ガンダムビルドファイターズ White&Black ChallengerS 作:ケンヤ
ガンプラ学園学内予選1次予選のバトルロイヤルにおいて徒党を組んだ相手をマグナガンダムの圧倒的な火力で撃退したヤクモ達だったが、その後は先ほどまでの戦闘が嘘のように誰とも合わずにいる。
「誰とも合わないな」
「バトルフィールドはとてつもなく広いからね」
「寧ろあれだけの数のチームが良くもまぁ私達を潰す為に組んだな」
バトルフィールドは通常のバトルロワイヤル用とは比べものにならない程の広さを持っている。
そこにランダムに各チームが散らばっている。
ヤクモ達を襲撃したガンプラの数は多く、それこそこの辺りにスタートした全てのチームが一気に襲って来たと言われてもおかしくはない。
そうなればすでに火星軌道付近には敵がいない可能性も考えられる。
「思ったんだけどさ、このままバトルが膠着したらどうするんだ?」
「ルール上は12チームになるまでバトルは続くのだからそれまで続くのだろう」
「下手をしたら数時間じゃ済まなくなるんじゃ……」
これだけ広いとある程度の数が減ると他のチームとの遭遇する確率は低くなって行く。
場合によっては13以上の場所に1チームづつ生き残るような事があればバトルは一気に膠着状態へと突入するだろう。
それでも他のチームを倒す為に敵を求めて移動するチームがあれば状況も変わって来るが、バトル前にハクアが言っていたように余計な戦闘を避けようと全てのチームが考え、自分達が余力を残し、他のチームが潰し合うのを待つようになれば状況が動く事はまずない。
そうなった場合、バトルは膠着状態のままファイター達はいつ終わるかも分からない戦いを強いられる。
最終的には長時間のバトルに耐え切れずに棄権するか、ファイターの体力の限界を迎えるかしかバトルの勝負を付ける事は無いだろう。
尤も、このバトルシステムを作らせ今回のバトルロイヤルのルールを設定したのは学園長であるマシロであり、マシロがそんな受けの姿勢のバトルを許す筈もなかった。
「ヤクモ、ノブナガ。止まれ何か近づいて来る……馬鹿な! あり得ない!」
移動をしているとアンジェリカが再び何かを補足した。
だが、アンジェリカは余りにもあり得ない事に驚愕する。
「どうした?」
「近くに動く物を補足したが、数が1000以上も捕捉している!」
マグナガンダムの捕捉した物の数はすでに1000を超えている。
分離機能やファンネルと言った機体から切り離すタイプの装備を使ったとしてもその数はあり得ない。
「アレは……ELSか?」
ヤクモ達が見た物は「劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-」に登場する地球外変異性金属体の略称であるELSだ。
その数はアンジェリカが言うように1000以上も存在している。
「アレもどこかのチームのガンプラか?」
「実際にELSやELSが擬態したって設定でガンプラを作っている人の話は聞いた事はあるけど、あれだけの数を一度にバトルに持ち込む事は出来ないよ」
ガンプラバトルで稀に映画の中に出て来た小型や大型、超大型のELSを自作してバトルするファイターもいるが、ルール上は大きさに関わらず1つは1つとしたカウントされる為、チーム全体で持ち込める数は3つしかいない。
仮に複数のチームが同じ事を考えていてもあの数はあり得ない。
これはステージのギミックだった。
バトルが開始されると同時に木星圏から大量のELSがバトル終了まで永遠に発生し、火星圏を通り地球圏に到達するようになっている。
マシロは始めから長期戦を視野に入れて積極的に戦わずに余力を残しながら戦う事など認めず、最後の12チームになるまで戦い続けたチームだけが2次予選に進めるようにしていたのだ。
