「鉄男は下がってろ!
ウェポンコール!ドラゴンブラスター!」
勇人が俺のウェポンを見て一瞬で使えないと判断したのか、俺を押しのけてドラゴンの前に飛び出る。
押しのけられて踏ん張る気力もなく俺は後ろに下がりながらへたり込んでしまった。
やっと世界が楽しいと思えてきたはずだったのに、これでは前と同じ、いやもっとつまらない。
後ろに倒れた拍子に錆びた剣を取り落としてしまったが、拾う気も全く起きなかった。
「鉄男…大丈夫…?」
花実が心配そうに話しかけてくる。
俺はそれにこたえることすらできずにただ虚空を見つめていた。
◇
結局ドラゴンは勇人のドラゴンブラスターによって跡形もなく消し飛ばされた。
花実と勇人の武器は二人の引きがよかったのかとても強力なものだったのかと気づくと、一層自分の武器の使えなさに、みじめさすら感じていた。
「で、どうするよ、この後。
多分戻ろうとすればさっきみたいにモンスターが来るんだろうけどな…」
その口調はまるで戻ろうという思考を放棄して、先に進むしかないという一種の諦めも交じっているように感じた。
「まぁ…進むにも戻るにも…こんな錆びたもんじゃ俺はどうしようもないんだけどさ…」
そういうと、花実も勇人も、俺の様子を悟ってか黙り込んでしまう。
本当に、こんな対応をされると自分が惨めでしょうがない。
油断すると涙が出てしまいそうなくらいだ。
と、勇人が顔を上げる。
「俺いいこと思いついちった―」
「うっせーバカ」
◇
勇人の思いついたいいことがどんなことなのかは、頑なに勇人が口を閉ざすので、どんなことか知ることはできなかったが、得意気な顔の勇人を見てると、案外暗かった気分も晴れてきている。
考えてみればバカな勇人も、周りを活気づけるのは昔から確かにうまかったような気がする。
そしてそんな得意気な顔をしつつどんどんとダンジョンの深くまで入っていく勇人を先頭に、俺と花実もダンジョンの深くに入っていく。
というよりは勇人が何をするかは全く言わずにどんどん歩いていくので、それについていくしかなかったのだが。
そしてどのくらい歩いただろうか、ついに今までより大きく開けた場所に出てきた。
開けた平らな広間の奥には、二体のドラゴンの像が置いてあり、他には彫刻の施された柱くらいしかなかったのだが、中央にだけは箱が置いてあった。
その広間はまさにボスの間といった風で、多分あの箱で何か動作することでボスが出現する仕組みなのだろう。
箱は遠目から見る感じでは一メートルくらいの、黒い立方体の箱だった。
「よしついたな」
勇人はそういいながらも中央の箱に向かって歩いていく。
「勇人!さすがにそろそろ何するか説明してよ!」
花実が我慢の限界というようにそう言うが、勇人はいまだに何も言わない。
そして箱にたどり着くと、操作方法というか、何をしていいかわからないようで、俺と花実に前を譲る。
「俺たちに何かしろって言われても無理なんだけどな…」
言いつつも勇人に任せていたらいつまでたっても何も起こらなそうなので、箱に近づく。
しかし近づいてみてようやく分かったのだが、その黒い箱には一切ボタンなどの操作できそうなものがついていなかった。
「これ…どうしようもないじゃない」
花実が嘆くようにそう言いながら箱に触れる。
すると箱からウェポンコールの時のような画面が現れる。
その画面には信じられないことにあの天才が写っていた。
◇
「やぁやぁ諸君。
諸君と言っていい人数なのかはさておくとして、まぁ諸君と呼ばせてもらおう。
しかし諸君は素晴らしいね。
軍があれだけの大打撃を受けて壊滅するようなところを、こんな子供の、しかもたった三人で抜けてくるとは実にすばらしい。
大人の臆病さが手に取るようにわかるよ。
そう思わないかい?なにせダンジョンは出ようとするかトラップにかかるかしないとほとんどモンスターは出てこない仕組みなんだから。」
饒舌にそこまでしゃべったところで、やっとその口が止まる。
「っててめぇ!ウェポンコールってなんだよ!ふざけてんだろ!」
と、ついついそんな風に語調が荒くなってしまったが、仕方あるまい。この女のせいで俺はとことん惨めな思いをしているのだから。
「おやおや、君のウェポンコールは特別なものにしてあげたというか、特別なものになっているというのに、ひどい言いようだね。
まぁ無理もないかな?
しかし…」
そこまで言ったところでスッと天才の目が細く、鋭く光った。
「言葉遣いには気をつけろよ…」
天才がそういうと俺の体は何かに固められたように全く動かなくなる。
そして喉に鉛を詰められたように息ができなくなり、どんどん息苦しくなる。
「分かったかな少年?この私がどれほど強大な存在なのかが」
そしてそれまで全く動けなかったのが、唐突に自由になり、俺はその場に倒れこむ。
「鉄男!」
そう言いながら花実が俺に寄り添う。
「まぁあまり乱暴なことはしたくないというのが私の本音だ。
とりあえずこのあとこの場にボスが現れるから、君たちはそれと戦ってくれればいい。
なぁに、そんなに強い敵が出てくるわけではない。
本当にレベルの高いボスはもっと深いところにある深いダンジョンに配置してあるからね、そういう意味ではこのダンジョンは小規模の部類に入るものなのだよ。
外装こそ派手に見えただろうがね。」
どうやらこの女はおしゃべりが好きなタイプらしい。
と、それまで黙っていた勇人がスッと前に出て、天才に話しかける。
「鉄男のウェポンは、RPGの鉄板だと思うんだけどさーあってるのかな?」
天才相手にも全く動じる様子の無い、いつもと変わらぬ軽い口調だった。
「ほう、そっちの少年はなかなか分かっているじゃないか。」
「まぁ昔っから、体動かしたりゲームしたりしかしてないしねー
こんくらいならちょっとでもRPGやったことのあるやつならわかると思うけどさ。」
どうやらすでに二人だけに通じているものがあるようだ。
「それでは諸君。
ボスバトル、頑張ってくれたまえよ。」
そういうと天才を映していた画面は消え、後には静寂だけが残った。
二日連続の更新です
若干長くなってしまいましたが、これからはもっと長いのを書いていこうと思います。
アドバイス等、気軽にお願いします