世界が変えられてから三日後とあるニュースによってダンジョン攻略が劇的に早められることになった。
今まで謎に包まれていたウェポンコールの発動条件が解明されたらしいのだ。
そしてその方法が本物かどうかを調べるため、俺と勇人と花実の三人は、自宅から一番近くにある、比較的難易度が低いらしいダンジョンを訪れていた。
「ほー、でけぇなこりゃ」
隣を歩いていた勇人が感嘆の声を漏らす。
それも無理もない、何故なら目の前に立ちはだかるダンジョンは雲にまで届きそうな程高さのある巨大な塔だったからだ。
「このダンジョン、ホントに難易度低いのかしら…」
ダンジョンの巨大さを見て花実がそう声を出す。
確かにここまで巨大なダンジョンなのに難易度が低いなんてことはRPGではまずありえないだろう。
「今からでもやめて他のダンジョン探してみない?すごく怖いんだけど」
花実が俺と勇人にそう訴えかけてくる。が、勇人がそれを拒否した。
「いやいや、ここまで来て引き下がるわけには行かないでしょー
どうせウェポンコール発動できたら攻略までできる可能性あるんだしさ」
勇人は昔から楽観的に物を考える癖があるが、さすがにただ楽観的ではいられないのか、その言葉には少し自分を励ますような響きも含まれていた。
「いざとなったらあんたたち盾にして逃げるからね」
花実がこちらを睨みながら恨みがましくそう言ってくる。
「好きなだけそうしろ。
さ、こうしててもあれだしさっさと入ろうぜ」
勇人がそういうとしぶしぶといった様子で花実が中に入る。
勇人がそれに続き、俺も勇人に続く。
ダンジョンに入った時に感じたのは、ダンジョン内の異様な静けさと、なんだか外とは違う、暗く、湿っぽい生暖かい空気だった。
ダンジョンに入ってしばらく中を散策してみるが、モンスターらしきものは一向に出てこない。
ウェポンコールを発動させるにはモンスターが必要不可欠らしいのだが。
「なんも出てこねーなー」
勇人が痺れを切らしたようにそうぼやく。
「そうね…もしかしてダンジョンにいるモンスターってボスだけなんじゃないかしら?」
花実がそう分析しているが、俺はなんだか不安感というか、胸騒ぎを覚えていた。
(おかしいな…もしボスしか出てこないなら軍がダンジョン内で壊滅するなんてことはありえないし…
ボスしか出てこないなら反世界変換化組織の存在がもっと真実味を帯びてくるが…)
「ってかこのダンジョンやっぱ広いな~
どこまで行っても終わる気配すらないぜ。」
突然花実が何かに躓いたように体勢を崩した。
そして俺や勇人につかまることができずに、壁に手をつく。
ガチッ!
そんな音が聞こえてきたのは花実が手をついた瞬間だった。
「おい、なんだよ今の音、なんかスイッチでも押しちまったんじゃねーの?」
すると俺たちが歩いてきた道、つまり俺たちの背後が急に光った。
青い光が段々と集まり、形を帯びていき…
何となくわかってはいたが、モンスターになった。
そのモンスターはRPGなどでありがちな全身が石でできたゴーレムだったのだが、見た目がごつい割には、サイズが小さくてなんだか可愛らしささえ覚えられるようだった。
ちなみに大きさで言うなら俺や勇人より少し小さいくらいだから、ほぼ人間サイズだ。
「おい、モンスターも出てきたことだしウェポンコール発動させてみようぜ」
ウェポンコールを発動させる条件は、モンスターの前でウェポンコールと叫ぶことらしい。
それだけ簡単なことなら何故軍は壊滅したのかと思うが、ウェポンコールのことを信じていなかったのだろうと思う。
いきなりウェポンコールを使えば倒せますよ、なんて言われてもそんな訳の分からない物より威力の分かっている銃などを使った方がいいと思うのは当たり前だ。
「ウェポンコール!」
早速勇人がそう叫ぶ。
すると勇人の前には青い、パソコンの画面のようなものが出てきた。
俺が見ても何が書いてあるかはわからないが、勇人はそれが何なのか分かったらしく、得意気な顔をする。
「ウェポンコール!
逆鱗火炎《ドラゴン・ブラスター》!」
何だか強そうな名前だと思いながら見ていると、名前の通り強そうな武器が勇人の手に現れた。
全体が紅い刀身は二つに分かれており、その刀身の間には銃口のようなものが見えていた。
持ち手は二つあり、剣として使うために刀身と直線状に付いている持ち手と、銃として使うためのやや曲がった持ち手が付いていた。
「おお…なんか強そうじゃん!」
勇人は興奮した面持ちで剣を振り上げる。
そして今までご丁寧に待ってくれていたゴーレムに向かって振り下ろした。
「うらぁ!!」
そんな風に叫びながら振り下ろすと微塵も抵抗の様子がなく、まるでゴーレムが豆腐かなにかの様にさくっと切断された。
「「え?」」
それを見て俺と花実は驚く。
こんな簡単に倒せる物に軍は壊滅させられたのか…?
