ガンダムビルドファイターズ White&Black ChallengerS 作:ケンヤ
新人戦決勝戦は時間切れで引き分けと言う結果で終わった。
これが公式戦ならば延長戦で決着をつけるところだが、新人戦の目的は現在の実力を示す為であり、無理に勝敗を付ける必要がある訳ではない。
新人戦が終わり、合宿は最終日となる。
最終日はイベントは無く、完全に自由時間になっている。
各自が今回の新人戦を踏まえ、全国大会出場を賭けた学内予選に向けて動き始めている。
船内のバトルシステムは解放され、あちこちでバトルが行われ今までのピリピリしたムードが熱気に変わっている。
新人戦で優勝候補であったカイトと引き分けた事でヤクモも1年の中での注目株になり、バトルを挑まれている。
ビルドアメイジングガンダムは決勝戦のダメージとハクアが必要以上にバトルで使いこちらの情報を与えたくはないと言う事からハクアに預けてヤクモは学園側が貸し出しているガンプラでバトルをしている。
「学園が貸しているガンプラの出来は悪くはないが、お世辞にも高いとは言えない。それであそこまで戦えると言う事はヤクモはガンプラの性能を引き出す事が上手いと見える」
「ガンプラの性能に目が行きがちになるけど」
ヤクモのバトルを見ていたアンジェリカとノブナガは自分達なりにヤクモのバトルを分析していた。
アンジェリカは新人戦で自分を下し、決勝戦でカイトと互角のバトルをしたヤクモの事を気にいったのか、新人戦後はヤクモとノブナガと行動を共にしている。
「特に敵の攻撃に対する反応速度は私と戦った時よりも数段早くなっているな」
ヤクモのバトルを数回見ていた中で最も目を引いたのがそれだった。
相手のガンプラの攻撃が自分のガンプラへの直撃コースだった際のヤクモの反応速度はアンジェリカとバトルした時よりも格段に増している。
「そうだけど……違う気がする」
一方のノブナガはその反応速度の上昇に違和感を持っているようだった。
「アレは恐れだな」
違和感を持ちながらも、その訳までは明確に答える事が出来なかったノブナガにいつの間にかそこにいたマキナが答えを提示する。
ノブナガもアンジェリカもマキナとは面識はないが、ガンプラ学園のエースチームの一人であるマキナの事は知っている。
「痛みを恐れるが故に過剰に攻撃に反応して死にもの狂いで当たらないようにしているだけだよ。アレはね」
素顔は見えない物の何食わぬ顔で会話に参加するマキナに驚きながらも、二人はガンプラではなくヤクモの方に注目する。
特に危なくない時は普段通りのヤクモだが、攻撃が当たりそうになった時のヤクモはどこか怯えているようにも見える。
「ガンプラが傷つく事を嫌がるファイターはいると聞きますが、ヤクモの場合は腕の良いビルダーが付いている上に今使っているガンプラは自分の物ではないと言うのに……いや、それ以前に今まではあそこまで過剰に反応する事は無かった。寧ろ、私とのバトルの際には損傷覚悟で突っ込んで来ました」
アンジェリカの言葉にノブナガも頷く。
それをマキナは一瞥すると視線をヤクモの方に向けて首を振る。
今でこそはダメージレベル制度を取り入れた事でガンプラへのダメージが全て反映される訳ではないが、一昔前はガンプラへのダメージはそのままガンプラに反映されていた。
自分が手間暇をかけて作ったガンプラが誰よりも強いと言う事を証明したいファイターがいる反面でそんなガンプラがバトルで破壊される事を嫌うビルダーもいる。
「そんな程度の問題ではないんだよ。彼は王のガンプラを手に入れ、ガンプラに選ばれ新たな次元へと足を踏み出した。彼の恐れはそれゆえの物で君たち程度のファイターでは理解は出来る物ではない」
マキナが言うにはヤクモが恐れている物は一般的な物とは違うようだが、具体的なところはマキナの言い方では良く分からない。
そんな二人の事はお構いなしでマキナは話しを続ける。
「だが、しかし……これは良くない傾向だな……痛みなど私とは無縁ではあるのだが、ここまでバトルに影響が出るとなれば私も動かねばならんか……」
