ガンダムビルドファイターズ White&Black ChallengerS   作:ケンヤ

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Challenge03 「ガンプラ学園の力」

 ハクアとコンビを組む事になってから数日。

 この日の授業が終わるのと同時にヤクモは席を立って荷物をまとめる。

 

「ヤクモ、今日は高等部の方に……」

「悪い! 今日も用事があるから!」

 

 スバルが高等部に誘いに来るが、ヤクモは早々に帰って行く。

 ここ数日、毎日のようにヤクモは授業が終わるのと同時に急いで帰って行っている。

 だが、ヤクモは真っ直ぐ家に帰る訳ではなかった。

 

「悪い。少し遅くなった!」

「構わないわ。待っている間に今日の始めの相手を見つけて置いたから」

 

 ヤクモは家に帰らず直接、Gミューズでハクアと待ち合わせをしていた。

 学校が終わってからヤクモはここでハクアのビルドアメイジングガンダムを使って毎日バトルを繰り返していた。

 そして、ヤクモを待っている間にハクアがバトルの相手を見つけていた為、すぐにバトルに入る。

 

「相手はクラウダ……重装甲は厄介だな」

「あの程度のガンプラなら、ビルドアメイジングガンダムの性能なら問題ないわ」

 

 バトルフィールドは宇宙でバトルが開始される。

 対戦相手のガンプラはガンダムXに登場するMS、クラウダだ。

 クラウダはビームライフルを連射するが、ビルドアメイジングガンダムはハクアが追加で装備したシールドで防ぐ。

 ビームを防ぐと、シールドと同じくハクアが用意したビームライフルをクラウダに向ける。

 ビルドアメイジングガンダムはビームライフルを放ち、クラウダのビームライフルを撃ち抜く。

 爆発する前にビームライフルを投げ捨てたクラウダは背部のビームカッターを展開して突撃して来る。

 

「ならコイツで!」

 

 突撃して来るクラウダに対してビルドアメイジングガンダムはビームライフルの下部に内蔵しているロングビームサーベルを展開す。

 ビームカッターで突撃して来るクラウダをロングビームサーベルで迎え撃つ。

 クラウダの動きに合わせてロングビームサーベルを振り下ろし、クラウダのビームカッターをビームごと切り裂いて背部のユニットの一部を切り裂く。

 

「今よ」

「任せろ!」

 

 背部ユニットの一部を破壊されて体勢を崩すクラウダに対してビルドアメイジングガンダムはすかさずビームライフルを撃ち込む。

 ビームはクラウダの胴体を撃ち抜いてクラウダを破壊してバトルは終了した。

 

「どうだった?」

「そうだな。俺もこいつの扱いに慣れて来たのかだいぶ扱い易くなった気がする」

 

 バトルが終わるとすぐに休憩所でバトルの反省を行うのがいつもの流れだ。

 初めてのバトルの時はビルドアメイジングガンダムに振り回されたヤクモだが、バトルを重ねるごとに扱いに慣れていている。

 同時にバトルからハクアがヤクモの操作の癖を把握した上で多少は性能が落ちても、ヤクモの扱い易いようにチューンしている。

 元々の性能が並のガンプラと比べるとずば抜けている事もあって、ヤクモがまともに扱えるだけでこの辺りのファイターではすでに相手にはならなくなって来ていた。

 

「そう、ところでナナセ君。貴方、高校はどこに進学するつもりなのかしら?」

「うちの高等部の予定だけど。それがどうかした?」

 

 ハクアもヤクモが蓮舫学園の中等部の3年だと言う事は知っている。

 

「蓮舫の高等部……確か、今年は全国で準優勝したところよね」

「まぁな」

 

 ヤクモは中等部で全国大会には関わっていないが、自分の先輩達が全国大会で準優勝したと言う事は誇らしい。

 

「ねぇ……ナナセ君。今度の土日空いてる?」

「空いてるけど……」

「なら、少し私に付き合って頂戴。貴方を連れて行きたいところがあるの」

 

 そう言うハクアはどこか小悪魔的なヤクモは一瞬ドキリとする。

 そして、ヤクモはただ頷くしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから終末の土曜日がやって来る。

 結局、ハクアは自分をどこに連れて行くのか明らかにしないまま、土曜日となる。

 どこに行くのか分からないまま、ヤクモは待ち合わせの場所に現れたハクアと共にリムジンで移動していた。

 ハクアの事は名前と同い年である事以外は何も知らないが、言動にどこか気品も感じさせていた事もあって、リムジンで来た事は自分でも意外と驚く事は無い。

 他愛もない話しをしていると、ヤクモはいつの間にか東京から静岡まで連れて来られて来た。

 

