポ早くパンツァーファウストを放っていた。
パンツァーファウストはヴァリアブルビームライフルを破壊し、ザクⅡFCはサイドアーマーのヒートホークで切りかかって来る。
左手のMTソードで受け止めようとするが、カイトの狙いはビルドアメイジングガンダムの左手だった。
ヒートホークはMTソードで受け止められる事無く、ビルドアメイジングガンダムの左手の指を狙う。
「その指ではまともに武器は持てないだろう」
ヒートホークの一撃はビルドアメイジングガンダムの左手の指を潰した。
それにより左手はまともに武器を持つ事すら出来ない状態だ。
ビルドアメイジングガンダムはリアアーマーのビームガンでザクⅡFCを狙うが、ザクⅡFCはガトリングシールドで弾幕を張りながら距離を取る。
「まだだ! まだ何とかなる!」
ビルドアメイジングガンダムもビームガンを連射しながらザクⅡFCを追いかける。
「単純だな」
ザクⅡFCはビームを回避していたが、一発のビームがザクⅡFCの足を掠める。
「掠めただけでこれか……油断は出来ないか」
掠めたビームは大した損傷ではなかったが、これが地上戦ならばホバー移動に影響を与えていた。
一見、優位にバトルを運んでいるカイトだが、一瞬の油断が命取りとなるギリギリのバトルをしていた。
「もっとだ……もっと……相手の動きを見て先を予測しろ!」
ミスの許されない状況で戦うカイトに対して、ヤクモは状況を打開する為にどんどん集中している。
普通に撃ってもザクⅡFCに当てる事は難しい。
「しつこいな」
ザクⅡFCは空のウェポンバインダーをパージする。
ビルドアメイジングガンダムのビームがパージされたウェポンバインダーに直撃すると爆発を起こす。
「やったか?」
ビームガンの威力と爆発の規模から戦艦を破壊した訳ではないとなれば、ザクⅡFCである可能性は高い。
しかし、ザクⅡFCは回り込んでガトリングシールドを連射する。
「そこ!」
ビルドアメイジングガンダムはザクⅡFCにビームガンを向けるが、別方向から弧を描くようにすでにザクⅡFCが投擲していたヒートホークがビームガンを破壊する。
ビームガンが破壊され、ガトリングシールドの弾丸の雨がビルドアメイジングガンダムを襲うも、すぐにガトリングシールドも弾切れを起こす。
ザクⅡFCはすぐさま、ガトリングシールドの砲身をパージすると、シールドに付いているヒートソードを抜いて切りかかる。
ビルドアメイジングガンダムは右腕のバックラーからビームサーベルを出して受け止める。
鍔迫り合いになるがビルドアメイジングガンダムがザクⅡFCを弾き飛ばす。
「まだこれ程の力を残しているか」
「逃がすか!」
ザクⅡFCは胸部のバルカンで牽制しながら距離を取ろうとするが、ビルドアメイジングガンダムは更に追撃をかける。
ザクⅡFCは残っているウェポンバインダーをパージしてビルドアメイジングガンダムの方に差し向けると、3連装ガトリング砲で自ら破壊する。
それにより起きた爆風を目暗ましに使って逆に接近するとヒートソードで猛攻を仕掛ける。
ビルドアメイジングガンダムはビームサーベルで防戦一方となって行く。
「くっ! 一気に決めに来たのか!」
「ここで終わらせる!」
ザクⅡFCの猛攻は今までの攻撃とは明らかに違っていた。
今までは常に距離を保とうとして、隙を見てビルドアメイジングガンダムを削りに来ている。
だが、今は後の事を考えずに勝負を決める勢いと気迫だ。
終始優位にバトルを運んでいるカイトだが、すでにザクⅡFCの武装の大半を使っている。
それにより大半の武装を潰し圧倒こそしているがビルドアメイジングガンダム自身に対する損傷は殆どない。
このまま行けばザクⅡFCの武装も使い切るとビルドアメイジングガンダムとザクⅡFCの本体の基本性能で不利になりかねない。
