インフィニット・ブーステッド・ギア(凍結中)   作:空振り

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第二十話

 「ここは……?」

 

 気が付くと俺は謎の和室にいた。

 ここはどこだ?

 なんでこんなところに?

 

 [主様、こちらです]

 

 聞き覚えのある声が聞こえた。

 誰だ!?

 俺が声のした方に向くと、黒髪の女性がいた。

 顔は……箒に似ている気がする。

 ただ箒と違って胸はかなり控え目だ。

 俺が使っているIS、赤打鉄に似た赤い鎧のような物を身につけている。

 

 [主様、わたしです、ミナコですよ]

 

 !?

 確かにミナコの声だ。

 

 「どういうことだ……?」

 

 『相棒、分からないか? ここは神器の中だぞ?』

 

 ドライグ?

 どこにいるんだ……

 ってこの和室天井がない!

 ドライグのでかい顔がこの和室を覗きこんでいる。

 そうだ、確かにこの感覚は神器の中にいるとき特有のものだ。

 

 『現実の相棒は寝ているぞ』

 

 夢を介して神器の中に来ちゃったか。

 時々あるんだよなこれ。

 明晰夢……とは少し違うか。

 

 [どうです? この部屋、わたしが作ったんですよ!]

 

 へえミナコが作ったのか。

 

 「よく出来てるぞ、現実の和室にいるみたいだ(天井に目をつぶれば)、ミナコ……俺をここに呼んだのはお前か?」

 

 [はい主様! あと主様に伝えたいことが]

 

 伝えたいこと?

 

 [わたしミナコは主様の専用機になりました! 初期化(フィッティング)最適化(パーソナライズ)は終了していて、あと一次移行(ファーストシフト)の準備はだいたい終わっています]

 

 ん?

 お前って俺の専用機みたいなもんじゃなかった?

 

 [そうと言えばそうですけど……わたしは量産型ISだったので初期化と最適化の機能はオフだったんです。 けど、主様が新たに得た禁手の影響でわたし自身が進化出来ました! この姿も主様のおかげです!]

 

 『最初は光の固まりだったからな、人型ですらなかった』

 

 へぇー。

 要するに俺の禁手でお前も進化して専用機化したと?

 

 [はい! その通りです! 初期化と最適化の機能をオンにしたことでわたしの体も進化しました! 現実世界でわたしを展開して下さい! すぐに一次移行しますよ!]

 

 勝手にオンに出来るもんなのか? それ……

 

 [わたしの体ですよ? わたし自身が自由にいじれるに決まっているじゃないですか、ただ武装は増えていないです……そこはデータが足りないし、拡張領域(バススロット)の問題も……]

 

 「まあ急に武装が増えても使えこなせないだろうし、別にいいさ、でも拡張領域には空きがあったと思うんだけど」

 

 [実はわたしの拡張領域に空きは無いんです、禁手の力が入っているので……でもある程度ならお父様の力が使えます!]

 

 そうなのか!

 

 『赤龍帝の籠手と赤打鉄の繋がりがこの禁手の肝だからな、ただ取り外しが出来ないようだ』 

 

 「ってことは倍加や譲渡がISに乗っていても使えるのか!?」

 

 [所詮はある程度ですよ、あんまりいっぱいお父様の力を使うとわたしの体が持ちません]

 

 流石に限度はあるか。

 

 『相棒起きろ、そろそろ朝だぞ』

 

 マジか……起きてジョギングをしないとな……

 

 

 

 

 「……ということが夢の中であったんだ」

 

 「へぇー夢を介して神器の中に……そんなことが出来るんだ、でも専用機化かぁー凄いことやってるね」

 

 「まあな、赤龍帝がやればこんなもんよ、でもISに無茶がでていないといいけど……」

 

 俺は日課のジョギングを刀奈と一緒にしながら夢での出来事を話していた。

 

 「じゃあ後で虚ちゃんに見てもらう? あの子整備科だから詳しいと思うよ?」

 

 「そうだな! ……そういえばその虚ちゃんに俺、会ったこと無いぞ」

 

 「あっ……そういえば一誠は生徒会に入ってなかったけ……」

 

 「うっかりしていたよ、そういえば俺、刀奈の彼氏のくせに生徒会に入っていないじゃん」

 

 なにやっているんだ俺。

 刀奈が生徒会の仕事でいないのが日常だったから、俺が生徒会に入るという選択肢が完全に頭の中から消えていた……

 

 「ねぇ一誠……」

 

 「よし分かった、生徒会に入るぞ」

 

 「え、まだなにも言ってないよ? いいの?」

 

 「いいに決まっているだろ? だって刀奈と一緒の時間が増えるんだぜ? 断るわけないだろ」

 

 「ありがとう! 一誠、大好き!」

 

 「俺だって刀奈が大好きだぞ」

 

 俺たちはジョギングを一旦止めて、キスをすることにした……

 

 『このバカップルめ……』

 