「ここって……」

 

 ヤクモがハクアに連れて来られた場所は巨大な施設だった。

 入口には『ガンプラ学園』と表記されていた事をヤクモは見逃さなかった。

 ここは全国大会を連覇している王者、ガンプラ学園だと言う事だ。

 

「入って」

 

 ハクアは何食わぬ顔で学園内を歩き、ヤクモをガンプラ学園の一画に案内する。

 中に入ると、一瞬凄い熱気を感じた。

 中には100台近くのバトルシステムが置かれており、多くのファイターがガンプラバトルを行っている。

 軽く見渡すと、明らかに学生とは思えないファイターもバトルをしている。

 

「ここはフリーバトル場よ。ここは一般のファイターにも開放しているから、学園生以外でもバトルをする事が出来るの」

 

 ヤクモが気になっていた事をハクアが説明する。

 ガンプラ学園の敷地内には多数のバトル場が完備されている。

 ここはその中の一つで、ガンプラ学園の生徒以外も利用できるバトル場と言うことだ。

 一般に開放する事で学園生が学園生以外の幅広いファイターと学園内でバトル出来るようにとの学園側が解放している。

 一般のファイターもここのバトルシステムは常に最新のデータを使われている為、利用するファイターも多い。

 

「私はここの中等部に籍を置いているの。来年はここの高等部に進学する予定よ」

 

 ハクアがリムジンで来た事は驚く事もなかったが、流石にハクアがガンプラ学園の生徒だった事にはヤクモも驚きを隠せない。

 

「そして、ナナセ君。貴方にはガンプラ学園に入学して欲しいのよ。貴方はこれからもっと強くならないといけない。ここにはファイターとして強くなる為の全てがあるわ」

「ちょっと待ってくれよ!」

 

 ハクアがガンプラ学園の生徒だった事は驚きだが、ハクアがここにヤクモを連れて来た理由はヤクモをガンプラ学園に誘う事らしい。

 ハクアのパートナーになる時もそうだったが、話しが急過ぎて即答は出来ない。

 パートナーになる事に関しては自分の気持ち次第だったが、ガンプラ学園に入学する事はヤクモの気持ちだけの問題ではない。

 今は3月でヤクモの進路は蓮舫学園の高等部でほぼ内定している。

 今から進学先を変える事など容易ではない。

 

「大丈夫よ。高等部の入学テストは月一でやってるから、まだ最後の1回が残っているわ。全国からファイターを集めているから寮の方もあるから住むところにも困らないし、テストに合格してしまえば、進学予定の学校の方には学園の方から話しを付けてくれるわ」

 

 ヤクモの懸念をハクアが先回りで潰す。

 ガンプラ学園は中等部は年に1回の入学テストしか行われてはいない。

 だが、高等部は月に1度、入学テストを行い例え不合格となっても次の月に受ける事も出来る。

 その為、今年は3月のテストを受ければ今からでも入学する事が可能だ。

 ガンプラ学園は全国大会で優勝する事を目的としている為、国内のあらゆる県から入学希望者が集まって来る。

 そんなファイター達がガンプラの制作やバトルの腕を磨く事に専念できるように学園の敷地内には学生寮も用意してある。

 時期的に急に進学先を変える事は学校側と揉める可能性もあるが、入学テストに合格すると言う事は最低限ガンプラ学園の生徒になるだけの実力を認められたと言う事で、学園側がいかなる手段を使ってでも相手側の学校を納得させる。

 

「それでもな……」

 

 ハクアの言っている事は魅力的だが、話しはそう単純な物でもない。

 ヤクモの通っている蓮舫学園も十分に強豪校で、来年は打倒ガンプラ学園に燃えている。

 ヤクモも蓮舫学園中等部としては、先輩達の打倒ガンプラ学園に燃える気持ちは十分に理解出来る。

 ここで、進学先をガンプラ学園に変えてしまうのは、先輩達や友達でもあるスバルを裏切る事になるかも知れない。

 

「はっきり、言わせて貰うわ。蓮舫学園に進学したところで全国大会で優勝する事は不可能よ」

 

 ガンプラ学園の実力が圧倒的である事は今更言われずとも分かっている。

 だが、ここまではっきりと言われてしまうとヤクモもムッとする。

 

