鎮守府内食品部農産課の男   作:馬鈴薯

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どうも、じゃがいもです。
短編で終わらせるつもりでしたが、アイデアが浮かんできたため、連載化しました。
相変わらず、海上戦闘はありませんが、楽しんで頂ければ嬉しいです。


秋のイベント

季節は変わり、芋の収穫期である秋が訪れていた。

 

赤城と付き合い始めた芋太郎は、赤城以外の艦娘達とも交流を深める為、どうすれば良いか考えていた。

 

今の状況で使えるものは無いか、料理を振る舞う?それとも…

芋太郎はしばらく考えた後、考えを纏めあげ赤城に提案したのだった。

それを聞いた赤城は、良い提案だと言う事で、すぐさま提督へ報告に向かった。

 

「ふむ、芋掘りか。名目上はイベントの様に思えるが、内容は収穫作業の応援要請と他の子達との交流か…収穫終わりには、焼き芋を行うと。内容も報酬もしっかりしている、和太郎君も考えたものだ。許可を出す。好きなように宣伝すると良い。」

 

提督は承認したのだった。

その後、鎮守府内の至る所に告知ポスターが貼られた。

ポスターの内容は、貼られてから開催までの日数が短く設定されていた。

これは、人が多く集まりすぎない様にと、配慮されたものであった。

 

今回のイベントは芋を収穫するだけだが、その後に貯蔵品と採れたてを用いて料理が振る舞われる事になっており。人が集まりすぎると食品(主に芋類)が不足してしまう可能性があった為、バランスを取る為の設定だった。

 

貼られているポスターを、足を止めて見る者、歩きながら見る者、はたまた興味も示さずに歩を進み続ける者。反応は様々であった。

その中で足を止めポスターを眺める団体があった。

駆逐艦達であった。

 

「秋の芋掘り、主催者は近藤 和太郎さん。収穫終わりに焼き芋を行うって、ねぇ皆、これ面白そうじゃない?」内容を読み上げた吹雪が声を掛けた。

 

「一人前のレディーが芋掘りなんかする訳無いじゃない、私は嫌よ」

 

「電はお芋掘りしてみたいのです!」

 

「私は、芋掘りよりも最近噂になってる、赤城の思い人って言う方が気になるわねっ」

 

「姉さん、多数決だ、行くしかないね」

 

「それじゃあ響ちゃん、皆に伝えてもらっていいかな?」

 

「あぁ、任せておいてくれ」

響が返事をすると、第六駆逐艦隊のメンバーはポスターから離れていった。

 

「私は行かないんだから!」

 

「姉さん、往生際が悪いよ」

 

「うっ…」

暁はしばらく黙り込んだ。

 

沈黙が続く中、暁は仕方ないという様子を見せ、口を開いた。

「わかったわよ!行けば良いんでしょ、行けば!」

 

暁も納得してくれたのか、第六駆逐艦隊の皆は手分けして声をかける事にしたのだった。

 

 

 

一方、芋太郎はイベントに備えて落ち葉を集めていた。

 

「芋太郎さん、そろそろ休憩なさってはいかがですか?」

 

「いや、今回は初めての試みだ。下準備は万全にしないとな」

 

「そうですか。では、この赤城もお手伝いさせて頂きます」

そう言い、赤城も芋太郎と同じように帚を使って一緒に落ち葉を集め始めた。

 

「赤城」

 

「なんでしょうか?」

 

「ありがとう」

 

「どういたしまして」

一連の会話を終えると、2人はゆっくりと落ち葉を集め始めた。

のんびりとした時間が流れていったのだった。

 

 

 

夕方頃になり2人は十分と思える量の落ち葉を集めていた。

 

「さすがに、疲れました…芋太郎さんは大丈夫ですか?」

赤城は流れる汗を拭いながら、声をかけた。

 

「普段の仕事に比べたら楽なもんだ。赤城、お前は先に戻って良いぞ、疲れただろう?」

 

