『元』デュエリストが『現』デュエリストになる物語 作:(無言の腹パン)
今回は会話文だけです。
俺は強制終了されたアクションデュエルーーそのフィールドに立っていた。
徐々にアクションフィールドは解かれていき、真っ黒な床の上に俺は立つ。もう敵さんの方々もいない事だし…帰るか。
って出ようと出口の方を見たら。
「やぁ」
なんという事でしょう。出口にはあのエスパー野郎がいるじゃありませんか‼︎
てかいつからいた⁉︎も、もしやデュエル中に…⁉︎
「おい…お前いつからいた?」
「お前のエースが登場する前にはもういたよ」
「その時、か…」
もうこいつはエスパーといっても信じてしまう自分が怖い。
……って‼︎
「お前…これが目的で」
「なんのことかな?君をここに連れてきたのは前の言った通りだけど?」
「ふざけるな、俺がこれで戻るとでも思ったか?余計なお世話だ。もうデュエル関連は持ち込むんじゃねえ」
「そう…」
そんな叱られた子犬みたいな顔すんな。キモいから‼︎
チッ…帰る。
「帰るのかい?」
「あったりめえだ」
「その前に、塾長とその他方々が何か言いたそうだけど?」
「あ?」
俺はあいつらを見た。見れば美園の言う通り何か言いたそうじゃありませんかやだー。
あー…なんか気分悪いな。
「なんだ、何か言うならさっさと言え」
ビクッと肩を震わせた。いやなんでだよ‼︎俺そんな怖い⁉︎お兄さんそんな怖いの子供達⁉︎
…ってちょっと落ち込んでるとトマト頭少年が来た。
「…ありがとう、塾を守ってくれて」
「……勝手にやっただけだ」
「カッコつけちゃって」
「お前は一回黙れ‼︎」
俺は美園の頭を殴った。美園は痛そうに顔を歪めている。はんっ、前の仕返しだこの野郎‼︎
「じゃあ…俺帰るから」
「え、入らないのか⁉︎」
「は?…そもそも俺は、このエスパー野郎に言わされて来たんだ。本当は来る気は」
「あったんだよ?」
「ない‼︎」
大事なところで被せて来やがった…覚えてろよエスパー野郎が。
あのトマト少年が落ち込んでいる…そんな顔すんなよ。そんなに入って欲しいのか?もっと強いやついるだろう…。
てか、正直に言ってこの展開は好ましくないんだが…。
「じ、じゃあ何で…」
「あのマフラー男がペンデュラム召喚を見せてやるって言ったからやっただけだ。もうデュエルはしねえ。ペンデュラム召喚も見れた。それだけで充分だ。さぁて俺の言い分はここまでだから帰るわそれじゃあまたなー」
「あ、ちょ⁉︎」
俺はあいつらの返事を待たずに塾を出て行った。じゃないとあいつらの言葉で『戻されそう』だから。
早足で俺は塾から離れる。あいつらが追ってきそうだから。もうデュエルから離れたい。
忘れたい。
もう、『苦しみたくない』。
脳裏に浮かぶあの『 』。
泣き叫ぶ『 』。
破かれる『 』。
砕かれる『 』。
…………ハァ。嫌な事思い出しちまった。
「……苺大福、買ってくか…」
俺はいつものコンビニへ足を進めたーーー。
ーーー
「………あーあ、行っちゃった」
僕はあいつが去っていったとこを見つめていた。
榊君の言い分も聞かずに出て行ったあいつの、背中を。
「……そんな」
榊君は落ち込んでいる。他の皆は呆然としてるけど。
……これでも駄目だった、か。
『あの時』のように『楽しんで』くれれば、戻って来てくれるって思ってたのに…。
実の所、僕は何も知らない。
あいつがあんなにデュエルを『嫌う』なんて、詳しい事は知らない。
ただ、突然言われただけ。
『俺はデュエリストを辞める』
ってね。
でも追求はしなかったよ。
『そう』って終わらせた。
だってさ、追求しても、結局はあいつを苦しめるだけじゃないか。
だから聞かなかった。あいつの心を安定させるために。
「……ねえ」
そう僕が思い出していると、柊ちゃんが声をかけてきた。表情は心配そうだ。何かを考えてるように、迷っているように。
柊ちゃんは顔を傾けて僕に聞いた。
「あの…デュエルから『縁』を切ったって…」
「そのまんまの意味だよ。あいつは『デュエリストを辞めた』。つまり『元』デュエリストってのがピッタリだね」
「ッ何故だ‼︎あれ程の実力があって何故…‼︎」
「僕に聞かないで欲しいな。あいつに聞いてよ。僕は何も知らないし、知る気もない」
権現坂君は引き下がった。そう、それでいい。君はあいつには『敵わない』。
僕は追い討ちをかけるように言う。
