鎮守府内食品部農産課の男   作:馬鈴薯

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どうも、じゃがいもです。
やっとこさ、活動報告に書いていた通りのイベントが全て書き終わりました。

しかし、時間的に書けない時期が続いていた事もあり、書き方が変わってるかなー?という不安要素もありますが、楽しんでもらえたら嬉しいです。



クリスマス

この鎮守府にもクリスマスがやってきた。

わざわざモミの樹を取り寄せ、広場にクリスマスツリーとして飾る程で、取り寄せを行ったのは現提督の芋太郎ではなく、艦娘の誰かであった。

 

ただ、モミの樹は取り寄せただけの状態で立てられており、飾り付け等は一切施されておらず、そのツリーの飾り付けを指揮する人物も提督ではなく、長門であった。

 

そもそも、未だ新人提督である芋太郎に、この鎮守府のイベントスケジュール等知る由もなく、基本的に艦娘の方から声をかけないと延々と書類とにらめっこしている提督という立ち位置となっていた。

 

「第一次聖夜遂行作戦始動!」

長門は、駆逐艦達に作戦を言い渡す。

作戦とはついているものの、要はツリーの飾り付けである。

駆逐艦達はグループに別れており、各グループに渡された装飾をツリーに付けていく。

オーナメントボールの代わりに手榴弾、モールの代わりに弾帯と、着々に地味で危険なツリーが完成していく。

これらの飾りに使われた武器も、深海棲艦の登場によって使用されなくなっていき、埃を被っていたのを引っ張り出してきただけというものであった。

 

「長門司令、ツリー頂上の装飾がありません」

普段真面目な吹雪も今日ばかりはおふざけモードになっていた。

また長門司令というのも、クリスマスなどの広く知られているイベントの多くを長門が提案し実行、そして後始末を提督が行うというサイクルが確立していたからである。

 

「わかった、私から提督に聞いてみることにしよう。お前達は装飾を続けてくれ」

長門はそう指示を出すと、提督室へ向かったのだった。

 

 

一方、提督室。

そこでは、やはり芋太郎が書類整理を行っていた。

そこへ、コンッコンッと扉がノックされる。

芋太郎は書類を見るのを止め、書類を置くと口を開く。

 

「開いている、入れ」

その声を聞き、扉は開かれる。

そこには、先ほど向かった長門がいたのだった。

 

「すまないが、提督。銀星章を借りたいのだが」

芋太郎は銀星章という単語を聞き、首を傾げる。

 

「俺は銀星章なんて持つ程の戦果も指揮もあげてないぞ?」

 

「いや、前任のモノなのだが、置いていってるはずだ。あの人は階級や勲章に拘っていなかったからな」

そう言いながら、開きなどを片端に調べていく長門。

2つ目の開きを確認した長門は、奇妙なモノを見つけ声を漏らす。

 

「ん?何だこれは?」

長門は開きから透明な瓶を見つけると取り出した。

瓶を傾けると、素直に平面になろうとするあたり、油でも無く、容器からして薬品と言う訳でもなかった。

 

「提督、これは一体なんだ?」

瓶を持ちながら、長門は芋太郎へ訪ねる。

最初に用が無いと思い込み、書類確認に戻っていた芋太郎は、声をかけられたので再度首をあげ、長門が手にするモノを確認すると口を開く。

 

「俺が過去に作った酒だな。最近は飲んでないから欲しかったらやろう」

そう言い、書類に目を通すが、思い出したかのように再度口を開いた。

 

「そう言えば、どうして銀星章なんか必要なんだ?」

最初のやり取りの内容を思い出し、問い掛けた。

長門もそれを聞くと思い出したかのように、瓶を芋太郎の机に置くと、再度探すのを再開しながら、理由を話し始めた。

 

「今日はクリスマスでツリーの頂上に飾ろうかと思ってな。あったあった」

3個目にあたる開きから、埃の被った箱を取り出した長門は埃を手で払い、箱を開く。

その箱の中にはシルバースターが収められていた。

 

「提督、コレを借りても良いだろうか?」

所持者はいないので、長門は最高責任者にあたる芋太郎に承諾を得るため声をかけた。

 

「所有者は俺じゃないが、置いていったって事は要らないんだろう?自由にすると良い」

芋太郎は潔く承諾したのだった。

 

 

芋太郎の承諾を得て、銀星章を手にした長門は、ツリーの佇む広場へ向かうがその道中でビスマルクと鉢合せとなった。

 