「そうさせて頂きます。しかし、芋太郎さんはどう成されるつもりですか?」

 

「灰を作る為に、今からコレを燃やすつもりだ。時間は掛からないから心配しなくて良い」

そう言い、芋太郎はポケットからマッチを取り出した。

 

マッチを箱に擦り付け火をつけると、纏めて置いておいた落ち葉にマッチを投げた。

すぐに火は大きくなり、辺りは明るくなる。

風もそこまで強くなく、落ち葉はゆっくりと灰になっていった。

それを見届けた赤城は、汗を流すため、本部の寮へと続く道を帰っていった。

 

赤城が寮へ帰るのを確認した芋太郎は、逆のポケットから銀色の球体を取り出し、燃え盛る落ち葉へと投げ入れた。

そして、枝を使いちょうど良い場所へ球体を移動させると、持っていた枝も火に投げ入れたのだった。

 

 

しばらく時間が経ち、火も弱まって来た頃。

芋太郎は再度拾って来た枝を使い、ススが付き、黒色に変わった球体を灰の中から転がしながら出した。

そして、2本の枝を使い、黒色になった外殻を剥がしていった。

 

黒色の外殻を剥がし終えると、そこにはホカホカと湯気を放つジャガイモが入っていた。

表面こそ焦げているものの、芋太郎は用意していた箸で突き刺す。

スッと箸が入っていったのを確認すると、箸でソレを割り、口へ運んだ。

 

しばらく口を動かしていたが、ソレを飲み込むと頷き。

残りの球体を集めて、寮へ向かったのだった。

 

芋太郎は寮へ付くと、食堂へ向かっていった。

今は夕食時にしては遅いが、夕食を取っている艦娘達や職員・兵隊がいると考えたからだ。

 

食堂には思惑通り、艦娘達や職員達がいた。

 

芋太郎は近い順に声をかけていくが、職員達は過去の憲兵達とのいざこざからか、芋太郎に対して消極的であり、芋を受け取ろうとする人は少なかった。

 

対して、艦娘達は赤城から広まったのか、友好的に接してくれたのだった。

 

「あぁ、貴方が和太郎か?噂は聞いている。ん?私の顔に何かついているのか?」

芋太郎は初めて会ったうえに、一方的に話しかけられどう対処すれば良いのか分からない様な顔をしていた。

 

それに、話していた本人は気付いたのか、申し訳なさそうな顔をしながら、話を続けた。

 

「すまない、自己紹介が遅れたな、長門型1番艦の長門だ。よろしくたのむ」

 

「あぁ…こちらこそ、よろしくたのむ」

いきなりの転換だった為、芋太郎は反応出来なかった。

 

「今、手に持っているものが、今回のイベントで配る試作と言ったところだろうか?良ければ1つ分けて欲しい」

そう言われ、芋太郎は球体を手渡した。

 

「ありがとう、早速頂くとしよう」

そう言い、長門は自分のプレートにソレを置くと、外殻を剥き始めた。

時間が経ち、湯気こそ放たなくなっていたが、ソレは箸で簡単に崩れたのだった。

一口大に切り分けたソレを長門は口へ運んだ。

 

「悪くないな、冷めてこそいるものの、味がしっかりしている。これならアイツも喜びそうだ、明日伝えるとしよう」

最初の方こそ感想として聞き取れるが、最後の方のアイツが誰なのか、芋太郎は疑問に思い、問い掛けた。

 

「アイツとは誰のことだ?」

 

長門は意地悪な笑みを浮かべながらこう言った。

「今ここで言ってしまっては面白くないだろう?何、アイツの事だ、間違いなく来るさ」

言い終えると、長門は立ち上がり、プレートを返却口へ持っていったのだった。

 

疑問点こそ残るものの、芋も配り終えたので、芋太郎は深く考える事なく自室へ戻る事にしたのだった。

 

 

 

イベント前日になり、芋太郎は再度、落ち葉を集めていた。

今回、赤城はいなかったが、下準備ほど時間はかからなかった。

 

