鎮守府内食品部農産課の男   作:馬鈴薯

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どうも、じゃがいもです。
wowsとやらにハマってしまい、約二週間の隙間が…言い訳はさておき。

今回は、準備したのですからやらなくては、と言う訳で模擬戦開始です。
予定としては上と下の二話構成で大体の戦闘は下で書く予定。
ちょっぴり書いたけど、戦闘描写難しい…というか、書けてるのかすら怪しい…

※『』は無線を通した声として呼んで頂くと、どんな場面か分かりやすいと思います。


奇術師ビーン(上)

「天気は晴れ、波も穏やか…遠征も無し。こんな模擬戦日和は無いな」

ビーンは防波堤で天候や状況を確認しながら芋太郎へ呟いた。

しかし、当の本人はマイクによる無線の訓練を昨日終え、未だ使い方をシミュレーションしているのか、ビーンの言葉が耳に入っていない様子で佇んでいた。

そんな芋太郎にビーンは機嫌を悪くしたのか、静かに背後に近寄ると、膝関節に軽い蹴りを繰り出したが、目標の人物は重心が安定しており、ビーンが狙った通りにならず、ただ単に純白の提督服に足跡が着くだけに終わる。

 

「いきなり何をする…」

 

「話聞いてたか?模擬戦日和だって言ったんだよ!なのに無視しやがって」

 

「あぁ、その事か…だが、まだ無線に慣れなくてな…」

しかし、ビーンの2度目に渡る模擬戦の話も耳に入っている様子も無く、またもや遠い眼でどこかを眺める芋太郎。

普段なら何となく、難しい事でも少しずつ上達して来た彼だったが、機械音痴もありながら、短期間で教え込まれた事でパンクしているのだった。

そんな芋太郎の都合だけでこの好機を逃すのは惜しいと考えたビーンは譲歩し、ある提案を口にする。

 

「分かった分かった。補佐としてマイク寄越すから模擬戦やろうぜ!」

 

「構わないが…準備が出来ていない」

 

「砲弾なら既に手配してある、模擬弾だがな」

 

「なら後は伝えるだけか、行ってくる」

そう言いながら芋太郎は通信室へ向かうためか、向きを変え歩き始める。

対するビーンは後ろで何かを取り出し、話掛けるのだった。

 

「マイク、俺だ。模擬戦決行となったが、無線手としてポテトの補佐を頼みたい、オーバー」

 

『了解です、オールオーバー』

短く通話を終えたビーンは芋太郎の方へ振り向き声を掛けた。

 

「マイクのやつは補佐やってやるとさ、感謝しとけよ」

それを聞いた、芋太郎は振り向く事もせず片手を上げ何かしらの意志を伝える動作をしたのだった。

それを見たビーンも時間の事もあり、特に咎めること無く防波堤を離れ、仲間と合流する為、歩き始めたのだった。

 

 

芋太郎が言葉にした通り、鎮守府内全域に放送が入り模擬戦を行う旨が伝えられ、前日から設置したテント付近へ所属する艦娘が集まって来ていた。

それらに続いて、司令塔である芋太郎も遅れて到着し、ビーンに近づくと声を掛ける。

 

「先ほど思い出したのだが…編成はどう振り分けるんだ?艦隊を2つ作るのは可能だが、編成がバレてしまうんだが」

 

「対策練りやすくなって、初めてこのタイプの指揮するお前には良い条件じゃねーの?」

ビーンは編成に対する興味を示すこと無く、ぶっきらぼうに言葉を返した。

そしてビーンは仲間達のいる方へ歩いていくと、振り向き口を開く。

 

「マイクはお前に付くが、俺にはコイツ等がいるからな…先に編成決めておいていいぞ」

そのような事を言うと、新しい顔ぶれを含む仲間達と密談を開始。

しかし、ワザとなのか、やたら大きな声量で行っており果たして密談と言えるのか分からない状況を作り出していた。

その大きな声量のせいで内容はダダ漏れであったが、芋太郎は情報を仕入れる事も勝利への一歩だというビーンの言葉を思い出し、その密談に耳を傾ける。

 

