インフィニット・ブーステッド・ギア(凍結中)   作:空振り

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第十六話

 ゴーレムが襲来した次の日。

 あんなことがあったあとだが授業はしっかりあった。

 なんだか疲れた俺は特訓をする一夏たちを見送ったあと、部屋でお昼寝をしていた……

 

 ん?

 なんだ?

 なんだかくすぐったい……

 

 目を覚ますと会長さんの顔が目の前にあった。

 

 「うわっ! びっくりした」

 

 「ふふ、目が覚めた? 惜しかったなーもう少し起きるのが遅かったらもっといろいろ出来たのに」

 

 いたずらっぽく会長さんは笑った。

 ドライグに起こしてもらうことがあるが、いまドライグはISコアとお話中だ。

 最近は呼んでもすぐに返事をしない。

 俺もISコアと話をしてみたいが、

 

 『相棒だとこの子の教育に悪い、絶対おっぱいとか言うつもりだろう!?』

 

 とドライグに言われているので未だに話したことはない。

 一応、俺のISなんだけどな。

 

 ……よく見ると会長さんの手には油性マジックがあった。

 おいまさか。

 

 「気になるなら鏡を見てきたら?」

 

 ベッドから飛び起きた俺は洗面所へ向かった。

 

 鏡の中の俺は特にイタズラ書きをされていないみたいだった。

 よかった……

 と思ったら頬に鱗が出ていた。

 意識して引っ込めようとするが消えない。

 なぜだ!?

 ……よく見たらシールだった。

 なんだシールか。

 いやまてよ……なんで会長さんは俺に鱗のシールなんて貼ったんだ?

 まさか……!

 

 「会長さん……なんでこのシールを……」

 

 「兵藤くん、あなたが赤龍帝だからだよ」

 

 なにぃ!

 

 「ちょっと待って下さい、俺が赤龍帝? なにを言っているんですか、もしかしてこの体質のことですか?」

 

 俺は意図的に鱗を生やす。

 

 「これは特殊な皮膚病で――」

 

 「うん、私も最初はそう思った、でも違うよね? あなたが持つドラゴンの力を宿した神器の影響でしょう?」

 

 神器という単語まで出てきた。

 

 「安心して兵藤くん私も神器をもっているから」

 

 え?

 

 「出て、『神託の神鏡』」

 

 そう会長さんが言うと突然不思議な形状の鏡が空中に現れた。

 これは……神器だ、間違いない。

 でもなぜ……IS世界の住人でありメインキャラクターの会長さんが神器を……?

 百人ほど神器所有者がいる時点で神器のシステムがこの世界にも何故かあることは分かっていたが……

 

 「これが私の神器、『神託の神鏡』未来を予言する力、更識家に代々受け継がれて来た力」

 

 「受け継がれて来た……?」

 

 神器は先天性のもので誰かに渡せるものではなかったはずだが。

 

 「この『神託の神鏡』は更識家の血を引く者のみ引き継ぐこと出来る神器。 この水色の髪が更識家の血を引いている証」

 

 「その髪染めてたわけじゃなかったんですね」

 

 「これは地毛、ほらまつげとか眉毛も水色でしょ?」

 

 確かに……

 

 「普通の神器は誰かに渡すことは出来ないけどこの『神託の神鏡』は特殊で……自分と同じ血を引いている人に渡せるんだよね、私もお父さんから、お父さんはおじいちゃんから、おじいちゃんは――て感じで当主の座と共に代々受け継がれて来たんだ」

 

 なるほど、だが神器を他人に移植すると元々その神器を持っていた人は死んでしまうはず……

 原作のアーシアがそうだ。

 ということは……

 

 「あ、お父さんもおじいちゃんもまだ生きてるからね?」

 

 生きてるのかい!

 本当に特殊な神器なんだな。

 

 「私の神器を見せたんだから、今度は兵藤君だよ?」

 

 あのとき言っていた更識家の予言とはこの神器のことだったのか。

 しかしもう誤魔化しきれないな……

 仕方ない。

 

 「来い『赤龍帝の籠手』」

 

 俺の神器、『赤龍帝の籠手』が左腕に装着される。

 

 「これが……『赤龍帝の籠手』」

 

 「で、俺は赤龍帝なわけですけどどうするんですか? 捕まえて人体実験でもします? それとも……」

 

 「そんなことは絶対にさせない! ……ごめんね、声を大きくして」

 

 「え、ええ」

 

 びっくりした……

 

 「第一私じゃ兵藤くんを捕まえられないよ、ISじゃ勝てないだろうし、私の神器の特性は『予言』と『継承』、全然戦闘向きじゃないもの」

 

 鏡だから反射能力でも持っているかと思ったがそうでもないらしい。

 

 「私がしたいことはただ一つ、兵藤くんを日本の代表操縦者にすること」

 

 「日本の代表操縦者……? 候補生じゃなく?」

 

 会長さんの妹の簪が日本の代表候補生だったはず。

 

 「候補生程度じゃ駄目、兵藤くんがモルモットにされちゃう」

 

 「でも無理ですよ、俺、戦闘はともかく、それ以外は全然……」

 

 まあ、万が一モルモットされたらそいつら全員まとめて地獄に送るけど。

 