量こそ少ないものの、目的の量まで達したのか、芋太郎は帚を倉庫の壁へ立てかけた。

そして、倉庫の中から薪を数本持ってくると、灰の貯まる場所に日の字にならべた。

形こそ歪んでいて見にくいものの、そこには簡易的な囲炉裏が完成したのだった。

囲炉裏が完成すると、芋太郎は明日使うと思われる備品の確認に入った。

 

バケツ、炭、トングそれらを倉庫から出してきて、1カ所にまとめて置くと、もしもの事を考えてシートを被せたのだった。

そして、やる事を終えたのか、今日は自室でゆっくりとする事にしたのだった。

 

 

 

そして、やってきた開催日。

職員の数こそ少ないものの、芋太郎が予想していたよりは来訪していた。

また、赤城はもちろんのこと、艦娘達はその他多くが各々の目的をもって参加していた。

 

その中でも芋太郎に近づく影があった。

 

「あなたが噂の和太郎ねっ。私は雷よ、よろしくねっ」

雷は芋太郎の背後から声をかけた。芋太郎は声を聞き、正面を向いた。

 

「こちらこそ、よろしくたのむ。今日は楽しんでいってくれ」

そう言いながら、雷にシャベルを渡した。

 

そして、予定時刻となり。芋太郎は畑の冊を開放した。

芋太郎が最初に畑へ入ると、彼に続いて艦娘達が入っていった。

参加した艦娘は、駆逐艦が大方を締めていたが、芋掘り自体には参加せず、冊の外で様子を見ている者に、巡洋艦や空母の姿があった。

 

畑に入っていない者達の目的はおそらくだが、ただ単に駆逐艦達の様子見、または、雷の様に芋太郎の人格を見に来た。はたまた、最後の焼き芋だけを目的にしてきたの3種類に分類出来た。

 

しかし、そんな事は芋太郎には関係なく。

芋太郎はいつもの仕事の様に収穫を始めたのだった。

 

数回、黄色に変わった苗の周りをシャベルで軽く掘り、苗を鷲掴みにし、腰に力を入れて引っ張る。

ズボッズボボッと言う音を立てながら、大小さまざまな大きさの芋が一気に採れた。

それを見た電も真似をして、同じ様にしてみるが、苗が途中で千切れて終わる。

それを見た芋太郎は、電に近づき声をかける。

 

「掘る深さが足りなかったな。だが、コレは効率的な抜き方であって、楽しい収穫方法ではない。だから、お前の好きな様にやると良い」

そう言い、電が失敗した苗があったであろう場所に、手を突っ込む。

そして、千切れた場所の土に埋まっている場所を見つけると掴み、空き手でシャベルを使い少し土を掘る。

そして、腰に力をいれ引っこ抜いた。

先ほどと少し勝手が違ったが、同じ様に収穫したのだった。

 

それを見ていた駆逐艦数名は、電が失敗したにも関わらず、芋太郎の真似をし始めた。

結果は全て、千切れてしまうと言う悲惨な結果に終わったが。

それから学んだのか、シャベルで1個ずつ掘り出すようになっていった。

対して芋太郎は少し時間が経ち、身体が温まってきたのか、シャベルで土を掘らずに茎を掴み引き抜くという行動に出ていたのだった。

 

駆逐艦達は各々で顔を合わせ、餅は餅屋だと思わざるをえなかった。

 

さらに時間が過ぎ、疲れて休憩に入る者、飽きて止める者が出始めた頃、新たな来訪者が現れた。

提督と、来てないなかった艦娘数名だった。

メンバーは天竜・竜田・長門・ビスマルクと、頭数では少ないものの、芋掘りに参加するようなメンバーではなかった。

 

「時間が空いたから、様子を見にきてみたが。面白そうな事やってるじゃねーか」

 

「天龍ちゃんは元気ね〜、私は遠慮しとくわ〜」

龍田は手を振りながら、参加しない意思を示した。

 

