鎮守府内食品部農産課の男   作:馬鈴薯

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どうも、じゃがいもです。
お気に入りや評価をしてくれる方が増えてくれて、とてもハッピーな芋です。

最近書いていても、なんかしっくりこない事が多く、今回の文もそんな感じが強かった気がします。
ですが、そんな文章でも読んでくださる皆様がいるおかげで、続けていられます。

今回も楽しんで頂ければ嬉しいです。


海水浴

季節は巡り、夏。

 

芋太郎は未だなれない仕事をこなしていたが、彼女達のカバーによって当初よりは提督らしい仕事が出来る様になっていた。

現在は帽子を机の端に置き、書類の確認を行っていた。

書類の内容は資材状況報告や戦果報告書がほとんどだったが、比較的戦果報告については数が少なかった。

これは、過去に決めた方針のおかげだったといえる。

 

黙々と書類を確認し続ける芋太郎は仕事に熱中するあまり、時間を忘れていた。

また、部屋の状況も屈強な身体のおかげで、本人こそ気付いていないが蒸し風呂状態となっていた。

そんな部屋の扉は何者かによって唐突に開かれた。

 

「提督、夏が来ました!夏と言えば?」

その正体はやけに張り切った吹雪であった。

 

「吹雪か…張り切っているのは良いが、まずはマナーを守るべきだな…」

 

「すっすみません」

吹雪は言われた事が的を射ていたのか、すぐさま謝罪の言葉を述べた。

 

「それで、どうしてそんなに張り切ってるんだ?夏になっただけだと言うのに」

 

「夏になっただけって…今日は海開きですよ!」

 

海開きという単語を聞いて、芋太郎はすぐに吹雪が張り切っている原因を導き出した。

 

「そうか、海開きか。皆で好きな様にやると良い」

芋太郎は仕事に追われている為か、艦娘達で好きな様にすると良いという言葉を述べた。

 

「それじゃ、意味ないんです。皆が提督と一緒に海水浴したいって」

吹雪は返答に不満なのか、頬を膨らましながら言った。

 

「それに、暑いと思いませんか?」

 

「暑い?俺は別に何も感じないが…」

 

「えっ…」

吹雪は予想以上の答えに、言葉が出せなかった。

なにせ、普通の人なら窓くらい空け、やせ我慢的に感じないと言うならまだ理解出来たのかも知れないが、密閉空間で完全な蒸し風呂状態の部屋の中ですら、何も感じないと言った芋太郎の頑丈さに、少しばかり引いたからだ。

 

「でも、皆が」

 

「それは分かっている。皆が望むなら俺はそれに従う。だが、今日やる訳ではないな?」

芋太郎は海水浴について詳しい情報を得ようと質問を投げかける。

 

「もちろんです。まだ時間はありますので都合の合う日を教えて頂ければ皆に伝えますよ」

 

「今日やる訳じゃ無いんだな、分かった明日には時間を空けておく、準備の方は任せる」

 

「了解です」

吹雪は提案を受け入れてもらえて上機嫌なのか、軽い足取りで提督室を後にした。

 

こうしてまた一人になった芋太郎は天井を見上げながら呟いた。

 

「海なんぞ行った事無いが大丈夫だろうか…」

 

しばし、天井を見上げていたが、すぐさま書類の整理に戻る事にした。

また、吹雪との会話の途中で吹雪が時たま自分を扇ぐ動作をしていたのを思い出し、今後も訪れるかもしれない来客の事を考え、窓のそばに行き、鍵を開け、窓を開いた。

窓を開いた瞬間、隙間から心地よい潮風が吹いてきた。

 

「良い風が吹いてるな、さて仕事に戻るか」

そうして椅子に腰掛けようとした時、先ほどとは机の上が違う事に気付いた。

 

先ほど吹き抜けた風によって、書類が部屋の隅に飛ばされていたのだ。

 

「良い風は吹いているが、運は無いな…」

芋太郎は部屋の隅へ書類を取るため歩を進めたのだった。

 

 