 

 

 

 

 今日も一夏はいつもの三人と一緒に特訓中だ。

 

 「いいか、一夏、グッと行ってガッだ!」

 

 「箒さん、そんな擬音だらけでは一夏さんが理解できませんよ」

 

 「そうよ、あんまり口で説明するのが得意じゃないあたしが言うのなんだけど、やめたほうがいいわよ、箒」

 

 「む……そうだったな、よし一夏、こうやって一気に近づいてだな……」

 

 三人娘はお互いの足の引っ張り合いをせず、協力して一夏と特訓しているようだ。

 

 「一夏! あたしと闘いなさい! 実戦に勝る訓練はなしよ!」 

 

 「危ねえ! いきなり撃ってくるなよ鈴!」 

 

 ……鈴はあんまり変わっていない気がする。

 さて俺もISを展開するか。

 

 [主様! こちらの準備は出来ています!]

 

 よしやるか、IS、展開!

 俺がISを展開すると赤打鉄の一次移行が始まった。

 

 「この感じ……まさか一次移行!? イッセーさんのISは量産機のはず……」

 

 セシリアは俺のISの異変に気づいたようだ。

 

 赤打鉄が変形していく。

 光が収まった。

 どうやら一次移行が終わったようだ。

 

 [これでわたしは主様専用です! もう他の人は乗せませんよ!]

 

 一次移行を終えた赤打鉄はなんだか赤龍帝の鎧に似た造形になった。

 でも前の打鉄としての特徴もある程度残っているので、二つが無理なく混ざったような感じだ。

 これで赤龍帝の籠手の力が少し使えるようになった。

 ちなみに禁手はこれとは逆でISの力を赤龍帝の籠手側で使えるようになる。

 もちろん禁手がベースなのでこちらと違い限度などない。

 

 「イッセー、どうしたんだよ、それ」

 

 白式を纏った一夏が近づいてきた。

 

 「俺にもよく分からん、だがこれだけは言える、これは楯無を……俺の彼女を守るための力だ」

 

 「守るための力?」

 

 「ああ、俺の楯無を守りたいという思いにISが答えてくれたんだと思う、なあ一夏、お前が守りたいものってなんだ?」

 

 「俺の、守りたい……もの?」

 

 「自分の命か? 姉の名誉か? それとも……お前のために特訓してくれている箒、セシリア、鈴か?」

 

 一夏は考えこんでいる。

 

 「それが分からないうちは二次移行は出来ないだろうし、今、俺がいる領域にこれないぞ」

 

 そう、禁手の領域に。

 

 「まだ……分からないな……」

 

 「じゃあゆっくり決めな、これは誰か教えてもらうものでも、決めてもらうものでもないからな」

 

 

 

 

 その日の放課後。

 生徒会役員室には俺と刀奈、そしてのほほんさんの姉である、布仏虚さんがいた。

 

 「粗茶ですが」

 

 「あ、どうも」

 

 美味い紅茶だ。

 ……でもこの声どこかで聞いたような。

 

 「思い出した!」

 

 「どうしたの一誠?」

 

 「俺と一夏のことを襲い受けだとか誘い受けとか言って周りの腐女子に師匠呼ばわりされていた先輩だ!」

 

 あのときの腐女子たちは俺に刀奈という彼女が出来ても、俺と一夏の掛け算に勤しんでいるらしいが……

 

 「バレてしまったならしょうがないわね……そう! 私がIS学園の腐女子たちの師匠よ!」

 

 「虚ちゃん、まだあの趣味止めてなかったんだ……」

 

 刀奈も呆れ顔だ。

 眼鏡に三つ編みといういかにもお堅い感じのくせになんて奴だ……

 

 「師匠なら、俺と一夏で妄想するのを止めるように言え! 一夏が知ったら最悪気絶するぞ」

 

 「安心しなさい、今のトレンドは兵藤×織斑と織斑×兵藤ではないわ、今のトレンドは兵藤×楯無と楯無×兵藤よ!」

 

 ……それって普通じゃね?

 ノマカプと言うやつじゃないのか?

 

 「あれ? 虚ちゃんそれって……」

 

 「確かにノマカプ派もいるけど、一番は楯無を男体化させたのが主流よ」

 

 男体化だと!?

 業が深すぎる……

 

 「ところかまわずキスをするあなたたちに触発されて、生まれてしまったのよ……だから原因の半分くらいはあなたたちにもあるわ」

 

 いや、それはない。

 

 「虚ちゃん、男体化は邪道とか昔言ってなかった?」

 

 「確かに言っていたわ……けど友人を男体化させて腐った妄想のネタにすると言うとても罪深いことを一度でもすると……ハマるのよ」

 

 そんなもんハマりたくねぇ。

 ……諦めよう。

 こいつらに何をしても無駄だ。

 

 

 

 

 そんなことがあったあと、簪とのほほんさんが生徒会役員室にやって来た。

 昨日仲直りしたからか、姉妹には笑顔が!