やる気満々の天龍は自前の武器を構え、畑へ入っていった。

「派手にやってやるぜ!」

そう言いながら、苗が生えている辺りに武器を突き刺した。

そして武器をあげる。そこにはジャガイモが数個刺さっていた。

それを見た芋太郎は、天龍を怒鳴りつけた。

 

「バカか、お前は!」

 

「な、なんだよいきなり」

天龍は怒鳴られた理由が分からず困った顔をしていた。

そこへ、怒鳴った芋太郎を後ろから襲いかかる影があった。

 

「天龍ちゃんに楯突く奴は死になさーい」

龍田は武器を振りかざす。

芋太郎は龍田の斬撃を、シャベルを使って逸らす。

続いて、片方の手で柄を掴み脇で抱え、身体を捻って龍田の喉元へ鋭い殺気を放ちながらシャベルを突きつけた。

 

「え…?」

殺気を当てられた龍田は、シャベルが喉元へ届いた頃には、身体を動かす事が出来ないでいた。

 

そして、殺気を放った本人を見やる。

そこには、先ほどの殺気は感じられず、黙々とジャガイモを収穫していた雰囲気を放つ芋太郎がいただけであった。

 

「そこまでにしようか」

 

「提督?」

 

「和太郎君、見事な返しだったよ。だが、そろそろソレを下ろしてやってはくれないか?」

そう言われ、芋太郎はシャベルを下し、脇から武器を開放する。

 

「ありがとう。それと、龍田。君はいつも天龍のことになると冷静さを欠くね、悪い癖だよ。君は人命を守るのも任務の内だ、それを忘れてもらっては困る」

 

「申し訳ありません…」

提督に止められ、冷静さを取り戻した龍田は、痛いところを突かれ、俯きながら詫びた。

 

「天龍、君もだ。」

 

「何、オレもか?!」

 

「まず、君の武器に刺さっているモノを見て欲しい。何だとおもう?」

 

「はぁ?ジャガイモだろ」

 

「そう、ジャガイモだ。では、ジャガイモとは何だね?」

 

「ジャガイモはジャガイモだろう?」

 

「違うな、食料もとい食べ物だ。食べ物は粗末にしては?」

 

「うっ…」

天龍も提督が言いたい事が理解出来たのか、押し黙る。

しばらく黙った後、天龍は口を開いた。

 

「オレが悪かった…」

天龍は自分の非を認め、詫びたのだった。

 

 

 

一騒動こそあったものの、収穫作業も無事終わり、次の段階へ進んでいた。

芋太郎は倉庫から炭とバケツを持ってきた。

バケツの中には銀色の球体が入っており、それを灰の山に埋めると、上に炭を置き、集めておいた落ち葉を被せた。

そして、収穫したばかりの芋をバケツ一杯に詰めると、倉庫付近にある井戸から水を汲み上げ、1個ずつ丁寧に泥を落としていき、銀紙で包む。

全て包み終えると、バケツへ山積みにして運び、灰へと埋める。

全ての準備が整ったのか、ポケットからマッチを取り出した。

 

「火をつけるぞ、離れてろ」

そう言いマッチに着火し、落ち葉の貯まる簡易囲炉裏へ投げた。

火は勢いよく燃え上がったが、すぐに安定して一定の大きさを保ちながら、落ち葉を灰にしていく。

そして、表面上の落ち葉が全て灰になる頃には、先に入れておいた炭が赤くなっているのが見える様になっていた。

 

「よし、いい感じだ。これで好きなものが焼ける、魚でも何でも持ってくると良い」

それを聞き、提督は思い出したかの様に芋太郎へ近づき、箱を突き出した。

 

「先ほどの騒動で渡すタイミングが無くなっていたが、コレも使ってもらえると嬉しい。なに、ただのチーズさ」

芋太郎は箱を受け取り、中身を確認する。

中にはオレンジ色をしたチーズが確かに入っていたのだった。

 