「この程度でウチに入学するつもりだったのかよ!」

 

 ヤクモが言い返そうとするが、近くのバトルシステムから誰かが大声で遮る。

 

「何だよアレ……やり過ぎだろ」

 

 バトルシステムには無残にも破壊されたガンプラが転がっている。

 ダメージレベルはBでななく、Aで行っていたのか、ヤクモでも一目で修復が出来ない程壊れていると言う事が分かる。

 

「アレが内のエースチームのアドウ・サガよ」

「アレがデットエンドの……」

 

 ヤクモも通り名と共にその名前を知っていた。

 ガンプラ学園のエースチームのソレスタルスフィアのレギュラーの一人、アドウ・サガ。

 圧倒的な攻撃から完全に破壊したガンプラは1000体を超えるとも噂される事からデッドエンドのサガとも言われている。

 そのアドウが今年、ガンプラ学園に入学する予定のファイターとバトルをしていたらしい。

 対戦相手のファイターは茫然と膝を付いている。

 周囲のファイター達はそんな様子を遠巻きに見ているだけだ。

 特にガンプラ学園の生徒達は同情するように負けたファイターを見ている。

 彼らにとってこの光景は日常的に良く見られる事だ。

 

「弱すぎる。そんなんじゃ入学しても無駄だからとっとと荷物をまとめて帰んな!」

「そんな言い方ないだろ!」

 

 誰もアドウを止める様子が無い為、ヤクモが割って入る。

 

「あ? 何だお前」

「俺が誰だってどうでも良い! ガンプラが壊れるのはバトルをすれば仕方が無い事かも知れない……だけど、負けた相手にそんな事言う事ないだろ!」

 

 ガンプラが無残に破壊された事はヤクモも破壊の度合いはやり過ぎに思えるが、バトルの結果である異常は仕方が無い面もある。

 だが、負けた相手に対してのアドウの態度は認められない。

 

「事実だろ。ここはな強い奴だけが生き残って行けるんだよ。こいつら程度の実力じゃ生き残る事も出来やしねぇ。弱い奴に学園内でうろちょろされても目障りなんだよ」

「何だよ……それ!」

 

 アドウの言い分にヤクモは納得は出来ない。

 蓮舫学園でも頑張っても補欠にも入れずに大会をただ応援するだけのファイターも多い。

 それは勝負である以上は実力があるファイターからレギュラや補欠になる為、仕方が無い事だ。

 それでも、同じ学園の仲間として補欠に入れなかったファイターの分までレギュラーはバトルをする。

 だからこそ、補欠にも入れなかったファイターはレギュラーを心の底から応援する事も出来る。

 だが、ガンプラ学園ではチームのメンバーですらも競争相手で、実力が物を言う。

 

「そこまでにしないか?」

 

 今にもアドウに殴りかかりそうだったヤクモの仲裁にマキナが入る。

 

「何だよ。マキナがここに来るなんて珍しいじゃねぇかよ」

「今日は面白い事が起きそうな気がしてね。そして、来てみれば案の定だ」

 

 マキナがバトル場に来る事は滅多にない。

 バトルする時はアドウやウィルフリッドが練習相手を探している時に誘い、マキナの気分が乗った時くらいだ。

 

「少年。君の怒りも最もだ。アドー君は少しばかり物事をはっきりと言い過ぎるきらいがあってね。私もチームメイトとしてほとほと困っているのだよ。私はこう見えてか弱いのでね」

「どの口が言ってやがる」

 

 マキナの介入でヤクモも少しは落ち着くが、落ち着いたからと言ってアドウの振る舞いを認める事が出来るわけじゃない。

 

「だが、アドー君の言っている事もまだ事実だ。少年よ、君もファイターであるならバトルで決着をつけると良い」

「何で俺がどこの馬の骨かも分からない奴と戦わないといけないんだよ。それよりもちょうどいい。マキナが俺の相手をしてくれよ」

 

 アドウからすれば、ヤクモ等気にも留める程の相手ではない。

 そんな事よりも、マキナの方がバトルの相手としては望ましい。

 

「今日は気分じゃない。だが、君と彼のバトルを見れば気分も変わるかも知れないな」

「……ちっ」

 

 マキナが気分じゃないと言い出すと例え、全国大会の決勝戦でも決してバトルをする事は無い。

 アドウも同じチームである為、マキナのそんなところは良く知っている。

 先ほどまでは一々相手をする気もなかったヤクモだが、ヤクモと戦えばマキナと戦えるかも知れないとなると話しは別だ。

 

