艦隊これくしょん―ある提督の記録―   作:こきゅー

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「さて、昨日の話忘れたとは言わさないネ」

「分かってるよ……だけどさ、その……」

「はい、何でしょうか?」

「早く早く~!」

「なんで野分と舞風がいるんだよ!」

「私がたまたま見掛けたので連れてきました! 旅は道連れ世は情けデース」

「私だけがダメージを負ってるんだが」

「私も、昔の提督に興味があります!」

「私も私も~! その後で一緒に踊ればいいじゃん!」

「何を、何がいいのか教えてくれ……」

「それでは、提督?」

「分かったよ……そうだな……まぁ、初めからでいいか」


初めての艦娘

私はただの人だ。普通の生活を過ごし一般的な暮らしを送ってきたつもりだ。だが、ついさっき私は……。

 

「ここが……私の……鎮守府か」

 

海軍に友人と一緒に試験を受け、見事俺たちは海軍に入隊することに成功した。夢も何もない私は就職先に困っていたが、友人の誘いを受けダメ元で勉強をこなしたりしたのだがな。それからも訓練が辛かったり頭が追い付かなかったりと何度も心がおれたがここで逃げるほど跡はないと言い聞かせ何とか一人前の提督として成長することができた。

 

(取り敢えず私の部屋である司令室に向かおう。そこに艦娘がいるはず。第一印象が大事だ、格好良く決めるぞ)

 

「あ、本日付で配属となった新しい提督ですか?」

 

「ふぇっ?」

 

台無しだ……いい年こいたおっさんが情けない声を発してしまった。

 

「驚かしてしまい申し訳ありません。私は提督のお世話やこの鎮守府内を管理する艦娘です」

 

眼鏡をかけて片腕で資料を持っている少女はそう告げると一礼する。

私も釣られて頭を下げる。

 

「ご丁寧にどうも。それで、貴方は一体……」

 

「私は艦娘です。そうさっきも言いましたが」

 

「あ、そうじゃなくて……名前は?」

 

私が噛み砕いて何を聞いているのか説明すると少女は慌てて訂正する。

 

「し、失礼しました。私の名は大淀と申します。鎮守府や作戦の指揮など私が提督にレクチャーすることになっていますのでよろしくお願い致します」

 

今度は頭を深く下げ、私の指導役として威厳を見せる。

 

「こ、此方こそ。不束者ですがよろしくお願いします」

 

私もさっきより頭を深々と下げる。こんな調子で情けない人だとか思われてないかなと不安にもなる。

 

「それでは執務室にご案内させていただきます。それから秘書艦との顔合わせ、仕事内容についてご説明させていただきますので、とりあえず付いてきてください」

 

「了解であります!」

 

私から見て大淀と名乗る艦娘はクスっと笑ったのが後ろ越しに分かった。私はこれから大丈夫だろうか。今のうちにトイレの場所でも聞いておこうかな。

 

-ーーー☆ーーーー☆ー-ーー☆

 

「ところで大淀さん?」

 

「大淀、と申し付けください」

 

「大淀…………さん」

 

「もう、しっかりしてください。提督がそんな艦娘に弱々しく接してどうするんですか!」

 

「申し訳ない……」

 

普段なら私が艦娘にこんな説教やら指示を下すはずだったんだけどなぁ……大淀は立ち止まるまでの数分間ずっと怒っていた。

 

「着きましたよ、中へどうぞ」

 

執務室に到着する頃には怒りは収まっていたようで私に見せた顔は初めて出会ったような笑顔で対面した。

 

「あ、あぁ……」

 

コンサートホールに設置されてそうな大きな扉の取っ手を大淀が引っ張り中へ開ける。流石に設備は充実している、と喜ぶべきか、深海棲艦への盗聴を防ぐための厳重なセキュリティのたわものとして慎重に扱え、ということか。

 

