ガンダムビルドファイターズ White&Black ChallengerS   作:ケンヤ

7 / 21
Challenge06 「覚醒の兆し」

 ガンプラ学園の入学試験の一次試験が全て終了した。

 一次と二次の二つの試験の結果を総合して合否が出される為、一次試験の結果に関わらず二次試験を受ける事が出来る。

 その間に一次の結果が公表される訳ではない為、受験生達は一次試験の自身の評価を知る事無く二次試験を受けなければならない。

 中には一次の結果が芳しくはない事が分かっている受験生は二次試験で巻き返さなければならない為、プレッシャーも大きくなっているだろう。

 一次試験とは打って変わり二次試験は毎回、受験生同士による一対一でのバトルとなっている。

 一次試験で単純な実力以外の物を見る事になっているが、二次試験は単純なバトルの腕を見る事になる。

 二次試験が開始されて、受験生はランダムに呼ばれる。

 バトルの相手は直前まで分からない為、相手に合わせた作戦やガンプラを用意する時間は与えられてはいない。

 一次試験はダメージレベルがCで行われているのは二次試験は一次試験と同じ日である為、学園側からの最低限の配慮となっている。

 ヤクモは呼ばれるまで、適当に他の受験生のバトルを見ていた。

 一次試験はダメージレベルはCで行われている為、ビルドアメイジングガンダムの損傷は問題ない。

 その間にハクアにビルドアメイジングガンダムの調整を頼む事はハクアも会場に来ている為、可能だが試験においては部外者であるハクアの手を借りるのは他の受験生とフェアではないと考えて頼んではいない。

 

「あれって……」

 

 適当に会場を歩いていると、一次試験で一緒だったアンジェリカのバトルが目に入った。

 アンジェリカの相手は大して強くないらしく、ガナーウィザードのオルトロスで簡単に勝利した。

 

「勝ったんだな。おめでとう」

「ナナセか。何、運が良かっただけだ」

 

 バトルの相手はランダムである為、当たる相手によっては楽に勝てる事もある。

 だが、受験生のレベルに差があると言っても、中学生の平均以上の実力は確実にある為、アンジェリカの実力が優れていると言う事に代わりは無い。

 

「それでもだよ」

「変わった奴だな。しかし、私の事よりも自分の心配をした方が良い。幾ら、ガンプラの性能が良くても相手によっては負ける事は世界大会でも良くある事だからな」

 

 アンジェリカの実力は確かだが、実際に相手のレベルがアンジェリカに比べると圧倒的に劣っていたのも事実だ。

 これがヤクモが相手だったら、負ける気は無いが、苦戦はしていただろう。

 運が良く、関わりも少しとはいえ、バトルに勝った事はヤクモにとっては素直に賞賛すべき事だ。

 それが、アンジェリカにとっては少々新鮮に感じた。

 ヤクモのビルドアメイジングガンダムは受験生のガンプラの中でもずば抜けており、世界大会にも通用するレベルだ。

 だが、幾らガンプラの性能が良くても、相手次第では苦戦や敗北も十分にあり得る。

 一次試験の時ならいざ知らず、すでに二次試験を終えたとはいえ入学後にライバルである筈のヤクモに忠告するのは、一次試験の借りをここで返すと言うのであろう。

 

「分かってる。一次の結果は余り良くは無かったし、俺もこんなところで躓いている訳にもいかないしな」

 

 一次試験の学園側の思惑としては、他の二人と共闘を持ちかけて自ら危険な役目を買って出たヤクモの評価は上々ではあるが、それを知らないヤクモは目的地に到達する事無く一次試験を終えている為、自分の評価は低いと思っている。

 次の二次試験の結果によっては不合格すらもあり得る。

 ヤクモはガンプラ学園で強くなると言う目的がある以上は、試験で落ちる訳にもいかない。

 

「相手が誰であろうと俺は全力で戦うだけだ」

「そうか……では健闘を祈る」

 

 アンジェリカとはそこで別れ、ヤクモは自分の出番を待つ。

 やがて、ヤクモがアナウンスで呼ばれて、指定されたバトルシステムへと向かう。

 

「まさか、俺の相手がお前だったとはな」

「だな。昨日の友は今日の敵ってか」

 

