一夏たちと夕飯を食堂で食べ終えたあと……
俺はIS学園の周辺を見て回っていた。
……よしこれでだいたいの地図が頭の中で出来たな。
あちこち見て回っていたら、いつの間にかあたりは真っ暗だ。
IS学園は人口島の上にある。
どうやらこのあたりは海に近いらしい。
月明かり、波の音、星の煌めき、潮の香り。
『こういったもの良さはどこの世界でも同じだな』
ドライグ。
『なあ相棒、お前が部屋に戻ったあたりから記憶があやふやなんだが、なにかあったか?』
ドライグ、世の中には無理に思い出さないほうがいいこともあるんだぜ。
『そうか……なんだか疲れた気がする、少し神器の奥で眠っているから、なにかあったら呼んでくれ』
おやすみドライグ。
『ああ、おやすみ相棒』
俺もそろそろ眠るとしよう。
こうして自室である1001号室に帰ってきたわけだが……
「おかえりなさい、あなた。 わたしにします? わたしにします? それともわ・た・し?」
裸エプロンの生徒会長がいた。
正確には水着エプロンみたいだが。
あれ?
俺、帰る部屋を間違えたかな?
これかなり後で起こるイベントだよね?
バタフライエフェクト。
この単語が俺の脳裏をよぎった。
どうやら俺という異物が入りこんだことで世界に異変が起きてしまったようだ。
固まった俺を見て満足したらしい、生徒会長――更識楯無はイタズラが成功したような、意地の悪い笑みを浮かべていた。
でもな、会長さん。
俺はあなたの水着エプロンを見たから固まったわけじゃないんだぜ?
「無論あなたで」
「へ?」
今度は会長さんの方が固まった。
この隙を見逃す俺ではない。
そのまま彼女を持ち上げた。
「え? ちょっとこれって――」
ただ持ち上げたのではない。
そう、女の子の憧れ、お姫様だっこだ。
俺は会長さんをベッドの近くまで運び、ベッドの上におろした。
「据え膳食わぬは男の恥、会長さんあなたをいただきます」
「ち、ちょっと、待って、ほ、本気?」
壁ドンならぬベッドドンをしながら俺は続ける。
「本気もなにもあなたの方から言ってきたんでしょう? 大丈夫ですよ、お互いに初めてみたいだし、なるべく優しくしますから」
「や、やだ……やだよぅ」
会長さんはこうなるのを予測していなかったのか、涙目だ。
これはこれでそそるが……
「なんてね」
「へ?」
……このへんにしてあげよう。
涙目の女の子はかわいいけど、泣いている娘を犯す趣味はないしさ。
やっぱりエロは純愛がナンバーワン!
「冗談ですよ、会長さん」
「冗談……? 本当に?」
「そちらも冗談なら、こちらも冗談ですよ」
というかあのままやってたら、強姦罪で捕まりそうだし。
まあ、性的なことであたふたする年上のお姉さんが見れたのでよしとしよう。
「俺はシャワーを浴びますから、俺がシャワーを浴びている間にまともな格好に着替えておいてくださいね、もし着替えていなかったら……」
「なかったら……?」
「今度こそ本当に犯す」
「着替えさせていただきます!」
やれやれ。
着替えを持って、シャワーを浴びにいくか。
シャワーを浴び終えた俺は会長さんの姿を見た。
どうやら制服に着替えたようだ。
「ちっ、シャワー空きましたよ入ります?」
「その舌打ちなに!? とりあえず私は大浴場に行ったからいいよ」
そういえば女子は大浴場に入れるのか、久々にでかい風呂に入りたいなぁ。
しかしなぜ彼女がこの部屋に?
