ガンダムビルドファイターズ White&Black ChallengerS   作:ケンヤ

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Challenge05 「一次試験」

 ヤクモがガンプラ学園の入学試験を受ける事を決めて3日後、ヤクモは再び静岡の地を踏んでいた。

 決めてから試験まで日にちが無かった事もあって、ヤクモはスバルたちにガンプラ学園を受けると言う事を言う事が出来ない事が心残りではあったが、今は目の前の試験に集中していた。

 この3日間でやれることは全てやって来たつもりだ。

 後は今日の試験で出し切るだけだ。

 試験は第一試験と第二試験の総合で合否が決まる。

 その内容は毎回変わっている為、試験の内容は直前まで知る事は出来ない。

 これはガンプラ学園の生徒は世界大会も見据えている為、世界大会の予選ピリオドでの対応の練習の一環と、毎回同じ試験内容では回数を重ねるごとに対策を取り易くするなる事を避ける為だ。

 

「うっし! 行くか」

 

 会場を前にヤクモは気合を入れる。

 今まではハクアがセコンドに付いてサポートをしていたが、試験は一人で受けなければならない。

 すでにハクアから試験で使うビルドアメイジングガンダムを受け取っている。

 ヤクモは受付を済ませて、受付で指定された控室に入る。

 控室にはガンプラの調整を行えるように最低限の工具類が用意されているくらいだ。

 控室に入るとそこには先客がいた。

 どちらもヤクモと同じ受験生なのだろう。

 少年の方は入って来たヤクモの事など気にも留めずに作業台でガンプラの調整を行っている。

 もう一人の先客はブロンドの髪と長身の女で明らかに日本人離れをした容姿だが、ガンプラ学園は日本国内以外でもわざわざ入学を希望するファイターはいる為、外人でも珍しくはない。

 女の方はヤクモの事を一瞥するだけですぐに視線を戻した。

 控室にはヤクモを含めて3人いるが、誰も会話をする事もない。

 試験を待つ間、控室には重苦しい空気となり、ヤクモは重い空気に耐えながらも、係りの人間が呼びに来る事をひたすら待った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガンプラ学園の3月の試験は最後と言う事もあって、入学に最後の望みを賭けるファイターで受験者数は最大の物となっている。

 その為、受験会場では複数の試験が同時に行われている。

 

「今回の受験生はどうっすか?」

「余り良いとは言えないね」

 

 モニター室では複数の試験の様子が映されている。

 それをアランが見て、受験生の評価を行っている。

 そこに、ガンプラ学園の教官のエリカが様子を見に来る。

 世界大会で好成績を収めたエリカも今では公式戦に出る事は無く。ガンプラ学園での教官に徹している。

 かつてはマシロを相手に啖呵を切る等生粋の気の強さを持っていたエリカだが、大人に成長した今でも持ち合わせいるが、同時に面倒見も良い為、生徒達からは慕われている。

 アランは軽く肩を竦める。

 すでに試験は始まっているが、受験生の数に対して、見込のあるファイターはほとんどいない。

 

「今日の一次はシロの奴が考えた奴でしたよね? 中坊相手に大人げ無さ過ぎやしませんかね」

「確かに。だけど、うちとしてもこの時期なら即戦力が欲しいからね。このくらいはやって貰わないと困るよ」

 

 試験の内容は学園の講師や教官が考えた物の中からランダムに決められる。

 今回の一次試験の内容はマシロが考案した物だ。

 大抵は中学生を対象である事を前提に考案するのが普通だが、マシロはそんな事はお構いなしだ。

 その為、難易度はかなり高い。

 だが、ガンプラ学園としては4月の年度初めの試験の時なら、合格後に約1年程、土日や長期休暇にガンプラ学園で練習をさせて入学までに実力を付けさせることも出来るが、3月ともなれば来月には入学と、育ている時間は限られている。

 学園側としてはこの時期となれば、将来性のあるファイターよりも現段階である程度の実力を持った即戦力となり得るファイターを必要としている。

 多少は試験の難易度は高いが、それで好成績を収める事が出来るのであれば、それは即戦力となり得る。

 

「そうは言っても、受験生の大抵は元エース。試験の意図に気づけるファイターは殆どいない」

 