「お気遣い、感謝します」

芋太郎は感謝の言葉を述べ、礼をした。

 

提督はフフッと笑うと、背を向け元の位置へ戻っていった。

 

次にビスマルクが芋太郎へ話しかけた。

「あなたが和太郎ね、長門から話は聞いているわ。芋の扱いに長けているらしいわね。その腕前、期待しているから」

そう言われ、芋太郎は困った顔をする。

 

「長門、コイツがお前の言っていた奴で当ってるか?」

 

「コイツ呼ばわりとは失礼ね。私にはビスマルクっていう名前があるのよ」

 

「びすまるく?漢字ではないな…ひょっとして外国の出身か?」

 

「ひょっとしなくても、そうよ。それもただの外国ではないわ、ドイツよドイツ、よおく覚えときなさい」

 

「とにかく、海外出身なのは分かった」

 

「だから、ただの海外じゃ…まぁいいわ、今日は大目にみてあげる」

ビスマルクは説明しても理解してもらえないと悟ったのか、諦める様に切上げた。

 

「ところで長門、前言ってたビスマルクが喜びそうとは、どういうことなんだ?」

 

「なっ!?長門、何を勝手に言っているの」

 

「なに、事実じゃないか。ジャガイモがいっぱい食べれるぞ」

長門は笑いながら言った。

 

「提督、俺には何がなんだかさっぱりです。良ければ知恵をお貸しください」

芋太郎は呆れながら、提督へ助けを求めた。

 

提督は顎をさすりながら答えた。

「ふむ…どう言えば良いかな?ドイツの食文化で、ジャガイモがよく使われているとしか言いようが無いのだが…それだけで理解してくれると有り難いよ」

 

「ちょっと、長門だけじゃなく提督まで。何勝手な事を言っているのよ」

ビスマルクは2人にからかわれ、顔を赤くしていた。

 

「ビスマルク」

芋太郎は未だ顔を赤めるビスマルクに声をかけた。

 

「なっなによ?」

 

「故郷が好きなんだな、期待に沿えるかどうかは分からないが、持て成させてもらう」

それを聞いたビスマルクは、小さく口を開きこういった。

 

「ダンケ…」

 

「ん?なんか言ったか?」

 

「いえ、なんでもないわ」

ビスマルクは話を切る様に背を向けた。

しかし、近くでその言葉を聞き取れていた提督は、笑いながらビスマルクへ話しかけた。

 

「君のその言葉を聞くのは、私も初めてなのだが。どういう風の吹き回しかね?」

 

「提督は提督、あの人はあの人という事よ。それにあの人の前だと、なんか調子が狂うわ」

 

「和太郎君は優しいからね」

 

「優しいか、確かにそうかもしれないわね」

ビスマルクは微笑みながら、芋太郎の方へ目線を移した。

そこには、囲炉裏を見張り続ける、大男の背中が見えるだけであった。

 

 

しばらく時間が経ち、芋が焼き上がると思われる時間になった。

芋太郎はチリチリと熱を放つ灰の山を、トングを使い掻き分けていく。

数回掻くだけで、黒色の球体が出てきた。

 

それを、芋太郎はトングを使わずに、水につけた空き手を使い回収していく。

危険な行為ではあるが、パフォーマンスのつもりらしい。

しかし、危険な行為となると付き合っている赤城が注意をするはずなのだが、当人は駆逐艦達とおしゃべりをしていて気付く様子はなかった。

 

スッ スッと手際良く熱を持つ球体を回収し続ける芋太郎。

それを見ていたビスマルクは呆れた様子で、提督に声をかけた。

「提督…あの人は一体何をやっているのよ…」

 

「私にもわからんよ。だが、見ていて面白いじゃないか」

 

「はぁ、呆れた…赤城、火の辺りを見てみなさい」

ビスマルクは赤城に声をかけた。

 