 ヤクモの対戦相手はアンジェリカ同様に一次試験で共に戦ったカイトだった。

 一次も二次もランダムで組み合わせている為、一次で同じ班で二次で対戦相手になる確率はかなり低い。

 

「まさか、一次試験と同様に一緒に合格しようと言い出したりはしないだろうな」

「当然。バトルとなれば互いに全力で戦うだけさ」

 

 一次試験ではヤクモは3人で合格する為に共闘を持ちかけたものの、二次は一対一でのバトルだ。

 バトルである以上はどちらかが勝ち、どちらかが負ける。

 どちらも負ける事を防ぐには意図的に引き分けを狙うしかないが、バトルにおいて意図的に引き分けを狙うと言う事は全力でバトルをしないと言う事だ。

 当然の事ながら、バトルである以上は互いに全力で戦うのは当然の事だ。

 

「ここからは勝っても負けても恨みっこなしだ」

「言ってろ。勝つのは俺だ」

 

 そして、一次試験で共闘したヤクモとカイトのバトルが始まる。

 

 

 

 

 ヤクモとカイトのバトルをハクアは観客席から見ていた。

 今回は試験と言う事もあって、ハクアはヤクモのセコンドに付く事が出来ない。

 試験自体はガンプラ学園の生徒なら自由に見学する事が出来る。

 

「大抵の相手なら楽勝だと言うのに彼も運が悪いな」

 

 ヤクモのバトルを見ようとしていたハクアに同じく試験を見に来ていたマキナが話しかける。

 余りにも自然に話しかけているが、ハクアはあからさまに眉を潜める。

 マキナが観客席のベンチに座ると、ハクアは避けるように距離を取って座り直す。

 

「彼はすでに合格を決めている者も含めて、受験生の中では最強だ」

「……大したことないですよ」

 

 カイトはワンマンチームで地区予選の決勝まで勝ち進んだ事もあり、その実力は今年の受験生の中では最強と言っても過言ではなかった。

 そんな相手と試験で当たる事になるとは運が悪いとしか言いようがない。

 尤も、ハクアはカイトの実力をそこまで危険視はしていないようだ。

 

「だと良いけどね」

 

 そんなカイトに対する対象的な評価を余所にヤクモとカイトの準備が整いバトルが開始されていた。

 

 

 

 

 

 二次試験のバトルフィールドは公式戦と同様にランダムで決められる。

 それによりガンプラの特性で受験生同士の相手で有利不利が出て来る可能性もあるが、学園側としては不利なフィールドで実力を殆ど出せないファイターは必要としていない。

 二人のバトルフィールドはオーソドックスな宇宙のフィールドとなっている。

 ヤクモのビルドアメイジングガンダムは特殊なバトルフィールドでない限りはフィールドに左右されない為、問題はない。

 

「カイトの奴……マジかよ」

 

 ヤクモがカイトのガンプラを見た時はカイトも運が悪いと思ってしまった。

 カイトのガンプラは一次試験のケンプファーカスタムではなかった。

 ケンプファーカスタムと同様に黒い塗装をされているが、カイトのガンプラはジオン軍の水陸両用MSズゴックの改造機だ。

 ズゴックは水陸両用MSである為、宇宙適正は極めて低い。

 バトルフィールドが宇宙になった時点でカイトは圧倒的に不利になる筈だが、カイトのズゴックカスタムの動きを見る限りは宇宙でも問題は無さそうだった。

 ズゴックカスタムはズゴックの改造機だが、バックパックを換装し宇宙でも問題なく使えるように改造されている。

 外観はバックパックの換装と黒い塗装以外に目立った改造点はないが、脚部にミサイルポッドを追加し、腕部の中央にはビームガトリング砲が埋め込まれている。

 

「装備に変更はないか……幾らガンプラの性能が良くても手の内は分かっている」

 

 ズゴックカスタムは脚部のミサイルポッドのミサイルを一気に撃ち尽くしてミサイルポッドをパージする。

 ビルドアメイジングガンダムはビームライフルと胸部のバルカンでミサイルを迎撃するが、その間にズゴックカスタムはビルドアメイジングガンダムの背後に回り込んでいた。

 そして、腕部のビームガトリング砲の中央からビームサーベルを展開して切りかかる。

 ビルドアメイジングガンダムは振り向きざまにビームライフルの下部からロングビームサーベルを展開して受け止めた。

 

