しばらく辺りを歩いていると、この変わり果てた姿の街は、建物の形や見た目が変わっているだけで、建物の並びや地形はほとんど変わっていないらしかった。
そして辺りを闊歩している異形の怪物はこちらに対して襲いかかって来たりはしないようだし、言うほど大きいものもいないことに気がつく。
大きな物でも人の身長くらいだし、異形とはいったもののそれは今までの世界にはいないような動物というだけでよく見てみると可愛らしかったりするものも多かった。
それに気付くとすぐに自分の家があるであろうところを探し始める。
ほどなくして自分の家らしきところを見つけると、少しためらってから中に入る。
すると中には母が寝ていた。今までとなんら変わらぬ母の顔を見て、少しだけ安心する。
時計がないゆえに正確な時刻は分からないが、日の傾き方からみて、そう遅くない早朝だろうと思う、時刻にして6時かそこらと言ったところだろうか。
やることもないので、家の中に何があるかを見てみる。
すると驚いた事に家の内装は大きく変わっているものの、家具の機能(冷蔵庫や電子レンジ等)は全く変わっていなかった。
電線など無いのに電気が通っていたり、水道が無さそうなのに蛇口を捻れば水が出たり…
一体どうなっているのだろうと物色を続けようとしたとき、突然テレビがついた。
見た目はただの箱なのでつくかどうかは疑問で、後回しにしていたのだが、どうやらつくらしい。
テレビには一人の女の人が映っていた。
「今この放送を見ている諸君、おはよう」
と少々上から目線なのにまぬけな感じのする挨拶をしたあと、今の状況を説明し始めた。
「諸君は今、世界の変わり果てた姿に心底驚いてることだろう、この変わり果てた世界は、私からの大きなプレゼントだ。
喜んでもらえるかな?
もちろん押し付けがましいと諸君が私のところまで直談判しに来てくれれば世界は元に戻すことだって、やぶさかじゃない。
何しろ私は何万年に一人という天才だからね
この世界を変わり果てた姿にしたのも、全てこの私一人の手で行ったものだ
諸君らの中には昨日、空に浮かぶ球体をみたものもいるのではないかね?
あの球体がこの世界を変えるための装置だったのだ。
私は世界を変えるためにあの装置のコピーを世界中にばらまいた。
まぁ、この辺りの説明は諸君らのような凡人にしても分からないだろうから省略させてもらうが、とにかく私は昨日、世界を変えた。
戻して欲しかったら太平洋に私が作った大陸まできて講義してくれればいい。
しかし私が人生をかけてせっかく変えた世界だ、そう簡単に戻してしまってはつまらないだろう?ということで空路、海路その他この大陸まで来れるような交通手段は全て断たせてもらった。
私のいる大陸までくるには世界のそこかしこに設置したダンジョンをクリアしていけば大陸までの橋が自動的に掛かるようになっている。
さながらRPGのようにね。
もちろん私は優しいから、ダンジョンやそこらで攻略に失敗し、戦闘不能になったところで死んだりはしない。
深い眠りに落ちて、結晶になるだけさ。
結晶を私のところまで持ってくれば、そのものたちを元に戻そう。
また諸君らには私に、ひいてはダンジョンクリアに立ち向かうための「武器」を用意させていただいた。
ウェポンコールの言葉の後に自分の武器名を叫べば諸君らの武器が出てくるだろう。
諸君らの武器名は使う時になれば直感で分かるはずだ。
これで説明は以上だ。精々楽しんでくれたまえ。」
そこまで言うと今度はテレビが勝手に消えた。
慌ててリモコンを手に取りテレビをつけてみるが、どのチャンネルも砂嵐で見ることはできなかった。
「ウェポンコール…」
先ほどの天才が言った言葉を復唱してみるが、特に何も起こらないし武器名が頭に浮かんでくることもなかった。
「あら、鉄男、おはよう」
寝ていた母が起きたらしく、後ろから声をかけてくる。
「おはよう母さん、なんかとんでもねぇことになってるぜ。」
「そうみたいねぇ…鉄男も世界を元に戻すために戦ったりするのかしら?」
母は冗談めかした口調で俺にそう言ってくる。
しかし俺はそれに対して決まりきった言葉を、少年のように返す
「何言ってんだよ母さん、こんな楽しそうなことになってんのに、元に戻すなんてもったいないだろ」
それを聞いた母は,なんだか複雑そうな顔をして、肩をすくめるのだった。
◇
その後、天才に直談判するためのダンジョン攻略を目指し、軍隊に入る者が募集され、結成された軍でダンジョンに入っていったが、重火器の全く通じないモンスター達によって軍隊は壊滅させられ、多くの者が結晶化してしまったという。
この事態をみた政府は,戦う意志のあるものは早急に自分の武器を探すようにと、指令をだした。
一話です。
今回はセリフメインになってしまいました
設定がめっちゃSAOに似てますが、あんま気にしないで下さい