その日の夕食時、芋太郎はいつも以上に囲まれた状態で食事を取っていた。

その原因は言わずもがな。明日の海水浴の件であった。

 

「提督はイクと一緒に潜るの!」

「違うでち、提督はゴーヤと潜るでち!」

2人の潜水艦によって、提督の取り合いが発生していた。

そんな2人の言い争いを他所に、芋太郎は食事を続ける。

 

「こうなったら提督に決めてもらうでち!」

 

「そうなの!」

2人はそう言うと、提督の方を向く。

 

「芋太郎さん、2人が話したい様ですよ…」

赤城は食事を続ける芋太郎に声を掛けた。

 

「ん…」

口の中に残る食事を飲み込むと、芋太郎は口を開いた。

 

「食事中くらいは静かにしてほしいものだな…まぁ、はしゃぐのは分かる、明日は1日時間があるから、安心してくれ」

 

「ほんとでちか!」「ほんとなの!」

2人は芋太郎が約束してくれたと思ったのか喜びの声をあげた。

 

「ここで嘘ついても意味ないだろう?それに皆と向き合うって言っただろ」

芋太郎は過去に誓った決意を実行に移す事にしたのだった。

 

「ところで赤城、吹雪は見なかったか?明日の予定を聞いておきたいのだが」

 

「私は見ていませんね」

 

「そうか、皆は見てないか?」

赤城が知らないなら、ここに居る誰かが知っているだろうと声をかけた。

 

「あの子なら資材庫にいたわよ、明日の準備をするって言ってたわ」

ビスマルクが真っ先に答えた。

 

「ありがとう、ビスマルク。お前も明日は参加するのか?」

 

「もちろんよ」

 

「そうか、なおさら明日が楽しみだな。では、俺は吹雪に会ってくる」

そう言い、芋太郎は空になったトレーを返却口に持っていき、食堂を後にした。

 

 

芋太郎が資材庫の前につくと、ビスマルクが言った通り吹雪が中にいる為か、扉の隙間から光りが漏れていた。

芋太郎はその扉を開いた。

そこには、吹雪が忙しなく明日の為の準備を行っていた。

 

「吹雪、明日の予定を聞いておきたい。何をして何をしないのかをな」

 

「はい、分かりました」

吹雪は頷きながらそう言った。

 

「海水浴なので泳ぐのはもちろんですが、他にスイカ割やビーチバレーがやれたらいいなって思っています」

 

「そうか。では、今の俺に手伝える事は?」

芋太郎は今まで準備を一人で行ってきたと思われる吹雪の負担を軽くしようと、手伝いの申し出をした。

 

「そっそんな、提督の手を煩わせるなんて…」

そう言い、吹雪は芋太郎の申し出を断ろうとした。

 

「全部一人でやろうとするな、もっと仲間を頼れ」

 

「そうですよね…それでは、これを入り口付近まで運ぶのを手伝ってください」

そう言い、吹雪は扉の付近に積み上げられた荷物を指差した。

その荷物の量は吹雪だと、5回以上往復しなければならない量だった。

それを見た芋太郎は、吹雪の後ろから頭に手をおいた。

 

「いきなり、なんでしょうか?」

吹雪は振り向く。

 

「もう一度言う、困ったときは仲間を頼れ。お前が倒れる方が皆も困る、俺を含めてな」

その言葉には仕事上で困るという感じは無く優しさが含まれていた。

 

「優しいですね」

 

「お前達は一人だった俺を迎え入れてくれたからな。さて、さっさと運んでしまおう」

そう言い、芋太郎は扉付近に積み上げられた荷物を抱え、残りは吹雪一人で十分な量が残った。

 

「そんな沢山持たなくても」

 

「こんなもの、農作してた時に比べれば軽い軽い。さぁ行くぞ」

芋太郎は荷物を抱えながら資材庫を後にした。

 

「待ってくださいよー」

吹雪も荷物を持ち、芋太郎の後を追ったのだった。

 

 

