Transform! And we go ahead to the tomorrow…    作:ハギシリ

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仮面ライダー龍玄×アイドルマスターシンデレラガールズ
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 歌手や俳優が多数所属し、映像コンテンツの企画立ち上げも行っている346プロダクションの比較的新しいアイドル部門。

 オフィスビル30階にあるシンデレラプロジェクトルームに、一人の大柄な男性と3人の少女が向かい合って座っていた。

 

「沢芽市?」

 

 3人の少女のうち、黒い長髪を持った少女、渋谷凛が男性に問いかける。

 男性は軽く頷くと、手元の資料をめくって、3人への説明を続ける。

 

「はい。今回の仕事は沢芽市の復興イベントの協力になります。さらに今回はあのビートライダーズとの合同イベントを企画中です」

 

「ビートライダーズ…ですか?」

 

 2人目の少女、島村卯月が疑問の声をあげる。

 

「ご存知ではありませんでしか。

ビートライダーズとは、沢芽市で活動するダンスチームの総称です」

 

 プロデューサーはある程度かいつまんで、ビートライダーズについて簡単に三人に説明する。

 

 いつもに比べて妙に口数の多いプロデューサーに対して、三人はその話をまるで物語でも聞くような不思議な面持ちで聞いていた。

 

「…そして、彼らはあの『ユグドラシル大災害』の最中でも市民の救助を積極的に行っていたそうです。そんなこともあって、今では町のシンボルだそうです」

 

「なんかプロデューサー、いつになく饒舌じゃん」

 

 3人目の少女本田未央がからかうような口調でプロデュサーに問う。

 だがプロデューサーはそんな事を気にする様子もなく、どこか昔を懐かしむような表情で答えた。

 

「そう、ですね。…もしかしたら沢芽市には彼がいるからかもしれませんね」

 

「彼?」

 

「はい。葛葉鉱汰さんという人物です。

きっとみなさんにとっても印象深い人物になると思いますよ」

 

 

***

 

 

「沢芽名物 沢飯…おいしいの? これ」

 

「わっ、見てください皆さん!

あのお店のケーキすっごくおいしそうですよ!」

 

「えっ、どれどれ!? わっ、ほんとだ!」

 

 女三人寄れば姦しいと言うが、今の三人はまさにそれを体現していた。

 沢芽市に到着すれば、あれはなんだ、これはなんだとはしゃぎ出す辺り、アイドルと言ってもやはり10代の少女といったところだろうか。

 

「あそこは…シャルモンっていうお店ですね。あそこのケーキはいろんな雑誌で紹介される程の人気商品だそうです」

 

 プロデューサーが手にした観光ブックをめくりながら解説する。

 

「へぇー! そんなに美味しいんなら後でみんなで食べに行こうよ!」

 

「うん、いいんじゃない。ね、プロデューサー?」

 

「あ、いえ、私は…」

 

「えー! いいじゃん!

プロデューサーも一緒に行こーよー!」

 

「…まずは、仕事を済ませてからにしましょう。場所は近いので後で再び来ることは可能ですので」

 

 結局、ステージに向かう途中もあれこれと目を奪われ、到着したのは30分も後のことだった。

 ステージには既にビートライダーズがダンスの練習を始めているようだった。

 やがてこちらに気付くと、センターで踊っていた赤と黒のジャケットの男が音楽を止めてこちらに歩み寄ってくる。

 

「よぉ、あんた達が今回のゲストだよな? 貴虎から話は聞いてるぜ。

ああ、ちょっと待っててくれ、貴虎もすぐに来ると思うからよ」

 

 いかにも人のいい好青年といった感じだった。

 端正ではあるが、人柄の良さそうな笑みのためか、イケメンというよりはいい人という印象の方が強い。

 

「俺はビートーライダーズのリーダーをやってるモンだ。ザックって呼んでくれ」

 

「「「よろしくお願いします」」」

 

 続いて、先ほどまでスタッフと打ち合わせをしていたスーツの男性がゆっくりと歩いてくる。

 

「私は今回の復興イベントの主任を任されている、呉島貴虎だ。よろしく」

 

 どうやら彼が先ほどのザックの話に出てきた貴虎らしい。

 軽い挨拶を済ますと、貴虎はさっそく仕事の話を始めようとする。

 だが、不意に彼らの耳に入った意外な言葉が、それを遮ることとなった。

 

「おい…あれ、ミッチじゃないか?」

 

 ビートライダーズの一人が指差した方向では、一人の少年が遠巻きにこちらの様子を伺っていたようだ。

 

「えっ!? ほんとだ!