「まぁ、聞かない方が身の為だよ。あいつ…結構不機嫌だし」
「……なんで」
「デュエル関連はもう嫌なんじゃない?君も見たでしょ?ーーー『あいつの楽しんでない姿』を」
「ッ……」
そう、あいつは『楽しんでないんだ』。
恐らく心の中では『楽しんでいるんだろう』。だけどそれは勘違いで、あいつは楽しんでないんだ。
『エース』を出しても…。
「……さて、恐らく君達はまだ聞きたい事があるだろう。でも僕はそろそろおいとまするよ。長居しても仕方ないし」
「ッ⁉︎ちょ、待っ」
「橘美園、この遊勝塾に入ります。よろしく」
さて、言ったことだし帰ろう。
僕は早足で塾を出て、帰宅路へと足を進めるーーー。
「えええええええええええッ‼︎‼︎⁉︎⁉︎」
何人かの男女が叫んでたけど無視無視っと…。
ーーー
次の日も学校は休みだった。
深夜は『ある場所』へと足を進めていた。
袖口を肘まで捲り上げた真っ黒なコート、中は灰色のTシャツに、真っ黒なズボンの太ももに真っ白なバンダナを結ぶ。これがいつもの服装だ。昨日はパーカーとダボダボのズボンで行ったのでちょっとださかった。いや、それには理由がある。デュエルする気はないのでペンデュラム召喚をさっさと見て帰ろうとしていたのだから軽い服装で行ったのだこれは言い訳ではない。まさか社長とデュエルするとは思わなかったから。
まぁ、話はここまでにして置いて…深夜は『
カウンターには顔馴染みの女性店員。女性店員は彼に気づくと、穏やかな表情を見せた。
「いらっしゃい。今日はどんな花にしとく?」
「カーネーション」
「好きだねぇ…」
「『あいつ』が好きだからさ」
「……早く、良くなるといいねぇ」
「…………」
女性店員は慣れた手つきで二輪のカーネーションをデコレーションする。デコレーションと言っても、花束に入れてリボンを結ぶだけだが。
深夜はカーネーションを無言で受け取り、最愛を後にした。「また来てね」という女性店員の声を聞いて。
病院というのは苦しい。
いつも人を苦しめる。
足取りが重い。思い出したくもないものが脳裏に浮かぶ。
病院というのは苦しめるものにあるのか。
人を助けるという命の恩人みたいな役だが、もし助からなかったら…それは、誰の責任だ?
治せなかった医師?それとも発見者?
違う。全てだ。全ての責任だ。
精神病院とかに通うようになりそうな、その事故にあったやつも責任がある。
だってさーーーちゃんとしてても、人生は人生だろ?
自分で全部決まってるわけじゃないんだしさ…。
深夜は一つの扉の前に立ち、ゆっくりと扉を開けた。
そよそよとカーテンが揺れ、『あいつ』を照らす光。
深夜はジッ…と、『あいつ』を遠くで見つめ、やがて彼の近くへと立った。
深夜の口が開く。
「よう、久しぶりだな
兄さん」
何もつけられていないまっさらの状態の彼の兄は、眠り姫のように眠っていた。
深夜は花瓶にカーネーションを生け、近くのイスへと腰掛けた。
「昨日さ、俺久しぶりにデュエルしたんだよ。絶対やらないって言ったのに…笑えるよな」
彼は昨日の出来事をポツリポツリと話し始めた。
主にデュエルについて。
聞こえなくても、話し続ける。
終盤まで話したところで、ふと気付いた。
「……ハハッ、結局…俺、デュエル脳じゃん」
ほぼデュエルについて語っていた自分に呆れる。
溜息を吐き、深夜は花瓶の近くに『デュエルディスクとデッキ』を置いた。
「ここに置いとくからさ…取っといてくれ。兄さん。俺、もう行くから…」
最後に兄の顔を見て出ようとした。
その時だった。
「………?……そこにいるのは誰だ」
深夜は扉付近の気配に気付いた。真っ黒な影が左右に動く。恐らく同様しているのだろう。
深夜はイラついた口調でもう一度聞いた。
「姿を現せ」
長い間を開け、その人物はゆっくりと戸を開けた。
「……お前は?」
そこにいたのは、深夜と初対面だった。
金髪の前髪に茶髪。包帯を巻いているところを見ると入院しているのだろう。兄の見舞客ではないはずだ。
その人物は少しおどけたように喋り出す。
「え、えーと…覗いてごめん。ちょっと…」
「その前にお前の名前は?」
事情を聞くのは名前を聞いてからだ。
その人物はハッとして、自分の名前を名乗った。
「沢渡シンゴ」
おや?少し彼の『 』が…、
さて、沢渡さんと出会った深夜はどうするのか‼︎それは次回に明かされる‼︎
地味に美園の口調が行方不明でごわす(´・ω・`)