「何だよ」

「さっさとガンプラを用意しろ。相手をしてやるよ」

「ハクアも構わないな」

「……そうね」

 

 マキナにそう言われて、ハクアは少し機嫌が悪くなっているが、ヤクモにビルドアメイジングガンダムを渡す。

 

「何か変な事になって悪い」

「構わないわ(丁度良い機会だわ。いずれは彼程度は軽く倒して貰わないと意味がない)

 

 ハクアからビルドアメイジングガンダムを受け取ってヤクモはアドウと対峙する。

 すでにアドウの方の準備が万端のようだ。

 

「ビルドアメイジングガンダム。ナナセ・ヤクモ……行くぜ!」

 

 今回のバトルフィールドは渓谷でバトルが開始される。

 

「気を付けて。あの人のバトルは攻撃一辺倒だけど、今までナナセ君が戦った事のある相手とはレベルが違うわ」

「分かってる」

 

 バトルフィールドは隠れる場所も多い為、ヤクモは周囲を警戒しながら上空を移動する。

 だが、アドウのガンプラ、ガンダムジエンドは隠れる事も無くビルドアメイジングガンダムを待ち構えていた。

 

「どういうつもりだ? マキナ」

 

 バトルが始まり、すでに高みの見物を決め込んだマキナにフリーバトル場でアドウが騒ぎを起こしていると言う事を聞き付けたウィルフリッドがそう言う。

 

「見ての通り仲良くバトルをしているだけの事だけど」

 

 マキナは悪びれる様子もない。

 

「それにしても……彼は何者だ? 我々の世代であれほどのガンプラを制作できるビルダーはシア以外には関東のコウサカ・ユウマに関西のサカイ・ミナトくらいだが、どちらの作品とでもない……それにセコンドに付いているのは」

「クロガミ・ハクア。先生の姪っ子だよ。ファイターの方は私も知らない」

 

 ウィルフリッドもビルドアメイジングガンダムの完成度の高さは一目で見抜いている。

 これ程のガンプラを制作できるビルダーは多くはない。

 

「ちなみにあのガンプラはあのイオリ・セイが制作したガンプラでどういう経緯かは分からないが、彼の手に渡っているんだよ」

「成程……道理で」

 

 ビルドアメイジングガンダムがセイが制作した物であると言う事ならばウィルフリッドも納得が行く。

 アドウが騒ぎを起こしていると聞いていた為、大事になれば全国大会への出場が危ぶまれる事もあって止めに来たが、状況的に止める必要もなさそうだ。

 セイの作ったガンプラのバトルを生で見れる機会は早々ない。

 自分と同レベルのファイターであるアドウがセイのガンプラと戦っている様子は世界に進出する上では見て置いて損はない。

 

「あのイオリ・セイさんのガンプラ……その性能の程を括目させて貰おう」

 

 バトルが開始され、ビルドアメイジングガンダムはビームライフルを放つ。

 アドウのガンダムジエンドは最低限の動きでビームを回避する。

 

「コイツは……マキナとやる前座程度に思っていたが、中々楽しめそうなガンプラだな!」

 

 ウィルフリッド同様にアドウも実際に対峙する事でビルドアメイジングガンダムの完成度の高さを見抜いている。

 

「だが、肝心のファイターの方はどうだ! 行けよファング!」

 

 ガンダムジエンドの大型クロー、ビッグフィストの先端からDEファングが射出される。

 

「ファングか!」

 

 ビルドアメイジングガンダムはDEファングを撃ち落そうとするが、動きが早く撃ち落せない。

 

「速い!」

「この程度で驚いてんじゃねぇよ!」

 

 ヤクモがDEファングに気を取られている間にガンダムジエンドはビルドアメイジングガンダムの背後に回り込んでいた。

 そして、リボルバー型ビームガン、ショットジエンドを両手に持って至近距離からビルドアメイジングガンダムに撃ち込む。

 ギリギリで反応したもののシールドで防ぐ事は出来ずに直撃した。

 

「くそ!」

「この程度は問題はないわ。体勢を立て直して」

 

 直撃こそしたが、ショットジエンドの威力ではビルドアメイジングガンダムには大きな損傷を与える事は出来なかった。

 それでも、今までの対戦相手のガンプラの攻撃なら直撃しても何ともなかったビルドアメイジングガンダムの装甲に軽い損傷を与える程度の威力はある。

 