「こっきに来るぞ!」
ヤクモ達は不用意に接近しようとはしなかったが、ELSの大軍はヤクモ達に気づいたのか一部が進路を変更してヤクモ達に一直線に向かって来る。
学園側は別室でバトルの様子をモニターし、全てのチームのガンプラがどの位置にいるのかを把握している。
ステージのギミックであるELS達は全てのガンプラの位置情報はリアルタイムで補足している為、例え隠れていてもガンプラの位置を把握してどこまでも追い続ける。
それから逃げる術はただ一つ、戦う事だけだ。
「私に任せろ!」
マグナガンダムは再び全砲門を向かって来るELSに向けて砲撃を始める。
今度は全方位ではなく前方に向けての砲撃だが、ESLを撃墜しても数が減ったようには見えない。
「なんて数だよ。こっちの1万倍の数でもいるってのかよ!」
やがてマグナガンダムの砲撃が止まるが、ELSはどんどんヤクモ達の方に向かって来る。
ELS達は木星圏から無限に発生する為1万倍の比ではない。
「今度は俺がやる!」
マグナガンダムの砲撃が終わり今度はヤクモのビルドアメイジングガンダムが前に出る。
ヴァリアブルビームライフルを構え。プラフスキーパワーゲートを展開してビームを撃ち込む。
ビームは拡散しELSの大軍を迎え撃つが、その程度ではELSを殲滅するどころか進行を多少緩める程度の効果しかない。
「駄目か……来るぞ!」
マグナガンダムとビルドアメイジングガンダムの2機がかりの砲撃でもELSを止める事が出来ずに遂にヤクモ達はELSの接近を許しまう。
ELS達は3機のガンプラを目掛けて突っ込んで来る。
「やっぱこいつらも触れると取り込まれるんだよな?」
「だろうな!」
それぞれが火器を使ってELSを迎撃する。
映画と同じであればELSは触れた物を取り込む能力を持っている可能性が高い。
圧倒的な数を前にその能力を持っているかを確かめるには余りにも危険過ぎる。
「アンジェリカさん! 大丈夫!」
ガンダムヘイズルMk-Ⅱがビームライフルでマグナガンダムを援護する。
マグナガンダムは全方位に攻撃しているが、ビームの威力は普段の半分程度しか出せない。
「……ヤクモ、ノブナガ。聞いてくれ」
ELSを迎撃しながらアンジェリカが二人に話しかける。
ヤクモもノブナガも身を守りながらアンジェリカの言葉に耳を傾ける。
「このまま私を庇いながら戦っていてもいずれは押し切られてしまう」
「だから置いて行けとでも?」
「そうだ。このまま全滅するよりかはマシだ」
マグナガンダムは全方位に砲撃をしているものの明らかに普段の火力の半分以下しか出ていない。
それをヤクモとノブナガがフォローしているのが現状だ。
マグナガンダムの残りの粒子量もじきに限界が来る。
そうなればマグナガンダムはただの動けない的でしかない。
「例えここで私が落とされてもチームの誰かが生き残れば良い」
「だからって!」
ヤクモもアンジェリカの言いたい事は分かる。
仮に逆の立場でも同じ事を言うだろう。
自分を守りながら戦ってチームが全滅するくらいなら自分が犠牲になってチームが生き残るのなら迷わずに自分が犠牲になる事を選ぶ。
だからと言って、見捨てる立場になれば見捨てて行く事など出来る訳が無かった。
「僕もアンジェリカさんの意見に賛成だよ」
「ノブナガ!」
意外なところからアンジェリカの意見に賛成されて、思わず声を荒げる。
それにより周囲の注意も疎かになり、ガンダムヘイズルMK-Ⅱがビームライフルで援護する。
「だけど、行くのはヤクモ君一人だ。どの道、僕のヘイズルじゃヤクモ君のビルドアメイジングに追いつく事は出来ないからね」