マキナは次第に二人に対してではなく、一人でブツブツと言い始める。
そのまま、マキナはどこかに歩いて行き、アンジェリカとノブナガはマキナを止める事無く見送る。
そんな事はいざ知らずヤクモはただバトルを続けていた。
合宿最終日も終わり後は港に戻るだけとなり、最後の夜となった。
すでに消灯時間となり、ヤクモは自分の部屋に戻りベッドに寝転んでいる。
今日一日のバトルの中で決勝戦のような事は一度も起こる事は無かった。
「何だったんだろうな」
ヤクモはぼんやりと決勝戦の事を思い出す。
決勝戦の後、ヤクモはハクアにその事を話すとハクアはバトル時の緊張状態から来る錯覚だと切って捨てた。
それでも余りにリアルな痛みだった為、医務室で見て貰ったが、ヤクモの体にはバトルでの疲れ以外には何の異常もなかった。
しかし、あの時の感覚は錯覚や勘違いの類とはとても思えなかった。
今日のバトルでも攻撃が当たりそうになると、その時の事を思い出して自分のバトルは余り出来なかった。
「やっぱお前とじゃないのならないのか?」
ヤクモはハクアが修理したビルドアメイジングガンダムを手に取り語りかける。
当然の事ながらビルドアメイジングガンダムは何も返事をする事は無い。
「ハクアは錯覚って言っていたけど……」
ヤクモは寝転びならら、自分の左手を開いたり閉じたりする。
バトル時に激痛が走ったが、今は何ともない。
本当にあの時に何かあったのならば、この短期間で完治するとも思えないので、ハクアが言っていた通りヤクモの錯覚かも知れないと思いかけるも、その時の事は今でも鮮明に思い出せる。
まるでガンプラと一体化したような感覚だ。
「でも……アレを完全に自分の物に出来れば……」
更に強くなれると言いかけるも、ヤクモはそれ以上は言わなかった。
確かにあの時の状態はビルドアメイジングガンダムのバーストモードの性能だけではなく、自分が思った通りにダイレクトにガンプラを操る事が出来た。
それを使いこなす事が出来ればヤクモは更に強くなれるだろう。
だが、同時にガンプラの受けたダメージをヤクモも感じた。
ガンプラバトルはガンプラを戦わせる競技ではあるが、実態の戦いとは違い人間が傷ついたりはしない。
ヤクモが体験した現象はガンプラだけではなく、ファイターをも傷つける。
それは果たしてガンプラバトルなのだろうかと疑問を持ってしまう。
ひょっとしたら自分は足を踏み入れてはいけないところに足を踏み入れてしまったのではないかと思わらず負えない。
「何だったんだよ……本当に」
幾ら考えても自分に何が起きたかすら把握できてはいないヤクモに答えを出せる訳もない。
答えを出せずに悶々としていると誰からドアをノックしてヤクモは考え事をしていた為、生返事で返す。
少し経っても誰も部屋に入って来るどころか、再度ノックをする事も無く、ヤクモはドアを開けるが、そこには誰もいない。
「悪戯か?」
用事があったのであれば、返事をした時点で入って来るか、ヤクモが生返事で返事をしたことに気が付かなかった場合でももう一回くらいはノックをしてヤクモが部屋にいるか確かめそうだが、ただの悪戯の可能性もある。
ヤクモは悪戯だと結論つけようとするが、足元に何かが落ちている事に気が付いた。
「……ガンプラの部品だよな。何でこんなところに?」
落ちていたのはガンプラの部品と思われるパーツだ。
関節か何かの一部だと思うが、何のガンプラかまではヤクモも判断は出来ない。
だが、ヤクモが部屋に帰って来た時点では落ちていた無かったようにも思う。
尤もパーツの大きさは小さい為、ヤクモが気が付かなかった可能性も十分にあり得る。
「あっちにも……」
更には部屋を出て通路にもパーツが落ちていると言う事にヤクモは気が付いた。
一つだけなら偶々誰かがヤクモの部屋の前を通った時に落としたとも考えられたが、まるで道のようにパーツが落ちているのは余りにも不自然としか言いようがない。
ヤクモは怪しみながらも、パーツを広って行く。
やがて、ヤクモは甲板に辿り付く。
「やはりファイターとしての本能は忘れていないようだな」