「ちっ……ライフルが駄目なら切り刻むまでだ! ファング!」

 

 DEファングが様々な方位からビルドアメイジングガンダムに襲い掛かる。

 それをビルドアメイジングガンダムはビームライフルとシールドで何とか防ぐので精一杯だが、次第にDEファングがビルドアメイジングガンダムに掠り始める。

 DEファングで動きを制限されていると複数のDEファングが集まって一つとなる。

 合体したDEファングが一直線にビルドアメイジングガンダムへと向かって行く。

 

「こいつでどうだ!」

「そう簡単に!」

 

 ビルドアメイジングガンダムはシールドでDEファングを防ぐが、一撃でシールドが粉々に吹き飛んでしまう。

 

「なっ!」

 

 ビルドアメイジングガンダムは谷へと逃げ込む。

 DEファングを相手に開けた空中で相手をするのは圧倒的に不利で、谷に逃げ込めばDEファングの動きも制限出来る。

 

「谷に隠れてファングの動きを制限する腹積もりか……悪くはない策だ。けどな!」

 

 ガンダムジエンドのビッグフィストが展開し、掌のガンダムフェイスの口が開くと高出力のビームを渓谷に撃ち込む。

 ガンダムジエンドのビームが山々を破壊して行く。

 それによって、多数の岩がビルドアメイジングガンダムに降り注ぐ。

 DEファングの動きを制限する為に谷に逃げ込んだが、逆にビルドアメイジングガンダムの逃げ場が殆どない状態に追い込まれて行く。

 

「まだだ! まだ何とかなる!」

 

 ビルドアメイジングガンダムは加速して、降り注ぐ岩の雨をかわして谷を駆け抜ける。

 

「アイツはどこだ!」

「後ろよ」

「デッドエンド……」

 

 何とか谷を抜けるが、それを見越したアドウに先回りをされていた。

 

「フィンガー!」

 

 ビッグフィストのガンダムフェイスで相手を噛み砕くガンダムジエンドの必殺の一撃であるデッドエンドフィンガーを繰り出す用意を整えていたガンダムジエンドはビルドアメイジングガンダムにデッドエンドフィンガーを使う。

 ハクアが事前に気づいていた事もあって、反応は出来ていたが、デッドエンドフィンガーはビルドアメイジングガンダムの右腕に喰らい付く。

 そして、ビルドアメイジングガンダムは右腕をビームライフルごとガンダムジエンドに喰い千切られた。

 右腕を喰い千切られたビルドアメイジングガンダムにDEファングが襲い掛かる。

 体勢を崩しているビルドアメイジングガンダムはかわし切れずにDEファングをまともに受けてしまう。

 更にはガンダムジエンドがショットジエンドを連射して撃ち込んで来る。

 ガンダムジエンドの集中攻撃を受けながらビルドアメイジングガンダムは地上に落下した。

 

「これがガンプラ学園の力……」

「俺の攻撃をここまで受けてここまで持つとはな」

 

 ガンダムジエンドの集中攻撃を受けるビルドアメイジングガンダムだが、損傷こそしているが未だに致命傷は受けていない。

 

「だが……ガンプラは良くてもファイターの実力はイマイチのようだな」

「だけど……俺はまだ負けてない!」

 

 右腕を失った時点でビルドアメイジングガンダムの武装は胸部のバルカンのみだ。

 今までの相手のようにガンプラの性能に絶対的な差は無い為、状況は圧倒的にヤクモの不利だ。

 だが、ここで諦めてしまえばアドウの言い分を正しいと認めてしまう事になる。

 ビルドアメイジングガンダムは何とか立ち上がる。

 

「まだやる気か……良いね! そうこないとな!」

 

 ガンダムジエンドは再びデッドエンドフィンガーを使う構えを取る。

 

「潰し甲斐があるぜ!」

 

 ビルドアメイジングガンダムを目掛けてガンダムジエンドは一気に降下する。

 ビルドアメイジングガンダムはそれを迎え撃とうとするが、2機の間にビームが割り込んでガンダムジエンドの攻撃を止めた。

 

「誰だよ! 俺の邪魔をしやがるのは!」

「そこまでだよ。アドー君。勝負はもう付いた」

 

 アドウの攻撃を止めたのはグレーで塗装されたシナンジュの改造機、シナンジュアメイジングだった。

 バトルを高みで見物していたマキナだが、すでに勝負はついたと判断して割って入った。

 