そうなる前にビルドアメイジングガンダムに大ダメージを与えておきたかった。
「左手が使えれば……」
ビルドアメイジングガンダムの左腰にはディスチャージパッケージで追加されているビームサーベルが残っている。
それを使って右腕のビームサーベルと2つを使えればヒートサーベルの斬撃を防ぎながら攻勢に出る事も出来たが、今のビルドアメイジングガンダムの左手の指はヒートホークで潰されており、武器を持つ事は出来ない。
「ここまで来たんだ……負けて堪るかよ……ノブナガの為にも、アンジェリカの為にも……ハクアの為にも!」
新人戦の決勝までヤクモが一人で戦い勝ち進んで来たのなら、諦める事は無くともここまで勝ちたいとは願わなかっただろう。
だが、ヤクモは一人でここまで来た訳ではない。
ここまで勝ち進む為に破ったライバルたちやビルドアメイジングガンダムを万全な状態に修理や整備を行い、策を練ってくれたハクアの為にもヤクモは負ける訳には行かなかった。
そんなヤクモの想いが通じたのか、ビルドアメイジングガンダムが赤く光り輝く。
「何だ! 奴はまだ!」
カイトのとっさに機体を引かせて警戒を強める。
一方のヤクモも何が起きたのか良く分かっていない。
「赤く発光……トランザムとでも言うのか」
カイトは何とか落ち着かせて状況を把握しようとする。
機体が赤く発光する現象として最初に出て来るのがガンダムOOに出て来るトランザムシステムだろう。
それは間違っている訳ではない。
この現象はビルドアメイジングガンダムの制作者であるイオリ・セイが特定の条件を満たした時にのみ発動するように仕掛けてられていた物だ。
その為、今まで使って来たヤクモや整備をしていたハクアですら知らず、観客席からバトルを見ているハクアも驚いている。
発動条件とはビルドアメイジングガンダムと使用しているファイターが胸部に内蔵されているプラフスキー粒子の結晶体を通じて完全に一体化する事。
この現象自体は数年前にマシロが発現し、他のファイターでも多々見かけられ「アシムレイト」と呼称されている。
ファイターがガンプラと感覚的に一体化する事で操作時のタイムラグを限りなくゼロになる。
その状態となった時に機体内に蓄積されていた粒子を全面開放する事で一時的に機体性能を極限まで高める「バーストモード」が解放される。
「だとしても!」
ザクⅡFCはバーストモードを起動したビルドアメイジングガンダムに3連装ガトリング砲を向ける。
それにヤクモが反応し、即座に反撃に出ようとする。
バーストモードで機体性能が強化されているビルドアメイジングガンダムは一瞬で距離を詰めるとビームサーベルを振るう。
ザクⅡFCはギリギリのところで回避しようとするが、片足が切断されてしまう。
「流石はトランザムと言う所か!」
「何だ……今の感覚。俺が考えた瞬間にビルドアメイジングが反応して……」
ヤクモは今までとは違う感覚に戸惑っていた。
ザクⅡFCが3連装ガトリング砲を向けた時にそれに対しての行動を考えた瞬間にその通りにビルドアメイジングガンダムが動いてくれた。
それはまるで自分とビルドアメイジングガンダムが完全に一体化しているかのような感覚だ。
「考えている暇はない! これなら何とかなる!」
「ちぃ!」
何が起こっているかはヤクモも完全に理解はしていない。
だが、戦局はこちらに傾いた今こそが逆転の好機である事には分かりはない。
ビルドアメイジングガンダムは距離を取って体勢を整えようとするザクⅡFCをすぐさま追いかける。
ザクⅡFCは胸部のバルカンで牽制するが、ビルドアメイジングガンダムは構わず突っ込んで来る。
「っ! 何だ……今痛みが」