そして、海水浴当日。

長年の癖で、いつもの様に早起きをした芋太郎は、寝起きと共にアイデアが浮かんだのか、自室を後にし、資材庫を目指し歩を進めた。

 

資材庫についた芋太郎は、目的の物を見つけるため棚を見て回る。

そして目的の物を見つけると、他の物を探す為に昨日の様に、扉の付近へ積み上げた。

 

全ての物が集まると、皆がすぐに遊べる様に入り口付近に集めてある袋と一緒に砂浜へ運んで行き、パラソルや椅子のセッティングを始めたのだった。

そして、セッティングが終わる時間になると、丁度朝食の時間となっていたので、食堂へ向かったのだった。

 

芋太郎が食堂につくと、艦娘の皆はよっぽど今日が楽しみだったのか、ここに所属する大多数の娘が集まっていた。

その中には主軸となる吹雪の姿もあった。

 

「吹雪、椅子等の設置は終わらせておいた、これで好きな時間に海に行けるぞ」

 

「ほんとですか!ありがとうございます」

そう言い、吹雪は笑顔を見せた。

その笑顔を見た、芋太郎もフッと笑う。

そして朝食を済ませると、個人の準備のため食堂を立ち去った。

 

 

食堂を立ち去った芋太郎は潜水艦との約束を果たすため水着を履き、その上から普段通り提督の服を纏い自らセッティングした場所へ向かった。

 

芋太郎が砂浜につく頃にはすでに、数名の艦娘達がすでに砂浜にセッティングされたパラソルの下に集まっていた。

 

「皆、提督が来ましたよ」

吹雪が叫びながら手を振っていた。

 

「お前達、早いな」

そんな吹雪達の様子を見て、芋太郎は少しばかり驚きの声をあげたが、自分が提督になってから初めてのイベントだから仕方がないのかもしれないと内心納得し、パラソルの下で合流した。

 

「芋太郎さんは、今日泳がれないのですか?いつもの格好の様ですが?」

赤城も初めてのイベントを楽しみにしていたのか、芋太郎が水着ではないので残念そうな声を漏らした。

 

「午前中はここで終わってない書類を片付けてしまおうかと思っている。そんなに数はないからすぐに終わるし、伊58と伊19との約束もあるからな」

 

「そうですか、安心しました。でわ、私とも一緒に…」

 

「望みなら時間は作る、安心しろ」

芋太郎は椅子に腰掛けながら、持ち寄った書類ケースを開きながら話した。

対して赤城はその言葉を聞き喜んだのだった。

 

そして、会話の間に来ていなかった艦娘達が続々と集まって来ており。

いよいよ、芋太郎就任初の海水浴が始まった。

 

まずは準備体操から始まり。やはり格好こそは女の子でも軍所属なだけあってしっかりしており、皆こぞって身体をほぐしていく。

 

その準備体操の声があがるのを余所目に、芋太郎は書類に目を通していき、認証印が必要な書類にはしっかりと判子を押していく。

 

そうしている間に準備体操は終わり、各々のやりたい事をする為に散っていく艦娘達。

潜水艦はこぞって潜水をし、駆逐艦の多くは海岸を走ったり、砂遊びを始めていた。

比較的背の高い戦艦や空母達は吹雪の用意したバレーボールを使いビーチバレーを行っていた。

 

楽しそうな声が響く中、芋太郎は尚も書類の確認を続ける。

 

しかし、そんな芋太郎もこう言う日は楽しむべきだと思っていたのか、机においてある飲み物は水の入った容器ではなく、紙コップに入ったカラフルな液体であった。

 

書類を片手にそのコップへ手を伸ばし、口をつける。

ほのかに香る果物の香りを受け、芋太郎の口の中を自然な甘みが駆け抜けていく。

 

それを飲むのを見ていた赤城は、芋太郎のそばに行き声を掛けた。

「美味しそうですね、私にも頂けますか?」

 

「もちろんだ」

そう言いながら芋太郎はクーラーボックスから紙パックを取り出し、紙コップへ注ぎ赤城へ突き出した。

 