「会長さんがルームメイトなんですか?」
「そう私、更識楯無があなたのルームメイトよ」
彼女が持っている扇子には「大正解!」と書かれている。
どうなっているんだあれ。
「ルームメイトなんだからもう少し兵藤くんは私に優しくしてくれてもいいのよ?」
「優しく? わかりました、なるべく優しくしますからちょっと横になってください」
「そういう優しくじゃなくてぇ!」
「え? ハードなのがお好みなんですか? わかりました泣いても叫んでもやめませんから」
「違うの、そういうのじゃないのぉ!」
「そういうの? そういうのってなんですかね? 更識先輩、一体何を考えたんですか? 俺はただお詫びにマッサージをしてあげようとしたのに」
ひどい人だなあ更識先輩は(棒)
「ま、マッサージ!?」
「はい、マッサージです、あれ更識先輩、自分がなにをされると思ったんですか?」
「それは…………」
「あれ黙っちゃうんですか? 俺超能力者じゃないから言ってくれないとわからないんですけど?」
神器は超能力みたいなものだけどね。
「うううっ」
あ。
やばい、ちょっといじめ過ぎたか?
マジで泣いちゃうぞこれ。
「泣かない、絶対に泣かない、あの日からそう決めたじゃない」
おや?
「マッサージ、いいわね! 私にマッサージしてくれる? 兵藤くん」
すげぇ。
強引に話を進めたよ、この人。
こうして俺は更識先輩にマッサージをすることになった。
まさか本当にマッサージすることになるとは。
「あー効くー」
「すごい肩がこってるじゃないですか」
「生徒会長って仕事いっぱいで疲れるのよー」
そりゃこの人は特にそうだろう。
IS学園最強の生徒会長なんだから。
仕事も多かろう。
「でも兵藤くん、マッサージ上手いのね」
「共働きの両親によくやってましたから、まあ今は例のプログラムのせいで息子の俺でさえどこにいるかわからないんですけど」
俺がISを動かせることが分かった日。
俺は両親に俺が化け物であることを告げた。
俺の細胞は神器からあふれ出るドラゴンの力で変質している。
原作一誠の腕が一時期ドラゴン化していたのと同じことだ。
俺の場合は禁手を使ったり、ドラゴンの力を意図的に体に流したのが原因だ。
俺のドラゴン化した細胞は普段は人間の細胞に擬態している。
そのため常時鱗まみれではない。
悪魔化できそうにないならドラゴン化しよう。
俺はそう考えていた。
ドライグには止められた。
『人間では無くなってしまうぞ!?』
構わない。
原作一誠だって人外になっているんだ。
たいした問題ではない。
『相棒……』
来たるべき戦いの日に備えていた俺だったが、結局そのような日は来なかったのだ。
こうして俺は人外になったわけだ。
もちろん体のことだけじゃない神器のことも前世の記憶があることも全部告げた。
「父さん、母さん、この通り俺は化け物だ。 化け物を育てたつもりはないでしょ? だから俺のことなんて忘れて二人で仲良く生きてくれよ」
「このバカ息子!」
あのときは思いっきり殴られたんだよな。
父さん、子供に手を出す人じゃないのに。
「化け物を育てたつもりはない? ああその通りだ、俺たち夫婦が育てたのは息子だ! 化け物じゃない」
「でも俺は! 前世の記憶があるんだ! 息子面できる人間じゃない!」
「一誠、あなたの前世の記憶が戻ったのはいつ?」
あのとき母さんにそう聞かれたんだっけ。
「10歳くらいから徐々に、それと同時に神器も使えるようになった」
「そうか、やはりお前は俺たち夫婦の子供だ」
「こんな化け物染みた人間がいるかよ!」
俺の細胞は感情が爆発したり、眠っていたりして油断すると擬態を止め鱗が出てしまう。
俺はあの日鱗を振るわせてそう叫んだ。
「それでもあなたは私がおなかを痛めて産んだことに変わりはないわ」
「赤ん坊のお前を見て、この子は絶対に守ろう、そう誓ったんだ、たとえ一誠、お前が何者であったとしてもそれを変えるつもりはない」
ああ、この人たちには勝てないや。
俺はあの日そう思った。
そして今、俺は、俺のこと全てを受け入れてくれるのはきっと両親だけだ、だから俺は恋をすることはないだろう、そう思っている。
だから一夏にはちゃんと恋愛をしてほしいのだ。
「そう……」
そう言って会長さんはばつが悪そうに黙り込んでしまった。
あなたが悪いわけじゃないだろうに。
こんな性格だから、疲れもたまるんだろうなと思った。
ちょっといじめるつもりが、逆に弄ばれるなんてね……
兵藤くんをいつかギャフンと言わせるんだから。