 一次試験は一人一人で受ける物ではなく、3人同時に行う物だ。

 そして、試験内容は15分以内に決められた場所に辿り付くと言う事しか受験生には知らされてはいない。

 受験生は試験が開始されると時間制限がある為、同時にわれ先にと指定された場所に向かおうとするが、3人で行うと言う時点で気づくべきだった。

 これが世界大会でも行われるレース形式の「競争」ではなく、中高生の公式戦では一般的に行われている「チーム戦」であると言う事にだ。

 試験自体、オートで動くガンプラの妨害等で、全国大会の上位レベルで無ければ目的地まで到達できないように難易度を設定している。

 それに受験生同士が協力し合って辿り付く過程が試験の評価対象となっている。

 だが、受験生たちには目的地に到着せよと言う情報しか与えられてはいない。

 与えられた情報では到達すれば一次試験合格や出来なけば、不合格と言った事は言われてはいないが、受験生たちは当然のように到達しなければ不合格、ないしは減点だと思い込んでいる。

 その上で時間制限がある為、受験生たちは協力など考えもしないで、競い合い中には妨害する。

 チーム戦において必要な要素の一つにチームメンバー同士の信頼がある。

 これが同じ学校で同じ部活の部員で、共に全国を目指す間柄なら出会ったばかりでもある程度の信頼を持つが、受験生たちは皆、ライバル同士である為、互いを信頼するなど簡単な話しではない。

 表面上は協力体勢を取っても、目的地直前で裏切るかも知れない、自分をいざと言う時の為の身代わりにしようとしているかも知れないと言った疑心を振り払う事など受験生たちでは簡単に出来る物でもない。

 ガンプラ学園では基本的に個人の実力を重要視しているが、チームの連携を軽視している訳ではない。

 エースチームのソレスタルスフィアもチーム全員がエースでマキナやアドウは我が強いが、バトルとなると自然の最低限の連携は取れている。

 流石に初めて会った受験生同士が協力を取る事は極めて難しいと学園側も思っている為、試験の前には受験生同士を待ち時間を利用して同じ控室で待機させてモニターしているが、大抵は少しでも自分の情報を相手に流すまいと距離を取って警戒し合う事が多い。

 

「次は……へぇ。トキワ・カイトにアンジェリカ・マスグレイヴか」

「トキワ・カイトってあのトキワ?」

「だろうね。まさかうちを受験していたとはね。それにM機関でマスグレイヴ姉妹の妹か」

 

 アランもヤクモと同じチームとなっているトキワ・カイトとアンジェリカ・マスグレイヴの事は知っていた。

 カイトは静岡市内の中学で今年は予選で決勝まで残ったチームのエースだ。

 チームメイトの実力は並程度でワンマンチームだった事もあって決勝戦ではエリカの母校でもある蒼雲高校に敗れて全国を逃している。

 その実力は全国にも通用するレベルだ。

 一方のアンジェリカはロシアからの留学生だ。

 数年前に孤児を引き取ってファイターやビルダーとしての技術や知識を専門的に教える施設機関「M機関」が話題となった。

 PPSEでもその創設者に関しては情報を得る事が出来ない謎の機関だが、M機関の出身者は高い実力を持つ事で有名だ。

 アンジェリカもロシアではかなり名が通っているファイターで姉はジュニアリーグではロシアチャンピオンで、マスグレイヴ姉妹として有名だ。

 

「最後の一人はナナセ・ヤクモ……蓮舫学園か。聞いた事は無いが」

「コイツってこの間、アドウと揉めてた奴ですよ」

「と言う事は彼が……」

 

 アドウが外部の人間と軽く揉めたと言う事はアランの耳にも入っている。

 そして、その相手がビルドアメイジングガンダムを使っていたと言う事もだ。

 アランもビルドアメイジングガンダムの制作の際に三代目メイジンカワグチのバトルデータをセイに提供する際に関わっている。

 そのビルドアメイジングガンダムが経緯は不明だが、メイジンの手ではなく中学生の手に渡っている事も噂程度で知っている。

 そんな自体にマシロが動かないと言う事はその事実をマシロが黙認しているとして、特に気にはしていなかった。

 

「王のガンプラの所有者か」

「王のガンプラ?」

「おや? 君はマシロから聞いていないのか?」

「シロの馬鹿がアタシに一々説明なんかしませんよ。大体、この一年はまともに顔も合わせてないですし」

 

 アランは意外に思うが、同時に納得もした。

 エリカはマシロの社会的地位等は関係ない。

 マシロも口うるさいエリカから逃げる事は珍しくはない。

 特に悪巧みをしているとき程だ。

 だからこそ、エリカは王のガンプラに付いて知らないのだろう。

 