「今日はいい天気だなぁ」

「お前ならどうするよ?」

声の主は今回敵指揮役として名乗り出たビーンが出したモノであり、その仲間達は口を動かす素振りはすれども、彼らの言葉はビーンの声量によってかき消されていたのだった。

 

ビーンの声だけしか聞こえないので、情報を引き出す事は困難だと判断した芋太郎は、編成を決める為に艦娘達のプロフィールへ眼を移すが、すぐさま大型艦から取っていけば良いと安直な考えで編成を決めたのだった。

 

 

編成が決まれば、権利を譲った相手側に伝えなければ事が進まず、芋太郎はいまだ密談と言う名の談笑を続けるビーンに声を掛ける。

 

「編成が決まった、戦艦3に空母と軽巡2を貰おうか」

 

「分かった、残りのリストを寄越しな」

談笑途中だからか、芋太郎の述べた編成は伝わっていない様子で、ビーンはわざわざリストを要求したのだった。

芋太郎は彼の要求どおりに、自らが選んだ艦娘のプロフィールを取り除き手渡す。

それを、受け取ったビーンは会話を止めると、手早くそれらの書類へ目を通すが、いぶかしく思う点があったのか言葉を漏らす。

 

「んぁ?駆逐5に潜水2軽巡2って…水雷戦隊待った無しだな、ハハハッ」

ビーンの笑いに釣られてか、その仲間達も本心ではない様な笑い声をあげる。

 

本心では無いと言うのも、警戒心から来るモノであった。

と言うのも、ビーンは何かしらの恩とメリットがあるからこそ、協力しているだけであり、その仲間達も、ビーンが協力しようとしているから手を貸すという形が、現段階では出来ていた。

また、模擬的に敵対勢力となるという認識からの警戒心もあったのかもしれない。

詳しい事は芋太郎本人も分かってはいなかったが、ビーンの私兵達が纏う服装からして海軍に協力的とは言える様な格好ではなかった。

過去に何度か艦娘達の特訓に手を貸していた面々も来ていたが、必ずと言っていいほど、陸地に適した迷彩を纏っていたのだった。

 

 

「提督様、編成が終わったのなら指令を出せるよう、準備をした方がよろしいのでは?」

ビーンの編成が終わるのを待とうと、佇んでいた芋太郎だったが、今回の補佐であるマイクによってその行為を妨げられる。

マイクにとっては意識的な行動では無かったのだが、芋太郎からしてみれば彼の呼びかけ方には少々棘があり、意図的にそう呼んでいるのかと思わない事もなかった。

しかし、現在は模擬戦に専念するべきだと考えた芋太郎は、マイクの言葉を素直に受け取り、自陣側のテントの中へ入っていくのだった。

 

そんな二人のやり取りをいざ知らずと言った様子で、ビーンは指揮を下す艦隊を編成し終えると、その艦隊へ配属されない分の書類を仲間に預け、先ほど2人が入っていったテントとは逆側のテントへ入っていくのだった。

 

 

いよいよ始まる模擬戦の合図は地上からの空砲によって幕を開く。

正面で向き合うお互いの艦隊であったが、射程距離の長い戦艦3名はすぐさま照準を定め、ビーンの指揮下にある艦娘を砲撃する。

その砲弾は練度からか見た限り一直線で駆逐艦4名と潜水艦2名の元へ向かっていく。

身内だからといって、手を抜くつもりは無いとの意志の現れであった。

 

「さーて、孤島目指してレッツゴーだ、話は孤島に付いてからで」

 

「とりあえず逃げろって事ね」

作戦を一纏めにした作戦を今回の旗艦として任命された暁が自慢げに言い放つ。

 

「ただ逃げるんじゃねぇよ、誘導しながらの後退だ。逃げ切るのも捕まるのもダメだ」

そう通話している合間にも、先ほど放たれた砲弾の影は大きくなっていき、やがて彼女達の付近へ着弾した。

通話の途中だったからか、着弾音を聞いたビーンはにんまり笑うと、一人呟く。

 