「ここで提督は様々な艦娘と触れ合いながら敵深海棲艦たちへの攻撃、そして制海権を奪い返すのが主な仕事となっています」

 

この内容については私も訓練生時代によく上官から聞かされていた。「今の我々がいなければ昔の時代に逆登りだ!」とか言ってたが、結局は艦娘に頼らなければ何も出来ない無能集団と心の奥でずっと思っていたのでそこまで私は敬えなかった。

 

「ここまでで、何か質問はありませんか?」

 

私は今日から生活の一部と言っても過言ではない仕事場をぐるっと見回し、質問をする。

 

「私の秘書艦は……」

 

この鎮守府に来る前に事前に私と試練を共にする艦娘を決めていた筈なんだが、その姿は見当たらない。

 

「少々遅刻しているとのことです。もうまもなく到着するかと」

 

初日から遅刻とは、艦娘というのは大淀のような厳格とした艦娘が多いかと思っていたが違っていたようだ。

「艦娘にも個性があり、それぞれに合った接し方が大事だ」とか友人が言ってたな……かといって、私は異性と話すのはどうも苦手で……初めての艦娘も適当に決めてしまったことを今更ながら反省する。

 

「どうかしましたか?」

 

「い、いや、何でもない」

 

今は話せているというか大淀のペースに持っていかれているというのが正解だ。もっとトークスキルを上げておけば良かったか……?

 

「なんという後悔だらけの初歩だろうか……」

 

「提督?」

 

大淀をそっちのけに思わず頭を抱えてしまう。私のような中途半端な男が海軍に所属するのは間違っていたのか。

 

「お、遅れてすいませんっ!」

 

そんな時、大淀とは違う声が聞こえた。けれど私は気にせず落ち込み続けていた。

 

「えっと……あの人が提督さんですか?」

 

「そう。これから貴方はこの人と困難を共にするの。なのに初日からドタバタと……」

 

「ご、ごめんなさいです……」

 

ハハ、私と同じだ。初めてのことで緊張でもしていたのだろう。心境が似ていることから他人事のように考えていると元気が出てきた。こんな子ならば一緒に頑張れそうな気がする。

 

「あ、提督、紹介が遅れました。この艦娘が今日から配属となった電です。間違いはありませんか?」

 

間違っているとしても、私はこの艦娘がいいな。大淀のようなしっかり者でもいいのだが未だにぎこちない返事をしてしまう。それならば親近感が湧くこの女の子の方が私には必要だ。

 

「合ってるよ」

 

「分かりました。では電、あなたも挨拶を」

 

「は、はいなのです! えっと、暁型の電です。どうかよろしくお願いいたします」

 

初々しさを見せつつペコリと頭を下げる彼女は電というのか。なるほど、もしかすると上官は私の相性を考えてくれていたのかもしれないな。

 

「私が今日からこの鎮守府の指揮に当たる提督だ。不束者だが宜しく頼む」

 

「はいなのです! 電も精一杯お手伝いするのです!」

 

うんうん、何だか結婚すらしていないのに娘が出来たかのようなほっこりとさせる。

 

「それでは、自己紹介も終えましたことですし、次は出撃や遠征についてご説明します。しっかり聞いていて下さいね?」

 

「はいなのです!」

 

「了解」

 

それから俺たちは大淀の説明会をしっかりと聞いて理解した。電も見た目は可愛い少女だと言うのに深海棲艦についてはしっかりと倒すと発言していた。駆逐艦だと聞いていたが、無理はしないで欲しいな。

 

「ーー以上で説明を終了させて頂きます。ご清聴有り難う御座いました。それでは、私はこれで。お二方の活躍を期待しています」

 

「ありがとうな、大淀」

 

「いえ、私の方こそ、提督が着任してくださり感謝しています」

 

部屋から去る際に言ったことは私にとっては重みを感じてしまう。頼りにされるのは嬉しいけど、私が勤まるのだろうか心配はある。

 

「司令官さん!」

 

「ん? どうした?」

 