「王のガンプラはイオリ君が制作した究極の完成度を誇るガンプラの総称で全部で13体。王のガンプラは互いに引かれ合い、争い合う。そして最後に勝ち残った王のガンプラの所有者にはどんな願いでも叶うと言われている」

 

 アランの説明に対して、エリカは心底胡散臭そうにしている。

 それも当然だ。

 幾らビルダーとしては世界トップレベルの技術を持つセイが制作したガンプラと言っても、勝ち残ればどんな願いでも叶えられると言われても信じる事は出来る訳が無い。

 

「と言う設定だよ」

「どうせ、あの馬鹿が面白半分で言い出した事ですよね」

「そう言わないでくれよ。勝ち残ればどんなな願いでも叶うなんて男心をくすぐるじゃないか」

 

 アランはそう言うが、エリカにはそんな男心等理解出来ない。

 だが、一つ言える事はマシロがそんなガンプラの制作だけで留まる訳が無いと言う事だ。

 

「たく……」

「彼の思惑はともかく、君もファイターとして王のガンプラの性能には興味があるだろう?」

 

 エリカもアドウとのバトルを見てはいない為、ファイターとしては究極の完成度と言われている王のガンプラの力には興味がない訳ではない。

 マシロの思惑に付いては次に会った時に締め上げるとして、今は次の試験に注目する事にした。

 

 

 

 

 

 

 ガンプラ学園の思惑を知るよしもないヤクモはカイトとアンジェリカと会話をする事無く、係りに呼ばれてバトルシステムの前に立っている。

 カイトとアンジェリカも自分のガンプラとGPベースをバトルシステムにセットする。

 

「やれることはやったんだ。後は全力を尽くすのみ! ビルドアメイジングガンダム! ナナセ・ヤクモ。行くぜ!」

 

 気合も十分にヤクモの一次試験が開始された。

 バトルフィールドに入ると、ビルドアメイジングガンダムは地上を目掛けて降下して行く。

 一次試験のバトルフィールドはジャブローのようだ。

 ヤクモのビルドアメイジングガンダムと同時にカイトとアンジェリカのガンプラも同様に降下している。

 カイトのガンプラはケンプファーアメイジングの改造機、ケンプファーカスタムだ。

 PPSEから世界大会で活躍しているファイターのガンプラがファイターの許可を取った上で同じ見た目のレプリカモデルが発売されている。

 ケンプファーアメイジングもその中の一つだ。

 大幅な改造はされていないが、全身を黒で塗装されている。

 バックパックと脚部にウェポンコンテナを装備し、コンテナには外付けの武装ラックが追加されている。

 武装ラックにはそれぞれ、バックパックにはラケーテン・バズが一つづつ、脚部の武装ラックには対艦ライフルとビームバズーカが取り付けられている。

 手持ちの火器として右手にアメイジングロングライフル、左手にはアメイジングライフルと多数の火器を装備している。

 アンジェリカのガンプラはドムトルーパーの改造機、ガナードムファントムだ。

 ドムトルーパーをベースに両肩はザクファントムの物だが、一般的な物ではなく、マディガン専用機と同様の物で裏にはスラッシュウィザード用のビームアックスが付いている。。

 両腕はグフイグナイテッドの物に変更され、バックパックにはガナーウィザードを装備し、リアアーマーにはビーム突撃銃、サイドアーマーにはハンドグレネード、両手にはギガランチャーと全体的に火力を強化されている。

 3機のガンプラが降下を始めるとジャブローの対空砲火が始まる。

 

「撃って来た!」

 

 ジャブローの対空砲火に対して各々は応戦を始める。

 ビルドアメイジングガンダムはシールドで身を守りながらビームライフルで応戦する。

 応戦する中、重装備のケンプファーカスタムとガナードムファントムが一足先にジャブローの地を踏むとジャブローの内部からジムが出て来る。

 

「やはり防衛用のガンプラも用意されていたか」

 

 カイトは防衛に出て来たジムに対して動揺する事無く、冷静に対処する。

 近くの岩陰に身を隠し、アメイジングロングライフルでジムを確実に射抜いて破壊する。

 

「思った以上に数が多い」

 