 本当に仲直り出来てよかった。

 

 「お姉ちゃん、私、生徒会に入りたい。 お姉ちゃんの手伝いがしたいの」

 

 「簪ちゃんならいつでOKだよ! じゃあ一誠と一緒にこの紙に名前を」

 

 さっさと書いておこう。

 

 

 

 「でも彼氏さん、生徒会に入っていなかったんだね」

 

 「うっかりしていてな……あと彼氏さんは止めてくれない? イッセーって呼んでくれよ、クラスのみんなにもそう言っているしさ」

 

 「分かった。 私のことは……簪でいいよ、でもイッセーって本当に私と同い年?」

 

 「そうだよね~イッセーってなんだか大人っぽい」

 

 「ははは……」

 

 「そうだねー……」

 

 俺がそう思われるのは前世の記憶のせいだろな……

 そのことを知っている俺と刀奈は苦笑いしか出来なかった。

 ちなみに俺の記憶のことは俺と刀奈の秘密ということになっている。

 俺の未来知識は神託の神鏡で知ったということにする予定だ。

 

 「あ、そういえば赤打鉄の検査が終わりましたよ」

 

 一次移行したあと赤打鉄は学園に検査のために回収されていたんだよな。

 

 「どうでした?」

 

 「完全にあなたの専用機化したことと謎のデータが拡張領域を埋め尽くしていることを除けば異常なしですね、はい、あなたのIS」

 

 俺は一般人の皮を被った腐女子から赤い腕時計を受け取り、神器の中に戻した。

 ちなみにこの部屋にいる人間は全員、更識家の関係者なので俺が赤龍帝であることを知っているし、刀奈の本名も知っている。

 

 [主様ーお父様ー帰ってこれましたよ! 寂しかったんですよ!]

 

 『おかえり、ミナコ。 俺も寂しかったぞ』

 

 おかえり。

 

 「でもこれで一誠の国家代表になるための実績が出来たね」

 

 ま、そりゃそうだろうな、コアと会話して、量産機を専用機化させただなんて俺ぐらいしか出来ないだろうな。

 

 「あとは国家代表としての最低限の知識があればOKだね」

 

 「でも刀奈、まだ候補生ですら無いぞ俺」

 

 「一誠は男だから、すぐに候補生くらいにはなれるよ?」

 

 そうなのか!?

 確かに貴重な男だしな……

 だが……

 

 「なんだか簪に悪いな……俺ずるして候補生になった感じ」

 

 「イッセーの場合仕方ないと思う……いろいろと特殊だし、それに……所詮は候補だから候補生はいっぱいいるよ?」

 

 やっぱそうなのか。

 ……それを誇らしげにしていたセシリアェ……

 

 

 

 

 「でもイッセーが赤龍帝だったんだね」

 

 「意外だったよね~、オリムーを強くしようとしたんだっけ?」

 

 「ああ、戦力は多いにこしたことはないからな、でもごめんな、あの時怖がらせて」

 

 「別に気にしてないないよ~、殺気も感じなかったし」

 

 殺気って……ああのほほんさんはこれでも裏世界の住人だった。

 

 「元々あの無人機が来たときからパニックなっていたし……」

 

 そうなのか。

 ちなみにあの無人機は原作通り、秘密裏に学園に回収されている。

 でやっぱり使われていたコアは未登録のものだった。

 

 

 

 「でもお姉ちゃんの鏡に新しい予言が……出たんでしょ?」

 

 「うん、そうなの、これ……」

 

 刀奈は神託の神鏡を呼び出した。

 鏡にはいつもの<赤き龍の力を宿した者と白き龍の力を宿した者、二者が出会ったとき世界に大いなる混乱が訪れる>が浮かび上がっていてその隣に<隠されし戦女神の模倣者が動きだす>と書いてあった。

 

 「この隠されし戦女神の模倣者って……」

 

 「VTシステムのことだろうな、隠されしだから、こっそり仕込んであるということだろうな」

 

 「でも……誰なんだろう? まだ完成していない私の打鉄弐式じゃないだろうし……」

 

 ちなみに打鉄弐式は姉妹間の確執が無くなったため、刀奈の指揮の元、急ピッチで学園のみんなで作っている。

 学年別タッグトーナメントまでには間に合う予定だ。

 

 「ま、そうなったら俺が禁手を纏って、倒すさ。 本物ならちょっとやばいかもしれないけど、モノマネ野郎に負けるほど、赤龍帝は弱くない」

 

 「おお~イッセー頼りになる~」

 

 事前に止めるのは難しいだろうし、その場で対応していくしか無いかね、VTシステムは。




「でも本音、お姉ちゃんなんだか歩き方が変だよね?」

「イッセーとかいちょーは外泊したらしいよ~」

「やっぱり、それって……」

「…………」
「…………」

「かんちゃん、この話もう止めよう」

「……うん」
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