大量のモンスターから逃げ出してから数分後。
突然な、しかも長距離の全力疾走をしたため花実と俺は地面にへたり込んでしまっていた。
「はぁ…はぁ…いつの間にか…いなくなってるわね…」
息を切らしながら花実がそう言ってくる。
言われて首だけを動かして走ってきた道を振り返ると、本当にモンスターに追われていたのかと疑いたくなるくらい影も形もなくモンスター達はいなくなっていた。
「そーいえば結局鉄男のウェポンだけ使ってねーなー」
なぜか一人だけほとんど息も切らしていない勇人がクールダウンのためかストレッチをしながらそんなことを言ってくる。
「使ってる余裕なかったし…ゴーレムは一撃で消し飛ばされてたし…」
視界の隅で花実が顔を背けたのがわかったが、ここではあえて何も言うまい。
「さっきのゴーレムみたいに、その辺のスイッチでも押したらまたなんか出てくんじゃねー?」
勇人が言いながら壁を手探りでペタペタと触っていく。
こいつは常日頃から何も考えず体を動かしているから、頭に振られるはずのパラメータまでも体力とか、身体能力に行ってしまっているんだろうか。
とりあえず、バカなことに違いはない。
と、それは置いといて確かにモンスターが一体で出て来てくれるのならウェポンコールも発動しやすいしそれに越したことはないのかもしれない…
バカはバカなりに案外役に立つのかもしれない…なんておよそ友人のことを思ってするよな思考ではないことを考えながら、とりあえずコンディションが整うまではモンスターを出さないようにと勇人を止めようとした瞬間、
ガチッ!
と聞き覚えのあるような音が聞こえたかと思うと、見覚えのある青い光が近くに集まり始めた。
しかし行動力こそすごかったこの行動は、とてもではないがいい行動とは言えなかったのではないだろうか。
なぜならさっきよりも鉄男たちはダンジョンの深くまで入り込んでおり、当然それにつれてモンスターのレベルも高くなっているはずである。
そうでなくてもさっきのゴーレムは相性がよかっただけで、ウェポン次第では相当の苦戦を強いられていたはずなのである。
ギャオオオオオオオオオ
突然そんな咆哮がダンジョン内に轟き、壁を反響して一層迫力を増していた。
咆哮が轟くと同時に青い光の輝きが止み、そこには一体のモンスターが鎮座していた。
一対の翼はバサバサと音を鳴らしながら風を起こし、鋭い鉤爪と凶暴そうな牙は今にも襲い掛からんとぎらぎら輝いている。
そして真っ赤に充血した鋭い眼光でこちらを睨みつけてくる体が黒がかったそのモンスターは、まぎれもなく空想の動物、まさにモンスターというべき。
ドラゴンだった。
◇
RPGのドラゴンと言えば、大抵は物語の進行の大きな障害となるような場合がほとんどで、それ以外だとラストダンジョン等で出現するモンスターだったりもするものだろう。
そして大体それに対抗する主人公たちはそれ相応の強固な鎧や、伝説の剣を持っていたりするものだ。
さて、今回ドラゴンに対抗する言うならば主人公のポジションにいる、
錆神 鉄男。
この男の装備は一体なにかと言えば…
「ウェポンコール!」
ドラゴンに向かい、そう高らかに鉄男が叫ぶと、鉄男の前にあの画面のようなものが浮かび上がる。
そして浮かび上がった画面を見て鉄男は目を疑った。というか現実を疑った。
「お、おい、ここに書いてあるのが自分のウェポンになる…んだよな?」
すでにウェポンコールを使ったことのある勇人と花実に聞いてみる。
「そうよ」
「お前見てなかったのかよ?」
そう言ってくるが、信じられない、というか信じたくない。
浮かび上がった画面にはこう書かれていたのだ
「ウェポンコール…錆びた剣…?」
その言葉を聞いて後ろの二人から驚愕の声が聞こえる。
「おい鉄男!ふざけてる場合じゃねーだろ!」
ふざけてるのはこのゲームの管理者だ。
久々の更新です。
アドバイス等気軽にお願いします