ミッチ! どう?まだ一緒に踊る気になれないかな?」

 

「…ごめん」

 

「そっか…」

 

 その一言だけを小さく告げると、ミッチは逃げるようにしてその場を去ってしまう。

 あまりに不自然なその動作は、まるでなにかに怯えているようにも見えているようにさえ見えた。

 

「ミッチ、まだ自分のこと許せないのかな?」

 

 ビートライダーズの面々が口々にミッチを心配する声を上げた。

 

 なかには、あんなやつは放っておけという声もあったが、ザックが宥めていた。

 

「あの、今の人は…」

 

「私の…弟です。あいつのことは気になさらないでください」

 

 卯月の言葉を貴虎があっさりと切ってしまう。正直、気にするなと言われても無理な話だが、兄にそう言われてしまえば卯月に返す言葉はなかった。

 

「ねぇ、未央ちゃん。今の人…泣いてませんでした?」

 

「え、そう? 別に普通だったと思うけど」

 

 確かに、あまり生気の感じられる表情ではなかったのも事実だが、泣いている、というのとは少し違う印象を感じる。

 

「ところで…失礼ですが、葛葉鉱汰さんは今回のステージには参加されないのでしょうか?」

 

「…! なぜ、彼のことを?」

 

「実は私、現役時代の彼に一度お会いしたことがありまして。

最近彼がビートライダーズに復帰されたとお聞きして…彼ならば彼女たちにとっても良い刺激をになってくれるのではないかと」

 

「…申し訳ないが、彼は既に引退した身なので、今回は」

 

「そう、でしたか…。

こちらこそ申し訳ありません。無理なお願いを言ってしまいました」

 

 言葉とは裏腹にプロデューサーは少し落胆した表情を見せる。

 そんなに付き合いの長いわけではないが、卯月にはその表情がとても珍しいものに感じられた。

 プロデューサーをこんな表情に出来る葛葉鉱汰とは一体どんな人物なのだろうか。

 

「プロデューサーさん、その人って…」

 

「それより、今は仕事の話をしましょう。まずはステージの件ですが…」

 

 またも卯月の言葉を貴虎が遮る。

 彼は複雑な表情を浮かべていた。この葛葉鉱汰に関する話をまるで避けているかのような態度だった。

 よく見れば、貴虎の他にもザックや他数名のビートライダーズも同じような表情をしていた。

 

「失礼。三人は、申し訳ありませんが打ち合わせが終わるまでは待機という形でお願いします。そう遠出しないようでしたらどこかへ行かれても構いません」

 

「はい! じゃあ私たち、さっきのお店で待ってますね!」

 

 

***

 

 

 洋菓子店シャルモンは沢芽市の女性を中心に人気の店である。

 決して安い値段ではないものの、確かな商品の品質と、店員の丁寧な対応で、今や沢芽市でその名を知らないものはいないほどの人気店である。

 しかし、シャルモンが人気店になった理由にはガイドブックには決して載ることの無いもうひとつの隠れた理由があった。

 それは…

 

「あー、いらっしゃーい。

凰蓮さーん、なんかお客さんですよー」

 

「ンバッカモォーン!!

お客様の前でなんて口の聞き方!