「ビームサーベル! そんな物を隠し持っていたのかよ!」

「そう簡単に仕留める事は出来ないか」

 

 パワーではビルドアメイジングガンダムには到底及ばない為、ズゴックカスタムはビームガトリング砲で弾幕を張りながら後退する。

 ビルドアメイジングガンダムはシールドで身を守りながら、ビームライフルで応戦する。

 ビルドアメイジングガンダムのビームがズゴックカスタムに直撃するが、ビームは弾かれる。

 

「Iフィールド!」

「流石に直撃すれば無傷では済まないか」

 

 ズゴックカスタムには特殊な塗装でIフィールドが使えらしい。

 一般的に大型のMAやシールドに特殊な塗装を施してIフィールドの機能を付け加える事が多い。

 本体に付け加えようとすると、大抵のガンプラは人型が故に表面積が少なく、パーツも小さい為、非常に面倒だがズゴックはその形状が故に特殊な塗装もやり易い。

 ビームは弾かれたが、ビームを完全に弾ける訳ではないらしく、ズゴックカスタムは軽く損傷する。

 だが、威力の大半は無力化されている為、バトルに影響が出る程ではない。

 ある程度、距離を取ったところでズゴックカスタムの両腕が本体からパージされる。

 

「インコムまで!」

 

 ズゴックカスタムと腕部はワイヤーで繋がれている為、ファンネルの類ではなく準サイコミュ兵器であるインコムのようだ。

 パージされた両腕がビルドアメイジングガンダムを挟み込み、ビームガトリング砲で挟撃する。

 

「ワイヤーが邪魔で……」

 

 インコムのワイヤーはビルドアメイジングガンダムの動きを制限するのに一役買っていた。

 ビルドアメイジングガンダムはビームライフルの下部からロングビームサーベルを出して邪魔なワイヤーを切り裂いてインコムの攻撃を避ける。

 ワイヤーを切断されたインコムだが、ワイヤーの無い状態でもファンネルのように稼動してビルドアメイジングガンダムを襲いかかる。

 元々、ワイヤーは相手の動きを制限する為の物で無線の状態でも使用に問題はない。

 寧ろ、ワイヤーが絡まる事を考慮する必要がない為、動きが俊敏になっている。

 

「お前がそうする事も想定内なんだよ」

 

 片やワイヤー付きのインコムと無線となったインコムの二つの攻撃をかわしていたが、ズゴックカスタムは脚部に収納していたトライブレードを足の裏から射出する。

 

「今度はトライブレードかよ!」

 

 インコムに加えてトライブレードをビルドアメイジングガンダムはかわして、本体のズゴックカスタムをビームライフルで狙うが注意がインコムとトライブレードにも向いている為、射撃の精度が落ちている為当たらない。

 更にズゴックカスタムは頭部からミサイルを撃ちだす。

 ミサイルはビルドアメイジングガンダムを追尾して行く。

 ビルドアメイジングガンダムも迎撃するが、インコムとトライブレードをかわしながらではまともに迎撃が出来ずにシールドで防ぐ。

 ミサイルをシールドで防いだところにトライブレードがシールドに切り込みを入れた。

 

「かわし切れない!」

 

 ミサイルとトライブレードで体勢を崩しているところにインコムが突っ込んで来る。

 インコムはアイアンネイルでしっかりとビルドアメイジングガンダムのシールドを掴んだ。

 

「まずはシールドを貰う!」

 

 インコムのアイアンネイルがシールドを掴み、至近距離からビームガトリング砲を撃ち込んだ。

 すでにトライブレードで表面に切り込みが入っている為、シールドは耐える事が出来ずに破壊された。

 だが、ビルドアメイジングガンダムは直前にシールドを腕部からパージするとビームライフルでインコムの片方を撃ち落す。

 

「ちぃ!」

「シールドを破壊されたくらいで!」

 