「ありがとうございます」

赤城はそれを受け取り、口をつけた。

そして中身を一口飲み込むと、再度芋太郎の方へ目をやる。

赤城の目線には書類ケースに今まで確認していた書類をしまう芋太郎の姿が映った。

 

「芋太郎さん、書類の方は終わりましたのでしょうか?」

赤城はそんな芋太郎に見て分かる質問をした。

 

「あぁ、確認は全て終わった。だから、海水浴の準備をしてくる」

そう言い、椅子から立ち上がり建物の方向を向き歩いていった。

 

「私もついていってよろしいでしょうか?」

赤城は海岸から離れようとする芋太郎に声を掛ける。

 

「いや、ここでゆっくりしていてくれ。俺は着替えてくるだけだ」

 

「わかりました」

赤城は芋太郎にいわれた通り、海岸でのんびりとする事にしたのだった。

 

 

海岸を離れた芋太郎は食堂を目指していた。

目的はサプライズをする為であるが、その内容はかき氷を作ろうという簡単なモノだった。

 

芋太郎は食堂にて、パックされた氷の塊を受け取ると、それを抱え来た道を戻っていった。

 

 

芋太郎は再度海岸につくと氷の塊を、シートの敷いてある机へ乗せると、袋からアイスピックと手回し式のかき氷機を取り出し、氷を砕き始めた。

 

ガッガッと小気味いい音をあげながら、氷には無数の穴が空いていった。

そして、芋太郎によって何度も負荷をかけられた氷は、かき氷機に入る丁度良い大きさに割れたのだった。

 

その氷を芋太郎はかき氷機へセットし、紙コップを下に置き、取手をまわし始める。

ガリガリという音を立てながらコップに白色の氷が積み上がっていく。

 

その音に、砂遊びをしていた駆逐艦達も集まっていき、短い列が出来る。

そんな列を見て芋太郎は笑うと、取手をまわす速度をあげる。

 

そして、コップいっぱいの雪山が出来ると、赤城に声を掛けた。

 

「赤城、かき氷は食べれるか?」

 

「いただきます」

そう言い、かき氷を受け取った。

 

「赤城ばかり優先してずるいわね」

先頭に並んでいた暁が不満の声をあげる。

 

「プライベートなんだ、仕事上では平等に扱う様にしているが、今回は赤城優先だ」

芋太郎はそんな不満にこう答えたのだった。

 

しかし、そんな答えに暁が納得する訳なく、さらに言葉を返してきた。

 

「司令官、レディーファーストって言葉知ってる?」

 

「もちろんだが、赤城もレディーだぞ?」

 

「わっわかってるわよ!」

我が侭を突き通そうと思っていた暁は、芋太郎の言葉に言い返せなくなり慌てふためいた。

そして、恥ずかしくなったのか列から抜けて走り出した。

 

「暁っ!」

芋太郎はそんな暁を止める様に大きな声で暁を呼び止めた。

 

それでも暁は止まらず走り続けるが、そんな暁の前に響が立ち塞がった。

 

「姉さん、司令の方をもう一度見てみるんだ」

響は暁の腕を掴みながらそう言い、動きを止める。

 

響に言われて少し冷静になったのか、暁は芋太郎の方を見る。

そこには、かき氷を持った芋太郎が映った。

その姿を見て、暁は芋太郎の側に近づいていき、かき氷を受け取ると小さく口を動かした。

 

「我が侭言って悪かったわね…」

 

「そんなに、気にする事じゃないさ。だが、俺にもたまにこういう事があると言うのは知っておいて欲しい。さて、氷蜜は無いがジュースはある、好きなのをかけるといい」

そう言いながら、芋太郎はジュースの紙パックを暁の前へ並べた。

 

暁はその中から一つを手に取ると傾け、氷にかけた。

氷は水圧により陥没していくが、変わりに氷には微かな色が付き、味も追加されたのだった。

 

 

芋太郎がかき氷を作り続けて時間が経ち、日も大分昇った。

 