「おはやい挨拶じゃねーか。そんじゃ、鬼ごっこと洒落込もうぜ。発煙弾斉射、転回のち全速前進」

自分のペースで、のんびりと指示を出そうと思っていたビーンだったが、先ほどの着弾音からして、もしもの事を考え、後半は端的な指示を出していく。

その様子は普段から言葉に戯言を混ぜて話すビーンの面影は無く、一人の指揮者がここに居るだけだった。

先ほどの潜水艦に対する呼びかけから時間が経ち、応答が無いことで潜航状態にあると判断したビーンは現場の変化は彼女達が報告してくれるだろうと信じ、次の戦場へ赴く事にしたのだった。

 

「ノイズ。お前の専門分野じゃないが、マイクの同業者として傍受を頼む。キャスト、これらのデータから今夜の天候を割り出せ」

ビーンにとって、通信機器の最高責任者はマイクであったが、今回は止む終えぬ事情で敵サイドにいるので代理人を用意していた。

ビーンは必要な分野ごとに私兵とでも呼べる人々を集めており、欠員が出たとしても、機能の微低下までとなるよう多くの人々に声を掛けていたのだった。

 

ノイズと呼ばれた人物は通信席に着くとヘッドセットを装着し細かくダイヤルを動かし始める、そしてキャストと呼ばれる人物は書類を受け取ること無く口を開いたのだった。

 

「こことは逆側から雲が来てますね、建物に隠れてて見えませんでしたが…というか、いい天気いい天気って言ってた時点で分かってたでしょ?アンタ」

 

「一人の戯言も多数が認めれば真実ってな、天気予報が機能してない今、俺だけが言ってちゃ、ただの戯言だ」

そう言いながら笑うと無線を取る。

 

「こちらビーン、状況報告せよ」

通信を繋げた瞬間に駆逐艦達の付近へ第二波が着弾したのかビーンの通信は轟音によって打ち消される。

 

「ひょーやってるやってる、鬼ごっこは楽しいかい嬢ちゃん?」

 

『しれ…ビーン、いきなり喋らないでよね!それに、撃たれてばっかりで勝ち目が見えないじゃないの!?』

 

「島まで言ってから反撃開始だ、せいぜい弾が当たらないよう祈ってろ」

 

『ひとこ…』

ビーンは通信相手であった暁が言い返そうとした所を、一方的に切るとコチラ側の仲間に声を掛ける

 

「さーて最終確認だ。マインド、今の所は被弾無しだ、決行出来ると思うか?」

 

「今の切り方で、少し成功する確立が低くなったな、もっとソフトに対応しないと」

 

「やっちまったなー」

指摘を受け、ビーンは軽く笑いながら髪を掻くが、些細な問題だと判断し手を打つ事は無かった。

 

「傍受出来ました、ボス」

 

「よくやったノイズ」

仲間から傍受成功の報を聞いたビーンは当人からヘッドセットを受け取ると、通信内容の解析に入る。

 

『目標未だ健在、速度を活かし逃走中。赤城、艦載機の準備はまだか?』

 

『隊列が整うまであと少しです』

通信を聞いたビーンは大声で笑い始める。

 

「常時回線オープンかよ、作戦内容どころか行動自体がダダ漏れじゃねーか!」

強大な敵となっていたが、行動さえ分かれば後は適切な処置をすれば良い。

逃げ切り待ち伏せするのか、はたまた逃げ続け、策を練り続けるのか…それは追い追い分かるとしてビーンは少なからず勝算を見いだしていたのだった。

 

一方、芋太郎サイドでは、司令官にあたる芋太郎自体が指示を出している訳でなく、長門による現場指示で艦隊を展開していた。

一応、状況把握も出来る様にと、芋太郎の指示で受信のみしているが、彼自身が指揮能力を発揮した事は未だ無く、更には無線に至っても近日覚えたばかりの素人と言った所で、無線が傍受されている事に気付く事は無かった。

 

これらは、芋太郎自身が軍人気質でなかったからかもしれないが、提督と言う肩書きを持ちながらも、実際はカウンセリングに近い事ばかりに専念していた為であった。

よって、彼からしてみれば現状は旗艦に幾度となく任命され、場数をこなして来た長門に指揮を一任するのは当然といえば当然であった。

 

無線機から、長門による鼓舞の言葉や指揮が飛び交う中、補佐として任命され、最初だけ無線の同期のみ済ませ、暇そうに座っていた男が無線に耳を向ける芋太郎へ声をかけた。

 