 ズゴックカスタムは残ったインコムを本体に戻すとミサイルを撃ちながらビームサーベルで切りかかる。

 ビルドアメイジングガンダムもロングビームサーベルで迎え撃つ。

 2機は互いの剣で切り結ぶもズゴックカスタムは少し引いてインコムを失った片腕をビルドアメイジングガンダムの方に向ける。

 ズゴックカスタムの腕にはインコムが破壊された時用にビームガンの銃身を内蔵していた。

 ズゴックカスタムはビームガンを撃つ。

 ビームはビルドアメイジングガンダムのビームライフルに掠った。

 ビルドアメイジングガンダムはすぐさまビームライフルをパージして、右腕のバックラーからビームサーベルを展開して距離を詰める。

 

「やらせるか」

 

 ビルドアメイジングガンダムは距離を詰めようとするが、ズゴックカスタムのコックピットハッチが開くと中から多数の機雷がばら撒かれる。

 距離を詰めようとしていたビルドアメイジングガンダムはズゴックカスタムのばら撒いた機雷に突っ込んで行く。

 ビルドアメイジングガンダムが機雷郡に突っ込むと機雷は次々と爆発を起こす。

 

「そんなものまで!」

 

 ビルドアメイジングガンダムは爆風から飛び出して来る。

 機雷郡に突っ込んだ事で流石のビルドアメイジングガンダムも無傷ではない。

 

「しぶとい!」

 

 ズゴックカスタムはトライブレードをビルドアメイジングガンダムに差し向けて腕部のビームガトリング砲とビームガンを連射する。

 ビルドアメイジングガンダムはビームを回避しながら胸部のバルカンでトライブレードを2つ破壊する。

 そして、ビームサーベルで迫るトライブレードを切り裂く。

 ビームサーベルでトライブレードを2つまでは切り裂く事が出来たが、3つ目は対応しきれず、とっさに左腕でボディを守った。

 トライブレードは左腕に深々を刺さった。

 

「強い……」

 

 ズゴックカスタムは残っている片腕を再び射出する。

 今度はワイヤーを外した状態でパージしている為、ワイヤーが付いている時よりも動きが俊敏になっている。

 ビルドアメイジングガンダムの装備はバルカンとビームサーベルのみで、バルカンは距離が離れていては決定打にはならない。

 ズゴックカスタムに決定打を与えるには接近してビームサーベルで仕留めるしか方法は残されてはいない。

 ビルドアメイジングガンダムが距離を詰めようとするも、インコムが背後からビームガトリング砲で狙い、本体のズゴックカスタムがインコムをパージした両腕のビームガンで攻撃して来る。

 インコムと本体、そして残っているトライブレードの連携でビルドアメイジングガンダムは思うように接近する事が出来ない。

 

「近づけない!」

「残りの装備はバルカンとビームサーベルのみ。近づかさせなければこちらの有利だ」

 

 ズゴックカスタムの連続攻撃に次第にビルドアメイジングガンダムの被弾箇所が増えていく。

 ビルドアメイジングガンダムの装甲には未だに致命傷は与えられてはいないが、ここまでの被弾で蓄積したダメージにより限界を迎えるのはそう遠くない。

 

「このままじゃ……」

 

 一方的に攻撃を受ける事になり、ヤクモの中では敗北の二文字が見え始めていた。

 

「ここで終わるのか……まだ始まってもいないのに……」

 

 ヤクモの目的はガンプラ学園で強くなる事だ。

 強くなれば自身の意地を貫き通す事が出来る。

 その為に蓮舫学園では打倒ガンプラ学園で団結している中、一人ガンプラ学園の入学試験を受けに来た。

 ヤクモはまだスタート地点にすら立ってはいない。

 

「俺は……まだ、終われない!」

 

 ヤクモの叫びと共にビルドアメイジングガンダムに胸部のクリアパーツの奥が光始めた。

 その様子はヤクモのバトルを見ていたハクアとマキナのところでも確認する事が出来た。

 

「何なの!」

 

 それを見たハクアは思わず立ち上がった。

 先ほどまではビルドアメイジングガンダムの劣勢に苛立っていたが、それどころではない。

 

「あの光は……マキナは……その様子だと知らないか」

 

 一方のマキナは冷静に状況を分析している。

 マキナも少しは王のガンプラに付いて話しは聞いている。

 だが、このような事が起きると言う事は聞いていない。

 ハクアなら何か知っているかとも思ったが、ハクアの様子を見る限りではハクアも知らないらしい。

 ハクアはビルドアメイジングガンダムの予備パーツも持っているが、予備パーツを確認したところ、ビルドアメイジングガンダムを一式以上組むだけの予備パーツはあったが、胸部のコアユニットだけは装甲しか予備パーツが用意されていなかった。