「アレのガンプラ学園のガンプラなのか……」

 

 マキナのシナンジュアメイジングはその名が示すようにシナンジュの改造機で尚且つ、PPSEが三代目メイジンカワグチ用に設計制作した物をセイがマキナ用に調整した物だ。

 本体に大きな改造点はないが、脚部のジョイントには本来シナンジュがバックパックに装備している大型スラスターが移植されて、足の甲からがビームサーベルが展開できるようになっている。

 バックパックには分離し独立稼動が出来るアメイジングブースターⅡが装備されている。

 アメイジングブースターⅡには円柱型のファンネルが6基に小型のミサイルポッドに小型コンテナユニット、2基のアメイジングウェポンバインダーと充実した火器を搭載している。

 右手にはメインの火器であるアメイジングメガライフルを装備している。

 

「コイツはマキナの……ようやくやる気になったのかよ」

「そんなつもりはないけどね。だが、これ以上、そのガンプラを破壊されるのは困るんだよ」

 

 フリーバトル場のバトルシステムは全てダメージレベルはAで設定されている。

 ダメージレベルがBならばどれだけ破壊されても問題はないが、ダメージレベルAでこれ以上破壊されてしまうとビルドアメイジングガンダムはハクアでは手に負えないレベルで破壊されてしまう。

 

「知るかよ。そのガンプラを扱い切れないそいつが悪いんだろ」

「尤もな意見だね。だから私がこうして出向いたんだよ」

 

 シナンジュアメイジングはアメイジングメガライフルでガンダムジエンドを牽制してビルドアメイジングガンダムの前に降り立つ。

 

「君が聞かん坊だと言う事は熟知している。君のような輩には言って聞かせるよりも体で分からせた方が早いからね」

「そう言う事かよ。上等だ! ファング!」

 

 マキナがビルドアメイジングガンダムを必要以上に破壊させない理由はアドウはどうでも良い。

 だが、マキナはアドウに破壊させない為に実力行使をしようとしている。

 マキナはガンプラ学園でもウィルフリッド以外にアドウが全力で戦える相手だ。

 普段は気分が乗らない事が多い為、戦う機会も多くはない。

 アドウにとってはマキナがやる気になっている事だけが重要だった。

 

「お決まりの戦法だな。ならば……ファンネル」

 

 シナンジュアメイジングのバックパックから6基のファンネルが射出される。

 ガンダムジエンドのDEファングとシナンジュアメイジングのファンネルが空中で素早く動き交戦を始める。

 

「ファングの動きがさっきとは違う……」

 

 ガンダムジエンドのDEファングはヤクモと戦っていた時よりも動きが違っていた。

 恐らくはあれでもアドウは本気を出していなかったのだろう。

 そして、マキナ相手には本気を出している。

 

「ファングを手動でそこまで操れると言う事は腕の方は大した問題ではないと言う事かな」

「お前に心配される言われはねぇよ!」

「ご尤も」

 

 シナンジュアメイジングはバックパックのアメイジングウェポンバインダーから高出力のビームを放つ。

 自分のファンネルを巻き込む事もお構いなしでガンダムジエンドのDEファングを一掃した。

 ガンダムジエンドはショットジエンドを向ける。

 シナンジュアメイジングはアメイジングメガライフルを手放すとウェポンバインダーからガンダムジエンドと同じショットジエンドを取りだした。

 シナンジュアメイジングのウェポンバインダーには自分の武器以外でも僚機であるガンダムジエンドとトランジェットガンダムの予備の武装が収納している。

 バトル中に武器を失った場合を想定しの事ではあるが、二人の実力的に滅多に武器を失う事が無い為、もっぱらマキナが自分で使う事の方が多い。

 ガンダムジエンドがショットジエンドを放ち、シナンジュアメイジングも同じようにショットジエンドを撃つ。

 2機のビームは空中でぶつかり合う。

 アドウはシナンジュアメイジングを狙っているが、マキナは的確にガンダムジエンドの撃ったビームを撃ち落としている。

 

「相変わらずムカつく戦いをしやがる」

「同じ性能の武器を同じように使えば勝負がつく事は無い」

「だったらコイツはどうだ!」

 

 ガンダムジエンドはデッドエンドフィンガーの構えを取る。

 流石にシナンジュアメイジングのウェポンバインダーにはガンダムジエンドのビックフィストの予備は入っていない。

 

「常に攻める姿勢を忘れない。だが、その隙を私に見せると言う事は致命的だと言う事を忘れた訳ではあるまい」

 