「さて、そろそろ約束を果たすとしよう」

芋太郎はそう言いながら服を椅子へ脱ぎ捨てた。

そして、海に足を入れると少し離れた所で泳ぎ回る伊58と伊19に向かい声を掛けた。

 

「待たせたな、さてどっちから潜る?」

その言葉を聞いた2名はすぐさま海を上がり、芋太郎の元へ集まった。

 

「ゴーヤでち!」「イクなの!」

昨日も決まっていなかった1番争いが再度勃発。

またもや2名は言い争いを始めたのだった。

 

そんな2人を放置して、芋太郎は海の奥へ奥へと歩を進め、次第には足がつかない所へ泳いでいった。

そして大きく息を吸い込むと大きく口を開いた。

 

「アラァーームッ!」

そして再度息を吸うと、海に潜っていった。

芋太郎の声を聞いた潜水艦2名は、ハッとした顔になりすぐさま芋太郎の後を追う。

浅瀬で潜水しながらのため、水上に航跡を残しながら。

 

また、他の艦娘達は何事かと言う顔をしたが、すぐさま興味を無くし、今までやっていた事に戻っていった。

 

 

そして芋太郎が叫んでから一分ほど経ってから、伊58と伊19に絡まれた芋太郎が浮き上がってきた。

「今の言葉二度と言わないで欲しいでち」

「イクも非常事態かと思ったの!」

 

囲まれる芋太郎はその拘束を解くため、息を吸い、先ほどと同じ言葉を叫んだ。

その言葉を聞いた2名は一瞬硬直した後、潜っていった。

 

その時間を使い、芋太郎は海岸目指して泳ぐ。

しかし、水泳では艦娘である伊58と伊19の方が得意であり、10秒も経たずに同じ状況に陥った。

 

再度絡まれた芋太郎は、潜水からの浮上、包囲の早さに一瞬驚いたが、先ほどの言葉により2人が言い争いを止めたうえ、こうして自分の近くに居るという状態を活かすため、思考を巡らした。

 

「まぁ、落ち着け。これで一緒に潜れるじゃないか」

芋太郎は2人にそう言った。

すると、2人は納得してくれたのか芋太郎の拘束を解き、手を掴む。

 

「落ち着いたか。さて行くか」

そう言い、息を吸い込んだ。

芋太郎が息を吸い込み終わる頃、潜水艦2人は真下に潜った。

 

熱帯では無いため珊瑚礁などは無いが、芋太郎の視界には潜水ゴーグル越しに奇麗な海中が映った。

 

しばらくの海中水泳を終えると、2人は芋太郎の負担を考え浮上した。

 

浮き上がった芋太郎は2人に支えられながら、呼吸を整える。

 

「満足したか?伊58、伊19」

芋太郎は未だ少し荒い息で問い掛けた。

2人はお互いに顔を見合わせ、お互いに口を開いた。

「ゴーヤで良いでち」

「イクはイクなの!」

 

「そうか、ゴーヤ、イクこれからもよろしく頼むぞ」

そう言い、芋太郎はゴーヤとイクの手を握り返し握手の様に手を上下に動かした。

 

そうして、芋太郎は潜水艦2人の更なる信用を得たのだった。

 

 

握手を交わしてから数回程潜水を繰り返した3名は、休憩のため海岸へ上がっていた。

 

「喉が渇いたな、まだジュースが残っているといいが…」

芋太郎はパラソルの影が広がる机に向かった。

 

しかし、時間が経っていた為、かき氷の為に用意した氷は解けており、ジュースは量が足りなかったのか全て空になっていた。

 

「飲み物が無いので取ってくる」

芋太郎は建物の方へ向きを向けた。

 

「提督、スイカならありますよ」

ここを立ち去ろうとする芋太郎を、吹雪は呼び止めた。

 

「そのスイカは切れているか…?」

芋太郎の質問に吹雪は首を横に振り答えた。

 

「今から割る所ですよ」

 

「そうか…」

芋太郎は喉の渇きからか、ガックリと項垂れる。

 

「そんな項垂れないでくださいよ、提督。よかったら一番始めにやってみます?」

吹雪は目隠しと木刀を両手に芋太郎に提案した。

 

