『元』デュエリストが『現』デュエリストになる物語 作:(無言の腹パン)
新作です。亀更新になると思います。
「あー…………暇だ」
机にデー…と突っ伏するこの少年。
長ったらしい黒髪をポニーテールにした黄金色の瞳をしたこの少年は、今物凄く暇だった。
「………帰りになんか買ってくかなー……」
他の生徒が帰っているのに、少年はただずーっと突っ伏したまま。たらりと、彼の黒髪が靡く。
そんな少年に一人の少年が…。
その少年は鞄を振り回し、そして、
「ブゴォッ⁉︎」
黒髪の少年の頭に鞄アタックをかました。
黒髪の少年は頭を抑え、鞄アタックをかました少年を睨む。
金色の短髪で、可愛らしい顔立ちをした、群小色の瞳の少年。
彼は簡潔に、
「帰るよ」
と言った。
ピキピキ…と、青筋を立てる黒髪の少年の顔まで、握り拳が持ってこられる。
「おい美園…お前何してくれちゃってんのかなぁ?」
「鞄を振り回してお前の頭にヒットさせたんだけど?」
「まずな、なんでそんな風に思いつくんだ?え?俺ならなんでも良いって思ってる?」
「思ってる」
「一回殴らせろお前」
シレッと黒髪の少年の質問に答えた少年の名は
美園は「嫌だ」と即答。黒髪の少年は「お前ふざけんなよ…」と、取り敢えず拳を仕舞う。なんだかんだ優しいのだこの男は、
「早く帰るよ」
「俺店寄るから」
「そう、なんか買うつもりでしょ?アイス?パフェ?」
「コンビニでパフェなんか買える訳ねえだろ。似なら買えるけどさ」
「で、結局何買うの?」
「アイス」
「だと思った」
校門を出て、彼らは数メートル先のコンビニへと寄った。
馴染みの音を聞いて入店する。そしてカウンターを見れば、いつも通り見知った店員。
「お、またアイスかい?それとも菓子?」
「今回はアイスだ」
「大好きだねー。あ、お気に入りならまだあるよ」
「お、好都合好都合」
「僕もなんか買おうかな…」
黒髪の少年はアイスコーナーへ、美園は飲み物コーナーへと向かった。
「あったあった」
黒髪の少年は大好物の『苺大福』を手に取り、レジへと向かった。
この苺大福はとにかく美味しい。シャリッとした苺にもちっとした生地、そして甘酸っぱい味が口に広がってとにかく美味しい。しかもアイスときたらこれはなんだ、冷たさが美味さを引き立てて絶品じゃないか‼︎……と、黒髪の少年は絶賛している。
まぁ、実際に人気なのだが…。
「506円だよ」
「千円から〜」
「てか無駄に高くない…?」
「値段など関係ない」
美園もお茶を購入し、二人はコンビニを後にした。
出て行く時に「また来いよ〜」と、店員から言われた。言われなくても行きます。と黒髪の少年はそう心の中で言った。
帰宅路を歩いてると、
「ダイレクトアタック‼︎」
「ああ‼︎…負けた〜…」
河川敷で、デュエルをしている子供達がいた。
勝負はついたようだが、接戦だったらしい。
黒髪の少年はその光景を、懐かしそうに見ていた。
「…………ねえ」
「ああ…言わなくていい。デュエルからはもう、『縁』を切ったからな」
そう言って、黒髪の少年はまた歩き出した。「早く帰らねえと苺大福の甘みが…」と、心配を零して、
美園はその背中を見て、目を細めた。
「…………ハァ」
美園は黒髪の少年の後を追った。
「じゃあな」
「うん」
彼らは分かれ道で別れた。
黒髪の少年は夕焼けの道を歩く。
犬の散歩、ランニング、子供達とすれ違い、彼は静かに自宅へと向かう。
自宅へと着いた時、彼は今日一の溜息を吐いた。
「またかよ…」
彼は郵便物を取り、玄関にあるゴミ箱へと放り投げた。
放り投げたのは、ピンクの手紙。
ーーラブレターとは違うもの。
「俺はもうデュエルを止めたんだっつうの」
鞄をソファに放り投げ、苺大福を食べ始める。
…うん、いつもと同じ味だ。堪らない。
「うっま…やっぱ最高だわ」
彼はリモコンを手に取り、テレビをついた。
映し出されたのは、生き生きとしたアナウンサーの姿。
そのアナウンサーの横の映像には、『ある少年』が映し出されている。
アナウンサーは興奮冷めやらぬ…ゴホン、興奮が抑えきれないように喋り出した。
『先日、ストロング石島さんに勝利した榊遊矢君。新たな召喚方法ペンデュラム召喚‼︎果たして彼はど』
ピッ、と少年はチャンネルを変えた。
映し出されたのはお笑い番組。
これは面白くなかったから直ぐにチャンネルを変えた。
結果、どれも面白くなかったのでテレビを消した。
「………………あーあ」
苺大福も食べ終え、鞄を枕にしてソファに寝転ぶ。
……硬い。まぁそれは当たり前だろう。
何故なら鞄には、『命』が入っているのだから。
「……ペンデュラム召喚、ねえ」
そういえば美園が言ってたな…と、昨日言われた事を思い出した。
『知ってる?なんか新しい召喚法が現れたんだって』
『興味ないし』
その時は直ぐ切り捨ててしまったが、ここまで報道されると流石に気になる。
実際に見たわけではない。さらに言うとその効果も知らない。
美園は実際には行った事はないが、テレビで知ったという。
少年は手を仰ぎ、自身の手を見た。
「………まだ、捨てられねえって事、か」
少年は起き上がり、長ったらしい髪を結んでいるゴムを解いた。
バサリ…と、髪が顔を隠す。
「長くなったなぁ…切るの面倒い」
女性みたいな滑らかな髪を靡かせ、彼は景色を見た。
夕日はもう沈み、もう暗い空が姿を現している。
「………あーあ、なんでこんな事考えてんだ…自分で切り捨てたくせに…」
髪を掻き、鞄を乱暴に落とした。
そこから露わになる『命』が、床に転がる。
あはは…と、彼は頭を抱えた。
「ほんっとう…諦め悪いな…俺」
「…最後の悪足掻き…に入るか?」
少年の名は
デュエリストを止めた、ただの『一般中学生』である。
次回予告
「たはは…なーんでこんなに…タイミング悪いわけ?」
数日後
深夜は興味本心で知りたかったペンデュラムを見に、ある塾を訪れていた。
ーーだがその塾は今、何かの対決が行われていた。
「丁度いい。君と私でデュエルをしよう」
「……マジで、デュエルは俺を解放してくれないな…」
次回「巻き込まれた『元』デュエリスト」