『元』デュエリストが『現』デュエリストになる物語 作:(無言の腹パン)
今回テンポよく進みます
「………………ぅ」
身体が痛い。そして肌も痛い。
俺はゆっくりと目を開ける。
そこは家ではなく、噴水ありベンチあり緑ありの公園だった。
そのベンチの一つに俺は座って寝ていたらしい。そりぁ痛くなるわ。
会場から大歓声が湧く。ああ、今は何回戦なんだろう?美園のデュエルは終わったのか?結局応援してないが…これは、美園のゲンコツが飛ぶな。と、俺は呑気にそんな事を考えていた。
「………暑い」
今日は気温が高いらしい。さっきからジリジリ肌が痛んで地味に痛い。コートは着るもんじゃないな。脱ぐか。中半袖だし…。
コートを脱いで腰に巻く。そして立ち上がった。
公園には人っ子一人いない。この際は一人くらいいた方がいいんじゃないか?と思う程にいない。それもそうか。公園にはテレビなんてないし、子供も今は舞網チャンピオンシップで夢中だろう。でも寂しい。
「……………ほんと、あっちぃな…これ、熱気でやられてんのか?怖えチャンピオンシップ…」
…そう俺は呑気に、本当に呑気に考えていた。
これから起こる事も知らずに。
「…………見ーつけた」
「⁉︎」
俺の横を何かが掠る。一瞬熱くなり、俺は右腕を抑える。
なんだ、何が起こった?見渡しても何もない。振り向いても誰もいない。
「……なんなんだ…?」
気味が悪い…。
もうあの暑さは感じれなかった。
逆に悪寒を感じた。俺は堪らずコートを着る。
「……………帰ろ」
もうここにいる理由もない。兎に角離れたかった。じゃないと、また何かに巻き込まれそうだから。
いらない真実を、突きつけられそうだから。
俺は少し足を早くして、家へと向かったーー。
「……あの子でよろしい?」
「ああ」
青いジャケットを羽織り、黒の短パンを身につけた色気のある女性が、ある少年を見下ろしていた。そしてその女性の横には、マントで顔を覆った人物も、その少年を見下ろしていた。
女性は髪を耳にかけ、不敵に笑う。
「ふふふ…やぁっと…あなたに会えるのね…」
「………お前のじゃない」
「分かってるわよ。ただ興味が湧いただけじゃない。そんなムキにならないでよ、誰も取らないから…取ったら取ったであなた怖いし」
「………いつ、始める」
「……そうね…今日の夜攻めて、後日また攻めようかしら」
「……今日で終わらせないのか」
その時、マントの人物から溢れ出た『殺気』。
女性は身震いした。これはマズイ、という顔で代弁する。女性らしい答え方で。
「知ってるでしょ?私の性格、それで足りると思う?」
「……思わないな」
「でしょ?てか、雇ったのあなただから、私のやり方には目を背けなさいよ」
「………わかった、もうお前に任せる」
どうやら諦めたようだ。その人物は背中を向ける。その背中に女性は投げかけるように言った。
「遂行したら、代金頂戴ねー」
「……へいへい」
それにその人物は手を振って答えた。
さて、と女性は向き直り、また笑う。
「本番まで、平和を味わってなさい…坊や」
また悪寒が走った。折角気持ちよく寝てたのに。
「……………」
テレビから聞こえる大歓声。そうだ、付けっ放しにしてたんだ。
俺は寝返って画面を見る。そこには、あの榊遊矢と沢渡がデュエルしていた。
そうか、あの二人当たったのか…、とボーッとしながらそのデュエルを見る。
『俺は大刃禍是で、ドラミングコングを攻撃‼︎』
『ドラミングコングの効果発動‼︎バトル終了までモンスター一体の攻撃力を、600ポイントアップする‼︎うっ』
榊遊矢のドラミングコングが破壊された。だが効果によって大ダメージは防いだようだ。
『チィッ‼︎俺はこれでターンエンド‼︎』
