インフィニット・ブーステッド・ギア(凍結中)   作:空振り

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第十一話

 「ねえねえ、イッセーは知ってる~?」

 

 「のほほんさん、何をだい?」

 

 「噂の転入生だよ~」

 

 のほほんさんによると中国から転入生が来ているらしい。

 来たか……一夏ヒロインの一人、凰鈴音が。

 

 「イギリスの代表候補生であるわたくしを警戒してのことでしょうか?」

 

 それはないぞセシリア。

 クラス対抗戦が近いからそろそろだと思っていたが、ようやくか。

 

 「クラス対抗戦の景品は食堂のデザートのフリーパスなんだって!」

 

 「二組のクラス代表は専用機持ちじゃないし、いけるよこれ!」

 

 「あれとかこれとか……、いろいろ食べ放題!」

 

 クラス対抗戦の景品について取らぬ狸の皮算用をしている女子生徒がいるが残念だったな! どちらにしろフリーパスは誰のものにもならん。

 

 「その情報、古いよ!」

 

 ツインテールの女の子が現れた。

 ……うん!

 あえてなにも言うまい。

 

 『見事な壁だとか、まな板かと思ったとか言うかと思ったが、違うんだな』

 

 まあな、子猫ちゃんと違って半分にしたら減るどころか完全に消滅するぞ、あの胸じゃ。

 

 「お前は……鈴か!」

 

 「知り合いかい? 一夏」

 

 一方的に知っているが一応、こう聞いておこう。

 

 「ああ、セカンド幼馴染になるのかな? 鈴とは長い付き合いだ、でも鈴どうしたんだ?」

 

 「宣戦布告をしに来たのよ! 私は二組のクラス代表で中国の代表候補生、凰鈴音!」

 

 ビシッ! とポーズを決める鈴。

 

 「鈴、何格好付けてるんだ? 全然似合わないぞ」

  

 「なっ! 一夏それどうゆう意味よ!」

 

 激昂する鈴だったが――

 

 「もうすぐ始まるから自分の教室に帰れ、授業の邪魔だ」

 

 並みの悪魔、修羅、羅刹が裸足で逃げ出す鬼神がそこにいた。

 

 「千冬さん……うげ!」

 

 「織 斑 先 生だ、わかったか? 凰鈴音」

 

 こめかみをグリグリしながら、ゆっくり丁寧に教えている……鬼だ。

 

 「ごめんなさい織斑先生……一夏! 昼休みは食堂にいるから! 待ってなさいよ!」

 

 「よし、授業を始める。 お前らも早く自分の席に座らんか!」

 

 こうして授業が始まった。

 

 

 授業が終わり、昼休みになった。

 食堂に向かう俺たちだったが……

 

 「説明しろ! 一夏、セカンド幼馴染とはなんだ!」

 

 「そうですわ! あの方はと一体どんな関係なのですか!」

 

 一夏は質問攻めにあっていた。

 

 「いや、鈴は……あっ鈴!」

 

 噂をすれば影ってやつか、食堂には宣言通り鈴がいた。

 

 「待ってたわ、一夏!」

 

 鈴はラーメンを片手にこちらを見ている。

 不意に箒、セシリア、鈴がお互いを見つめ合い……

 キッと表情が固くなった。

 どうやら三人とも自分以外のこの場にいる女が自分の恋敵であることを本能的に察したようだ。

 ……女って怖い。

 

 『男でよかったな? 相棒』

 

 まったくだよ、でも三人とも俺は眼中にないのね。

 やっぱり一夏もげろ。

 

 

 ドラゴン化した俺の胃袋は相当な量を入れないと満足してくれない。

 そのため俺は基本的に食堂では超特盛りの丼ものを二つ頼むことにしている。

 今日はカツ丼と牛丼だ。

 この超特盛りの丼ものは食堂で働くお姉様方の協力があって初めて成立する。

 最初のころは「本当に食べきれるのかい?」と聞かれたが、今じゃ、「いつも豪快に食べるね! 家の息子より細いのにこんなに食べるとは驚いたよ!」と言われている。 

 でもお姉様方よ、体の線は細いかもしれないが、俺は結構鍛えているんだぜ?

