ALOにログインしてすぐに、レインはヴォークリンデの上空へと飛んだ。友人が何人かログインしているが、今は彼らにだけは会いたくない。ラインから出る時に誰かから話しかけられた気もするが、気づかない振りをして転移した。一人になりたいがために、自分しかいかない小さな小島へと向かう。
今は、今だけは誰にも会いたくはなかった。
それなのに。
「キリト君……」
そこに、キリトがいた。キリトはレインに気がつくと、わずかに驚いたような表情を見せる。どうやら彼もレインがここに来るのは予想外だったらしい。
「レインか。って、どうしたんだ?」
キリトがレインの顔を見て、慌て始めた。その理由はすぐに分かる。だからこそ、レインは誰にも会いたくなかったのだ。ならばログインなどしなければよかったのだが、狭い部屋にいると余計に気が滅入りそうだったというのもある。
レインはキリトから顔を逸らしながらも、彼の隣に降り立った。そのままその場に座り込み、顔を伏せる。
「えっと……。レイン?」
「今は……一人になりたいの……」
小さな声でそう答える。キリトは少し悩んでいたようだったが、レインの隣に腰を下ろした。
「さすがに一人にして行けない。そんな泣き顔を見たらさ……」
レインは何も言わず、涙で濡れた顔をさらに伏せた。
そのまましばらく、静かに時間が流れていく。キリトは何も言わず、ただレインの側にいるだけだ。何があったのか、と聞いてくることもない。ただただ時間だけが流れていく。
どれほどそうしていただろうか。いつ設定したのかも分からないアラームが聞こえ、レインは顔を上げた。メニューから時間を確認する。もう夜の七時だ。ここにログインしたのは惨事頃なので、四時間近くもここにただ座っていたということになる。
だがそれでも、レインの心は晴れない。自虐的に笑い、そう言えばキリト君はどうしたのかなと隣を見て、
「え、あれ……? キリト君?」
「ん……。ああ、レイン。もう大丈夫なのか?」
キリトは変わらずそこにいた。そして笑顔を向けてくる。
「よし。じゃあ行くか。あ、それともこのまま落ちるか?」
そのキリトの笑顔が眩しくて、優しさが胸に苦しくて。いつの間にか、またレインは涙を落としていた。
「え、ええ! ごめん! 別にそんなつもりで言ったんじゃなくてだな……!」
慌てふためくキリトを見ていると、自然とレインは笑顔を零していた。
「気にしないで。私の事情だから……」
「てことは、えっと……。オーディションのことか……?」
控えめなキリトの問いに、レインは小さく頷いた。
先日受けたオーディション。狭き門なので落ちることは初めてではない。ただ、最後の最後で失敗をして、最終オーディションで落ちてしまった。それが悔しくて、しかし自分の失敗なので誰にも何も言えず、せめて一人で泣いておこうとここに来たのだ。
そのことをキリトに話すと、キリトはそうか、と複雑そうな表情で頷いた。
「キリト君。別に私のことはいいからね? 明日にはちゃんと、元気になるから」
「レイン……」
「だから今は、もうちょっとだけ、泣きたいな……」
そう言ってキリトに笑顔を見せる。ただどうしても笑顔がうまく作れず、泣き笑いのようなひどいものになってしまった。
レインは、もう少しここにいようとまた顔を膝にうずめようとして、
そっと、温かいものに包まれた。
「え、あ……。きりと、くん……?」
顔を上げる。キリトが、レインの体をそっと抱き寄せていた。
「俺も……何もできないけどさ。でも、せめて側にいるから」
俺だと頼りないかもしれないけど、とキリトが照れたように笑う。レインは呆然とその顔を見ていたが、すぐに苦笑を漏らした。キリトへと、体重を預ける。
「じゃあ、ちょっとだけ……」
「ああ」
キリトの体に体重を預け、彼の体温を感じる。それだけで安心できてしまい、そして自然と涙が止めどなく溢れてきた。
嗚咽を漏らし始めたレインの背中を、キリトは優しく撫でてくれていた。
さらにしばらくして、ようやく涙が止まり、レインはキリトから体を離す。そのレインの表情を見て、キリトは安堵のため息をついた。
「もう大丈夫そうだな」
「うん。ごめんね、心配かけちゃって」
「気にしなくていいよ。俺の調子が狂うからな」
そう言って笑うキリトに、レインも笑みを返した。
「それじゃあ、一度街に戻るか。みんな心配してるみたいだから」
「う……。やっぱり、見られてた……?」
「ああ。まあ、俺も一緒に謝るよ」
そう言って、キリトが手を差し出してくる。レインは行きたくないなと少しだけ思いつつも、キリトの手を取ろうとして。
突然、風が吹いた。
「わわっ!」
「おっと」
バランスを崩して倒れそうになるレインを、キリトがすぐに支える。またもキリトに体を預けるような体勢になってしまい、レインは顔を赤くした。
「ご、ごめん……」
「いや。大丈夫か?」
「う、うん……」
キリトから、体を離す。少しだけ名残惜しいと感じながら。
「それじゃあ、改めて……。行くか」
「うん」
キリトが差し出してきた手を、レインは今度こそしっかりと握った。
さらに短くなりました。
今回書きたかったものは、レインちゃんを抱きしめるキリト君の構図。
でも無理矢理でした。いつかリベンジしたいです。
ちなみに今回も読み直しをしていないので誤字いっぱいかもです。
以下、コンプリートガイドを読んだ方向け。
これ、実は30分で勢いのまま書きました。
いえね、ロストソングのコンプリートガイドが何故か今日届いたのですよ。
これ幸いとばかりに中を見て、じっくり見て。
とてもすてきなイラストを見つけました。
イベントCGの最後のやつですね。
多分アップデートで追加されるサブイベのCGなのでしょう。
破壊力やばいです。勢いのままレインを書くたくなったぐらいには。
これから買う方は是非とも一度見てください。いや、もう、うん。買って良かった。
あの1枚で私は満足だ……!
ああ、くそ、リアルで誰かと語り合いたいなあちくしょうめ!
これ、公式サイトでは未だ隠してるアップデートの追加キャラも書いてるのですが、いいのかな?
誤字脱字の報告、感想などいただければ嬉しいです。
ではでは。