「やっぱり、提督様は甘いですね…現場に全てを委ねるのが指揮とは、笑うどころかむしろ呆れます」

横で同じ通信を聞いて居たマイクが、淡々とした様子で呆れながら口を開く。

 

「それはどういう意味だ…」

 

「軍人の端くれなら、そのくらい自分で考えて下さいよ。もっとも私は軍人ではありませんがね…まぁ、あなたの成長をあの人が望んでいるから、私を派遣したのでしょうし、今回はヒントをあげましょう…その無線、安全だと思いますか?」

 

「無線が安全とか、意味が分からないんだが…」

 

「傍受されてるんですよねぇ…砲撃開始で煙幕が発生してからずっと。作戦内容どころか、現在の行動、提案全部漏れてます」

それを聞いた芋太郎は一瞬驚いた様な顔をするが、冷静を保つと口を開く。

 

「確証が無い」

この言葉を聞いてマイクは眉を動かすと立ち上がって背を向けた。

 

「信じる、信じないはあなた次第ですし、伝える事は伝えましたので、私はこれにて」

マイクは現状から、自分がここに居る意味が無いと判断したのか、テントの出口を目指し、歩を進める。

 

「待て、補佐でそれを理解しておきながら、何故対処をしなかったんだ?」

 

「補佐ではありますが統括されていた訳でもありませんし、先ほどの事は戯言としてお忘れください…では、健闘を祈っております」

マイクは本心からでは無い言葉を投げかけるとテントを後にしたのだった。

 

一人残された芋太郎は、マイクに言われた言葉から自らが如何に無力なのかを実感し、項垂れながら旗艦当てに無線をかける。

「マイクの話は聞いていたな…作戦内容は漏れ、手を打たれつつある状況だ…手遅れかもしれないが、引き返すのが妥当だと思う…それと、今後の通信は無しだ、お前に全てを任せる…すまない」

 

『模擬戦なのだから、その経験を次に活かせば良いじゃないか。なにを謝る必要がある?』

旗艦である長門による返信は、前向きなモノであった。

この言葉は優しさから来たモノか、未来への期待から来たモノかは定かでは無かったが、信用されているからこそ、かけられた言葉だったのであろう。

それによって、ほとんど諦めかけていた勝利への執着と、実戦だった場合の恐怖を覚え、なんとか手立ては無いかと思考を巡らすが、やはり軍事には疎く、有効な策は思いつかないでいた。

 

芋太郎が状況打破しようと思考を巡らす中、ビーンは暁によって、鎮守府から一番近い孤島に到着したと言う情報を元に、次の命を下そうとしていた。

 

「転回のち複縦陣で接近。進行途中に煙幕も忘れるな、煙の中に入って前進、出て目標補足、そして煙幕散布を繰り返して雷撃で被害を与えろ」

 

『そう簡単に言わないでよね、艦載機だって追って来てるんだから!』

 

「何の為の高射砲と機銃だ、焦りすぎて何を持って来たか忘れたか?」

 

『うぅ…やっぱりアンタは嫌いよー!』

海原に暁の叫びが木霊した。

 

 

「姉さん、二時の方向、敵機多数!」

ビーンから次の指示を聞き、転回し、持ち前の起動と速度を活かし陣形変換を終え、暁と雷が先陣を切る中、後続の響が赤城の操る艦載機の存在を探知し、警戒するよう声をあげた。

響の言葉に釣られ、視線を向けた3人の目先には、エンジン音を轟かせながら、接近する暗影が写っていたのだった。




読んで下さり、ありがとうございます。

コード付きが増えた!➡楽しい、なじゃがいもです。
オリキャラ増えて来て、そろそろリストアップしなければと思う最近。

暁の「うぅ…やっぱりアンタは嫌いよー!」に込めた意志➡模擬弾と言えども直撃すれば痛い…
当たりにくくする為の装備を持ってるのに、何故使わないのか?➡簡単に言わないでよね!

そんなことより、模擬弾による被害云々の設定に難航中。

さて、軽い次回予告「地雷があるなら、踏ませてみせようMBT」
陸的なたとえですが、次回のメインアタックとなる予定です。
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