 シナンジュアメイジングはショットジエンドを捨てると今度はトランジェットガンダムのGNパルチザンを取りだす。

 そして、GNパルチザンを構えると一瞬でガンダムジエンドとの距離を詰める。

 シナンジュアメイジングの最大の武器は火力でも無ければ豊富な武器でもない。

 脚部に移植された大型スラスターとアメイジングブースターⅡの膨大な推力を一気に使った加速性能だ。

 シナンジュアメイジングの加速性能と機動力はガンプラ学園においては最速を誇り世界レベルの相手にすらも通用すると言われている程だ。

 瞬時に最高速度に達する事で相手はその加速に目が追いつかずに瞬間移動をしたかのように錯覚する程だ。

 ガンダムジエンドのデッドエンドフィンガーは僅かながらタメがあり、普段なら問題ない程度のタメだが、シナンジュアメイジングを前にそのタメは致命的な隙となる。

 だが、シナンジュアメイジングの加速性の脅威を知るアドウは敢えてデッドエンドフィンガーを使う素振りを見せていた。

 シナンジュアメイジングが加速してすぐに技を中断して回避行動を取った事で、GNパルチザンの一撃を直撃する事は無い。

 それでも完全にはかわし切れず、ガンダムジエンドのマントが吹き飛ぶ。

 

「成程。敢えて隙を作る事で私を誘い込んだと言う事か」

 

 シナンジュアメイジングの一撃をかわしてガンダムジエンドは胴体が口のように開閉する。

 同時にビッグフィストがシナンジュアメイジングの逃げ道を塞ぐようにガンダムフェイスが口を開けている。

 

「今日こそはその余裕をぶっ壊してやるよ!」

「謹んで辞退させて貰うよ」

 

 逃げ道を塞がれているが、シナンジュアメイジングは逃げる事無く、ガンダムジエンドの胴体に片足を突っ込む。

 

「何だと!」

「片足程度はあげよう」

 

 胴体に片足を突っ込んだ状態で、足の甲からビームサーベルを展開して、ガンダムジエンドの内部から攻撃する。

 同時にガンダムジエンドの胴体が閉じてシナンジュアメイジングの片足が食い千切られた。

 

「ちぃ!」

「どうやらダメージはそっちの方が酷いようだ」

 

 片足を失ったシナンジュアメイジングよりも短い時間だったとはいえ、内部をビームサーベルで破壊されたガンダムジエンドの方が受けたダメージは大きい。

 それでも、まだ戦闘不能にはならない。

 

「さて……この辺りで引いてくれると嬉しいんだがね」

「俺はまだ負けてねぇ!」

「全く……その負けん気の強さと諦めの悪さは尊敬に値するけど……終わらせる」

 

 シナンジュアメイジングはGNパルチザンを構える。

 構えたGNパルチザンから膨大なプラフスキー粒子が放出される。

 アドウはそれに見覚えがあった。

 

「てめぇ……そいつはキジマの」

「そう。トランジェットガンダムのバーストランサー。彼に使えて私に使えない道理はないのだよ」

 

 シナンジュアメイジングが使おうとしているのはトランジェットガンダムの切り札であるバーストランサーのようだ。

 アドウもシナンジュアメイジングに自分とウィルフリッドのガンプラの予備の武器を搭載し、自分で使えると言う事は知っていた。

 だが、GNパルチザンのライフルモードを初めとした基本的な機能しか使えないと思っていたが、どうやらGNパルチザンを使ってトランジェットガンダムのトランジェットバースト時の切り札であるバーストランサーを独自に再現まで出来るらしい。

 

「上等だ! なら俺のジエンドでぶっ潰してやるよ!」

 

 予想外の出来事だが、アドウは動揺する事は無かった。

 マキナが自分やウィルフリッドを相手にしている時も一度として本気や全力を出していないと言う事は分かっていた。

 そして、マキナの師であるマシロも世界大会では常に相手の知らない切り札を隠し持っていた事は有名な話だ。

 そんなマシロの弟子であるマキナが常に自分達の知らない切り札を持っていても不思議ではない。

 シナンジュアメイジングのバーストランサーに対してガンダムジエンドは逃げる事なく、デッドエンドフィンガーで迎え撃つ構えを取る。

 互いに必殺の一撃を繰り出す為に一気に突っ込む。

 2機がぶつかり合うと思った瞬間に2機の間に1機のガンプラが割り込んで2機の攻撃を止めた。

 

