ガンダムビルドファイターズ White&Black ChallengerS   作:ケンヤ

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Challenge01 「Boy Meets Girl」

 全国ガンプラバトル選手権でソレスタルスフィアが優勝して数か月。

 季節は冬となり、年が明けた。

 大会後、どこの学校も来年に向けて動き出している。

 

「やっぱ買うなら主人公機が良いよな……」

 

 東京にあるガンプラ専門のアミューズメントパーク「Gミューズ」のガンプラコーナーで少年、ナナセ・ヤクモは店頭に並んでいるガンプラを見ていた。

 蓮舫学園中等部に通うヤクモは来年から高等部に通う予定だ。

 そして、高等部に上がった時にはガンプラ部に入るつもりだった。

 しかし、ヤクモは自分のガンプラを持ってはいなかった。

 ガンプラバトル自体はダメージレベルの設定によって気軽に友人から借りてやった事はあるが、やはり自分のガンプラは欲しかった。

 ガンプラ自体は高くはないが、ヤクモの家は母子家庭でそこまで裕福とは言えない。

 それでも、母に欲しいと言えばガンプラを一つくらい買ってはくれるだろうが、流石に女手一つでここまで育てて貰い、これからも高校や大学に進学すれば更にお金が必要になって来る。

 勉強に必要な物ならともかく、ガンプラを買って欲しいとはとても言えない。

 だが、高等部に進学してガンプラ部に入れば部費から自分の使う分のガンプラを部から支給される。

 その上でバイトでもすれば自分用のガンプラを買う事も十分に出来た。

 今日はその為の下見も兼ねている。

 

「ストライクにエクシア……この辺りが安いしカッコいいし……俺専用にカスタムするならエクシアよりもストライクの方がやり易いか……」

 

 今日は買わないが、いずれ自分が使うであろう専用のガンプラをヤクモは思い浮かべる。

 

「つっても……バトルはやった事あるけど、作った事は無いんだよな……工具も何とかしないと……取りあえずは爪切りで何とかしよう」

 

 バトルは友達のガンプラを借りれば良かったが、ヤクモは自分でガンプラを制作した経験はない。

 当然、制作するに辺りニッパー等の最低限の道具も持ってはいない。

 ガンプラコーナーの前に道具売り場も見て来たが、ニッパーだけでも安いガンプラと同じくらいの値段だった。

 

「もう一回行って見ろ!」

「何だ? 喧嘩か?」

 

 ガンプラを見ているとバトルコーナーの方で誰かが揉めていた。

 ヤクモは何となく怒号のする方へと歩いて行く。

 

「だから大したこともないって言いました」

 

 喧嘩は高校生と思われる男が3人と自分と同じくらいの少女で行われているようだ。

 だが、喧嘩と言うよりも男たちの方が一方的に怒鳴っているようで、少女の方は心底鬱陶しそうにしている。

 

「あの子……」

 

 ヤクモは喧嘩の事よりも少女の事が気になっていた。

 年は自分と同じくらいで、腰まで伸びた黒髪に可愛いと言うよりも美人だ。

 

「その程度で全国を目指していると言うのであれば目を覚ました方が良いわ。無駄だから」

「んだと!」

 

 少女の言葉は男たちの怒りに油を注ぐだけだ。

 

「やばいだろ。アレ!」

 

 喧嘩の理由は分からないが、男たちは今にも少女に掴みかかって殴りだしそうな勢いだ。

 周囲は喧嘩を遠巻きに見ているだけで、誰も少女を助けようとはしない。

 店員も無線で恐らくは警備員を呼んでいるのだろうが、今から呼んで間に合うかは分からない。

 ヤクモはこの状況で見て見ぬふりが出来ずに少女と男たちの間に入る。

 

「止めて下さいよ。相手は女の子なんですよ! それなのに3人かかりで……理由は分かりませんが男らしくないですよ!」

「あ? 何だお前」

「部外者はすっこんでろ。その女がこのガンプラを使ってみて欲しいって行って来た癖に、終わった後に大したことはないとか抜かしやがってんだ」

 

