ラグナロク…それは北欧神話における終末の日のことである。
そしてこの世界でそのラグナロクは、終焉を意味していた。
「ウェポンコール
一振りの終焉《ラグナロク》!!」
俺がそう叫ぶと、箱の近くに落ちていた錆びた剣が黒く蠢きだす。
追撃をしかけようと走っていたドラゴンに追いつかれぬよう、必死で走り剣を目指す。
「ウェポンコール!ドラゴンブラスター!」
視界の端で勇人がそう叫び、武器を出現させてドラゴンを食い止めようと走ってくれているのがわかった。
「勇人頼んだぞ!」
そして後ろで鉄と岩がぶつかるような激しい衝撃音が聞こえると、それまで絶えず鳴り響いていた地響きのようなドラゴンの足音が止む。
勇人を信じて防御のことは考えず、スパートをかけるように走る。
すでに剣は蠢いてはいなかった。
少し屈んで剣を手に取り、必死に踏ん張って方向転換をしながら、ドラゴンに駆けだす。
今度こそ勢いに任せてドラゴンをぶった切って、戦闘を終了させてやる、そう決めて走る。
「勇人!かがめ!」
俺がそう叫ぶとドラゴンの突進を剣の腹(正確には刃と刃の間の銃の部分)で受け止め、なんとか踏ん張ってくれていた勇人が、雄叫びを上げつつドラゴンの攻撃をはじき、足を折り曲げて屈む。
「うおおおおおおお!!」
ドラゴンの顔めがけて、ラグナロクを横薙ぎに振り払う。
ドラゴンがやっと俺に気づいたように回避しようとするが、もう遅い。
そして、ここで俺が、いや花実や勇人すら全く想像できてなかったことが起こる。
ラグナロクの刀身がドラゴンに触れた瞬間、触れていったところから闇に浸食されるように、ドラゴンの体が消滅していったのだ。
完全に振り切ると、ドラゴンの体は完全に消滅しきっていた。
ふと手元を見るといつの間に消えたのやら、ラグナロクも消え去っていた。
「一振りの終焉ってのは、刀一本のことを指す一振りじゃなくて、一振り限定ってことなのか…」
「鉄男!やったな!」
しゃがんでいた勇人がこちらを振り返りながら、立ち上がって声をかけてくる。
もちろんあの、得意気な顔とともにだ。しかし今回は得意気なだけでなく、俺が強い武器を手にしたことによる、喜びも含まれていたようにも感じられた。
「ゆ、勇人!今のどういうこと!?」
花実が驚きながら駆け寄って来る。
「そりゃあ決まってんじゃん」
そして一旦間を置くと
「錆びた剣ってのは最強武器になるのが、RPGの鉄板だからさ」
そういった勇人は、いつにもましてとても頼もしく見えた。
◇
ボスを倒すと強制的にダンジョンから出させられる仕組みになっているらしく、ボスを倒してしばらくすると青い光が俺たちを包み、入口付近へとワープさせられた。
ワープというこれまで体験したことがあるはずもない現象に感動しそうになる俺たちだったが、ダンジョンの外で待ち構えていたものによってその感動は阻まれた。
「な、なんだこいつら」
思わずそんな言葉が口から漏れる。
そこで待ち構えていたのは、十数人ほどの覆面をかぶった人間だった。
「も、モンスターじゃねぇよな…」
勇人もそんな風に戸惑いの声を上げる。
そしてこちらが混乱している間にそいつらは臨戦態勢に入っていて、いつ襲い掛かってきてもおかしくないようだった。
「やれ」
そんな太い声がそいつらの中央ほどから聞こえてきた。命令口調なところを見ると、その男がこの場にいる団体のリーダーらしいと推測できた。
推測ができたところで今更そいつらを止めることもできず、やむなく戦うことを決意したらしい勇人が先陣を切る。
「ウェポンコール!ドラゴンブラスター!」
そう叫んで武器を取り出すと花実に襲い掛かろうとしていた一人を剣の腹で突き飛ばすと、そのままの勢いで剣を一回転させる。
「たたっ斬られてぇやつから前へ出ろ!」
そう叫ぶと少しは効果があったようで、身構えていた奴らが怯んだのがわかった。
「もしかして貴方たち、噂の反世界変換化組織…?」
花実が遠慮しながらもそう尋ねると、中央にいたリーダーらしき人物が前へと出てくる。
「噂と言われてもそんな噂は聞いたことがないが、この世界を変えさせまいと動いている者達のことを指してそう呼んでいるのだったら、その通りだ」
あっさりと認める男だったが、それを当てたくらいで見逃してくれる気はないようで、むしろ好都合だというように身構える。
「ウェポンコール、
猛毒の蛇銃《オールオート・フルポイズン》」
俺たちが必死に会得したその武器を、男は長年の相棒の名前を呼ぶかのような慣れの感じられる声で、召喚する。最低でも使っているのは一日や二日のはずなのに、その口調からは新鮮なものを扱うような響きは全く感じとられなかった。
出現した奴の武器はどうやら銃のようで、銃身からは時折、禍々しい紫の邪気がこぼれ出ていた。
「悪役らしい武器だぜ、ったく。
武器にはそいつの性格がでるようにでも設計されてんのか?」
勇人はさりげなく体勢を整えながら、そう呟く。勇人が臨戦態勢に入ったのを見て、花実はそっと呟くようにウェポンコールと唱え、あの杖を召喚していた。
「ふん、たった三人でダンジョンをクリアしただけのことはある、場慣れしているとは言い難いがそれ相応の態度はとれるようだな。」
「けっ、今にそんな態度とれねぇようにしてやるぜ。」
勇人が言いながら、目線で俺に隠れてろと伝えてくる。一瞬雑魚扱いするなと叫びそうになるが、よく考えれば俺の武器はラグナロクを発動しない限りただの雑魚なのであった。ラグナロクも一回攻撃すると消えてしまうようだし、この場では使えないと判断したのだろう。
「お前は今俺のことを悪役といったな、俺は悪役などというちっぽけなものではないのだが、しかし敢えて場に合わせてこう言ってやろう。
貴様等、今すぐに我々に頭を垂れて降伏し、我々に忠誠を誓うというのなら見逃してやるが、どうする?」
「雑魚が!なめんな!」
勇人は男の発言にまるで屈する風もなく、そう叫ぶと花実と呼吸を合わせることすらせず、単身で男たちの中に突っ込んでいった。
久々の投稿です。
なんだか鉄男君空気で勇人君ばっかイケメンですね。
しかし勇人君からあふれ出る噛ませ臭といい、文章のグダリ感といい、総じて微妙ですね。
気軽にアドバイス、コメント等をよろしくお願いします