東方最凶覚・吸血精 特別編   作:tesorus

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今回は、結衣達が、ブラッドワールドで異変を解決しようとしている間の話です。少しずつ世界の謎に気づいていく、それは、結衣や霊夢達だけでは無いのかもしれません。


青き巫女と人造妖怪

幻想郷―一見ここは、古き良き土地に見えるかもしれない。しかし、この土地がとある連中に支配されていたということを知る者は少ない。と言うか、ついこの間まで、私自身も知らなかった事実なのだ。

 

話は、数日前に起きた一つの異変にさかのぼる。私は、幻想郷に作られた地下世界、地底に住む一人の妖怪である。

 

地底世界とは、かつて地獄と呼ばれた世界が切り離された世界であり、それから何百年か後に、その時代の博麗の巫女であった人間、博麗霊香によってそこに封印された妖怪達が住まうようになった場所である。

 

彼女は、里の人間からは「守り神」として崇められ、片や妖怪からは非人道的な「悪魔」として忌み嫌われていた。彼女は、妖怪が異変を起こす度に、その異変の大小関係なく、その妖怪を地底世界へ落としていった。

 

私は、まだ三百年ほどしか生きていないので、博麗霊香を見たことはない。だが、彼女が妖怪にどれだけ酷いことをしたのかくらいは解る。もし生まれ変わった彼女に会ったら、真っ先に一発殴ってやろうと決めているくらいだ。

 

さて、そんな無駄話は置いておくとして、数日前の異変の話に戻るとしよう。そう、数日前、そんな地底世界に一人の妖怪が落ちてきた。

 

その妖怪は河童であった。私は初め、偶々地底世界に迷い込んで、出られずに困っているのかと思った。私は、彼女を地上まで案内することにした。彼女は酷く傷ついていて、もう一人で歩けるような身体ではなかった。

 

私は驚いた。別に、彼女が傷ついていることに驚いた訳ではない。私は、その傷に驚いたのだ。

 

「この傷…霊力で攻撃された?」

 

私はそう呟き、恐怖を覚えた。何故、恐怖したのか。簡単なことだ。霊力を操るのは巫女や、巫女の仕える神しかいない。

 

この幻想郷に、巫女は二人しかいない。そして、一人は山に住む守矢の巫女だ。彼女達は河童と手を組み、山の開発を進めていると聞く。それに何より、あの古明地さとりが心を許す界郷想真の女だ。彼女が河童に手を出すとは考えにくい。

 

となれば、もう一人の巫女、博麗霊夢となるが、彼女とも考えづらい。しかし、守矢が河童と手を組んでいることを考えると、やはり彼女しか、博麗霊夢しか考えられない。

 

まさか…あの霊夢が?信じられない。けれど、それしか考えられない。私は河童に、誰にこのような傷をつけられたのかを、聞くことにした。

 

河童は、巫女に傷つけられたと話した。それも身体だけではなく、心まで傷つけられたと。あの博麗霊夢に、「お前達妖怪は、生きていることが罪だ。」とか、「妖怪は、人間の敵だ。消えてなくなれば良い。」と言われたと話した。

 

確かに、霊夢は妖怪には冷酷だと言うことは、以前に霧雨魔理沙と言う魔術師から聞いたことがある。しかし、やはり博麗の巫女がここまで冷たいとは考えにくい。そう思い、私は久し振りに、地底世界の外へ出た。

 

暦は神無月の二日。地底世界から外へ出ると、冷たい風に私は震えた。ここから彼女の家がある妖怪の山は遠いため、その日は諦めて、地底世界の穴の近くで野宿した。

 

久し振りに地上へ上がって来たからか、疲労でぐっすり寝てしまった。目を覚ますと、河童はそこに居なかった。しかし、起きてから数十分経つと、私の元へ戻ってきた。聞けば、近くに食べられる物が無いか探していたらしい。

 

傷は大丈夫なのかと聞くと、まだ痛むが、このまま力無く君に頼っていても仕方ない。妖怪の山に家があるから、そこまで来てくれないかとだけ言い、彼女は妖怪の山の方角へ飛んでいった。

 

数時間後、妖怪の山にある彼女の家へ行った。中には彼女と、彼女が呼んだであろう医者が来て、彼女の傷の手当てをしていた。医者曰く、河童は身体が丈夫だから、しばらく安静にしていれば直るらしい。

 

医者が彼女の家を去った後、彼女は、自分の名を教える代わりに、君の名を教えてくれないかと言った。

 

別に、名を名乗るほど立派な妖怪ではない。私はただの橋姫だ、とだけ言い残して、私はその場を去った。

 

妖怪の山を歩いていると、彼女が追いかけてきた。何かと思って足を止めると、彼女は思いがけないことを言った。

 

「ごめん、本当は君の名前は知ってるんだ。貴女、水橋パルシィでしょ?」

 

なんと、彼女は私の名前を知っていた。何故、知っているのかと聞くと、彼女は数年前の間欠泉の異変で、少しだけ魔理沙から君の話を聞いたと答えた。

 

