今回も真面目な話が続いています。
私としては、笑える要素を入れやすいイベントに入りたいけど、その前準備みたいなものです。
書いててすごいやっつけ感がしました…
提督に指定されてから1月程経っていた。
その1月の間芋太郎は、提督とはどういう存在なのか、空いた時間を使って学んでいたのだった。
そして、提督が去る日が訪れた。
船着き場には3人の影、前任提督とその婚約者である陸奥、そして業務を引き継ぐ芋太郎であった。
3人だけと言うのも、提督が止めると言う情報は鎮守府に広まっていたが、正確な日時は発表されていなかった為である。
芋太郎は、前回の様に赤城から封筒を渡されここに立つ事を許されていた。
対して、封筒を渡した赤城は知らされていない仲間に悟られない様にする為か、今回の別れを辞退したのだった。
「提督、お疲れさまでした」
芋太郎は深く頭を下げる。
「よしてくれ、今となっては君が提督も同然だろう?私はただの退役軍人さ」
前任提督は芋太郎の肩に手を起きそう言った。
芋太郎はその言葉で頭をあげると、陸奥の方を見やり再度頭を下げた。
「陸奥さん、くれぐれも提督を頼みます。それと、お幸せに…」
最後の方は例の件もあってか、声が弱くなっていた
「わかってるわよ。それに、この人は私がいないと何も出来ないんだから」
「ははは…」
提督は頬をポリポリと掻いた。
しかし、提督の目は優しい目から鋭い目に変わった。
「和太郎君、少し耳を」
「なんでしょうか?」
提督に言われるがまま、芋太郎は耳を向ける。
「外部からの圧力に困ったときは資料室第三書棚のG-76ファイルの裏に有るスイッチを押すと良い。私が集めてきた汚職の証拠が数多く収められた資料のある隠し扉が開く」
「汚職ですか…この御時世にそのような事をする人物がいるのは驚きです…」
「どんな時にもいるものさ、だから警戒はしておいて欲しい。実は今回の君が提督になる事も汚職で本部を揺すってやったのさ、はははっ」
前任提督は愉快に笑った。
だが、すぐに先ほどの顔つきになると口を開いた。
「私がいなくなる事で、おそらくだがココを手元に置こうと出しゃばってくるだろう。何度も言うようですまないが、本部をあまり信用してはいけないよ」
「わかりました…」
いきなり難しい話から始まったので、辺りは静かになっていた。
「ちょっと、二人でお話中の途中だけど、そろそろ船が出るわよ」
「おや?もう、そんな時間だったか。すまないすまない」
「やっぱり私がいないとダメダメね」
提督と陸奥は歩幅を合わせながら、船へ乗り込んでいった。
残された芋太郎は、先ほどの言葉がずっと頭を巡っておりただ呆然と立っているだけであった。
しばらく時間が経って、芋太郎は場所を移動していた。
移動途中、芋太郎は廊下で吹雪と鉢合せとなった。
「こんにちは、和太郎さん」
「あぁ、こんにちは」
「いきなりですが、提督見ませんでした?」
「見てないな、すまない」
「そうですか、本日お別れ会を計画していたのですが。見かけたら教えてくださいね」
「わかった」
そう言い芋太郎は吹雪と別れたのだった。
別れた後の芋太郎は、お別れ会という純粋な気持ちが込められたイベントを嘘で踏み躙っているような気分を感じ、急ぎ足で自室へと戻っていった。
自室の扉を開けると、そこには赤城が待っていた。
「芋太郎さん、来ると思って待っていました。それで、提督の方はどうされました?」
「1時間程前に船に乗った所だ…」
「そうですか…」
「赤城、聞いて良いか…」
「なんでしょうか?」
「お別れ会をやる予定だったのは知ってたか?」
「はい…」
「そうか…赤城、この先本当に俺はやっていけるだろうか…」
芋太郎は頭を抱えた。
「その話は済んだはずじゃありませんか」
「いや、まだ拭いきれてない。今日、吹雪からお別れ会の事を聞いた、そして提督を見てないかと聞かれた。俺はなんて答えたと思う?見てないと言ったんだ、本当は見送っていたのに、嘘をついておきながら、お前達と向き合っていけなんて俺には…」
