演習が終わって模擬戦に入ります。
前回の暗号の答えですが、(good morning)おはようございますでした。
暗号の方式はエニグマですね、だからビスマルクに聞いて解決出来た訳です。
通信について調べていたらたまたま見つけたエニグマについての記事を見て興味が湧き、ビスマルク=ドイツ➡エニグマとなって登場させました。
スマホアプリにエニグマシュミレーターがありますので興味があったら遊んでみて下さい。
今回、艦娘の出番少ない…
「演習も自分達でやれる様になった訳だし、いっちょ模擬戦でもすっかねぇ…」
演習内容を教え終え、やる事のなくなったビーンが防波堤にて遠征組を出迎える為か、佇んでいるいる芋太郎へ呟いた。
「それは同感だが…その前にふざけた服装を直せ、腐っても海軍だろう…」
多くの場合、付近の森の中で野営しており、森の中に適した格好をしていたビーンだったが、今日に至っては全身真っ白の寒冷地、しかも雪山にて迷彩を発揮する服装を纏っていた。
それも、フルフェイスマスクまで装着しているという力の入れようであった。
「馬鹿か、俺は海軍じゃねぇよ。今でも名目上は囚人だっつーの」
どうでも良い事を指摘されたビーンはいつも通りの悪態で言葉を返し、話を続ける。
「例の日まであと数ヶ月だ、最低でも1回はやっておきたい訳だが、お前の意見を聞ききたい」
例の日とは、全鎮守府・泊地などの主力艦隊を持ってしての合同演習という名目の、お披露目会兼競技会の事であったが、その合同演習にも上層部による腐敗の手が回っており、毎会上層部の息子率いる主力艦隊の前にどう見ても八百長と思える動きをして優勝させると言う習慣が深く根付いていた。
ビーンの目標は、そのぬるま湯体勢下の合同演習に蔓延る平穏を破壊する事から始める手筈となっていた。
「お前の考えには賛同できるが、最初の頃にあった仲間を撃つことに抵抗があるのは間違いないだろう。だからこそ、最初は模擬弾を使うのを条件として許可する」
「まぁ、妥当な判断だろうな」
ビーンはそう呟くと、芋太郎に背を向け立ち去ろうとした。
「お前はその事を全員に伝えとけ、俺は準備してくる」
そう言いながら片手をヒラヒラと振りながら、森の方へ歩いていったのだった。
ビーンの準備すると言う言葉には、2つの意味が含まれていた。
1つは司令塔を兼ねた観覧席的な物の設営。
これは、合同演習でも同様の形式が取られると言う事からきていた。
実戦では役にたたない形式ではあるが、合同演習で採用されている以上、ソレの対策として模倣するのは有効な手段ではあった。
もう1つは模擬弾の確認であった。
ビーンはここに来てから多くの案件を述べ、機構こそ旧式ではあったがソレを応用した新型砲弾の提案に力を入れていた。
それによって教官的立ち位置から離れた今は、弾薬庫の管理役として動いていたのだった。
もちろんドックにも常用弾のストックは置いてあったが、特殊弾が関わってくるモノは全てビーンが厳重に管理していた。
たとえ、それらの模擬弾と言えども例外ではなかった。
この事に対して、模擬弾くらい手間が省けるとこに置いておいても良いのではないかと、芋太郎が提案した事もあったが。
視察の際にバレたら、提督の座を剥奪される。秘密兵器は存在が見えないからこそ有効などという様々な理由で一方的に撥ね除けられていたのだった。
その事について、簡略化の手だてはないかと考え名ながら、遠征からの帰還を芋太郎は待っていた。
しかし、考えるのに夢中になっていたからか、遠くの方まで目がいかず、遠くからの呼びかけによって遠征組の帰還を気付かされる。
その声によって帰還に気付いた芋太郎は、遠目に手を振っている駆逐艦達を確認すると、控えめに手を振りその帰還を喜ぶ。
しだいに遠征組の影は大きくなっていき、最終的には入港のためドックの方へ向かっていった。
その最中も、芋太郎は手を振っていた。
そして彼女達が入港したのを確認した芋太郎は手を振るのを止めると、ビーンの案件を伝える為にドックへと歩を進めるのだった。
ドックに着いた芋太郎の目に写ったのは、数本のドラム缶であった。
それらは引き上げたばかりなのか湿った海藻がまとわりつき、強い海水の匂いを放っていたが、比較的新しい物であり、目立った所と言えば運搬途中でどこかにぶつけたのか細かな傷跡のみであった。
「これは…?」
芋太郎は今まで送り出して来た遠征でこれほどまでの結果を目の当たりにしたのは初めてであった。
ソレを見て驚いている芋太郎へ、戻ったばかりの駆逐艦達が駆け寄って来てこれ見よがしに芋太郎を囲んだ。
「私が見つけたのよ。ま、一人前のレディーならこのくらい当然よね」
暁は芋太郎を囲うメンバーの中でも一番だと言いたげにポーズを決めてそう言い放つ。