そこにはバトルシステムの前にマキナが仁王立ちしてヤクモを待ち構えていた。
マキナの発言からパーツはマキナがヤクモを誘導する為に置いて来たらしい。
ヤクモを待ち構えて思惑通りにヤクモがここに来た事で素顔は見えないが、マキナは大層してやったりと言う表情をしているのだろう。
「先輩の仕業ですか……何でこんな手の込んだ事を?」
「ファイター同士が目が合ったのであればやる事は一つだろう」
ヤクモの言葉など全く聞く耳を持たず、マキナはバトルシステムの反対側に回り込む。
素顔を見せていないマキナと目が合った気はしないが、マキナはヤクモとガンプラバトルをする為にこんな手の込んだ事をしたらしい。
「……やって見るか」
ビルドアメイジングガンダムを持ったままここまで来ている為、すぐにバトルを始める事は出来る。
決勝戦での出来事を引きずったままではあるが、マキナとのバトルで何かを得られるかも知れないとヤクモはマキナとのバトルを受ける事にした。
「行こう。ビルドアメイジングガンダム」
ヤクモは再びマキナに挑む。
バトルフィールドは宇宙で特に傷害物の無いフィールドだ。
ビルドアメイジングガンダムは修理してハクアから渡された時はどの装備も装備していない為、武装は通常時の固定装備のみとなっている。
バトルは開始され、すぐにヤクモはマキナのガンプラを見つける事が出来た。
「何だよ……アレはMAか!」
以前にもマキナとはバトルした事はある。
その時に使用していたシナンジュアメイジングだが、今回のバトルではベース機のシナンジュの強化ユニットであるハル・ユニットを装備させたネオシナンジュアメイジングを使用している。
ヤクモが見る限りではハル・ユニット自体はオリジナルのネオジオングと変わりないように見える。
「こっちはまともな装備もないってのに……」
「相手が丸腰同然だろうとも情け容赦なく叩き潰すと言うのが私の師の教えでね」
ネオシナンジュアメイジングは腹部の大型ビーム砲で先制攻撃行う。
「流石に火力は桁違いだ。だけど!」
ビルドアメイジングガンダムは回避すると右腕のバックラーからビームサーベルを出して接近を試みる。
固定装備しかないビルドアメイジングガンダムには接近戦で戦うしか道はない。
同時にこの手の大型MAに対しては距離を取って撃ち合うよりも接近戦に持ち込んだ方が有利である。
「そうはさせんよ」
ネオシナンジュアメイジングは両腕の有線式大型ファンネルビットを展開する。
ビルドアメイジングガンダムを囲むようにファンネルビットは動き、ビルドアメイジングガンダムを四方から攻撃する。
ビルドアメイジングガンダムは胸部のバルカンで牽制するが、ファンネルビットを破壊するには至らない。
「ファンネルと言ってもここまで大きければ一撃で致命傷になる!」
ファンネルビットの攻撃を掻い潜りビルドアメイジングガンダムはビームサーベルで切り落とす。
だが、同時に本体のシナンジュアメイジングはアメイジングメガライフルでビルドアメイジングガンダムを狙撃する。
ビルドアメイジングガンダムは狙撃をギリギリのところで回避する。
「良くぞかわした!」
本体からの不意を付いた狙撃をかわす事に成功するが、ファンネルビットの猛攻に防戦一方で必死に回避を続ける。
ファンネルビットの攻撃は一撃でビルドアメイジングガンダムに大ダメージを与える為、ヤクモも回避に集中するしかない。
「守ってばかりでは勝てんぞ!」
ビルドアメイジングガンダムは一気に加速して強引にファンネルビットの包囲網を突破する。
「ファンネルでまともに近づけない……どうする?」
ファンネルによるオールレンジ攻撃でヤクモは防戦一方でネオシナンジュアメイジングに近づく事すら出来ない。
ビルドアメイジングガンダムは何とかファンネルビットの包囲を突破するも、ネオシナンジュアメイジングはシュトゥルムブースターを切り話し、膨大な推力に物を言わせてビルドアメイジングガンダムの前に回り込んでいた。
回り込んだネオシナンジュアメイジングは大型アームユニットをビルドアメイジングガンダムに向けていた。
切り離してファンネルビットとして使用していた指もいつの間にか元通りになっている。
