一ヶ月ほどたっただろうか。
ここにいると、時間の感覚がわからなくなる。
あれからミストと私はとても仲が良くなった。
ミストはこの暗い部屋の中で唯一、前向きで私以外の子供達にも慕われている。
それなのにミストは一番私と居てくれる。
実験の方だが、基本的には戦闘訓練だった
相手はファミリーの人間。
様々な本物の武器を使うが、私が扱い方を知っている筈もない。簡単な使い方は教えて貰えるが、此処を押せば弾が出る、取り敢えず刺せとかそんな物なのだ。詳しく教えてほしいと言えば専門用語のラッシュだ。
それなのに少しミスしたり持ち方を間違えたりすれば殴られ、切られ傷ができる
絶対に確信犯だ。
しかし、私は昔から物覚えが良かったのと、ミスしたら暴力を振るわれる恐怖とで驚異的な早さで成長した。
1ヶ月で私はファミリーの人間、殆どに勝てる強さを手に入れた。
戦闘訓練意外に週に1回、最近は2回脳の検査をする日がある。脳の検査とは言われているが、私は頭の中をいじられている気がして他ならない。
検査の後は少しフラフラするだけで脳に問題はないのだが、気になってしまう。
しかし、その日は検査だけで他の訓練はないし、食事は少しだけだが豪華になる。
まあ、増えた分は他の子に分け与えてしまうのだが。
そんな事があって、いじられている気がしても検査の日を楽しみにしている自分もいる。
そんな風に此処での生活にすっかり馴染んでしまった。
だが最近気付いた事がある。
ミストの様子がおかしいのだ。
前より怪我が増えたし、怪我をしていない時も苦しそうにしている。さらに食事の量が少なくなった。
ミストはどんな事をファミリーから強要されようと要領良く、涼しい顔をしてこなしてきた。
そんな彼女が何度もミスをするとは考えられない。
ミストに聞いても何でもないと言うだけだ。
一番聞きたくはない人物だが、ミストの身におきていることだ。
私の脳の検査が終わってから機嫌が良いある研究員に聞いてみることにした。
「ねぇ、ミストに何をしたの?」
「ん?何のことだい?」
そう言ってわざとらしくとぼける彼は、私達……子供達の研究のリーダー格、マーズ。
眼鏡をかけてニヤニヤと笑うその姿は幼い私の心にも苛立ちをつのらせる。
「とぼけないで‼ミストがあんなに怪我をするのは明らかにおかしい‼百歩譲ってミストがミスをしているだけだとしても、怪我をしてない日まで苦しそうなのは変よ‼」
「………知りたいかい?」
目を丸くした後ニタリと笑っていうマーズに一瞬躊躇うが、ミストの為だ。躊躇っている暇などない。
「し、知りたいに決まってるじゃない!」
「………まあ、教えてあげないけどね」
「なっ………‼」
からかわれたと思い、拳を握りしめる。
「だけど彼女を傷つかない様にする事はできるよ」
「………っつ‼本当に!?」
目を輝かせて顔を上げた私にマーズはニタリと微笑んだ。
部屋に戻ってから私は1人、マーズに言われた事を思い返していた。
マーズの言っていた事を要約すると、私が戦闘訓練の一貫で人を殺せばミストを傷つけるのをやめる、と言うものだった。
人を殺したことなど、ある訳がない。しかし私は二つ返事で了承した。
ミストはこの1ヶ月の間、幾度となく私を救ってくれた。私も彼女を救ってあげたい。
それに、ミストの元気が無かったらミストを姉の様に慕う他の子供達が悲しむ。
ミストだけでなく、1ヶ月の間に芽生えた友情が結ぶ子供達も私の大切な人達だ。
守ってあげたい。
私はその日、とても心地良い眠りについた。
「彼は敵対するファミリーの隊員でね?聞きだせる情報もあらかた吐き出させたし、処分しようと思っていたんだ。あ、下っ端とはいえ何人か人を殺した事もあるし、中々凶暴な性格をしているんだ。舐めてかからないほうがいい」
マーズの説明を聞きながら、目の前の男を見据える。
身長は成人男性の平均ほどだろうか。
しかしそれでも子供の私からすれば大男に見える。
彼を殺せば私にメリットがあるように、彼は私を殺せばファミリーから解放される事ができるらしい。本当かどうか、わかったものではないが。
まあ、そんなメリットが彼にもあるからか彼は鼻息を荒くして握っているナイフをさらに強く握りしめていた。
因みに武器の方は自由らしいが、私は最後のトドメはナイフで刺せ、と言われた。
恐らくそうした方が殺した、人を刺した、という感覚が脳により鮮明に刻みつけられるからだろう
性格の悪い事だ。
さらに私は傷一つ負ってはいけないらしい。
傷がつけばつくほど、ミストへの仕打ちは止むどころか増す、と言われた。
マフィアの殺人者相手に、だ。
それでも、今までの戦闘訓練から私は勝つ自信があった。
それにここまできて、やめる事もできない。
覚悟を決めて、私は一番得意な武器である短銃を2丁取り、最後のトドメを刺すであろうナイフを腰につけた。
両手にしっかりと拳銃を握り、息の荒い相手を見据えた。
『スタート』の合図はない。
お互い相手の隙を伺い、攻撃の瞬間を狙っている。
マーズが部屋を出た事にも気付かないくらいに私の意識は目の前の相手を殺す事に集中していた。
…何のきっかけもなく、ほぼ同時に相手に向かって行く。
私に斬りかかってくる相手に、まずは一発おみまいした。
心臓を狙って撃ったつもりだったが、僅かにそれて銃弾は彼の腕にあたる。
しかし、幸か不幸かナイフを持っている腕に銃弾が当たったため、相手の動きが暫しの間止まる。
そこを、見逃すかとでもいうように私は相手の四肢に的確に銃弾を放った。
戦闘を長引かせるつもりはない。
この銃の弾がなくなるまでには、終わらせるつもりだ。
しかし、案外人を殺すというのは簡単なもので…。
四肢を撃ったことで、彼の身体は起き上がることすら困難になっていた。
関節を的確に撃ち抜いたのだ。無理もない。
私は、必死で起き上がろうとしている彼に歩みよって、拳銃のグリップ部分で思いっきり彼の頭を殴りつけた。
グリップに血はついていたものの、これではまだ死んでいないだろう。
私は血のついた拳銃を投げすてると、腰のナイフを抜いた。
そのまま、迷いもなく相手の心臓を突き刺す。返り血がわたしの顔や服にかかる。
ナイフを抜けば驚くくらい簡単に相手は倒れる。
誰の目から見ても、彼が死んでいる事は明らかだった。
その死に顔は、口が三日月を描いていた。
遅くなりました…
話は書けてたんですけど投稿するの忘れてました