バルカンの直的で損傷はないが、バルカンが直撃した場所にヤクモ自身が痛みを感じたような気がした。
しかし、今はそんな事を気にしている余裕はない。
距離を詰めたビルドアメイジングガンダムはビームサーベルを振り落す。
ザクⅡFCは避けるが戦艦がビームサーベルの一閃で真っ二つとなった。
そんな事をカイトも気にしておる余裕はない。
ビルドアメイジングガンダムはビームサーベルを突き出す。
ザクⅡFCはギリギリまで引きつけて攻撃をかわす。
だが、ビルドアメイジングガンダムは左手でザクⅡFCの胴体を殴る。
ザクⅡFCの胴体はひび割れて装甲が破壊されるが、元から指が潰されているビルドアメイジングガンダムの左腕もまた破壊される。
「ぐっ! 何だ! 左手が!」
ビルドアメイジングガンダムの左手が破壊されると同時にヤクモも左手がまるで潰されたかのような痛みが走る。
先ほどのバルカンの時とは違い気のせいでは済まされないレベルの痛みだった。
「何だ?」
ビルドアメイジングガンダムの動きが止まった事をカイトは不審に思いながらも、行動の理由を考えている余裕はない。
ショルダータックルでビルドアメイジングガンダムを弾き飛ばすと、ビルドアメイジングガンダムがショルダータックルを受けた腹部が何かで殴られたような痛みをヤクモを襲う。
「さっきからビルドアメイジングが攻撃を受けたところが……」
ビルドアメイジングガンダムの受けたダメージがそのまま自分も受けているのだと、ヤクモも薄々は気が付いて来ている。
そんな話しは聞いた事は無い為、それが事実かどうかは分からない。
ザクⅡFCのショルダータックルを受けて弾き飛ばされてビルドアメイジングガンダムのバーストモードは終了して今までの状態となる。
序盤から大量に粒子を使い過ぎたせいでバーストモードの発動時間も短くなっていた。
それを見たカイトもここが好機と見たのかヒートソードを構えてビルドアメイジングガンダムに突っ込んで来る。
すでに粒子を使い切ったビルドアメイジングガンダムはすぐにはビームサーベルが使えない。
「来る!」
突っ込んで来るザクⅡFCに対してヤクモはすぐには対応する事が出来なかった。
ヤクモは先ほどまでのアシムレイトによるビルドアメイジングガンダムのダメージが自分にもフィードバックされる事が頭をよぎってしまったからだ。
ガンプラバトルでガンプラが壊れるだけでなく、自分にも同じだけのダメージが帰って来るとなれば、普段から格闘技や喧嘩の類とは無縁の人生を歩んで来たヤクモにとって恐怖を植え付けるには十分だ。
その隙が致命的となり、回避が間に合わずザクⅡFCのヒートソードがビルドアメイジングガンダムを貫く光景がヤクモの頭をよぎる。
ヤクモはヒートソードが突き刺さる瞬間に思わず目を瞑った。
だが、ヒートソードの突き刺さるダメージは一向に無く、ヤクモは恐る恐る目を開ける。
そこにはバトルシステムの上でビルドアメイジングガンダムに今まさにヒートソードを突き立てようとするザクⅡFCの姿がある。
同時にバトルシステムがタイムオーバーと表示している。
新人戦は公式戦と同じルールで行われている為、バトルの時間は15分と決められている。
ヒートソードがビルドアメイジングガンダムを貫く前にその15分が来てバトルは時間切れとなったのだろう。
バトルフィールドを挟んでカイトも千載一遇のチャンスで仕留めきれなかったのか悔しそうにしている。
公式戦ならばここで互いの残っているガンプラの数で勝敗が付けられるのだが、これはチーム戦ではなく個人戦である為、残りのガンプラの数で勝敗を付ける事は出来ない。
そうなれば3分間のインターバルを置いての延長戦が行われるが新人戦の決勝においては延長戦は行われない事になっている。
こうして決勝戦は引き分けで新人戦決勝戦は幕を下ろした。