ノブナガのガンダムヘイズルMK-Ⅱはマグナガンダムよりも機動力や運動性能は上だが、汎用型である為、ELSと交戦しながらヤクモのビルドアメイジングガンダムと共に戦い続けるには性能不足が否めない。
ここでノブナガと共にアンジェリカと置いて行ったとしても今度はノブナガがヤクモの足かせとなってしまう。
それを避ける為にノブナガも残りヤクモが一人で逃げると言う事だ。
ヤクモ一人なら友軍機の援護は無くなるが、ビルドアメイジングガンダムの性能をフルに発揮する事が出来る。
現状ではその方がチームの生存確率が高いとノブナガは考えていた。
「僕がこっちに残ればアンジェリカさんがやられるまでの時間も稼げる。そうなれば少しでもヤクモ君が逃げるだけの時間も稼げる」
「確かにな。ヤクモ」
二人の言いたい事はヤクモも分かっている。
だが、仲間を見捨てて逃げる決断などそう簡単に出来る筈もない。
しかし、大量のELSがヤクモの決断をゆっくりと待ってはくれない。
次々と襲い掛かってくるELSの数は減るどころか徐々に増えてすら思えてくる。
「ちくしょぉぉぉぉ!」
ヤクモは叫び、ビルドアメイジングガンダムはプラフスキーウイングを展開する。
それはヤクモの決断でもあった。
ここでチームが全滅してしまえばその時点で全国大会へと道が絶たれてしまう。
全国に出る事が出来なければソウタとの約束も守れない。
約束が守れないだけではなく、ハクアも全国にすら出れないチームに愛想を尽かすかも知れない。
今ここで全滅する事は全国に出れないだけでなく、ヤクモにとっては全てを失うと言っても良い。
「行け!」
ビルドアメイジングガンダムはプラフスキーウイングで一気に加速し、マグナガンダムとガンダムヘイズルMK-Ⅱから離れていく。
ヴァリアブルビームライフルで正面のELSを撃ち落していくと後方からマグナガンダムの小型ローエングリンがELSを薙ぎ払って行くのが見えた。
すでにマグナガンダムの粒子は底を付きはじめている。
そんな状態で最大火力の小型ローエングリンを使うと言う事は全ての粒子を使い切る気だと言う事だ。
全ての粒子を使い切れば、マグナガンダムの末路はESLの餌食になるだけだ。
この砲撃はまさにアンジェリカが己の全てを賭けてヤクモの道を作っている。
やがてマグナガンダムの小型ローエングリンの掃射が止まる。
それが意味する事はマグナガンダムの粒子が尽きたか、マグナガンダムがやられたかのどちらかだろう。
ヤクモは二人の元に戻りたい気持ちを必死に抑えて、マグナガンダムの作った道を突き進む。
「くそ! まだこんなにいるのか!」
しばらく進むとマグナガンダムの砲撃が意味なかったとでも言わんばかりのELSの大軍が次々と押し寄せて来る。
ビルドアメイジングガンダムはヴァリアブルビームライフルで大型のELSを撃墜し、胸部のバルカンで弾幕を張って小型のELSを掃討して行く。
どれだけのELSを撃破してもELSは次から次へと湧いてくる。
「こんなところで! 負けられるかよ!」
押し寄せるELSを撃破しているとヤクモは周囲でも爆発が起きている事に気が付いた。
ELS同士は戦闘をしていない為、その爆発は他のチームのガンプラがELSと交戦しているのだろう。
だが、ヤクモにはそれがどこのチームのガンプラなのかを確認している余裕はない。
ELSを迎撃し、迎撃しきれないELSをかわしていると次第に起きる爆発が近くなっているが、それを気にしている余裕もない。
「アレは!」
ELSをビームで撃ち抜いていると、ELSではないガンプラとすれ違う。
それはヤクモも良く知っている黒いザク、新人戦でヤクモが戦ったカイトのザクⅡFCであった。
「カイト!」
「ナナセか?」