それとお店ではワテクシのことはパティシエと呼びな・さ~い!」

 

「いってぇ! つぁ~…」

 

 日夜店長と店員によって繰り広げられる、どつき漫才である。

 店に入ってわずか数秒の出来事に、三人はいきなり言葉を失ってしまった。

 

「失礼いたしました、お客様。

ワテクシ、この店でパティシエを務めております。 凰蓮・ピエール・アルフォンゾと申しましてよ。 Merci d&;avance(よろしくお願いします)」

 

「こ、こりゃご丁寧にどうも」

 

「こ、こんにちわ…」

 

「(なんだか個性的なお店ですね、凛ちゃん!)」

 

「(個性的すぎる気もするけど…) 」

 

 尻込みする三人を置いて、凰蓮と名乗る屈強なオカマは、痛みのあまり座り込んでいた店員の後ろ襟を掴んで無理やり起立させる。

 

「それで、こっちの坊やはパティシエ見習いの…」

 

「つぅ~…、んっ、おほん! 俺は城乃内秀保。まっ、天才策士ってことで、ひとつよろしく」

 

「は、はぁ」

 

 やたらと策士の部分を強調してくる城乃内への反応はそれなりに、3人はケーキを選ぶ。

 値段は少々張ったものの、なるほど、確かにそのケーキは人気店の風格とも呼べるような気品を纏っていた。

 

無論、味も値段に見合う…いや、値段以上のものであり、未央などは「自分へのお土産」と称していくつかテイクアウトしたほどだ。

 

「へぇ~じゃあウッチーと凰蓮様も元ビートライダーズなんだ!」

 

「凰蓮様すっごく強そうですもんね!」

 

「でもビートライダーズの本業ってダンスだよね? 凰蓮様踊れるの?」

 

「そもそも、ワテクシは正確にはビートライダーズとは違いましてよ。

紛い物は本物を曇らせる…ワテクシはこの子たちに本物のパッションを教えてあげただけに過ぎませんわ」

 

「よく言うよ…」

 

「あーら、何か言って?

それとアータたち、どうしてワテクシだけ

「様」付けなのかしら?」

 

「いやぁ、だって…ねぇ?」

 

 凰蓮が悪人でないのは分かるのだが、流石にこれだけ強面の男性に…それもオネェ口調で話しかけられれば、慇懃になってしまうのも無理はないというものだ。

 

「ふぅ、お腹いっぱいです」

 

「卯月のケーキちょっと大きかったもんね。

なんなら、ちょっと外でも散歩してきたら?」

 

「そうですね。この後はお仕事もありますし…じゃあちょっとそこまで行ってきます!」

 

 

***

 

 

 光実は広場にいた。そこに、光実以外の人影は見当たらなかった。

 あるのは、壁一面に乱雑に貼り付けられた探し人の張り紙だけ。

 ユグドラシル大災害と呼ばれる大災害。

 壁一面に貼られたそれらは…いや、そもそもこの町そのものが、その爪痕のひとつと言えるだろう。

 張り紙に目を見やると、光実の見知った名前もいくつかあった。

 

『葛葉鉱汰

元チーム鎧武メンバー

ずっと連絡が取れません。

×××-○○○-△△△』

 

 光実の心臓がドクンと音を立てた。

 無言で張り紙に背を向け、歩を進める。

 とてもその場に留まることは出来そうになかった。

 

『ああ許す…! だからお前も許してやれよ…今日までの自分の過ちを――』

 

「(…鉱汰さん。僕は本当に許されてもいいんでしょうか――)」

 

 瞬間。奇妙な感覚に襲われた。――そして、その理由はすぐに分かった。

 

「そんなはずがない。

お前は友を裏切った愚か者だ。許されるはずがない」

 

「お前は…デュデュオンシュ!?」

 

 光実の目が見開かれた。

 それはかつて自分と共に鉱汰を襲い、そして自分の目の前で倒されたオーバーロードインベスに違いなかった。

 デュデュオンシュの姿が歪み、やがて別の姿へと形を変える。

 

「そもそもお前は何がしたかったのだ?

女の為、居場所の為とほざきながら、結局は自分のことしか考えていなかった分際で」

 

「シンムグルンまで…。違う! 僕は…!」

 

 歪む、歪む。今度はシンムグルンの姿が形を変えていった。

 その姿を見た光実は、信じられない思いで首を左右に振った。

 

「だってそうだろう?

お前は多くの犠牲の果てに、そこにいる。

多くの亡骸の、その上に立っている。

今さら何を恐れるというんだ?