 完全にばらして自分で予備パーツを作ろうにも、ビルドアメイジングガンダムはセイが制作した物で予備パーツを使った修理や調整ならまだしも、コアユニットを複製するのはハクアの技術では難しい。

 下手に弄って元に戻せない可能性もあった為、ビルドアメイジングガンダムの胸部のコアユニットにはハクアは全く手を付けてはいなかった。

 光は胸部のクリアパーツの奥から出ていると言う事はコアユニットが関係している事は確かだ。

 

「仕方が無いか」

 

 マキナはそっとサングラスの右側をずらして右目でビルドアメイジングガンダムを見た。

 

(この光り方は……高濃度に圧縮した粒子の物じゃない……あのガンプラの中にはプラフスキー粒子の結晶体が入っているのか? そう言えば……プラフスキー粒子は結晶体の大きさとなると人の意志に反応すると言う論文を見た事がある。成程……)

 

 マキナは自分の中で仮説を立てていく。

 マキナの見立てではコアユニットの中にはプラフスキー粒子の結晶体が組み込まれている。

 そして、以前に粒子に関する論文の中にプラフスキー粒子は粒子の状態ではガンプラのプラスチックに反応する事を初めとしてバトルシステムに応用されている現象にバトルで利用している現象等があげられるが、結晶体の大きさになると人の意志に反応する可能性を示唆されていた。

 

(王のガンプラは単純に圧倒的な完成度が高いガンプラだと思っていたが違うようだ。王のガンプラはファイターの強い思いに反応して力を発揮するガンプラ。恐らくはコアユニットに内蔵している結晶体によりファイターとガンプラを更なる高い次元に押し上げるガンプラ)

 

 今までは王のガンプラとは世界でのトップクラスのビルダーであるセイが制作した究極の完成度を誇るガンプラでその完成度故に圧倒的な力を発揮するガンプラだと認識していた。

 その認識自体は間違いではないが、その先がまだあった。

 コアユニットの結晶体がファイターの強い思いに反応して更なる力を発揮する。

 

(だが……惜しいな。ビルドアメイジングガンダムは未完成のガンプラ。彼にはまだその高い次元には到達は出来ないようだ。力を持て余している)

 

 ビルドアメイジングガンダムは本来は多彩な武器を扱う事を前提に制作されている。

 今のビルドアメイジングガンダムは本体に付いているバルカンとビームサーベル以外はハクアが用意したビームライフルとシールドしか装備がない。

 多彩な装備を扱う事が前提である為、ビルドアメイジングガンダムは粒子の大半を装備に回すように考えられて作られている。

 その為、装備が最低限の物しかないビルドアメイジングガンダムは未完成だ。

 ヤクモの思いに反応している胸部のプラフスキー粒子の結晶体だが、その力を今のビルドアメイジングガンダムでは扱い切れてはいない。

 

(だが……その力を完全に物にしたとすれば……)

 

 現状でもビルドアメイジングガンダムの性能を持ってすれば並の相手なら圧倒する事が出来る。

 そこに今は持て余している力を完全に扱えるようになったとすれば、ビルドアメイジングガンダムの力は絶大だ。

 

(確かに先生が入れ込むだけの事はある。王のガンプラ……バトルで圧倒的な力を発揮する様は王に相応しい)

 

 ただの高性能のガンプラであるなら、マシロもそこまで気には留めなず『王のガンプラ』等仰々しい名前等付ける事もないだろう。

 マキナは王のガンプラの力の一端を垣間見て納得する。

 納得したところで、サングラスの位置を元に戻す。

 そのころには、マキナ程に無いにしてもハクアも落ち着いて座っている。

 ハクアはバトルには見向きもしないで何やら考え込んでいる。

 恐らくはビルドアメイジングガンダムが発現仕掛けている力に付いてその使い方を考えているのだろう。

 そんなハクアの事は置いておき、マキナは不完全に力を発動したビルドアメイジングガンダムとヤクモのバトルの行く末を見守る事にした。

 