互いに互いのガンプラを見つけると示し合わせた訳ではないが、互いに背を合わせる。
「まだ生き残っていたのか」
「お前もな。一人か? チームメイトは?」
ビルドアメイジングガンダムはヴァリアブルビームライフルで、ザクⅡFCは対艦ライフルで正面の敵を撃ち抜く。
ヤクモの問いにカイトは答える事は無い。
周囲に自分達のガンプラ以外にはELSしかいない為、カイトのチームメイトははぐれているのか、すでにやられているかだ。
一人で学内予選に出る事も出来るが、チームを組む際にカイトがどこかのチームに入ったと言う噂は聞いている。
「まぁ良いか。カイト。俺は何が何でも生き残らないといけない。だから、ここは一時的に組もうぜ」
ヤクモはそうカイトに切りだす。
ノブナガとアンジェリカに送り出されて一人で戦って来たが、いつ終わるかも分からない戦いでヤクモも消耗している。
これ以上、一人で戦うよりも一時的にカイトと協力して戦う事が出来れば少しは負担も軽くなる。
「……良いだろう。だが、足を引っ張れば俺は迷わずお前を見捨てるからな」
カイトも一人で戦いぬく事に限界を感じていたのか、少し考えるとヤクモの案を受け入れた。
「で、どうする? 俺の方は余り派手な事は出来そうに無いぞ」
「付いて来い」
カイトはそう言って機体を返す。
ヤクモもカイトの意図は読めない物の今はカイトを信じるしかない。
「何処に行くんだよ?」
「この数では2機でも対して意味はない。一気に数を減らす」
ビルドアメイジングガンダムはELSを撃墜しながらザクⅡFCに追いつく。
ザクⅡFCは対艦ライフルの残弾を全て使い話したのか、対艦ライフルをELSに投げつける。
「この先には……セカンドムーンか」
「そうだ。開けた場所では数の多い方が有利だ。だが、コロニー内ならば多少はマシになる」
宇宙空間ではELS四方八方から襲ってくるが、コロニー内であれば狭い場所も多い。
そこに逃げ込む事で数の差を多少なりとも補おうと言う事らしい。
ELSを撃墜しながら2機は何とかセカンドムーンの宇宙港に逃げ込む事に成功した。
宇宙港に逃げ込むとザクⅡFCは肩に付いているギャンのシールドのミサイルを宇宙港の至るところに撃ち込む。
それにより生じた瓦礫がELSの行く手を遮る。
「これで少しは時間を稼げるか……」
「だと良いがな」
宇宙港でELSを足止めした事で2機の後を追いかけて来るELSはいなくなっていた。
その間にザクⅡFCはバックパックのウェポンバインダーからショットガンを取りだす。
「カイト!」
「ちっ突破するぞ」
セカンドムーン全体に強い衝撃が走り、通路の前方からもELSが出て来る。
それをビルドアメイジングガンダムとザクⅡFCは突破して先に進む。
やがて、居住エリアに出るが、居住エリアも設定画に忠実に作られているのであろうが、ELSの侵食を受けて見るも無残な状態となっていた。
「さっきの衝撃は外側からELSが侵食して来たと言う訳か」
「狭いところに逃げ込んでも、その場所ごと飲み込もうって訳かよ」
圧倒的な数を前に狭い場所などに逃げ込んで迎え撃つと言うのは定石だが、大量のELSはそれをその場所ごと取り込もうとする力技で封じて来た。
セカンドムーンごと取り込む事で数の差を覆す為に逃げ込んだ場所が今度は逃げ場を封じる牢獄と変わった。
「仕方が無い。余り粒子の残量は残ってないが……」
「何をする気だ?」
ビルドアメイジングガンダムはプラフスキーパワーゲートを展開する。
そして、それにビームを撃ち込み威力を強化して、射線上のELSごとセカンドムーンの地面に撃ち込んだ。
威力の強化されたビームは射線上のELSだけではなく、セカンドムーンの外壁までぶち抜いて、穴からは宇宙が見ている。