 ガナードムファントムはホバーで移動しながら、シールドのガトリングで弾幕を張る。

 先に降下した2機がジムを次々と破壊するも、ジムは際限なく出て来る。

 2機が交戦を始めて少ししてビルドアメイジングガンダムも着地する。

 

「ジャブローの攻略戦か……アイツ等のガンプラならともかく、ガンダムタイプのビルドアメイジングだと変な感じがするな」

 

 ヤクモはそう言いながらもビームライフルでジムを破壊する。

 

「指定されたポイントはジャブローの中か……まずは内部に入るハッチを探さないと……つっても数が多すぎるだろ!」

 

 ジムに囲まれないように移動しながらビルドアメイジングガンダムはビームライフルを放つ。

 指定された場所はジャブローの内部だが、内部に入る為のハッチが見当たらない。

 探すにしてもジムの数が多い為、簡単にはいかない。

 ジムのビームスプレーガンをシールドで防ぎ、ビルドアメイジングガンダムはビームライフルの下部に付いているロングビームサーベルでジムを両断する。

 

「なぁ、ジムの数が多い事だし、ここは休戦して……」

「断る」

 

 戦闘をしながら、ビルドアメイジングガンダムはカイトのケンプファーカスタムに近づいていた。

 ヤクモはこのままではハッチを探すどころではない為、カイトに協力を仰ぐがカイトは聞く耳を持たない。

 ケンプファーカスタムはアメイジングロングライフルを捨てるとウェポンコンテナからビームマシンガンを取り出して、アメイジングライフルと共に連射して移動する。

 

「聞いてないし!」

 

 ビルドアメイジングガンダムも胸部のバルカンで弾幕を張る。

 カイトの協力が得らない以上、もう一人のアンジェリカを頼ろうとするが、アンジェリカのガナードムファントムは離れたところで交戦している。

 

「やっぱ一人でやるしかないのかよ!」

 

 ジムの数は多いが、個々の性能は決して高くはない。

 ビルドアメイジングガンダムの性能を持ってすれば十分に対応は可能ではあった。

 ビルドアメイジングガンダムはビームライフルを連射してジムを破壊して行く。

 試験が開始されて制限時間の半分が過ぎようとしていた。

 ジムの数を前に誰もジャブローの中には未だに到達していない。

 そして、警告音が鳴り響く。

 

「何だ!」

「増援か?」

「この反応は……上か!」

 

 ジャブローの上空に巨大な影が出来るとそれは降下して来る。

 

「マジかよ……」

 

 それはジオン軍のMA、ビグザムだった。

 その上ビグザムは1機だけではなく複数落ちて来る。

 ビグザムが一通り落ちて来ると一斉にジャブローに対して攻撃を始める。

 ビグザムのビームはジムを破壊するも、同時にヤクモ達のガンプラにも攻撃している。

 

「これも試験の一環と言う訳か……ビグザムを量産して来るとはガンプラ学園も味な真似を」

 

 ケンプファーカスタムがアメイジングライフルをビグザムに撃つが、ビグザムのIフィールドがビームを弾く。

 

「当然か」

 

 ケンプファーカスタムはアメイジングライフルとビームマシンガンを捨てるとバックパックのラケーテン・バズを両手にビグザムを攻撃する。

 Iフィールドで防がれないものの、ラケーテン・バズの弾頭はビグザムの装甲を貫く事は無い。

 

「ちっ……」

 

 ケンプファーカスタムはビグザムのビームをかわしながら後退する。

 

「実弾も効果は薄いか。あのレベルのガンプラの攻撃も通さないとなると、私のガンプラの火器も余り効果はないか。かと言って接近戦を仕掛けるにはリスクが大きすぎる」

 

 ケンプファーカスタムの攻撃を見ていたアンジェリカはそう分析していた。

 ケンプファーカスタムの完成度は決して低くはない。

 それ以上にビグザムの完成度が高い。

 更には複数のビグザムは周囲をお構いなしにビームをばら撒いている。

 ビグザム同士のビームも自身のIフィールドで防いでいる為、ビグザム同士の相討ちも余り意味を成さない。

 ケンプファーカスタムの火力で駄目ならガナードムファントムの火力でも効果は大して変わらないだろう。

 遠距離がIフィールドで駄目なら接近戦を仕掛けるのがセオリーだが、同士撃ちを無視して攻撃している為、ビームを掻い潜って接近するのは危険だ。

 

「聞こえるか! 俺がこいつらを引き付ける! その間にアンタ等は先に行け!」

 