「そんなに一人で抱え込まないで下さい、私も精一杯司令官さんのお役に立って見せます!」

 

「ああ、だけど電だって無茶はするなよ?」

 

「了解なのです!」

 

そんなこんなで、私の新たなる人生が幕を開けた。頼もしい小さな艦娘も側にいる。私は何とかやっていけそうだと自信が付いた。

 

 

ーーーー☆

 

○月□日

 

そんなこんなで提督業をこなしつつ艦娘とのコミュニケーション及び深海棲艦を撃退など一度に様々なことを行うのは骨が折れる。実際、電の次に着任となった駆逐艦と軽い挨拶代わりに手を差したのだが私の指が何本か悲鳴を挙げていた。

新しいことを始めたからには早くこの環境に順応することが優先すべきことだが、私は一週間程かかった。電も、ここの鎮守府についてはあまり詳しくないようで分からないことがあれば大淀を探していた。そんなある日のことだった。

 

「あたしが軽巡北上、まあよろしく」

 

「私がこの鎮守府の提督を勤めている提督だ。これから頼りにさせてもらう」

 

これが軽巡北上か、駆逐艦よりも見た目は大きく武装もしっかりしている。これならば敵を一発で沈めてくれそうだ。今までは敵を落とす決定打が物足りなかったが、彼女ならその歯止めとなってくれよう。

 

「電です。どうぞよろしくお願いします!」

 

「あ、うん! 仲良くしようね~」

 

隣でいた電も北上に自己紹介をする。北上も我々との友好的関係を結びたいようで安心する。先日着任した曙は私に向かって「クソ」と思いっきり罵られたばっかりだったのでここに記そう。

かと思えば私を男性としてか、提督としてかは不明だが誘惑してくる駆逐艦もいたな……確か如月とか言ったか。勿論、提督が不埒なことに手を出すとは男としても生涯踏み外すことはない。神にだって誓える。

 

北上は練度を上げていけばゆくゆくは重雷装巡洋艦になる。そうなれば敵艦隊に大きな損害を約束してくれるだろう。

別の時刻だが、南西諸島に侵攻撃艦隊が現れたという知らせを受けた。日も沈み活動可能な艦娘も少なかったので明日に敵機動部隊を叩くことを決意し、私は第一艦隊に以下の艦娘を収集させた。

 

「旗艦は電。後は天龍、龍田、多摩、北上、千歳……この編成で明日、マルキュウマルマルをもって鎮守府近海に攻撃を開始する。今日は明日に備えて待機していてくれ」

 

「「「了解(なのです!)」」」

 

ここで撃ち取ることに成功すれば新たな海域に足を踏み出せる。何より以前よりは安心して眠れる日々を過ごせるだろう。

さて、私も一眠りするとしよう。まだ仕事は残っているが明日のことに頭を回そう。




「これが提督と初めての共同作業をこなしたデンちゃんデスかー」

「『いなづま』だ金剛」

「そうそう、雷電デース!」

「覚える気ないだろ……野分たちも、満足したか?」

「はい! 貴重な時間だったと思います」

「っふ、満足なんて言葉は忘れてしまったさ……」

「舞風は何を言ってるんだ?」

「舞風! ふざけたらダメでしょ?」

「のわっちが怒るならやめます……」

「のわっちって呼ばないでって何度言えば……まぁ、舞風なら私は何でも……」

「のわっち……!」

「もう、舞風やめてってば。提督たちも見てるよ?」

「それじゃ、舞風たちはこれで失礼しますッ!」

「て、提督、気を悪くしたなら謝ります。ごめんなさい。それでは、失礼します」



「仲良いよなあ……」

「提督、続きを聞かせるデース!」

「バカいえ、お前も任務が残っているだろ? また明日だ」

「うぅ……これも試練ですか。うん、私、ガンバるネ!」

「おう、死なない程度に頼むよ」

「あったり前ネー!」
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