 どうやら、男たちが怒っているのはそう言う理由らしい。

 少女の方から男たちに自分のガンプラを使って見て欲しいと頼んで来て、実際にバトルをやった結果、少女からズタボロに酷評されたと言う事だ。

 

「それほんと?」

「ええ。彼ら来年は全国大会に出てガンプラ学園を楽に倒すとか言っていたのに、期待外れも良いところよ」

 

 自分達の年代でガンプラ学園は不動のトップである為、そこを楽に倒すと言うのは大きく出ている。

 男たちがでかい口を叩いていた事はともかく、少女の方も言い方がストレート過ぎたのだろう。

 とっさに少女の方を味方したが、一概に男たちの方が悪いと言う訳でもなさそうだ。

 

「あんな扱い辛いガンプラを使わしておきながら!」

「暴力はいけませんって! そうだ。ファイターならガンプラバトルで決めましょう。それで勝っても負けても恨みっこなしで」

 

 ヤクモは暴力沙汰を避ける為にとっさにそう言う。

 ここにはバトルシステムがある。

 相手もガンプラバトルをやっているなら、取りあえずはバトルで蹴りを付ける。

 それで相手が納得するかは分からないが、このまま殴り合いの暴力沙汰になるよりかはマシだ。

 

「面白い! 俺らを相手にやろうってか」

「君もそれで良いね?」

「構わないわ。頑張って」

「はい?」

 

 相手もバトルには合意した為、一先ずは殴り合いは避けられたが、少女の方から聞き捨てならない言葉が聞こえた。

 

「私はバトルはしないわ。バトルは貴方が言い出した事だから、当然戦ってくれるわよね」

 

 そこでヤクモは自分の思い違いに気が付いた。

 少女はファイターではなくビルダーだと言う事だ。

 考えても見れば、ファイターなら自分とバトルして欲しいと言い出す事はあっても、自分のガンプラを使って欲しいと言って来る事はまずない。

 逆にビルダーなら自分の作ったガンプラを実際にバトルで使って欲しいと言って来ると言う事は十分にあり得る。

 

「ガンプラは私の奴を貸して上げるわ」

 

 すでに向こうはやる気となり、ここで少女を置いて逃げる事もヤクモには出来ない。

 幸いにも少女はガンプラを貸してくれる。

 

「……分かった。俺が戦う」

 

 逃げる事が出来ない為、ヤクモも覚悟を決める。

 少女がヤクモにガンプラを渡す。

 それを受け取ったヤクモは思わず息をのんでしまう。

 少女から渡されたガンプラ、ビルドアメイジングガンダムは制作は素人のヤクモが見てもその完成度は桁違いだ。

 

「これ……君が作ったの?」

「そんな事はどうでも良いわ」

「そうだな」

 

 今はそんな事はどうでも良い。

 このビルドアメイジングガンダムを使ってバトルに勝つ事を考えなくてはならない。

 ガンプラとGPベースを受け取ったヤクモは男たちの方を向く。

 

「ちょっと待った……まさか、3人同時にやるのか?」

「当たり前だろ。公式戦では最大3人でバトルするんだ。ルールには乗っ取ってるぜ」

「そうだけどさ……」

 

 確かにヤクモは一体一でバトルをするとは言ってもいないし、公式戦のルールに違反もしていない。

 相手が3人だろうとルール上は問題はない。

 

「構わないわ。この程度のファイターが10人いようと20人いようとビルドアメイジングガンダムの敵じゃないわ」

 

 少女も少女でセコンド席に付いて、本当にバトルをする気は無いようだ。

 だが、少女は3対1の状況で勝てると確信しているようだ。

 それを見ていると不思議とヤクモも勝てそうな気がして来た。

 

「やるしかないか」

 

 ヤクモは受け取ったビルドアメイジングガンダムをバトルシステムの上に置く。

 

「ナナセ・ヤクモ。ビルドアメイジングガンダム……出る!」

 