「やるさ、割れさえすれば直ぐ食べれるんだろ?」

 

「はい」

吹雪は両手にある道具を芋太郎に手渡した。

 

その装具を受け取った芋太郎は、吹雪がスイカをセットするのを待ち。

セットが終わると、目隠しを付け、木刀を構えた。

 

木刀を構えると、周りの艦娘達から方向の声が聞こえ始めた。

最初のうちは前ばかりであったが、1メートルくらいになってくると右、左と細かな指示が飛んできた。

こうして、スイカを正面に捉えた芋太郎は、自ら木刀を振るう事はなかった。

 

「今です!」

一際大きく赤城が叫んだ。

その声に従い、芋太郎は木刀を掲げ、振り下ろした。

 

木刀の軌道は芋太郎の力加減によって、真下よりも左上からの切り下げとなった。

結果として、木刀はスイカに当たらず、ガッという音をたてどこかに命中したのだった。

 

その音を聞いて芋太郎は目隠しを外した。

そこには、割れたスイカでは無く半分に割れた石が転がっていただけだった。

 

「外したか…」

喉の渇きが酷くなったのか、芋太郎は項垂れながらドサッと椅子に腰を下ろした。

 

芋太郎がそうしている間に艦娘達は順番にスイカ割を行っていく。

最終的に決定打となったのはビスマルクであった。

彼女の海外艦としての感性か何かが作用したのか、ひび割れたスイカから漂う香りを頼りに、見事に割ってみせたのだった。

 

その後、スイカはナイフによって切り分けられ、芋太郎は真っ先に大きい断片を持っていった。

 

 

スイカ割が最後の予定だったのか、皆はパラソルの下でのんびりと時をすごしていた。

 

そうして、日が傾き夕方になる頃には皆で片付け、着替えを済まし食堂で夕食をとっていた。

 

「来年も可能であればこのようなイベントをやっていきたいと思う、反対する者は?」

普段は戦闘訓練に遠征と任務が多い中の、娯楽を反対する者は居るはずも無く、むしろ来年に来る海水浴を今回よりも楽しいモノにしようと言う会話で盛り上がったのだった。

 

話の盛り上がる中、芋太郎は声をあげた。

「明日からは今まで通りだ、次回の海水浴を楽しみにするのは分からなくもないが、そちらの方もしっかりしてくれ」

 

皆は海水浴の話を止め、頷いたのだった。

 

 

夕食を終えた芋太郎は食堂を立ち去った後、赤城との約束を遂行していないのを思い出し、

赤城の部屋を訪れたのだった。

 

赤城はまだ食堂に居ると考えた芋太郎は、部屋の前で佇み待つ事にしたのだった。

 

芋太郎の読み通り、赤城は食堂にいたのか、廊下から歩いてきた。

 

「芋太郎さん、どうされました?」

 

「いや、今日の約束を守っていなかったからな。その詫びに来たんだ」

 

「そんな…わざわざ」

 

「いや、約束を反故にできない質なんでな。この埋め合わせは必ず」

芋太郎は約束の代わりが無いか提案した。

赤城は芋太郎の言葉にすぐさま答えた。

 

「それならば、芋太郎さんの手料理が食べたいです」

 

「そうか、それでいいならお安い御用さ」

芋太郎は赤城の要求を承認したのだった。

 

「それでは、お休み赤城」

 

「はい、おやすみなさい。芋太郎さん」

2人はお休みの挨拶を交わすと別れ、芋太郎は自室で眠るため廊下を歩いていったのだった。

 




読んでくださり、ありがとうございます。

今回は海水浴の話でした。
作者も小さい頃は海水浴に行った事があります。
スイカ割りも実際にやった事がありますが、今回の話に出てきた石を割った所は作者自身の経験談です。

スイカ割に使ったスイカってあんまり美味しくないよね…

続きを書けば書く程、誤字や脱字、おかしい所が増えている気がします。
よろしければ、そんな所があれば報告してくれると嬉しいです。
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