 

 「なるほど、一夏さんとはただの友人だったのですね……」

 

 「おう! 鈴は俺の友達だ! どうしたんだ鈴?」

 

 「なんでもないわよ!」

 

 俺がカツ丼を食べ終えているうちに、どうやら鈴の紹介が終わったようだ。

 しかし、一夏ェ……鈍感杉内。

 

 「って、そう言えばあんた誰? っていうか、あの量を食べたの!?」

 

 「成長期の男の子なんだからこれくらい普通だぞ、むしろ一夏が少なすぎるくらいだ」

 

 「いや、いやいや、普通、そんなに食べないから!」

 

 「一夏もなかなかツッコミ力が上がってきたな、嬉しいぞ……ああ俺は俗にいう二人目、兵藤一誠だ」

 

 この紹介もすっかり慣れてしまったな。

 

 「私の名前は凰鈴音、一夏の幼馴染で、それと中国の代表候補生よ、よろしく」

 

 中国の代表候補生であることがおまけのような言い方だ。

 この娘も一夏ラブなんだね……わかっていたことだけどさ。

 

 「ファンさんでいいのかな?」

 

 「鈴でいいわよ」

 

 「じゃあ俺のことはイッセーと呼んでくれ、みんなにそう言っているしな」

 

 「わかったわイッセー……えっ! その牛丼も食べるつもり!?」

 

 「当たり前だろ? あ、くれと言ってもやらんぞ」

 

 俺は牛丼を食べることにした。

 フフフ、この二個目に突入するということは女子どもには真似出来まい!

 

 「誰もいらないわよ……って本当に食べてるじゃない……」

 

 

 

 

 ある日の夕方。

 女性の泣き声が聞こえた。

 なんだ? 新手の妖怪か?

 学校は怪談話の定番だが……

 

 「鈴? そんなところで何をしているんだ?」

 

 「! なんだイッセーじゃない、なんでもないからあっち行ってよ……」

 

 鈴は泣いている……

 あーこりゃ酢豚事件があったか?

 

 「泣いているくせになんでもないわけないだろ、なあ鈴、一人で感情を貯めこんでメソメソ泣くのは良くないぞ、いっその事、俺に全部吐き出せ、他人に聞いてもらったほうが楽になれるぞ?」

 

 「言いふらしたりしないでしょうね……」

 

 「安心しな、俺は口は堅いほうだぜ?」

 

 「それじゃあ……」

 

 

 

 

 鈴は俺に話しているうちに落ち着いたのか、涙を止めていた。

 

 「なあ鈴、男子代表として正直に言っていいか?」

 

 「なによ」

 

 「私の料理の腕が上がったら、毎日酢豚食べてくれる? を告白の言葉だとすぐに分かる奴はまずいないと思うぞ」

 

 「うっ……やっぱり?」

 

 わかっているのならなぜ言った。

 

 「特にただの朴念仁を超えた伝説のアルティメット朴念仁である一夏が分かるわけないだろ、多分、一夏は言葉の通りの意味だと思っているぞ」

 

 「嘘でしょ……」

 

 「いつも酢豚を作ってくれる都合のいい女の子……大方そんな風に受け取っただろうさ」

 

 毎日酢豚じゃ、すぐ飽きると思うが。

 

 「昔ね、一夏に付き合ってくださいっていった娘がいるの」

 

 床に座り込んだ鈴はポツリと漏らした。

 

 「ああ、もういい、オチが読めた、どうせ『どこへ買い物にいくんだ?』とかいったんだろ?」

 

 「そうよ……私、一夏がそういう性格だってことを失念していたわ……」

 

 一夏の朴念仁伝説ここに極まれり、だな。

 

 

 ……異常だ。

 いくらなんでも異常すぎる。

 小説や、アニメのキャラクターとしての織斑一夏が女子の好意に鈍感なのは極論、作者や編集部の都合だろう。

 だが、俺と同じ世界にいる織斑一夏が鈍感なのはどういうことだ?

 

 ここは紛れも無い現実だ。

 現実である以上、どんなことも原因があるはずだ。

 一夏が鈍感である原因……

 

 「なあ鈴、お前は織斑先生以外の一夏の家族を見たことはあるか?」

 

 「千冬さん以外の一夏の家族……? そう言えば見たことはないわね」

 

 「そうか……最悪のパターンだぞこれは」

 

 一夏ヒロインズの緊急招集が必要だ。

 

 「イッセー? どういうことよ?」

 

 「鈴、後で俺の部屋……1001号室に来てくれ、話がある」

 

 「今ここでも別にいいじゃない」

 

 「いやそういうわけにもいかないんだ、準備が必要なんでな」

 

 

 

 鈴と一旦別れ、ある準備を済ませた俺は、電話で箒を呼んだ。

 

 「箒か? 一夏に対しての作戦会議をする、俺の部屋に来てくれないか?」

 

 「すぐに行く!」

 

 「……そうかすぐに来てくれるか」

 

 次はセシリアだ。

 

 「セシリアか? 俺の部屋に来てくれないか? 一夏のことで話があるんだ、俺の手助けは必要ないかもしれないが……」

 

 「一夏さんのことで……? すぐに行きますわ!」

 

 「ありがとう、セシリア」

 

 最後に鈴だ、

 

 「鈴、準備が出来たから俺の部屋に来てくれ」

 

 「わかった、今いくから」

 

 「鈴、待たせて悪かったな」

 

 これで三人が俺の部屋に来てくれるはずだ。

 会長さんは……まだ帰っていないか。

 生徒会長も大変だな。

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