「弱気になってはいけません。この事は誰にも分からないことかもしれません。ですが、任された事に全力で取り組めば、必ず結果として出てきてくれるはずです。今の私たちには貴方しかいないのです」
芋太郎はその言葉を聞いてもなお、頭を抱えていた。
そして、口を開く。
「逃げるような事言ってすまない、お前の言う通りかもしれないな。やってみなければ分からないか…だが、もしもの時は皆、俺を許してくれるだろうか…」
決心は付いたが、やはり迷いは消えていない様子だった。
「もしもの時とは、どのような時のことでしょうか?」
赤城は問い詰める。
「被弾や轟沈、言葉では軽く言えるが、実際はどうだ?赤城…教えてくれ、被弾は痛みとかあるのか…?」
赤城は芋太郎の心配事の正体が分かり内心喜ぶも、内容が内容なので顔を伏せながら呟いた。
「被弾時には痛みはあります…、轟沈は私にもわかりません…」
「そうか…教えてくれてありがとう、俺なりに考えてみる」
そう言い芋太郎は再度考えるようにして、黙り込んだ。
「考えるのも良いですが、気分を入れ替えませんか?そろそろ昼食の時間になりますよ」
それを聞いた芋太郎は笑い始めた。
「はっはっは、今のタイミングで昼食に誘うか」
「私は気分を変えようと思っただけです!」
赤城は顔を赤くし言う。
「お前らしいと思ってな。だがありがとう。最初に知り合えたのが赤城で本当によかった。さて、飯にいくか」
芋太郎は立ち上がり部屋をでて、食堂へ向かった。
「芋太郎さん置いていかないでくださいよ」
赤城も芋太郎の後を追いかける様にして部屋を後にした。
昼食を食べ終えた芋太郎は、赤城と別れ、明日の席で喋る事になるはずの挨拶を考えるため、自室に籠る事にしたのだった。
その日の夜、見送られる本人の居ないお別れ会が行われたのだった。
提督が去った次の日。
芋太郎は渡された制服に着替え帽子を被り、部屋で待機していた。
芋太郎は着替えた服装を鏡で確認する。
「まさか俺がこんな格好をする日が来るとはな…分かってはいたが、不思議な気分だ…」
コンコンッ、部屋の扉がノックされる。
「開いてるぞ、入れ」
扉が開き副官が入ってきた。
「近藤提督、お時間になりました」
「わかった、直ぐ向かう」
芋太郎は副官の後ろを着いていき、舞台の上に立たされた。
「新任、近藤 和太郎提督が舞台へ上がられました、静粛に」
挨拶が行いやすい様にと副官がマイクを使い、その場を鎮める。
副官のおかげで場は静かになったが、艦娘達の反応は驚いたという顔が大半を締めていた。
芋太郎はマイクを手に取り挨拶を始めた。
「俺は一介の職員だった、だから戦略の組み立てから書類の管理全て知らない。だが、お前達は前提督から頼まれて、それらの仕事を受けていたと思う。だから、未熟者のこの俺に皆の力を貸してほしい」
そう言いながら頭を下げた。
「戦闘に関してはこの長門に任せておけ」
「私も忘れてもらっては困るわね」
「駆逐艦の連携力なめないでよねっ」
艦娘達は各々の考えを述べていった。
作戦立案をサポートする者、書類整理に徹しようとする者、多くの艦娘達が芋太郎の着任を歓迎してくれた。
「赤城、あなたはどうするつもりよ?」
ビスマルクは訪ねた。
「私は生涯、芋太郎さんを支えると決めていますので」
「聞いた私がバカだったわ、ほんと羨ましいわね」
そんな会話を片隅に、芋太郎は皆の歓迎に嬉し涙を流していた。
「司令官…泣いてる?」
響が芋太郎を見上げながら言った。
「嬉しいんだ…軍人でも無い俺が提督になったと言うのに、受け入れてくれて」
「どこかの馬の骨がくるより圧倒的に信頼出来るじゃないか、もっと自信を持て」
長門も励ましの声を掛けた。
「ありがとう、これからもよろしくたのむ」
その後、着任パーティーが行われた。
前日のお別れ会と規模は同じだったが、賑わいが違ったという。
着任から1週間経ち、仕事は皆にカバーされながら少しずつ覚えていった芋太郎。
そろそろだと言う事で、ミッションに向かう本人を前に司令を出すよう、長門に唆された芋太郎は潜水艦、伊58を前に偵察任務を言い渡したのだった。
芋太郎にとっては初めての司令だったが、内容など難しくなく、偵察に向かえと言うだけの簡単なモノだったので問題なく命令出来たのだった。
