私が高校生になって二度目の春。
去年は無事に留年する事なく進級出来た私は高校2年生となり、2年生始めての登校日の今日。
「秀吉!早く!遅刻する!」
遅刻の危機に瀕していた。原因はというと、夜更かしが原因なのだけど・・・
「あ、蒼!ま、待ってくれなのじゃぁ~!」
基本的に規則正しい生活を送る幼馴染の木下秀吉も珍しく寝坊をかまし、私と秀吉は久々に歩き慣れている通学路を走っていた。
しかし私たちの通う学校『文月学園』は(恐らく予算的な)大人の事情により山の中腹にあって、毎朝ハイキングが楽しめるのだ。
「ハイキングなんて生易しい物では無いと思うのじゃが・・・」
まぁ制限時間以内に目的地に到着しないと筋肉ムキムキの暑苦しいオッサンに締め上げられるというルール(?)もあるが・・・。
「秀吉!校門に鉄人を確認!様子からしてまだ本鈴は鳴ってないみたい!」
「うむ!なんとか間に合ったようじゃの」
ようやく校門近くにまで来ると、筋肉と暑苦しさと角刈りを濃縮したような教師、西村 宗一郎先生が見えてくる。ちなみにこの先生は生徒指導担当かつ鬼のような補習で生徒達の間で評判で、趣味のトライアスロンもあって『鉄人』とあだ名が生徒間で付けられている。
「西村先生!少々遅れ・・・!?」
間に合ったと油断していた私たちだったが、西村先生の顔を見て自分たちの判断が誤っていた事を直ぐに理解する。顔は生徒達を見送る優しい先生の顔だが、目が笑っていない。目が笑っていないのである。
「秀吉、ごめんっ!」
「お主何をっ!ふぎゃぁ!」
私は体を翻すと秀吉の襟首を掴んで・・・
「セーフ!」
秀吉を背負い投げして校門より内側に叩きつける。そしてその瞬間。
キーンコーンカーンコーン!
本鈴が鳴った。
「アウトだ馬鹿たれ」
鉄人のゲンコツが私の頭に着弾すると同時に鉄人が言う。
痛い・・・。
「えー!ちゃんと秀吉は校門より内側にいるじゃないですか!」
受け身に失敗してのたうち回っているが。
「ああ、だから木下はセーフだな。だが和泉、お前はアウトだ」
「そんなぁー、これじゃ秀吉は犬死にじゃないですか!」
「蒼よ、ワシは死んではおらんぞ・・・」
今のは気のせいだろう。
「全くお前たちは・・・、まぁいい今日だけは見逃してやる。ほれ、受け取れ」
そう言って何の風の吹き回しか鉄人はため息を吐いて懲罰の代わりに茶色い封筒2つを出してくる。
「む、クラス振り分け試験の結果じゃな」
ああ、あれか。実をいうと文月学園では2年生よりクラス分けは成績順になる。その為、1年の最後にテストを受けたのだけど・・・。
「たしかFクラス辺りじゃないかな~・・・」
そう、手を抜いたのだった。いや、入れてすらいない。たしかテスト中は寝てたような・・・。
「和泉、俺は去年はお前の担任では無かったが生徒指導でよく関わってたな」
「は、はぁ・・・」
なんか嫌な予感がしつつ封筒の閉じを開いて中の紙を取り出してみる。
『和泉 蒼・・・・Fクラス』
まぁ予想の範疇だ。というかこれが狙いとも言えなくもない。
「だが、俺は時々お前はバカじゃないかと思う時があったんだ」
「失礼な!私だってやれば出来る事くらい知っているでしょう?」
鉄人のカミングアウトに少し腹を立てていると、封筒の中にもう一枚紙が入っていることに気付いてしまう。なんだろ?
「だが今回のテストで俺はよく分かった。お前は吉井 明久級のバカだ!」
『以下のものを観察処分者とする
和泉 蒼 』
「なんでっ!?」
ここから私の波乱万丈の高校生活が始まった。