「ここから逃げるぞ!」
セカンドムーンに穴を空けてヤクモとカイトは宇宙に脱出しようとするが、ビルドアメイジングガンダムの空けた穴は次第にELSが埋めていく。
「間に合わないか!」
「問題はない」
ザクⅡFCはガトリングシールドを構えると、穴を塞ごうとしているELSをガトリングシールドで撃ち抜き、穴が塞がるまでの時間を稼いだ。
その甲斐もあり、2機はセカンドムーンから脱出する事に成功した。
「フゥ……何とか脱出には成功したが……」
「まだだ。折角、大量のELSを集める事が出来たんだ。ここで数を減らす」
ザクⅡFCはショットガンを捨てると、今度はバズーカを取り出す。
バズーカをセカンドムーンに向けて構えて、バズーカを話す。
バズーカの弾頭はセカンドムーンに向かって行くと、やがて強い光を話す。
その光景をヤクモは知っている。
一度は新人戦でノブナガのガンプラを完全に破壊し、同じく新人戦の決勝戦で使った核の光だ。
カイトは自分達を追い詰める為にセカンドムーンを侵食しているELSを一掃する為に核弾頭を使用したのだ。
核の光が収まるとそこにはセカンドムーンが跡形もなく吹き飛んでいた。
「相変わらず容赦ねぇな……」
「グズグズするな。次が来るぞ」
ザクⅡFCは核バズーカを捨てるとザクマシンガンを取りだす。
カイトの言うようにELSは2機を目指して進行を始めている。
「やるしかないか!」
迫るELSを2機は迎撃する。
セカンドムーンに集めて核で一掃した事もあり、ELSの数は目に見えて減ってはいる。
「ちっ! 弾切れか」
数が減り多少の余裕もあったが、ザクⅡFCのガトリングシールドの残弾が尽き、シールドからガトリングの砲身をパージする。
それに一瞬、気を取られた事でザクⅡFCのウェポンバインダーの一つにELSが取りつき侵食を始める。
だが、カイトは動揺する事無く冷静にウェポンバインダーをパージすると、胸部のバルカンでウェポンバインダーごとELSを始末する。
「カイト!」
それを見ていたヤクモはカイトの方に気を取られ、ヴァリアブルビームライフルがELSに浸食されてしまう。
すぐにヴァリアブルビームライフルを手放すが、それによりビルドアメイジングガンダムは手持ちの火器を失ってしまう。
「馬鹿が」
ザクⅡFCはザクマシンガンでビルドアメイジングガンダムを援護しながらビルドアメイジングガンダムの元に向かう。
「コイツを使え」
ザクⅡFCはすれ違いざまにウェポンバインダーからゲルググ用のビームライフルを出す。
「助かる!」
ビルドアメイジングガンダムはすぐさまビームライフルを持って応戦する。
一時期はザクⅡFCの核バズーカで数を減らしたELSの数も時間の経過と共に増えている。
次第に数が増えて行く中、ヤクモとカイトの体力や集中力が削られて行く。
いつ終わるかも分からない戦いを二人はただ生き残る為にELSを倒し続けるしかなかった。
バトルが開始されてから、どれほどの時間が経ったのだろうか。
ビルドアメイジングガンダムの周囲には無数のELSの残骸が漂っている。
ビルドアメイジングガンダムも機体のいたるところが損傷している。
戦いの最中に撃ち漏らしたELSに取りつかれた際に強引に装甲を剥がしたりしたせいだ。
「カイト! お前も無事か?」
無心にただひたすらELSを落とし続けていたが、いつの間にかELSの動きが緩やかとなり今は完全に止まっている。
当初は互いにフォローし合っていたヤクモとカイトだったが、いつの間にか自分の身を守るのに精いっぱいで互いを見失っていた。
ELSの動きが止まった事でヤクモはカイトとの合流を試みたが、案外近くにいたのかすぐにカイトのザクⅡFCを見つける事が出来た。