お前のその手いったいだれの血でそまっている?」

 

「レデュエ…!」

 

 レデュエはくくく、と押し殺したように笑いながら、光実を見る。

 まるで新しいおもちゃを買い与えられた子供のように、笑みを隠し切れないといった様子だ。

 

「そんなところで反省ごっこなんてせずに戻ってきなよ。さぁ、本当の自分を解放するんだ」

 

 ---大…で……か?

 

 光実の脳裏に、かつての鉱汰との戦いの思い出が流れ出す。

 いや、思い出などという綺麗なものではない。あれは悪夢だ。人智を遥かに越えた命のやりとりの記憶だった。

 

『ヨモツヘグリスカッシュ』

 

 記憶の中の自分が矛を振りかざし、エネルギーを溜める。

 必死に手足を動かそうとしても、声を上げようとしても、記憶の中の自分が止まることはなかった。

 

「やめろ…」

 

 静止の声も虚しく、記憶の中の自分は矛を振り上げ、床を蹴って飛翔する。

 一瞬の迷いもなく、まっすぐに鉱汰を狙っている。

 

『ハァァァァァ…!』

 

「やめろ…!」

 

 ---ミ…チさん、大丈…ですか?

 

『ハァッ!!』

 

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 ぶつり、と肉を裂く音がする。

 いつの間にか、自分と記憶の中の自分は一つになっていた。

 その手には、鈍く光る矛の柄。

 その先端は、鉱汰の胸に深く突き刺さっていた――。

 

 

***

 

 

「鉱汰さん!!」

 

「わわっ! びっくりしました!!」

 

 気がつけば、光実は広場のベンチに腰かけていた。

 ビートライダーズの様子を見に行った後、どうやらここで眠ってしまっていたようだ。

 

「えっと…こんにちわ、ミッチさん…ですよね?

…ずっとうなされてましたけど、大丈夫ですか?」

 

 光実は重い頭を何とか動かし、周囲を見渡す。

 そこには驚いたように目を見開く少女の姿があった。

 

「あなたは…確か346の…」

 

「はい! 島村卯月です!

すごい汗…よかったらこれ使ってください」

 

 卯月からハンカチを手渡される。

 それを受け取ると、ずっと感じていた妙な圧迫感が少し軽くなるのを感じた。

 

「…ありがとう」

 

「うわごとで誰かの名前をよんでいたみたいですけど…」

 

「…鉱汰さんのことですか…」

 

「あっ、確かその人の事プロデューサーさんが言ってました…すごく優しい人だって」

 

「…そうですね。確かに鉱汰さんはヒーローでした。

あの人はいつもみんなの為に戦って、傷ついて…、それでも誰かの力になれることを心から喜べような人だった」

 

 今なら、かつて自分が憧れた始まりの彼女が鉱汰を「希望」と称したその意味が痛いほどに理解できる。

 そして、それを踏みにじったのが他ならぬ自分自身であるということも。

 

「(だった…?)」

 

「そうだ…。本当は僕だってあの人たちの為に戦いたかったはずなのに…。なのに、僕のせいで…」

 

 光実がポケットから葡萄の意匠の錠前を取り出す。

 それをじっと見つめる光実の表情は、逆光でよく見えなかった。

 

「あの、それって…」

 

「お~い! しまむー!」

 

 卯月の思考を遮断するかのように、彼女の名を呼ぶ声が響く。

 その方向を見れば、未央、凛、プロデューサーの三人がゆっくりとこちらに歩み寄っていた。

 

「一度リハーサルを行いますので、会場の方へお願いします」

 

「あっ、はい! でも…」

 

「…僕のことならもう大丈夫です。行ってください」

 

 途中まで歩を進めた卯月が、光実の方を振り替える。

 言いたいことがあるが、それを伝える方法がわからないという表情だ。

 

「あの…よかったら私たちのイベント、見に来てください。ミッチさんが元気になれるように、みんなで頑張りますから」

 

 それに対する光実の答えは、優しそうな、だが、どこか悲しい笑みだった。

 

 




ブドウの花言葉は、「信頼」「好意」「陶酔と狂気」
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