赤城は駆逐艦達とのおしゃべりを止め、芋太郎の座る場所へ目をやるが。

そこには、何知らぬ顔をし、トングで球体を回収する姿があるだけだった。

 

「ビスマルクさん、特におかしいところは無いようですが、何かありましたか?」

赤城はキョトンとした顔をし、首を傾げた。

そして、少し時間が経つと、駆逐艦達とのおしゃべりを再開したのだった。

 

対してビスマルクは冷めた目線で芋太郎の方を見る。

 

スッ スッ

赤城に見られていないのを確信し、先ほどと同じ様に球体を回収する芋太郎の姿が映る。

ビスマルクは赤城に声をかけても、対処されるだけだと学び、諦める事にしたのだった。

 

 

 

更に時は経ち、皆が芋太郎から焼き芋を受け取り始めた頃に赤城は先ほどビスマルクに呼ばれた理由を理解した。

 

「芋太郎さん、何をなさっているんですか?」

赤城は引き攣った笑みを浮かべながら、芋太郎を見る。

 

「いや、皆が楽しんでもらえるかと思ってだな…」

 

「問答無用です。それで怪我をしていたら元も子もありません」

 

「それはそうだが、怪我もしてないぞ…」

そう言いながら、芋太郎は先ほどまで灰に突っ込んでいた手を伸ばした。

それを聞き、赤城は芋太郎に抱きつく。

 

「そうであっても、心配なものは心配なのですよ…」

それを聞き芋太郎は反省したのか、赤城の頭に手をあて口を開いた。

 

「心配かけて、すまなかった」

 

「わかって頂ければ良いのです」

その様子を見ていたビスマルクは、一人呟いた。

 

「2人していい雰囲気になっちゃって、妬けるわね…」

 

「なんだ?ビスマルク妬いているのか、お前らしくない」

 

「てっ提督!?なんで近くに?」

 

「私はずっとここにいたよ。それに、お前には私がいるじゃないか」

 

「貴方には陸奥がいるでしょうが。堂々と浮気宣言してるんじゃないわよ!」

そう言い、提督へ拳を向ける。

 

「誤解してるようだが、私はここの皆を家族同然だと思っていると言ったつもりなのだが」

提督は落ち着いた雰囲気で語った。それを聞きビスマルクは拳を収める。

 

「ただ、あの2人は少しばかり特例ではあるがね。時が経てば恐らくだが、結婚しているかもしれないな」

 

「結婚ねぇ、確かにしていても可笑しくないわね…」

ビスマルクは弱々しく言った。

 

「なんだ?君も和太郎の事が気になっているのか?」

 

「そんなわけ無いでしょう」

 

「君はもう少し素直になった方が良いのかもしれないな」

 

「わかっているわよ…」

ビスマルクは再度、弱々しく声を出したのだった。

 

 

そんなビスマルクへ近づく影が1つ。

「芋が焼けたぞ、食うか?」

ビスマルクは焼けたジャガイモの乗る皿を受け取った。

 

「ダンケ」

 

「ダンケ?なんだそれは?」

 

「ドイツ語でありがとうの意味よ、覚えておきなさい」

 

「そうか、覚えておく」

芋太郎はそう答えると、ビスマルク以外の艦娘にも配るため、立ち去っていった。

 

しばらく動き回っていた芋太郎だが、粗方配り終えたのか自分の分をキープすると、焚き火の前に腰を下ろし食べ始めた。

 

皆と一緒に焼いた芋を食べている芋太郎は、虐げにあっていた当時の面影は無く、立派に鎮守府の仲間入りをしていたのだった。

 




読んでくれてありがとうございます。
今回、赤城さんの出番少ないね・・・仕方ないと言えば仕方ないのかもしれませんが。
作者の構想不足です、すみません。

さて、短編から連載モノになりましたが、この作品は悲惨な方に転ばないよう頑張っていきたいと思います。
また、艦娘の情報は全てwikiから拾ってきていますが、合っているでしょうか?それだけが心配点です。
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