代表発表の後は、一限の授業だ。
一限の授業はISの実技訓練らしい。
「ではこれより、基本的な飛行操縦をしてもらう。織斑、兵藤、オルコット。試しに飛んでみろ」
「はーい、分かりました織斑先生」
「分かりましたわ」
「分かったぜ、千冬ねぇ、じゃなくて織斑先生!」
危なかったな一夏。
織斑先生の指示を受けた俺たちは前に出た。
そして、それぞれISを展開する。
一夏は白式を、
セシリアはブルー・ティアーズを、
そして俺は――赤いカラーリングのISを展開した。
俺がこのISを手に入れたのは今日の朝だ。
「はい、兵藤君。 これ日本政府からのプレゼント」
「赤い腕時計……? 会長さん、日本政府はいつ時計店になったんですか?」
「いや、兵藤君、それはただの腕時計じゃないからね? この腕時計はあなたのISの待機形態よ」
俺のIS!?
いつの間に……
「そう言えば、俺のISは専用機じゃない量産型の日本製IS『打鉄』になるという話を聞いたような。専用機を渡すわけじゃないから、予算の関係で待機形態を変えたり、カラーリングの変更ぐらいしか出来ないという話だったはず。 だから待機形態は携帯に便利な腕時計にしてカラーリングは好きな色の赤にしたんだよな。 俺は一夏と違って、ネームバリューはないし、ISの操作も特別上手なわけでもないから、データだけ取れればいいや、という日本政府の考えが透けて見えるんだよなぁ。 クソッ露骨に予算を削りやがって! そんなに一夏のほうが大事か!」
「もしもーし、兵藤君、口に出てるぞー」
「あれ? 出てました?」
「うん。 ごめんね兵藤くん、別に日本政府はあなたのことを蔑ろにしているつもりはないんだよ? 私がここにいるのも日本政府からの依頼だし」
「あ、やっぱりそうなんですか?」
俺を織斑千冬の隣の部屋に置いたのは恐らく俺を守るためだろう。
隣があの織斑千冬なのだから、IS学園に侵入して、俺を誘拐したり、殺したりするのはかなり難しくなる。
当然、ルームメイトが学園最強の生徒会長なのも同じ理由だろう。
「でも会長さんは日本政府と繋がりがあったんですね」
「私というか……私の家がそうなのかな? 更識家は古くからこの国のために裏で動いてきた、暗部に対する対暗部用暗部だから」
暗部に対する対暗部用暗部ってそれだけ聞くと凄い中二病ぽい。
「嘘くさいと思うかもしれないけど――」
「いや、俺は信じますよ?」
「あれ、信じるの!?」
意外そうな顔だ。
まあ、一般人に言っても中二乙と言われることのほうが多そうだし。
「いつもなら中二乙って言われるのに……」
言 わ れ て た。
「だって会長さん動きに無駄がないんですもん、これは只者ではないな、と水着エプロンを見たときに思ってました」
「そこなのぉ!?」
……というようなことがあったのだ。
「イッセーにも専用機か」
「一夏、これは専用機じゃないぞ、色が赤いだけで量産型の日本製IS『打鉄』だ、まあ俺は他の打鉄と区別するために、『赤打鉄』と呼んでいるけど」
「そうなのか? 速さが三倍だったりしないのか?」
「一夏さん、色でISの性能は変わりませんわ」
イギリス人のセシリアにガ○ダムネタはわかりずらいだろうな。
「バカなことを言っている暇があったら、飛ぶ準備をしろ、愚か者ども」
やばい、織斑先生がおこだ。
さっさと空へ行くとしよう。
テイク・オフ!
「ここが高度千メートルの世界か……あれ? セシリア、イッセーは?」
「そういえばイッセーさんがいませんね、どこにいったのでしょう?」
「俺はここだ、お前らの上だ」
俺の位置表示を見た、セシリアが驚きの声を上げた。
「高度二千メートル!? イッセーさんどうしたのですか!?」
おいドライグ、なんか変なことしたか?
『俺はなにもしていないぞ、相棒に言われた通りに神器の中にISコアを入れただけだ』
神器の中にISコアを入れることが出来たのは原作一誠がアスカロンを神器の中に入れたのと同じ理屈だ。
ドライグ側の都合もあるが、大体なんでも神器の中に入れることが出来る。
エロ本を入れようとしたら、マジ泣きしたっけ。
『絶対にやめてくれ、他の物ならなんでもいいが、それだけはやめてくれ』
って。
ともかく、ISコアを完全に掌握するため、俺は神器の中にISコアを突っ込んだのだ。
コアのみを神器の中に入れ、他の装甲や武器などは待機形態の腕時計の中に残してある。
そしてISを展開するときのみ腕時計の中にある武装などを神器の中のコアをリンクさせてISを展開している。
そう言えばドライグ、ISコアの意識とコンタクト出来たか?