これは展開していたファンネルビットを戻すのではなく、アーム内に収納している予備を使う事で戻す時間を短縮している。
「回り込まれた!」
「何処に逃げると言うのだね」
ネオシナンジュアメイジングはアームユニットのビーム砲で一斉掃射する。
「バトルが始まってしまえば何処にも逃げる事は出来はしない。勝つまではね」
ビルドアメイジングガンダムはとにかくビームをかわし続ける。
「何を恐れる? 君は選ばれたのだ。王のガンプラに」
ビームを回避し続けるビルドアメイジングガンダムだったが、次第にビームが機体を掠め始める。
バトルに影響するほどではないが、ヤクモの頭の中に決勝戦の事を思い出させるには十分だ。
「ならば、この程度で終わる事は許されない!」
「こんのぉぉぉぉ!」
ヤクモは頭の中の恐怖心を打ち消すかのようにがむしゃらに突っ込む。
突っ込んで来るビルドアメイジングガンダムに対して、ネオシナンジュアメイジングはビームを撃つのを止めて正面から迎え撃つ。
ビルドアメイジングガンダムはビームサーベルを振り上げる。
ネオシナンジュアメイジング目掛けてビームサーベルを振り下そうとするが、ネオシナンジュアメイジングはビルドアメイジングガンダムを大型アームユニットで捕まえる。
「終わると言うのであれば未練すら残さぬように私がここで捻り潰す!」
ビルドアメイジングガンダムを捕えているアームユニットが力を強める。
動きを完全に封じられているビルドアメイジングガンダムには抵抗する事すら出来ない。
動きを封じられ後はネオシナンジュアメイジングに潰されるのを待つだけだ。
「終わるのか……俺はここで」
恐らくマキナは本気でビルドアメイジングガンダムを完全に破壊するのだろう。
ヤクモはガンプラバトルであそこまでの痛みを感じてまで戦わなければいけないくらいならここで終わるのもまたと思いかける。
しかし、新人戦でカイトと戦いガンプラを修理不能なレベルで高いされたノブナガの事が頭をよぎる。
ここでビルドアメイジングガンダムが完全に破壊されたのならば、ビルドアメイジングガンダムを自分に預けたハクアにも同じ思いをさせてしまう。
ハクアなら気にした様子もなく、その結果を踏まえて新しいガンプラを制作するかもしれないが、そのガンプラを自分に預ける事は無いだろう。
ガンプラ学園には多くの実力者が在籍している。
その中から新しいガンプラのファイターを選び全国大会やその先の世界大会を目指すのだろう。
「ハクアがそれはそれでいいのかも知れない。だけど……俺は嫌だ!」
ハクアが新しいガンプラを制作し、新しいファイターと共に高みを目指す光景を思い浮かべたヤクモが最初に思った事はそれだった。
「ならば示し続けて見せるんだな。それが王のガンプラに選ばれたファイターの宿命なのだから」
「行くぞ! ビルドアメイジングガンダム! 俺達はまだやれる! まだ何とかなる!」
ヤクモはビルドアメイジングガンダムのバーストモードを起動させる。
バーストモードで機体性能が上がったビルドアメイジングガンダムは力任せにネオシナンジュアメイジングの拘束を振りほどく。
「うぉぉぉぉぉぉ!」
バックラーからビームサーベルを最大出力で展開し、ビルドアメイジングガンダムはネオシナンジュアメイジングへと突撃する。
ネオシナンジュアメイジングは向かって来るビルドアメイジングガンダムに対して腹部の大型ハイメガ粒子砲で迎え撃つ。
ビルドアメイジングガンダムは正面から大型ハイメガ粒子砲のビームをビームサーベルを突き出しながら前に進み続ける。
「ぶち抜けぇぇぇぇぇ!」
大型ハイメガ粒子砲では止める事が出来ずにネオシナンジュアメイジングは、コアユニットであるシナンジュアメイジングにビルドアメイジングガンダムの突撃をまともに受け、その巨体に大きな穴があけられた。
そして、ネオシナンジュアメイジングはどころどころから爆発を起こしてやがて大爆発を起こす。
「ハァハア……やったのか……」
「大した物だ。ここまでやるとはな……だが、勝つのは私だけどね」