カイトのザクⅡFCも機体のいたるところを失いボロボロの状態だが、戦闘は何とか出来そうな状態を保ってはいる。
「やられたと思ってた」
「生憎とそう簡単にやられる訳にはいかないんでね」
合流し互いに軽口を言い合う。
この互いに何とか戦えている状態で、本来は敵である為、この状態で戦いとなれば満足に戦えないが不思議と頼もしく思えてくる。
「それよりもELSの動きが止まったけど、お前が仕業って事はないか……」
「俺に聞くな」
カイトもELSの動きが止まった理由については分からないようだ。
すると、止まっていたELSが急に動き始める。
合流した事で気が緩んでいたが、ELSが動き始めた事でヤクモも集中してELSに備える。
動き出したELSは一か所に集まると次々と合体して行く。
火星圏中のELSが集まったかのような数のELSが一つになり、やがて月と変わらない程の大きさの超大型にまでなっている。
「嘘だろ……アレとやるのか?」
「終わったな」
ガンプラもファイターも限界が近いこの状況で超大型のELSと戦う事は不可能だ。
カイトも状況を冷静に分析するも勝機はない。
そして、ついに超大型のELSは動き始める。
ヤクモとカイトは少しでも足掻こうと身構えるも、超大型ELSは2機を攻撃する事は無かった。
超大型のELSはゆっくりと変化を始めてやがては巨大な花へと姿を変えた。
ヤクモ達は知らないが、これは地球圏でも木星圏でも同じように超大型のELSが花へと姿を変えていた。
そんな超大型のELSの変化に呆気を取られていると、バトルシステムがバトルの終了を告げた。
大量のELS達が超大型となり姿を花に変えたのはバトルフィールド上に残っているチームが12チームとなったからだ。
「俺達……生き残れたのか」
バトルが終了した事で気が抜けたヤクモは緊張が解け、力が抜けてへたりと座り込む。
「良くやったな」
「必ずやってくれるって信じてたよ」
そんなヤクモをアンジェリカが腕を引っ張って立たせる。
その隣にはノブナガもいた。
生き残る為に二人を置いて来たが、ガンプラバトルでは当然死者が出る事は無い。
「ああ……」
生き残れたと言う事は二人から託された思いを無駄にはしなかったと言う事だ。
今まではバトルに勝てばハクアの期待に応えられた喜びだけだが、チームメイトに思いを託され勝利する感覚は今までの感覚とは違っていた。
「次は敵としてお前を倒す」
ふとカイトとすれ違いカイトはポツリとそう言う。
カイトの横にはチームメイトらしき生徒がいる。
「今度は俺が……俺達が勝つさ」
カイトはヤクモに目もくれずにチームメイトと共に歩いて行く。
ヤクモの言葉はカイトまで届いていないだろう。
「良くやったわ。貴方達」
ヤクモは3人でバトルを見ていたハクアの元に向かう。
ハクアはヤクモ達が生き残る事が当たり前だったかのように3人を出迎える。
「途中、このバトルを考えた人の底意地の悪さで危ないところだったけど、勝ちは勝ちよ」
そう言うハクアは自分では意識していなかったが、ヤクモにはハクアが少し笑ったように見えた。
そんなハクアにヤクモは見とれていた。
「だけど、この程度の事で浮かれていられないわ。後3回勝てば全国大会に行けるのだから」
すぐにいつものハクアに戻る。
ハクアの中では2次予選は全勝で全国に行く気らしい。
相変わらず自分達が勝つ事が当たり前のように話すハクアに思わずヤクモは笑ってしまう。
1次予選のバトルロワイヤルで残ったチームは12チームだ。
そこに去年の全国大会に出場すた4チームを含めた16チームで2次予選が行われる。
ヤクモ達、チームAmazing THE Worldは全国大会へと第一歩を踏み始めたに過ぎなかった。