 カイトとアンジェリカの元にヤクモからの通信が入る。

 

「何の真似だ?」

「コイツをこのまま戦っても埒が明かないし、俺達の目的はビグザムを仕留めるんじゃなくて目的地に到達する事で、ここで無理に戦う必要はないだろ。だから俺がビグザムを引きつけているから、そっちは中に入るハッチを探して欲しいんだよ。この中で俺のガンプラは空を飛べるから時間稼ぎにはもってこいだ」

 

 ヤクモのビルドアメイジングガンダムは3機の中で唯一、重力下での飛行能力を持っている。

 その上、カイトもアンジェリカも特別意識をしていた訳ではないが、ビルドアメイジングガンダムの完成度は3機の中でもずば抜けている。

 ビグザムのお陰でジムの数は一気に減っている為、ビグザムさえ注意を引いておけば内部に入るハッチを見つける余裕も出て来る。

 だが、カイトはヤクモの言葉を鵜呑みにはしていない。

 幾ら完成度が高いと言っても、多数のビグザムを一人で引きつけるのは危険だ。

 この状況で最も危険な役割を引き受けると言うのは信じられない。

 

「その前に聞かせて欲しい」

 

 カイトがヤクモの真意を測りかねていると、アンジェリカが割り込んで来る。

 

「奴を引きつけるのは最も危険だと言う事は分かっている筈だ。競争相手である私達を助ける理由がどこにある?」

「理由とか特に無いけどさ……せっかく、こうして一緒に試験を受ける事になったんだ。だったら一緒に合格したいじゃん」

 

 ヤクモの申し出は至極簡単な理由だった。

 一緒に試験を受ける事になったから一緒に合格しない。

 ただそれだけだ。

 

「……了解した。だが、その前に名前を聞かせて欲しい。私はアンジェリカ。アンジェリカ・マスグレイヴだ」

「俺はナナセ・ヤクモ。取りあえずよろしく」

「ナナセか。ビグザムの方は任せる」

「おう!」

 

 ビルドアメイジングガンダムは上空からビグザムにビームライフルを撃ち込む。

 ビルドアメイジングガンダムのビームライフルですらもビグザムのIフィールドは弾く。

 ビームライフルをビグザムに撃ち込んで、ビルドアメイジングガンダムはビグザムの注意を引く。

 その間にガナードムファントムはジムを破壊しながら内部に入るハッチを探す。

 

「ちっ」

 

 ヤクモとアンジェリカの間で共闘は成立している。

 カイトもヤクモの言葉を信用はしていないが、ここはヤクモの話しに乗る事が得策と判断した。

 ケンプファーカスタムとガナードムトルーパーはハッチを捜索を始めて少しすると、内部に繋がるであろうハッチを見つける事が出来た。

 2機の火力でハッチは簡単に破壊して内部への入り口が開いた。

 

「ナナセ!」

「後から追い掛ける! 先に行ってくれ!」

 

 ケンプファーカスタムはすでに内部に突入している。

 アンジェリカはヤクモを待っていたが、ビルドアメイジングガンダムとハッチとの距離は遠い。

 

「……済まない」

 

 ビルドアメイジングガンダムが来るまで時間がかかり、ヤクモは先に行けと言う。

 危険な役目を買って出たヤクモを一人残して先に行くことは気が咎めたが、アンジェリカも先に進む。

 内部に入ると、カイトが交戦しているのか、ジムの残骸がいくつも転がっている。

 ガナードムファントムが指定されたポイントの近くに来ると、ケンプファーカスタムが柱に身を隠していた。

 

「目的地はすぐだが、何かあったか?」

「見て見ろよ。学園の奴ら、俺達を目的地に到達させない気らしい」

「なんて数だ」

 

 目的地は近いがその先には大量のジムが待ち構えいた。

 待ち構えているジムは皆ジャイアントガトリングを装備している。

 正面から向かって行けばすぐさま蜂の巣にされるだろう。

 

「正面から行くしかあるまい」

「正気か?」

「ここまでは一本道だった。今から別のルートを探すには一度地上に出るしかない。地上にはナナセが食い止めているとはいえビグザムが多数だ。それに比べたらジムに突っ込んで行く方がマシだろう」

 

 ハッチからここまではエフェクトでは分岐があるものの実際には一本道となっていた。

 ジムの大軍を避けて目的地に向かうには一度、地上に出るしかない。

 