『微かにだが意識のようなものを感じるが……小さすぎてわからん』
ドラゴンのお前から見ればどんなものもそうだろうな。
あとで俺が神器に潜るか。
「どうやら飛ばし過ぎたようだ、ちょっと待っててくれ」
高度千メートルに行くつもりが
まさか、な。
俺とセシリアは無事に地上に戻ってこれたが一夏は見事なクレーターを作っていた。
まあ、絶対防御があるから大丈夫だろ。
「三人とも、武装を展開しろ、まずは織斑からだ」
「はい、織斑先生」
今回は間違えずに言えたようだ。
一夏が手を握りしめる、雪片弐型を脳内でイメージしているのだろう。
しばらくしてから一夏の手に雪片弐型が現れた。
「遅い、もっと早くしろ」
「うっ……分かりました」
織斑先生はスパルタだな。
一夏に対しては特にその傾向が強い気がする。
弟には早く強くなってもらいたいのだろう。
流石ブラコン先生だ。
「次は兵藤だ、打鉄の近接用ブレード『葵』を出してみろ」
出してみろと言われても……
俺は初心者プラスIS関連の才能はないしな……
いや才能を言い訳にしてはいけない。
やるだけ、やってみよう。
「こい! 葵!」
割りとすぐに出た。
「初心者にしては悪くないが、コールなしで出せるようになっておけ」
織斑先生はなかなか厳しい。
「次はオルコット、ブルー・ティアーズの接近戦用のショートブレード『インターセプター』を出せ」
「ええっと、……ああもう! インターセプター!」
原作通り、セシリアはインターセプターを出すのに手間取ってしまった。
「遅すぎるぞオルコット、代表候補生なら、もっと早くかつコールなしで出せるようになっておけ」
「はい……」
おや?
セシリアが素直だ。
これもバタフライエフェクトだろうか?
その日の夜、のほほんさんに声をかけられた。
なんでも、一夏の代表就任記念パーティーをするらしい。
「みんな~、連れてきたよ~」
会場に着くと料理と飲み物が並び全員が集合していた。
一夏は真ん中にいて、両隣には箒とセシリアがいる。
両手に花か、一夏もげろ。
「みんな集まったようだし、いくよ~、織斑君の代表就任を祝って、かんぱ~い!」
「かんぱーい!」
「乾杯!」
「乾杯でみんなに笑顔を……」
「かっとビングだ! 乾杯!」
「良かれと思って、乾杯しました!」
「この乾杯が私のファンサービスだぁ!」
なんか変なのが混ざっているような。
「いたいた、君らが織斑一夏君と兵藤一誠君だよね。 私は、二年生で新聞部副部長の黛薫子。これ、名刺ね」
「あ、どうも」
俺が名刺を受け取ると、黛先輩はどこからともなく手帳を取り出して、どこか楽しそうな表情で俺と一夏を見た。
「今日は、とってもレアな男性操縦者にインタビューしに来たんだ。よろしくね」
「あ、はい……」
「よろしくお願いします、黛先輩」
新聞部として、こんなおもしろネタは逃さないということなんだろうな。
「そんな固くなくていいからね。 じゃあ、まずは織斑君からね。織斑君、代表になった感想は?」
「え、感想ですか? えっと……まあ、頑張ります! こうですかね?」
「なんか面白みがないなあ。 もっといいコメントはないの? 俺に触れたら火傷するぜ、みたいな」
「自分、不器用ですから」
「うわっ、前時代的」
どこの映画俳優だ、一夏。
「まあ、いいや、適当に面白おかしく捏造しておくから」
「いや、待て待て! いろいろおかしい!」
「冗談よ……半分くらい」
半分は本気ってことかい!
「じゃあ、セシリアちゃんねー、織斑君との戦いはどうだった? それと、これからについて一言頂戴ね」
「わたくし、あまりこういうのは得意ではないのですけど……」
とか言いつつ、本気でポーズを取りながら、セシリアは喋りだした。
「そもそも、わたくし達が――」
「あ、長くなりそうだし、やっぱりいいや、織斑君に惚れたことにしておくわねー」
「ちょっと! どういうことですの!」
セシリアの抗議を無視しながら、黛先輩は俺に近づいてきた。
「最後に兵藤君だね、自分の未来の予定についてなにか言ってくれる?」
未来か……
「とりあえず、モルモットにならないよう、努力します」
「重いなー、まあこっちも適当に捏造しておくかー」
結局、捏造かい!
黛先輩は楽しそうにメモを終わらせると、今度はカメラを俺たちに構えた。
「じゃあ、次は三人の写真を頂戴」
俺とセシリアは代表である一夏を挟むように並ぶ。
「じゃあ、行くよー、はい、チーズ!」
黛先輩がそういった瞬間、一組全員が俺たちの周りに集まった。
結局、一組全員が写真に写り、集合写真みたいになってしまった。
基本的にノリのいい一組らしいな。
写真を見た黛先輩もそれでよかったのか
「それじゃあねー!」
と言ってあっという間に消えてしまった。
すぐに捏造新聞の記事を書き始めるつもりなのだろう。
エネルギッシュな人だな。