 そして、バトルが開始される。

 バトルフィールドは市街地となった。

 バトルが開始され、ビルドアメイジングガンダムは一度着地する。

 

「パッと見の完成度は高そうだから……」

 

 ヤクモが今まで使った事のあるガンプラは友達のガンプラでどれも素組の物しか扱った事は無い。

 ビルドアメイジングガンダムはヤクモが見ても相当な完成度である為、取りあえずは動かして普段の感覚の違いを確かめる事にする。

 ヤクモが軽く操縦桿を動かすとビルドアメイジングガンダムはビルに突っ込んだ。

 

「やっべ……こいつ。反応良過ぎるだろ」

(やっぱり駄目かしら。どの道、時間を稼げば警備員が来る。ここの警備会社はお父様の会社の系列だった筈。後はどうにでもなるわ)

「凄いな」

 

 ビルドアメイジングガンダムがビルから出て来る。 

 かなりの勢いで突っ込んだが、ビルドアメイジングガンダムは傷一つついていない。

 

「俺に扱えるかは分からないが……何とかなるだろ」

 

 いきなりミスをしたが、ビルドアメイジングガンダムが並のガンプラではないと言う事は分かった。

 十分に操作になれる前に相手のガンプラが出て来る。

 

「1機目は……ラゴゥか!」

 

 相手の3機の中で1機目は四足歩行のモビルスーツ、ラゴゥだ。

 ラゴゥは四足歩行とピャタピラで陸戦においては高い軌道力を持つ。

 

「幾ら完成度が高くても禄に動けなきゃな!」

 

 ラゴゥは飛び上がって背部のビームキャノンを撃ち込む。

 ビルドアメイジングガンダムは何とか、右腕のバックラーでビームを防ぐが、降下する勢いでラゴゥのビームサーベルがビルドアメイジングガンダムを襲う。

 

「うわ!」

 

 だが、ビルドアメイジングガンダムの装甲に損傷はないが、勢いに押されて尻餅をついてしまう。

 

「ラゴゥを相手に陸戦は駄目だ!」

 

 ビルドアメイジングガンダムが上空へと飛び上がるが、後方に控えていたガズウードのビーム砲で狙い撃ちされる。

 

(高い機動力のガンプラが相手を翻弄し、砲撃型が後方支援。セオリー通り過ぎるわ)

 

 ガズウードの砲撃が直撃し、ビルドアメイジングガンダムは再び着地すると、ラゴゥがビームキャノンを撃ちながら翻弄して来る。

 

「後一機はどこに……」

 

 上空から残りの1機を確認すれば、後方に控えているガズウードのビーム砲に狙われる為、迂闊に飛び上がる事も出来ない。

 そうしている間に建物の影から両手にシールドを持ったゲイツが飛び出して来る。

 ゲイツはビームクローで背後からビルドアメイジングガンダムに襲い掛かる。

 

「後ろか!」

 

 ビルドアメイジングガンダムは何とか回避するが、ゲイツは再び建物の影に隠れる。

 追撃しようとするが、ラゴゥがそれを妨害する。

 

「とにかく……何か武器は……バルカンにビームサーベル……これだけか!」

 

 反撃を行う為に武装スロットを確認するが、ビルドアメイジングガンダムは装備が胸部のバルカンが2門に右腕のバックラーに内蔵されているビームサーベルだけだ。

 

「だけど……武器さえあれば何とかなる!」

「いい加減に!」

 

 ゲイツがビームクローで襲い掛かり、時間差でラゴゥもビームサーベルで攻撃をして来る。

 ゲイツの攻撃を最低限の動きでかわすと、突っ込んで来るラゴゥの頭部を左手で掴む。

 

(意外とやるわね)

「なんてパワーだ!」

 

 ラゴゥはキャタピラで後退しようとするが、ビルドアメイジングガンダムはラゴゥの頭部をしっかりと掴んで離さない。

 

「一機目!」

 