「いやぁつええなこの武器!この調子ならダンジョン攻略とか余裕じゃね!?」
ゴーレムの残骸を見ながら勇人はそういう。
しかし次の瞬間、信じられないことが起こった。切断されたゴーレムが再生し、俺達の道を塞ごうと立ちはだかって来たのだ。
頭から足にかけて大きく着けられたら傷がみるみるうちに回復し、元の姿に戻っていく。
「再生した!
まぁまた倒すだけだけどな!」
勇人がそういってゴーレムに向かって再度剣を振り下ろす。
するとまた豆腐のように切断されたのだが、今度は完全に両断はできず、あと少しで切断というところで刃が止まってしまっていた。
それでも決定的な傷を着けられたゴーレムは倒れたのだが、またもや復活し、立ちはだかってくる。
「なんだこいつー,めんどくさいし砲撃の方で消し飛ばしてやろうかな?」
勇人はそう言いつつドラゴンブラスターを構える。
傍目から見ると勇人がゴーレムを一方的にボコボコにしているようにしか見えず、突如現れたモンスターに対しそんな対処ができる勇人に呆れて、かける言葉もなく立ち尽くしてしまっていた。
「ちょ、ちょっと勇人!一人で倒しちゃったら私達がウェポンコール使えなくなっちゃうでしょ?」
花実が慌てたように勇人を止める。
ブラスターを構えてあと一歩で発射というところまできていた勇人も花実の言葉に踏みとどまる。
「おっと、わりぃわりぃ」
そう言ってブラスターを下ろし、後ろに下がる。
そして花見に前を譲り、花実もそれにつられるように前に出る。
「ウェポンコール!」
勇人と同じように同じ言葉を叫ぶ。
するとまた先ほどと同じようにパソコンの画面のようなものが花実の前に出現し、勇人と同じように花実もそれを見て頷く。
「ウェポンコール!
精霊の涙《フェアリーティアー》」
花実の武器は勇人のブラスターとは正反対で、ごつい剣などではなく杖のような形状をしていた。
一メートルくらいの様々な装飾の施された棒の先に透き通った水色の球体がついている、RPGの中盤辺りで出てきそうな魔法使いの杖だった。
「えーっと…
こうかな?」
やや困惑した表情で花実が杖を横に振る。
すると水の塊が突然現れてゴーレムに直撃した。
水の塊は見た目よりも威力があったのか影も形も残さず消えていった。
ゴーレムは核か何かを元にして再生するタイプだったらしく、今度ばかりは再生してこない。
「っておい!俺まだやってないじゃん!」
花実が見事なまでにゴーレムを消し飛ばしてくれたおかげで俺の武器名は分からず終いとなってしまった。
「いやごめん…まさかこんなに威力があるとは…」
当の花実の方も予想していなかったらしく、困惑の表情だったので、これ以上は何も言えなかった。
「とりあえずどうする?まだ進む?」
今戦ったのはたまたま運良く弱いのに当たった可能性もあるし、とりあえず一旦引いた方がいいと言うのが鉄男の意見だったが、ここは武器を持っている友人に任せることにした。
「んー…一旦引いといた方がいいんじゃない?」
花実がやや悩みながらではあるがそう言うと、意外なことに勇人もそれに賛成してきた。
「まー花実がそういうならそれでいいんじゃない?」
もしかしたら勇人はさっき自分が何度やっても倒せなかったゴーレムを一撃で消し去った花実に恐怖を恐れているのかもしれない…
なんてバカみたいなことを思いつつ、早くも引き返し始めた友人について行こうとしたとき、鉄男は、いや彼らは、信じられない物を見た。
それはモンスターである。それも1体や2体ではない、十数匹、いやもしかしたら何十匹のモンスターが、彼らの来た道を塞いでいた。
「え、えーっと…
よかったじゃん鉄男!これでウェポンコール使えるね!」
勇人がガクガク震えながらそういってくる。
「そ、そうだな勇人…
とりあえずお前先陣切って俺に手本みしてくれよ…」
今にも襲いかかろうとしてくるモンスター達を見て三人共ジリジリと後退し始めていた。
「逃げよう!」
花実がそういったのと同時に俺達三人は更にダンジョンの奥の方へと入り込んで行くのであった。
◇
軍が壊滅したのは、ダンジョンが全て、来るもの拒まず、去るもの逃がさず。という仕組みになっていたからだと、俺達はようやく理解できたのであった。
今回はなんかやたらと長くなりました。
ネーミングセンスのなさについてはふれないでください。
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