「それに時間も余りない。他のルートを探して同じように待ち構えられている可能性もある。私のドムの装甲なら多少は持つ。私か弾除けの壁になるから後ろからついて来ればいい。そのケンプファーは機動力を高める為にずいぶんと装甲を犠牲にしているようだからな」

 

 カイトのケンプファーカスタムはアンジェリカの見立て通り、装甲はかなり薄い。

 それによって軽量化はされているが、被弾すれば簡単に破壊されてしまう。

 地下と言う閉鎖空間でジムのジャイアントガトリングをかわしながら、目的地に向かうのは不可能に近い。

 一方のアンジェリカのガナードムファントムの装甲はかなり厚い。

 ガナードムファントムなら、強引に突っ込んでも、破壊されるよりも先に目的地に到達できるかも知れない。

 重装甲のガナードムファントムが突っ込み、それを壁にケンプファーカスタムが突っ込めば多少は可能性が出て来る。

 尤も、誰かが到着した時点で終わりとなり、他の2名が失格になる可能性もあったが、カイトには選択の余地がない。

 

「決まりだな。ついて来るならしっかりと付いて来い。私に後ろを気にしている余裕はない」

「言ってろ」

 

 ガナードムファントムがガトリングを連射しながらスクリーミングニンバスを展開してジムに突っ込んで行く。

 ジムもそれに気が付いてジャイアントガトリングで応戦を始める。

 ジムの攻撃をスリーミングニンバスで防ぎながら、ガナードムファントムはジムを吹き飛ばしていく。

 その後方からケンプファーカスタムがラケーテン・バズを斜め上に撃ちながら続く。

 弾頭が弧を描きながらガナードムファントムを飛び越えてジムを攻撃する。

 強引に突き進むが、別方向からのビームがガナードムファントムの足を撃ち抜いた。

 

「伏兵! スナイパーか!」

 

 ジムの数に圧倒されて注意がジムにばかり向いていたが、ジムの他にジムスナイパーも配置されていたらしい。

 片足を狙撃で破壊されたガナードムファントムはホバー装甲が出来なくなり、足を止めて膝をついてしまう。

 

「悪く思うなよ」

 

 後方から続くケンプファーカスタムはガナードムファントムを踏み台にして高く飛び上がる。

 ウェポンコンテナからアメイジングロングライフルを取りだすと、空中でジムスナイパーのビームをかわして逆にアメイジングロングライフルで狙撃して撃破する。

 そのまま、ケンプファーカスタムは目的地に向けて降下する。

 すでに十分に接近している為、ギリギリ目的地には届きそうだ。

 一方の踏み台にされたガナードムファントムはジムのジャイアントガトリングの集中砲火を浴びていた。

 足をやられている為、まともに動く事が出来ず、スクリーミングニンバスで何とか防いでいたが、粒子の残量が底を突き始めて使用が出来なくなる。

 スクリーミングニンバスが解除されて、ガナードムファントムはシールドで防ぐしかない。

 空中にいるケンプファーカスタムも集中砲火に晒されていたが、脚部の対艦ライフルとビームバスーカをパージして少しでも身軽となり、全推力を使って一気に加速する。

 

「もう少しで」

 

 ケンプファーカスタムがもう少しで目的地に到達しそうになるが、今度は地面から隔壁が出て来てケンプファーカスタムの行く手を遮ろうとする。

 

「ちぃ!」

 

 すでに身軽になる為に火器の殆どは手放している。

 隔壁を破壊するだけの火力は無い為、ケンプファーカスタムに出来る事は隔壁が完全に行く手を遮る前に隔壁を突破するしかない。

 だが、隔壁の方が閉じるのが早く完全にケンプファーカスタムの行く手を遮ってしまった。

 もはやこれまでかと思われたが、高出力のビームが隔壁を破壊した。

 

「全く……私も甘いな」

 

 ガナードムファントムがガナーウィザードのオルトロスを構えていた。

 ガナードムファントムが隔壁を破壊したようだ。

 しかし、シールドで防御体勢からオルトロスでも砲撃体勢に移行している為、今のガナードムファントムは隙だらけだ。

 ジムのジャイアントガトリングによりガナードムファントムは次々と被弾し、破壊されて行く。

 オルトロスにより隔壁が破壊され、その穴にケンプファーカスタムは飛び込んで目的地に到達した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 内部で交戦している頃、ジャブローの地表でも戦闘が激化していた。