沢渡は仕留められなかった事に悔しがる。…あ、でも大刃禍是って言ったか?沢渡がそいつの効果を読んでる時、俺は沢渡はこのためにアドバンス召喚したんだなー…と、少し関心していた。
あー、まじで身体がダルいな…まぁ沢渡なら大丈夫だろう、と俺は適当に解釈し、今度はコートを羽織らないで外に出た。外に出たら暑いと思ったからコートを着なかっただけだ。
案の定、外は暑かった。
「……公園行くか」
ちなみに、なんで外に出たのかは俺にもわからなかった。
兎に角ベンチに座って寝たかった。それじゃあベッドで寝ろよって話だが、兎に角外の空気に吸われて寝たかった。
「……意味わかんねえ」
俺は無意識にそう零した。
会場から少し遠いこの公園からも、歓声が聞こえて少し寝ずらかった。
「ーーーー任務開始よ」
「ダイレクトアタック‼︎」
僕のモンスターのダイレクトアタックで、勝負は決まった。
でも、少し高鳴らなかった。何故なら、僕のデュエルの前には、素良君のデュエルがあった。だけどそのデュエルは少し違って、戦争みたいな感じだった。それで素良君は意識を失って、会場は冷めきったように静かで、その中で僕のデュエルは行われた。
僕のデュエルは盛り上がった。だけど、盛り上がってない人達もいた。それもそうか。さっきあんな事が起きたばっかだし、仕方ない…って思ってたけど、少し心細い。
深夜はこのデュエルを見たのだろうか?と、僕は会場を見渡した。だけど、何処にも深夜はいなかった。帰ったのかな?
「………………ほんっとう、寂しいなぁ…」
あの時のように、君が一番の『ファン』だったように、僕も君の一番の『ファン』だった。
そのファンがこの場にいないなんで、本当に寂しいなぁ…。
僕は、司会者の言葉を聞きながらフィールドを後にした。
ーー
ーーー
ーーーー
「……さっむ」
気がつけば夜だった。どんだけ寝てたんだろう。寝る前はまだ日は登ってたはずだけど…。
もう真っ暗で、街灯だけが頼りだ。月は何かに隠れて照らしてくれない。
寒い。そういえばコート羽織ってなかったんだ。こんなに寝るとは思わなかったから着てきてないけど、こんな事なら着てくればよかった。
「………帰ろ」
デュエルディスクを持ってないから時間の確認が出来ない。しかも公園にもないという不運。これは、近いうちに腕時計でも買うか…。と、俺はノロノロと起き上がった。
その時だった。
「ぼーおーやー」
「⁉︎」
俺の前を何かが掠った。それは静かに、俺の横に生えてた木にズブリと刺さる。
俺は恐る恐る、見る。
それは、心臓を根こそぎ持っていける程の大きさの槍だった。バチリと雷が纏ってあって、あれに当たったら根こそぎ持っていかれると共に、身体も一生動けなくなる程になると思える。
「な…に…⁉︎」
「あははっ、その顔いいわー」
俺の背後から聞こえる、女の声。その声はこの事を楽しんでるように聞こえる。
俺は振り返る。
それと同時に、月が出てきた。その光で女が映し出される。
青いジャケットに、黒の短パン。金髪のポニーテールに、獲物を捉えるようなギラギラとした赤い瞳の女が、デュエルディスクを構えて俺を見据えていた。
女は笑う。
「ハッロー坊や。ちょろっとあなたに用があるので少しお話しない?…あ、でもその挨拶じゃあもうお話してくれないかぁ、お姉さん悲しいなぁ」
「…誰だ、テメェ…ッ」
こいつは危険だ。と俺の警報が鳴っている。こいつにこのまま挑んでは駄目だ。早く逃げろ。だが俺の足が動かない。
その間に女はまた笑う。
「クハハハッ‼︎誰だ…ねぇ。ちょっと名乗る必要もないかなぁ。だって…」
女はデュエルディスクを構えた。
それで俺の足は動いた。
「あなたはここで、私に捕まるんだから‼︎魔法カード、トワイライトの槍を発動‼︎」
あれと同じの、雷を纏った槍が、俺を襲った。
ここから遊戯王から離れていく自信がある。
何故かって?ふふふ…リアリストだからさ‼︎