そんな暁の様子に、雷は口を開いた。
「でも、暁ったら全部一人で運ぼうとして数個壊しちゃったのよねっ」
「ちょっと、それは言わない約束でしょ!?」
そのような受け答えからして事実だったのだろう、暁は雷に対して軽い批判を口にする。
そんなやり取りに芋太郎は微笑むが、すぐに模擬戦の事を思い出すと、顔付き正し口を開いた。
「遠征帰りすぐで申し訳ないが、近頃模擬戦を予定している。所属艦数からして強制参加の可能性もあるが、提案したのがアイツだ…また自由参加とか言いそうで何とも言えん。とりあえず模擬戦があると言う事だけ頭に入れておいて欲しい、そしてこの事を他の娘にも伝えておいてくれ」
早めに伝えておきたかった件だけ述べると、芋太郎は準備の様子を確認しようと工廠を後にしようとしたが、その背後で大きな音が響く。
その音に芋太郎は驚きながら振り向くと、そこには先ほどのドラム缶が倒れており、音の原因はソレが倒れた事だと判断したが、それよりも厄介な事を目の当たりにしたのだった。
倒れた拍子に当たり所が悪かったのか、ドラム缶の傷が多い所からパックリと穴が開き、そこから黒い粘性のある液体がこぼれていたのだった。
「ごめんなさい…司令官、運ぼうとしたら手を滑らしちゃったみたいで…」
どうやら、倒した本人は今回の手柄を立てた暁だったらしく、素直に謝罪の言葉を述べた。
そんな、暁に芋太郎は近づく。
今まで資材の消費は日常として気に掛ける事はなかったが、損失となるのは今回が初めてであった。
無言で近づく芋太郎に暁は怒られると思ったのか、目を閉じるが、次の瞬間暁の頭に手が添えられるだけに終わる。
「いつも頼りにしてるんだ、この程度気にするな」
そう言うとまたもや背後でモノを落とした様な音が響く。
芋太郎の正面には遠征で戻って来たメンバーが居り、さらには出撃の予定もなかったので艦娘と言う可能性は低く、呆れながら振り向くのだった。
そして、音のした方向に居たのは、白色の服を纏った人物とまたもやここに似合わぬデザート迷彩を纏った人物が何やら四角い箱を見つめて立っていたのだった。
「相変わらず重てぇな」
「そうですね、隊長」
何やら2人で会話をしていたのだが、芋太郎は白い人物こそビーンと声から判断出来ていたが、もう一名は初めて出会ったからかその人物の名前を聞こうとビーンに声を掛けた。
「ビーン、コイツは?」
声を掛けられた人物のうちデザート迷彩を纏う人物は警戒心からか、腰辺りに手を当てる。
それをビーンは左手を上げる事で静止する。
「マイク、雇い主に銃を向けるな、それにコイツは提督だ、防衛リストのな」
「すみません、隊長」
芋太郎はビーンの言葉に疑問があったからか、それについて聞こうと声を掛ける。
「防衛リストってなんだ?」
「お前は知らなくていい」
「だが…」
「忘れろ、いいな」
一方的な否定でその場を乗り切ろうとしたビーンだったが、その話を流す為に口を開く。
「そんなことより工具はどこだ?持ち合わせが無かったんで借りに来た」
そう言いながら辺りを見回すビーンはめぼしい所に目を付け、その場所へ向かっていくが目的の道具が無かったからか、項垂れる。
「無いな…しゃーねーマイク、旧型と複合して代用品つくるしかねぇな。要請しとけ」
「了解」
やる事が決まったのか、マイクと呼ばれる人物は無線を使い通信を始める。
「こちらマイク。例の無線はバラして複合と決まった、旧型の無線を要請するオーバー」
通信を終えると、無線を元の場所に戻し、マイクはビーンの方へ振り向く。
「要請は終わりました、我々もあちらへ合流しましょう」
「台車使うか…腰やりたくねぇ」
そう言うと、先ほどの場所に置いてあった、台車を押し動かす。
「借りてくわ」
そう言いながら台車を箱に近づけると、マイクと共に箱を持ち上げ台車に乗せ、合流場所とやらに向かうためか、挨拶もなしに出ていったのだった。
しかし、残された芋太郎は模擬戦について色々と聞きたい事があった為か、その後をつけるのだった。
「待て、色々と聞いておきたい事がある」
芋太郎は台車を2名に声を掛ける。
その内の白い方、もといビーンが立ち止まり振り向くと手招きのジェスチャーをする。
しかし、そのジェスチャーだけを終えると先ほどの方向に向けて歩き始めたのだった。
芋太郎はそのジェスチャーに従い、2人の後を着いていくと先ほどの防波堤に2つのテントが建てられていた。
更に、明らかにここに所属していない人物達が忙しなく机等を配置していたのだった。
「コイツらどこから連れて来た?ビーン」
「コイツらとはひでぇな、アイツらが居なけりゃ砲弾も出来ていなかったし、情報すら入ってこねぇぞ?」
「アイツもコイツも似た様な表現だと思うのだが…」
「ニュアンスが悪かったな、ははっ」