 ビルドアメイジングガンダムが複数のビグザムを引きつける為に空中からビームを撃ち込むが、ビグザムのIフィールドによって阻まれる。

 

「そろそろ、時間が……」

 

 すでに時間がギリギリとなっている。

 そろそろ目的地を目指さなければ時間切れとなり得る。

 ビグザムの1機が脚部のクローを射出し、ビルドアメイジングガンダムはビームライフルでクローを射出して、ビグザムの下に潜り込む。

 ビームライフル下部のロングビームサーベルのビーム刃の長さを絞る事で出力を上げて、ビグザムの片足を切り裂いた。

 ビグザムは大型メガ粒子砲を撃とうとしていたが、片足を切り落とされた事でバランスを崩して倒れる。

 しかし、倒れながらも大型メガ粒子砲を放っており、そのビームがジャブローの地を焼き、余波でカイトとアンジェリカが入ったハッチを潰してしまった。

 

「ハッチが!」

 

 内部へと入口が潰された事に気をとられて、別のビグザムが撃ったクローの反応に遅れ、ギリギリのところでシールドでガードした。

 攻撃を防ぐ事は出来たが、シールドにヒビが入ってしまう。

 

「あのハッチはもう駄目だ! 何とか別のハッチを探さないと!」

 

 ハッチが潰された以上、別のハッチを見つけるしかない。

 だが、1機は足を破壊したが、ビグザムはまだ何機も残っている。

 ビルドアメイジングガンダムはビグザムのビームをかわしながらも、別の入口を探す。

 

「とは言っても!」

 

 別の入口を探そうにもビグザムの攻撃をかわす事で精一杯だ。

 流石のビルドアメイジングガンダムでもこのビグザムの攻撃の直撃を受け続ければいずれは持たなくなる。

 

「もっとだ……もっと早く!」

 

 ビグザムの攻撃はとにかく手数が多い。

 シールドがヒビでまともに防御が出来ない以上は確実に回避をしなければならない。

 すでに入り口を探す余裕は無く、ビグザムの攻撃をかわす事にヤクモは全神経を集中して行く。

 その甲斐もあって、ビルドアメイジングガンダムは目立った損傷をする程の被弾はしていない。

 だが、ヤクモの視界に一瞬だけ、別のハッチが入る。

 

「しまった!」

 

 無意識の内にハッチに気を取られた事で、ビグザムの大型メガ粒子砲への反応が遅れてしまった。

 とっさにシールドを掲げて身を守るが、シールドは粉々に吹き飛んで、ビルドアメイジングガンダムは地表に叩き付けられた。

 

「うぁぁぁぁぁ!」

 

 地表に叩き付けられたビルドアメイジングガンダムをビグザムのビームの雨が襲う。

 幸い、大型メガ粒子砲ではない為、すぐに致命傷になる事は無い。

 しかし、ビームでビームライフルが破壊される。

 ビグザムの1機が飛び上がると、ビルドアメイジングガンダムを目掛けて落ちて来る。

 ビルドアメイジングガンダムは胸部のバルカンで迎撃するが、ビグザムの装甲に弾かれて止める事は出来ない。

 落ちて来たビグザムはビルドアメイジングガンダムをクローで踏みつけた。

 

「ちくしょう! このままやられて堪るかよ!」

 

 踏みつけられたビルドアメイジングガンダムは何とかもがこうとする。

 並のガンプラなら圧倒出来るパワーを持つビルドアメイジングガンダムだが、ビグザムを持ち上げる事は叶わない。

 だが、ビルドアメイジングガンダムのパワーは伊達ではなかった。

 踏みつけられながらも、ビルドアメイジングガンダムは立ち上がろうとする。

 

「俺はこんなところで負ける訳には行かないんだよ!」

 

 ヤクモの叫びに共鳴するかのようにビルドアメイジングガンダムの胸部のクリアパーツが微かに光を灯していた。

 何とか、膝まで立ち上がったが、他のビグザムのビームの余波をまともに受けてしまう。

 それによって倒れ再びビグザムに踏みつけられる。

 

「ここまでかよ!」

 

 最後の力も出し切ったが、状況を変える事は出来なかった。

 もはやこれまでかと思われたが、バトルシステムがバトルの終了を付けた。

 地下ではケンプファーカスタムが目的地に到達した事で、バトルの終了条件を満たしたようだ。

 それにより、ヤクモの一次試験が終わった。

 

 

 

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