なるほど、それならば君はあの時私が出会い、仲良くしてくれた魔理沙の友人なのか。ならば、私はあの時に、忌み嫌われた地底世界へわざわざ妖怪達へ会いに来てくれた君の友人に、恩返しが出来たのだろうか。

 

彼女は、君にはまだまだ恩返しがしたいと言って、私を再び自分の家へ招いた。そして、彼女は私にお礼代わりと言っては少なすぎるけれどと、昨日自分を襲った「博麗霊夢」の話と、幻想郷に蠢くとある「組織」の話をしだした。

 

 

 

そもそも、この幻想郷は外の世界の人達が数千年くらい前に、「例えこの暮らしが〈幻想〉になったとしても、未来の人達にこの理想〈郷〉のような生活を見てほしい」と言う思いで作られた、一つの集落だったらしい。そして、その幻想郷が出来てから数百年の時が経っても、源や北条と言った権力者達すら、その趣深い土地や暮らしを大切にしようと、幻想郷を守り続け、中には幻想郷を守護する博麗の巫女に、このような土地を守り続けてくれている礼として、褒美の品を贈った権力者も居たとか。

 

そう、幻想郷は幸せそのものだったのだ。あの時までは。

 

 

 

 

あの日、あの時、その平和は崩れ去ってしまった。

 

幻想郷が出来てから数百年が経ったあの時、突如、幻想郷を武器を持った人々が襲い始めた。

 

外の世界の人間でないことはすぐに解ったらしい。彼らは、当時の技術からは考えられないような高度な武器を持ち、幻想郷を、外の世界の人間達から奪い取った。彼らは、幻想郷と外の世界の間に結界を張り、人造の妖怪に守らせ、幻想郷を自分達のコントロール下に置いた。

 

それだけではなく、彼らは、幻想郷の守り神でもある「博麗の巫女」すら、彼らの世界の人間にし、その人間の一族を代々巫女にすることで、幻想郷を永遠に自分達の物にしようとしている。

 

何故、彼らがこの幻想郷を欲したのかは解らない。だが、確かなことは、その人造の妖怪を倒さない限り、幻想郷が彼らの手から外の世界の人間に戻ってくることはないと言う。

 

残念だが、霊夢は彼らの世界「メトロポリス」の人間の子孫にあたる。そして、そのメトロポリスから送り込まれた博麗の巫女こそ、博麗霊香の正体。なるほど、ならばやはり、私が彼女を殴る権利はあるらしい。

 

先ほど、私は「人造の妖怪を倒さない限り、幻想郷が彼らの手から外の世界の人間に戻ってくることはない」と言ったが、どうやら、彼らが残した物で、それ以上に放って置けない物があるらしい。

 

それこそ、幻想郷と外の世界を裂く結界「博麗大結界」である。どうやらあれは、幻想郷と外の世界を裂くだけでは物足りず、幻想郷を異世界化するだけの力を持つらしい。

 

話をしてくれた河童、河城にとりさんの友人である霧雨魔理沙が、この幻想郷へは、年が経つに連れて、移動魔法だけでは来れなくなっているらしい。逆に、異世界間を飛び交うのに適す、時属性の魔法を使用した方が、簡単に幻想郷へ来れると言う。

 

それが、幻想郷が異世界化してきている証拠らしい。

 

異世界化すれば、幻想郷はどうなるのか。もちろん、メリットもある。幻想郷がさらに広くなり、こんな狭苦しい土地ではなくなる。地底世界の妖怪達が住む場所もできるだろう。しかし、霧雨魔理沙は、そんなメリットが比でないほどのデメリットが存在するとも話す。

 

そのデメリットがどのような物なのか、私には解らない。とにかく、その博麗大結界を何とかしなければならないし、そもそも幻想郷を守る「人造の妖怪」なんか、見たことも聞いたこともない。とにかく、早くこのことを、力の強い妖怪達や、博麗の巫女に話すのが先決だろう。

 

そういえば、この話を知るきっかけを作った例の巫女だが、正確に言うと、彼女はあの霊夢ではないらしい。彼女は青い瞳と服を纏っており、霊夢とは全く違う力を持っている。恐らく、霊夢が何か強大な力を受けて、その衝撃で生まれた、所謂「もう一人の霊夢」なのだろう。

 

と、慧音さんが言っていた。彼女に結界と人造の人間のことを知らせたが、彼女は既に知っていた。流石、「歴史を創る程度の能力」を持っているだけのことはある。

 

だが、せめて教えてくれたお礼にと、彼女は私達の持つ能力についての秘密を、少しだけ話してくれた。

 

私達の能力は、「とある制約」を切ると、もっと強くなるらしい。しかし、その制約を切ることは、幻想郷では禁忌と言われているらしい。必要なら、幻想郷を守る為なら、それを切る必要も出てくるかもしれないと、彼女は溜め息をついていた。

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