唐突に湧いた疑問から、小話へ持っていかれた為か、その集団についての不信感が晴れ、芋太郎はこれ以上追求するのを止める。
「隊長、要請どうり持ってきましたぜ」
ビーンに声を掛けたのは芋太郎と同じ体格の男だった。
その男は肩に先ほど見たものより一回り大きい箱を抱えていたのだった。
「ご苦労、ジェイソン。この荷台に乗せといてくれ」
ジェイソンと呼ばれる人物はビーンの言葉を聞くと、言われた通りに台車へ箱を乗せ、他の者達と同様にテントの設営に加わるのだった。
「で、聞きたい事はなんだ?」
ビーンはこれ以降、部下に確認を要求される事が無いと読んだのか、唐突に芋太郎へ声を掛ける。
「模擬戦をやると言っても実際どうやれば良いんだ?撃ち合うのは理解出来るがこのようなモノまで用意する必要があるのか?」
「まぁ、形式だからな。実際の戦闘とは何の縁も無い、アイツらの見栄張りの為に承認された様なもんだ。で、お前にこれの使い方を叩き込むのが今回の俺の仕事って訳よ」
しかし、聞いている本人は無骨に嫌な顔をする。
農業一筋から提督になって、はや1年超だったが、無線通話こそした事はあれど、それらは全て周波数が固定されているか、もしくは受信のみと言うものだったため、機械を弄るのに慣れていないからであった。
その顔からビーンも察したのか、笑いながら声を掛けた。
「先に艦隊の奴等に周波数教えといて、合わせるだけだ。合わせるのもダイヤル捻るだけだしそこまで難しくないぜ」
「むぅ…」
「何事も慣れだよ慣れ。まぁ、聞きたい事は無線の事だけじゃ無いんだろうがな」
無線の事で項垂れる芋太郎へ、ビーンは少しばかりの助け船として、無線の話題から逸らすように言葉を掛ける。
「あぁ、模擬戦の事なんだが…今日中にやるのは止めて欲しい、遠征の帰還者数名が疲労しきっていてな…」
「あの娘か、まぁ仕方がねぇわな。強がっているようだが、実際いつもより顔色も悪かったし…伸ばすのは問題ないな、お前に無線の扱い方を教える必要もある訳だ」
そう言いながら芋太郎の方へ手を回し、ビーンは耳元で呟いた。
「で、話が戻る訳だが…やるか、やらないか決めろ。最悪例の日までに使えこなせなかったら、代理指揮の出場も認められてるがな」
「代理指揮可能ならお前に任せた方が良いと思うんだが…」
芋太郎はどうしても無線を触りたくないのか、当日はビーンに任せようと提案したが、ビーンは肩に当てている手を動かし、芋太郎の肩を叩き始める。
「提督としての自覚を持てよ、人望があるのは良い事だが、それと同様の技量と裁量も無ければもしもの時困るのはお前とアイツらだぞ…」
ビーンがそのような事を言ったので、辺りはビーンの仲間達が道具を運ぶ音だけとなっていた。
「隊長、無線の複合終わりました」
「おう、ちょうど良い。マイク、こいつに無線の使い方教えてやってくれ」
ビーンはそう言うと、芋太郎の背中を押し動かす。
「了解です、隊長。では、提督様こちらへどうぞ」
マイクは少しばかり皮肉じみた言葉をかけると、テントの中に入っていくのだった。
また、逃げ道を失った芋太郎はビーンの言う事を聞くしか無い雰囲気を悟り仕方が無く、マイクが入っていったテントへ歩を進めるのだった。
そして、何とか望んだ通りに事が運んだからか、ビーンは天を仰ぎ呟いた。
「俺がいつまでも味方とは限んねぇだからよ…」
何を思っての言葉かは本人にしか分からないが、どこか遠い眼をしていた。
「隊長、模擬弾もってきやした」
声を掛けた人物の後ろには、似たような服装をした集団が2人1組で木箱を運んでいた。
それを目の当たりにしたビーンは普段どおりの顔になると、模擬弾を持って来た仲間に指示を出すため、声のした方向へ振り向くと口を開くのだった。
読んで下さり、ありがとうございます。
いつぞやのあとがきに書いた、マイクとジェイソンを登場させました。
ひょんな思いつきだったので、何故か記憶に焼き付いており今回は名前だけ登場となりましたが。
彼らの今後の活躍にも乞うご期待ですよ!
ネタばらしをするとすれば、コードネームに関わって来ます。
マイク=ビーンに無線を教えた ジェイソン=2人がかりで運んだ無線よりも大きな無線を1人で運んだ
ビーンのコードネームに細かな意図は無いですが…上記2名で直ぐ分かると思います。
名前は出てないけど今後もコード付きを増やしていきたい。
さて演習から模擬戦へと移り、身内に砲身を向ける事になる訳ですが。
それの抵抗心をどう和らげるか、そして戦闘描写が書けるかどうか不安なこの頃であります。
それとビーンの最後付近でのあの言葉、あれにはどう言う意味が含まれているのか…作者自身もぼんやりとした認識しか出来ていません。
作者自身がぼんやりとした認識とは笑い者の様な気がしますが、これからも頑張っていきたいと思います。