 「そこはロシア代表の私が付きっきりで教えてあげるから大丈夫だよ」

 

 確かに会長さんに教えてもらえればグングン成長すると思うが……

 

 「どうしてそこまで……俺のために?」

 

 「それはね……私が――」

 

 「同情ですか?」

 

 「えっ! 違――」

 

 「まさか、俺のことが好きだからだとかじゃないでしょうね……ふざけるな!」

 

 俺は全身に鱗を出し、叫ぶ。

 こうなると俺はヒト型のドラゴンのようになる。

 

 「こんな化け物みたいな姿をしたカワイソウな俺が好き? こんな鱗まみれで神器なんて人の手には余る力を持つ俺のことが好き? 安っぽい同情はやめてくれ、俺はこれから先ずっと一人でもまったく問題はない!」

 

 「そんなことはない! 兵藤くんが鱗まみれでも、神器を持っていても私は気にしない!」

 

 「それはあんたが俺のことを知らないからだ! 俺にはな前世の記憶があるんだ、しかもただの記憶じゃない、この世界を小説やアニメとして扱っていた世界での記憶だ! どうだ! 救いようもないほどに気持ち悪いだろ! 証拠に面白いことを教えてやる! 会長さん、あなたの名前は更識楯無じゃない、更識刀奈だ!」

 

 「なん……で」

 

 「はははっ! おまけにもう一つ! あんた今、妹さんと関係がギクシャクしているんだろ? お互いにどう接していいか分からないんだろ?」

 

 会長さんはもう何も言えない。

 

 「どうだ、他人に一方的に自分を知られるのって気持ち悪いだろ? こんな俺が好きだって? ……ふざけるのも大概にしろ」 

 

 「兵藤くん……」

 

 「なんでそんな目で俺を見るんだ……」

 

 クソ、なんだこの感情は。

 

 「じゃあもっと面白いことを教えてやるよ……」

 

 俺はISという作品の知識全てを会長さんにぶちまけた。

 ISだけじゃない、神器が元々あったD×Dのことも全てだ。

 

 「これで分かっただろ、あんたは原作通り、織斑一夏のことを好きになればいいんだ、あんたが好きになるのは兵藤一誠()じゃない織斑一夏だ」

 

 ISの原作ヒロインが俺のことを好きになるはずがない。

 これでいい、これで良かったんだ。

 

 「ねえ、兵藤くん」

 

 「なんだ」

 

 「あなたの言う原作の更識楯無になくて、私にしか持ってないものってなんだと思う?」

 

 「神器のことか? だがそれも何らかの原因でD×D世界の神器のシステムが流れ込んだだけで、それ以外はまったく同じ――」

 

 「そんなもんじゃない! 私にしか持ってないものは――」

 

 そう言って会長さんは俺に近づいて来た。

 

 「なにを……!」

 

 するんだ。

 そう言う前に会長さんの唇で――俺の唇を塞がれた。

 

 

 驚きで鱗が一気に引いた。

 

 「呪われた王子様の呪いを解くのはお姫様のキスが定番だよね」

 

 「なにを言っているんだ……俺が好きなのはどうせ一時的なものだ、ワールド・パージ事件が起こればあんたは――」

 

 「あああっ、もう、うるさい!」

 

 えっ。

 

 「鱗なんて私はまったく気にしてないし、神器だったら私だって持ってる。 前世の記憶? それが? ちょっと普通の人より物知りなぐらいでしょ、これから先の未来のことを知っている? 私の神器だってそういう能力だし?」

 

 「だが俺はあんたのことを一方的に――」

 

 「好きな人に知られても全然平気! まあちょっと恥ずかしいけど、でも大したことじゃない」

 

 なんだよそれ……

 

 「このくらいのことで嫌いになると思った? 女の子舐めるな、バカヤロー……大好きだよ一誠」

 

 そう言って会長さんはまた俺の唇を奪った。

 勢いがありすぎて歯と歯がぶつかった。

 だが会長さんは気にせずキスを続け、舌を入れて来た!

 

 

 ……どれくらいこうしていただろう?

 一分かもしれないし十分だったかもしれない。

 そうしているうちにそっと彼女の方から唇を離した。

 

 「何度でも言うね、大好き、一誠」

 

 「会ちょ……」

 

 今度は人差し指で口を塞がれた。

 

 「私が名前で呼んだんだから、一誠も名前で呼んで?」

 

 「刀奈……でいいのか?」

 

 「よろしい。 二人きりのときは刀奈って呼んでね」

 

 「でもどうして、俺のことを」

 

 そこが疑問だった。

 なぜ一夏ではなく俺なんだ。

 

 「一誠は知らないかもしれないけどあなたの笑顔って素敵よ? それにこの部屋で共同生活をしていて一誠はいつも私のことを考えてくれてたでしょ? 龍は女を惹き付けるらしいけど、そんなことより私はあなたのその優しさと笑顔で、大好きになっちゃった」

 

 ベタ褒めされた。

 

 「ねえ、一誠からの返事まだ聞いてないんだけど?」

 

 「唇を奪っておいてそれか……まったく、大好きだよ刀奈」

 

 ああ、刀奈にはもう勝てないや。

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