「何だか知らないけど!」

 

 ビルドアメイジングガンダムのコアユニットから発せられる光はヤクモも何が起きているのか分からなかったが、操作には支障はない。

 追い詰められた状況で余計な事を考えている余裕は無い為、今は目の前の相手に集中するしかない。

 

「あの光……サイコフレームでも積んでいると言うのか!」

 

 ズゴックカスタムのビームガンをビルドアメイジングガンダムはかわして接近する。

 謎の現象にカイトも少なからず動揺しているのか射撃の精度は明らかに落ちている。

 ビームをかわしながらビルドアメイジングガンダムはズゴックカスタムに接近しようとする。

 それを妨害するかのようにトライブレードが飛んで来るが、ビルドアメイジングガンダムはかわしてバルカンで破壊する。

 インコムがビルドアメイジングガンダムの後を追って来るが、ビルドアメイジングガンダムは速度を落としてインコムに自分を追い抜かせてビームサーベルで切り裂く。

 インコムとトライブレードを破壊した事でズゴックカスタムを守る物は殆ど残されてはいない。

 

「まだだ!」

 

 接近するビルドアメイジングガンダムに対して、ズゴックカスタムは機雷をばら撒く。

 

「このまま突っ込む!」

 

 しかし、ヤクモは臆する事は無かった。

 ここで臆して引いてしまえば勝機が無くなると言う事をヤクモは本能的に察知していたからだ。

 ビルドアメイジングガンダムは機雷郡に突っ込む。

 突っ込む際には左腕でガードしていた為、左腕は破壊されるが、本体とビームサーベルを展開している右腕は無事だ。

 

「勝つのは!」

「これで!」

 

 ズゴックカスタムはビームガンを連射するが、ビルドアメイジングガンダムの勢いを止める事は出来ない。

 射撃では止める事が出来ないとカイトは判断し、ビームガンの先端からビームサーベルを展開して迎え撃つ。

 

「俺だ!」

「終わらせる!」

 

 ビルドアメイジングガンダムとズゴックカスタムはほぼ同時にビームサーベルを振るう。

 どちらも相手の攻撃を防いだり回避する事は考えてはいない。

 いかに先にビームサーベルで相手を仕留めるかと言う事だけだ。

 相手を仕留めるべく振るわれたビームサーベルだが、どちらも相手を捕える事が出来なかった。

 ビルドアメイジングガンダムもズゴックカスタムも相手を切り裂く直前で動きを止めていた。

 ヤクモもカイトも始めは何が起きたのか分からなかったが、バトルシステムがバトルの終了を告げていた。

 

「ちっ」

「時間切れ……」

 

 ヤクモはポツリと呟いた。

 二次試験のバトルは公式戦と同じで15分の時間制限がある事に今更思い出した。

 バトルが止まったのは15分経ったからだ。

 これが実際の公式戦ならば延長戦が行われるが、二次試験においては15分が経った時点でバトルは終わる。

 

「フゥ……」

 

 バトルが終わると、ヤクモは少し体が重く感じたが、あれだけのバトルをやれば体力の消費も普段のバトルの比ではない。

 

「勝負は付かなかったけど、良いバトルだった。またやろうな」

「……おめでたい奴だ」

 

 二人の二次試験の結果は引き分け。

 学園側からは勝てば合格、負ければ不合格とは言われていないが、勝てなかったと言う事は採点に響くだろう。

 だが、ヤクモにとっては互いに全力でバトルした事の方が重要だ。

 だからこそ、試験とはいえ互いの健闘を認め合う。

 

「そうか?」

「次に戦う時は俺が勝つ」

 

 カイトはそれだけ言うとガンプラを回収して去って行く。

 二次試験のバトルは一度だけである為、これでヤクモの二次試験も終わりだ。

 一次試験に続き、二次試験も引き分けとパッとしない結果に終わったが、全力で戦ったため、ヤクモの中では悔いはない。

 後は一次試験と二次試験の内容をガンプラ学園の側がどう判断するかだ。

 試験は一次と二次の二つだけで、ヤクモは会場に来ていたハクアと合流しハクアが手配したホテルに戻る。

 こうして、ヤクモのガンプラ学園の入学試験は終わりを迎えた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。