『元』デュエリストが『現』デュエリストになる物語   作:(無言の腹パン)

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第1話

新作です。亀更新になると思います。


一つを手放した少年

「あー…………暇だ」

 

机にデー…と突っ伏するこの少年。

長ったらしい黒髪をポニーテールにした黄金色の瞳をしたこの少年は、今物凄く暇だった。

 

「………帰りになんか買ってくかなー……」

 

他の生徒が帰っているのに、少年はただずーっと突っ伏したまま。たらりと、彼の黒髪が靡く。

そんな少年に一人の少年が…。

その少年は鞄を振り回し、そして、

 

「ブゴォッ⁉︎」

 

黒髪の少年の頭に鞄アタックをかました。

黒髪の少年は頭を抑え、鞄アタックをかました少年を睨む。

金色の短髪で、可愛らしい顔立ちをした、群小色の瞳の少年。

彼は簡潔に、

 

「帰るよ」

 

と言った。

ピキピキ…と、青筋を立てる黒髪の少年の顔まで、握り拳が持ってこられる。

 

「おい美園…お前何してくれちゃってんのかなぁ?」

「鞄を振り回してお前の頭にヒットさせたんだけど?」

「まずな、なんでそんな風に思いつくんだ?え?俺ならなんでも良いって思ってる?」

「思ってる」

「一回殴らせろお前」

 

シレッと黒髪の少年の質問に答えた少年の名は橘 美園(たちばな みその)。非常に女の子らしい名前である。

美園は「嫌だ」と即答。黒髪の少年は「お前ふざけんなよ…」と、取り敢えず拳を仕舞う。なんだかんだ優しいのだこの男は、

 

「早く帰るよ」

「俺店寄るから」

「そう、なんか買うつもりでしょ?アイス?パフェ?」

「コンビニでパフェなんか買える訳ねえだろ。似なら買えるけどさ」

「で、結局何買うの?」

「アイス」

「だと思った」

 

校門を出て、彼らは数メートル先のコンビニへと寄った。

馴染みの音を聞いて入店する。そしてカウンターを見れば、いつも通り見知った店員。

 

「お、またアイスかい?それとも菓子?」

「今回はアイスだ」

「大好きだねー。あ、お気に入りならまだあるよ」

「お、好都合好都合」

「僕もなんか買おうかな…」

 

黒髪の少年はアイスコーナーへ、美園は飲み物コーナーへと向かった。

 

 

「あったあった」

 

黒髪の少年は大好物の『苺大福』を手に取り、レジへと向かった。

この苺大福はとにかく美味しい。シャリッとした苺にもちっとした生地、そして甘酸っぱい味が口に広がってとにかく美味しい。しかもアイスときたらこれはなんだ、冷たさが美味さを引き立てて絶品じゃないか‼︎……と、黒髪の少年は絶賛している。

まぁ、実際に人気なのだが…。

 

「506円だよ」

「千円から〜」

「てか無駄に高くない…?」

「値段など関係ない」

 

美園もお茶を購入し、二人はコンビニを後にした。

出て行く時に「また来いよ〜」と、店員から言われた。言われなくても行きます。と黒髪の少年はそう心の中で言った。

帰宅路を歩いてると、

 

「ダイレクトアタック‼︎」

「ああ‼︎…負けた〜…」

 

河川敷で、デュエルをしている子供達がいた。

勝負はついたようだが、接戦だったらしい。

黒髪の少年はその光景を、懐かしそうに見ていた。

 

「…………ねえ」

「ああ…言わなくていい。デュエルからはもう、『縁』を切ったからな」

 

そう言って、黒髪の少年はまた歩き出した。「早く帰らねえと苺大福の甘みが…」と、心配を零して、

美園はその背中を見て、目を細めた。

 

「…………ハァ」

 

美園は黒髪の少年の後を追った。

 

 

 

 

「じゃあな」

「うん」

 

彼らは分かれ道で別れた。

黒髪の少年は夕焼けの道を歩く。

犬の散歩、ランニング、子供達とすれ違い、彼は静かに自宅へと向かう。

 

自宅へと着いた時、彼は今日一の溜息を吐いた。

 

「またかよ…」

 

彼は郵便物を取り、玄関にあるゴミ箱へと放り投げた。

 

放り投げたのは、ピンクの手紙。

 

ーーラブレターとは違うもの。

 

「俺はもうデュエルを止めたんだっつうの」

 

鞄をソファに放り投げ、苺大福を食べ始める。

…うん、いつもと同じ味だ。堪らない。

 

「うっま…やっぱ最高だわ」

 

彼はリモコンを手に取り、テレビをついた。

映し出されたのは、生き生きとしたアナウンサーの姿。

そのアナウンサーの横の映像には、『ある少年』が映し出されている。

アナウンサーは興奮冷めやらぬ…ゴホン、興奮が抑えきれないように喋り出した。

 

『先日、ストロング石島さんに勝利した榊遊矢君。新たな召喚方法ペンデュラム召喚‼︎果たして彼はど』

 

ピッ、と少年はチャンネルを変えた。

映し出されたのはお笑い番組。

これは面白くなかったから直ぐにチャンネルを変えた。

 

結果、どれも面白くなかったのでテレビを消した。

 

「………………あーあ」

 

苺大福も食べ終え、鞄を枕にしてソファに寝転ぶ。

……硬い。まぁそれは当たり前だろう。

何故なら鞄には、『命』が入っているのだから。

 

「……ペンデュラム召喚、ねえ」

 

そういえば美園が言ってたな…と、昨日言われた事を思い出した。

 

『知ってる?なんか新しい召喚法が現れたんだって』

『興味ないし』

 

その時は直ぐ切り捨ててしまったが、ここまで報道されると流石に気になる。

実際に見たわけではない。さらに言うとその効果も知らない。

美園は実際には行った事はないが、テレビで知ったという。

少年は手を仰ぎ、自身の手を見た。

 

「………まだ、捨てられねえって事、か」

 

 

少年は起き上がり、長ったらしい髪を結んでいるゴムを解いた。

バサリ…と、髪が顔を隠す。

 

「長くなったなぁ…切るの面倒い」

 

女性みたいな滑らかな髪を靡かせ、彼は景色を見た。

夕日はもう沈み、もう暗い空が姿を現している。

 

「………あーあ、なんでこんな事考えてんだ…自分で切り捨てたくせに…」

 

髪を掻き、鞄を乱暴に落とした。

そこから露わになる『命』が、床に転がる。

あはは…と、彼は頭を抱えた。

 

「ほんっとう…諦め悪いな…俺」

 

 

「…最後の悪足掻き…に入るか?」

 

 

少年の名は如月 深夜(きさらぎ しんや)

 

 

デュエリストを止めた、ただの『一般中学生』である。




次回予告

「たはは…なーんでこんなに…タイミング悪いわけ?」

数日後

深夜は興味本心で知りたかったペンデュラムを見に、ある塾を訪れていた。

ーーだがその塾は今、何かの対決が行われていた。

「丁度いい。君と私でデュエルをしよう」

「……マジで、デュエルは俺を解放してくれないな…」

次回「巻き込まれた『元』デュエリスト」
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