ネオシナンジュアメイジングを大爆発を起こし、ヤクモは勝利に気が緩んだ次の瞬間、ビルドアメイジングガンダムはビームに撃ち抜かれた。
突然の事態にヤクモは思考が停止する。
「何が……」
ビームの飛んで来た先を無意識の内に追うと、そこには倒した筈のシナンジュアメイジングがアメイジングメガライフルを構えていた。
「残念ながら君が倒したのはネオシナンジュアメイジングの一部に過ぎないのだよ。本体はこの通り無事さ」
ヤクモが今まで戦っていたのはネオシナンジュアメイジングのコアユニットのシナンジュアメイジングは見た目だけ同じように作られたダミーでネオジオングのハルユニットの一部に過ぎなかった。
本体のネオシナンジュアメイジングはバトル中に切り離したシュトゥルムブースターの中に隠れていた。
ヤクモはネオシナンジュアメイジングがシュトルムブースターを切り離した時点で注意を向けておらず、ネオジオングのコアユニットが見えているシナンジュだと言う先入観から見えているシナンジュアメイジングが当然コアユニットである思い込んでいた。
そして、本体だと思っていたネオシナンジュアメイジングを撃破した事で完全に気が緩んで致命的な隙を作る事となった。
尤も、ダミーのシナンジュアメイジングは見た目だけそっくりに作られているだけで、見る人が見ればマキナが使っていたシナンジュアメイジングとの完成度の近いに気づけたが、ヤクモにそれを見抜く程のビルダーとしての技術はない。
「バトルにおいて最も隙が生まれるのは勝利した瞬間。何、気にすることはないさ。この手は世界レベルのファイターですらも引っかかるやり方だ」
「……やられたな」
勝利から一転、無慈悲にバトルシステムはマキナの勝利を告げた。
「なんかここまで盛大に策に引っかかって負けるとかえって清々しましね」
「だが、何かを掴んだと見える」
バトルはマキナの完全な勝利だ。
だが、マキナにはヤクモは完敗した直後のファイターには見えない。
「俺、強くなって勝ち続ける事を考えて、決勝の事とか色々と考えてモヤモヤしてたんですけど、先輩とのバトルで思ったんですよ。俺はまだコイツとハクアと一緒にガンプラバトルがしたいって。滅茶苦茶不純な理由ですけど、変ですかね?」
ヤクモの問いにマキナは黙って首を振る。
「変ではないさ。ガンプラバトルをする理由など結局のところ己のエゴに過ぎない。世の中には負けるのが嫌で勝つのが好きだからと言う子供じみた理由でいかなる手段を使ってでも誰が相手でも勝ちに行く人もいるくらいだ」
「うぁ……そこまで行くと逆に凄いですね」
「羨まし限りだよ」
表情は見えないが、ヤクモにはマキナがどこか寂しそうにも見えた。
「さて、私の役目も終わりだ。君も部屋に戻って休むが良い。合宿が空けてからが本番なのだからな」
「はい……ってなんで俺を!」
マキナはそれだけ言うとさっさと船内に戻って行く。
ヤクモはマキナがなぜ、自分を呼び出してバトルをさせたかなどを聞きたかったが、マキナは止まる事は無かった。
「……まぁ良いか」
ヤクモは聞き出す事を諦めてビルドアメイジングガンダムを回収する。
見た限りではビームで撃ち抜かれたにしては損傷は少ない。
「ダメージレベルを下げてバトルしてたのか……」
マキナはバトルの中でビルドアメイジングガンダムを完全に破壊して終わらせようとしていた。
だが、ダメージレベルを下げた状態で幾らバトルで破壊しようとも、実際のガンプラは殆ど破壊される事は無い。
マキナがダメージレベルの設定に気づいていなかったとは考え難い。
つまりは始めからビルドアメイジングガンダムを完全に破壊する気などなかったと言う事だ。
「先輩……ありがとうございます!」
マキナの真意は不明だが、決勝戦でのバトル以降、ダメージを恐れて思うように戦えないヤクモを見かねての行動なのだろうとヤクモは自分の中で結論つけて、マキナが去って行った方に頭を下げる。
ヤクモの中ではっきりと勝ちたい理由が生まれ、バトルに対する恐怖心はいつの間にか無くなっていた。
こうして合宿は終わり、ヤクモは全国大会に向けて新たな一歩を踏み出す事になった。