 ビルドアメイジングガンダムは右腕のバックラーからビームサーベルを展開する。

 ラゴゥの頭部を掴んだ状態でビームサーベルを振り下ろしてラゴゥを切り裂く。

 逃げる事も出来ないラゴゥはあっさりとビームサーベルで切り裂かれて破壊される。

 

「先に後方支援の奴を叩く!」

 

 ビルドアメイジングガンダムはガズウードの方へと向かう。

 先ほどの砲撃でガズウードの方向は把握している。

 

「後方支援の奴はザウードじゃなくてガズウードだったから高度を上げなければ狙い撃ちもされない筈」

 

 ビルドアメイジングガンダムは高度を上げずに一直線にガズウードの方に向かっている。

 機体性能がずば抜けて高い為、操作性が悪いが、一直線に飛ばすのであればヤクモにも出来る。

 

「見えた!」

「この!」

 

 ガズウードはようやくビルドアメイジングガンダムが接近している事に気が付いてビーム砲を向けるがすでに遅かった。

 勢いが付いているビルドアメイジングガンダムは減速する事無く、ガズウードに突っ込む。

 ガズウードがビームキャノンを撃つ前に、ビルドアメイジングガンダムは勢いのままガズウードに拳を撃ち込む。

 十分に勢いがあり、完成度の差によりただのパンチも必殺の一撃となってガズウードを粉砕する。

 

「何だよ……このガンプラ、こんなに強かったのかよ!」

 

 ビルドアメイジングガンダムが先にガズウードを狙った事で、ガズウードの援護にゲイツが戻って来るが、機動力が違い過ぎて到着した時にはガズウードはスクラップを貸していた。

 

「この野郎!」

 

 ゲイツは両腕のシールドからビームクローを展開して、ビルドアメイジングガンダムに突撃する。

 

「正面から! ならこっちも!」

 

 ビルドアメイジングガンダムもバックラーからビームサーベルを出して正面から迎え撃つ。

 ゲイツが腰のエクステンショナル・アレスターを射出する。

 ビルドアメイジングガンダムはそれをビームサーベルで切り落とす。

 その間にゲイツは加速し、ビームクローを振るう。

 

「何とかなる!」

 

 ゲイツのビームクローをビルドアメイジングガンダムは左腕でゲイツの腕を抑えて止める。

 すぐにもう片方のビームクローが振り下ろされるが、それも右腕で止める。

 

「この距離ならバルカンでも!」

「ちくしょう!」

 

 ゲイツは頭部の、ビルドアメイジングガンダムは胸部のバルカンを至近距離から互いに連射する。

 ゲイツのバルカンはビルドアメイジングガンダムに直撃しても装甲に弾かれ、ビルドアメイジングガンダムのバルカンは次々とゲイツを蜂の巣にして行く。

 やがて、ゲイツは膝をついて崩れ落ちる。

 3機目のゲイツが戦闘不能となり、バトルシステムがバトルの終了を告げた。

 

「凄いな。このガンプラ」

(時間稼ぎのつもりだったけど、ビルドアメイジングに最初は振り回されていたけど使えそうね)

 

 少女は始めからバトルの勝敗はどうでも良かったが、ヤクモは少女の予想に反してビルドアメイジングガンダムをある程度は扱えていた。

 対戦相手のファイター達は軒並みビルドアメイジングガンダムを扱い切れず振り回されていた。

 時間稼ぎのつもりはとんだ広いものだと少女は確信する。

 

「付いて来て」

「なっ! ちょ!」

 

 店員が呼んだ警備員が来る前に少女はヤクモの手を引っ張る。

 

「ここまでくれば大丈夫ね」

「何なんだよ。一体」

 

 バトルコーナーから離れて人気のないところまで来たところで少女は止まってヤクモの方を向く。

 

「改めて私はハクア。これからよろしくね」

 

 少女……ハクアはそう言う。

 余りにも色々と唐突過ぎてヤクモは頭が追いつかない。

 偶然の重なりによってハクアとの出会いヤクモの運命が動き始めた事をこの時のヤクモも、そして、ハクア自身の運命もまた動き出した事にこの時の2人は知るよしもなかった。

 

 

 

 

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