伊58も簡単な任務だったので潔く受けたのだった。
伊58が出発してから、3日経っていた。
予定通り事が運べばその日に帰還するはずだが、伊58は帰還する事は無かった。
その事態はすぐさま捜索隊の結成へと繋がった。
しかし、司令官となった芋太郎は何が起こっているのかほとんど理解出来ておらず、改めて自分の無知を自覚したのだった。
長門が代理指揮をとり、捜索隊は結成され捜索活動が行われた。
ものの数時間で捜索隊は戻ってきた、彼女達が連れてきた伊58は装備が壊れボロボロの状態だった。
捜索隊に囲まれ、支えられる伊58に芋太郎は駆け寄る。
「大丈夫か?!伊58、怪我の様子は?痛む所は無いか?」
「よくある事でち」
その言葉に芋太郎は衝撃を受けずにいられず、それが心に深く突き刺さった。
「赤城…」
「なんでしょうか?」
「この鎮守府にある、あらゆる戦略書が読みたい。集めといてもらえるか…俺は2、3日部屋に籠る…」
「分かりました…食事の方はどうなさいます…?」
いつもの様子と違うのが赤城はすぐさま分かった。だが、原因を理解している赤城は時間が解決してくれる事を祈り、言われたままにした。
「携帯食料を持っていく…その間は放っておいてくれ…」
「分かりました…3日後に迎えにあがりますので」
そして3日がたった。その日の天候は大雨であまり良い空気ではなかった。
赤城は言われていた通りに芋太郎の部屋へ続く扉の前で待っていた。
時間としては昼頃を指していただろうか、その時間になっても芋太郎は出てくる気配が無かった。
コンコンッ赤城は数度目になるノックをした、しかし中からの返事は無く、鍵のかかった扉が前に存在するだけだった。
「芋太郎さんいないのですか?」
コンコンッ赤城は再度ノックをするが、結果は同じだった。
そして時間だけが過ぎていった。
堪えられなくなった赤城は重要部署を周り、マスターキーが無いか訪ねていた。
しかし、返ってくる返答はすべて提督が所持しているという答えばかりであった為、最終手段を取ることにしたのだった。
赤城の救援要請によって艦娘達と一部の職員達が部屋の前に集まった。
罰則を受ける事を覚悟し、扉を打ち破るためであった。
最初は人の手によって扉の破壊が始まった。バールやハンマー、ドリル等が用いられてたが、すぐさま問題が露出してきた。
表面こそ木目の美しいだけの扉に見えたが、数センチ削ると金属部分が出てきたのだ。
それによってバールを入れる隙間すら無く、ハンマーは手がしびれるだけ、ドリルは逆に刃が削られて使い物にならなくなってしまった。
職員達は他の手段が無いか、皆頭を抱えてしまい、扉を破る事自体に進展が無くなっていた…
「あまり規律を乱すような事はしたくないのが…今回ばかりは事が事だ、私がやろう」
長門が扉を破壊する役割を自ら名乗り出た。
「どうなさるつもりですか?長門さん」
「なに、簡単なことさ。私の砲で壁を破壊すれば良いのだろう?皆危ないから離れるんだ、破片に気をつけろ」
長門の砲塔が低い音をあげて一点を捉える。
長門は左右を確認し、皆が離れたのを確認すると砲撃を行った。
「くっ…」
思いのほか強い爆風に襲われた長門は、少し苦しい様に声を出したが、大した被害は無かった。
そして、爆煙が晴れる頃。扉の姿がうっすらと見え始めた。
「扉はダメか…ならばっ!」
長門は扉ではなく、壁を撃った。しかし、壁の装飾材が吹き飛んだだけで、中から扉と同じ様に装甲が露になっただけであった。
「これだけの轟音を聞いても出て来ないとは…すでに中にいないか、もしくは…」
長門は最後の言葉を言う時、顔を下げた。
「あの方がそんなことするはずがありません!」
赤城は長門の言葉を否定した、過去にあの言葉を聞いた赤城だからこそ分かる事であった。
「あの人なら必ずどこかにいるはずです。ですがまずは私が偵察機を使って部屋の中を確認しますので時間を下さい。その間は皆さんで提督を探してください」
赤城に言われた通りにそこにいた皆は散開していった。
赤城は大雨の中提督室の一点を狙い、偵察機を放った。