「そこまでだ」

 

 2機の間に割り込んだのはウィルフリッドのトランジェットガンダムだった。

 トランジェットガンダムは両手に持っているGNパルチザンでシナンジュアメイジングとガンダムジエンドの攻撃を止めている。

 

「キジマ! 今良いところだってのに止めんなよ!」

「学内予選まで後3か月程度時間があるとはいえやり過ぎだ」

 

 ガンプラ学園は全国大会に4つの枠が用意されている。

 その枠を毎年6月辺りに学園内のチームで代表を決める学内予選が開催される。

 前回の優勝チームとはいえ、全国大会に出るにはその学内予選で代表の座を勝ち取る必要があった。

 ウィルフリッド達の実力ならば一人が欠けた程度では問題なく代表になる事が出来るが、ウィルフリッドとしてはレギュラーは万全の状態で臨みたい。

 期間としては残り3か月もあるが、ここでダメージレベルAのバトルでシナンジュアメイジングとガンダムジエンドが激しい損傷を受けるのは避けたい。

 

「アドウも今年こそは全国大会に出たいんだろう? なら、余り無茶な行動は慎むべきだ」

「……分かったよ。今日のところは我慢してやる」

 

 全国大会に出れば、強い相手がいるかも知れない。

 アドウは2年連続で全国大会に出ていない為、最後の機会を前に無茶は出来ない。

 今回は決着こそは付かなかったが、マキナを相手に存分にバトルする事が出来た。

 ウィルフリッドに割り込まれた事もあってアドウは素直に引き下がった。

 

「マキナもそれで構わないな」

「そうだな。終わりにしよう」

 

 マキナがそう言った瞬間にガンダムジエンドとトランジェットガンダムの至るところから爆発を起こし、2機は落ちていく。

 

「マキナ!」

「てめぇ! 何しやがった!」

「油断した君たちがいけないのだよ」

 

 アドウもウィルフリッドも爆発が起こるまで何が起きたのか分から無かった。

 完全にバトルを中断するムードになっていたとはいえ、全国の中高生のトップに君臨しているチームの二人が何も反応出来ずにここまでの攻撃を受けた。

 明らかにシナンジュアメイジングの攻撃だが、全く見えなかった。

 

「何が起きたんだよ……」

 

 アドウとマキナのバトルを見ていたヤクモも何が起きたのか分からずにいた。

 アドウとウィルフリッドよりも距離があった分、広い視野で見れたが、それでも何も見えなかった。

 

「クリアファンネルよ。戦闘中に相手に気づかれないように展開して攻撃の機会を伺っていたのよ」

「そんな事が出来るのかよ」

 

 ハクアはマキナが何をしたのか分かっていたようだ。

 シナンジュアメイジングには円柱状のファンネルの他に小型のコンテナユニットにはクリアパーツで形成された肉眼では殆ど見えないファンネルも持っていた。

 それをガンダムジエンドとの戦闘中にアドウやヤクモにも気づかれないようにクリアファンネルを展開していつでも攻撃を出来る用意をしていた。

 そして、二人が油断した一瞬を付いてガンダムジエンドとトランジェットガンダムを一斉に攻撃したのだ。

 攻撃を受けた2機は地に落ちている。

 的確な攻撃で2機は戦闘が出来る状態ではない。

 

「私の勝ちだ」

 

 2機を戦闘不能にしたことで顔は隠れて見えないが、マキナは満足そうにしている。

 

「これがガンプラ学園の力……」

 

 ビルドアメイジングガンダムを得て、ヤクモは大抵のファイターなら勝てるだけの実力を手にした。

 だが、全国大会を連覇しているソレスタルスフィアの実力はヤクモの思っている以上の物だ。

 圧倒的な攻撃で相手をねじ伏せるアドウ、シナンジュアメイジングとガンダムジエンドの攻撃を上手く威力を殺して受け止めるだけの技術を持ったウィルフリッド、爆発的な瞬発力と自らの手の内を殆ど見せないマキナ。

 3人とも方向性は違うものの自分達の世代のトップレベルのファイター達だ。

 ガンプラの性能ではヤクモのビルドアメイジングガンダムの方が上だが、今のバトルを見てヤクモは今の自分では到底勝てない相手だと言う事を思い知らされた。

 圧倒的な実力の差、マシロがヤクモに言った理不尽な壁が現れた瞬間でもあった。

 

 

 

 

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