ものの数分で偵察機は戻ってきたが、部屋の中に人影はなく、瓶や空き缶、戦略書・資料が散乱しているだけという情報を入手した。
「まだ望みはありますね、あの人が行きそうな所は…やはりあそこでしょうか…」
赤城は芋太郎がいるであろう場所に目処をたてると、傘をさしながらあの場所目掛けて走り出した。
赤城は目的の場所へ着いた、雨で視界こそ悪いものの、ハッキリと目的の人物を見つけていた。
その人物は傘もささずに、外で腕を振るっていた。
「やはり、ここにいましたか」
赤城は雨音に消されない様、少し大きめに語りかけた。
話しかけられた人物は腕を振るうのを止めたが、赤城の方を振り向く事はなかった。
数秒感の間ができた。そして再度赤城は話しかけた。
「皆が心配していますよ、戻りましょう」
それでも、その人物は振り向きもせず、口を開こうともしなかった。
そんな人物に赤城は、これ以上雨が掛からない様に近づき、傘の下に入れた。
「なぁ、赤城…」
赤城が近づくと、その人物は口を開いた。
「なんでしょうか、芋太郎さん」
「俺なりに考えてみた、今回の伊58による偵察任務、果たしてアレで良かったのか、赤城はどう思う?」
「わかりません…」
「俺にもわからん。だが、偵察を行う必要性がここの鎮守府に必要だろうか?少数で戦闘行う必要があるだろうか?全艦で探して攻撃すれば被害が少なく済むはず」
「しかし、戦闘における制限があるはずです…」
赤城の言葉に芋太郎は腕組みをしながら考えた。そしてすぐに答えを導き出した。
「いつから、制限に拘る様になった?資材の為か、はたまた個人の私腹の為か…」
「だからといって、自ら危険な道へ進もうとしないで下さい」
「お前達は傷つけられる可能性のある行動をするんだ、俺だけがのんびりしてる訳にはいかないだろう」
「だからといって…」
「ここで話すには、場所が悪いな。よし戻るか」
「えっ?!」
いきなりの機転に赤城は驚いた。
「急すぎます、もうすこし詳しくお願いします」
「俺は伊58の言葉にショックは受けたが、そうならない為に考える時間が欲しかった、そして考えが纏まっただけだ」
「そうですか…」
赤城は芋太郎と傘の下で歩幅を合わせながら、本部目指して歩き出した。
「赤城」
芋太郎は歩きながら声をかけた。
「なんでしょうか?」
「雨に打たれて決心した、俺はもう逃げない」
「そうですか」
2人はそのまま本部へ歩を進めたのだった。
本部へ戻ると、館内放送によって艦娘達が一カ所に集められた。
「心配かけてすまなかった、だがおかげで方針と決心が決まった。これからの方針は、必要な戦闘以外は行わないことで資材を温存しつつ、全力で潰す。この方針に異論は?」
「全力で潰すとはどう言う事でしょうか?」
吹雪が質問した。
「そのままの通りだ、敵の存在がある時はここに僅かな防衛隊を残し、それ以外の艦で殲滅する」
芋太郎は答えた。
「規則に引っ掛かるんじゃ…」
「規則に従い続けてお前達が守れるものか、知っての通り、ここには汚職の証拠がある。それで、規則を打ち破る。お前達はお前達で、戦闘方面でお互いをカバーしてくれ。」
芋太郎は方針について、詳しく話した。
「次に決心についてだが、俺はもう逃げない。俺なりに全力でお前達と向き合っていくつもりだ。だから、今まで通りよろしく頼む」
そう言い、芋太郎は頭を下げた。
「今までの戦闘スタイルから、革新していくか…面白いじゃないか」
長門は芋太郎の方針に賛同した。
「言いたい事はそれだけだ、解散」
発表が終わり、解散の言葉を聞いた皆は、言われた通り解散していった。
その日の夜、芋太郎は3日空いた時間の埋め合わせをするかの様に、自ら声を掛けて艦娘達と一緒に食事を取ったのだった。
読んでくださりありがとうございます。
さて、これで次回からイベントに繋げそうな予感がしてきました。時間軸はおかしくなりそうですがね。
活動報告の方にも書きましたが、よろしければ「こんなイベント面白いよ!」とういうイベントがあれば教えて頂けるとありがたいです。
健全なイベントの方だと、なお嬉しいです。そちらの方は苦手なのです。