「長門、それは何かしら?」

ビスマルクは長門の持つ箱を指差しながら問い掛けた。

 

「これか?ツリーの飾りだ」

 

「今年もやるのね…だけど、あのツリーはどうかと思うわよ?」

ツリーの完成形を幾度と見て来たビスマルクは、毎度のことであったが呆れていた。

 

「仕方がないだろう?飾りに使えるものがコレしかないのだから」

あくまで海軍という軍組織であり、有り合わせのモノを使ったツリーがアレなのだ。

 

しかし長門は呆れられたにも関わらず、楽しそうな顔をしていた。

なぜなら、提督になるまでは一人倉庫暮しであった芋太郎は鎮守府内でのイベントに疎いだろうと読んでおり、ツリーという単語だけを伝えただけで、実際のツリーを見た提督がどんな反応をするのか、楽しみにしていたからだった。

 

 

ビスマルクと別れた長門は、ツリーの立っている広場へと戻って来ていた。

 

「お前達、最後の飾りを持って来たぞ」

長門が頂上の飾りを借りに行っている間にも作業は続いていたため、ツリーの飾り付けは、この銀星章を上に固定するだけとなっていた。

 

 

「これで完成だな」

長門は箱から銀星章を取り出しながら近づくと、これをツリーの先端へ固定したのだった。

銀星章の固定が終わると、長門は作業をしていた艦娘達の方を振り向き、口を開いた。

 

「皆ご苦労だった。しかし、これで終わりではない、第二次聖夜作戦があるのも頭に入れておいて欲しい。決行は夜、以上」

以上という言葉でもって、一次作戦は終了とされた。

それを言った本人と作戦参加者達は、二次作戦までの空いた時間を各々で過ごす為に聖夜艦隊は一時解散となったのだった。

 

それでも参加した全ての艦娘達が自由に過ごす訳ではなく、一部の艦娘達は少しでも良くしようと自己チェックを行っていた。

 

その中には吹雪の姿が見られた。

そんな吹雪に長門が気付かない訳が無く、声を掛けた。

「はしゃぐ気持ちも分からなくは無いが、休む事も大切だぞ」

 

「でも、あの提督が楽しんでくれないと…」

その会話で吹雪は一つの考えが浮かんだのか、唐突に走り始める。

 

「いきなり走りだして、どうしたというのだ?」

長門は普段通りの口調で問い掛けた。

 

「提督に予定として伝えてなかったから、伝えてきます。提督、そこだけは抜けてるみたいなので」

それを聞いた長門もハッとした顔になり、呟いた。

 

「私も伝えるのを忘れていたな、カバー感謝する」

それを聞いた吹雪は後ろ向きで手を振る動作をしながら、提督室目指して走っていったのだった。

 

 

再度、提督室。芋太郎は長門が来たときと同じ様に書類に目を通していた。

しかし、見ている書類は軍関係のモノではなく、前任者からの手紙であった。

 

—近藤提督へ

 仕事熱心な君だからこそ、この手紙を送らせてもらったよ。

今日はクリスマスだから、この手紙に続いてコンテナでプレゼントを送る、君の手で皆に渡してやって欲しい。

もし、実行しなかったら後日私が行くからね。—

 

手紙を読んでいる最中に、ノックが響く。

「入れ」

芋太郎は、手紙に目を向けたまま相手を呼び入れた。

「失礼します」

礼をしながら吹雪が扉を開けて入ってくる。

 

「提督、今日はクリスマスなので、夕食時には食堂に来てくださいね」

 

「あぁ、わかった」

提督の返事を聞いた吹雪は満足した顔で部屋を後にした。

こんな短いやり取りの中でも芋太郎は手紙を読み続けていたのだった。

 

内容こそ短いものだったが、前任者からの頼みという事もあり、物資の搬入口へ足を運ぶ事にしたのだった。

 

 

搬入口へ着いた芋太郎はここでは珍しい格好をしている人物を見つけた。

その人物とは、サンタ服に身を包む陸奥であった。

 

「お久しぶりです、陸奥さん」

芋太郎は声をかけた後、敬礼をする。

 

「あら、近藤提督。貴方の方から足を運ぶなんて」

 

「ははっ、手紙に書いてありまして」

そう言いながら、懐に入れておいた手紙を陸奥へ見せた。

 

「…あの人らしいわね、ホント。それにこの格好でプレゼントを護衛しろだなんて言うんだもの、ホント変わった人よね」

 

「似合ってるから良いじゃないか」

 

「そう?ありがとう」

純粋に似合っていると言う言葉を聞いた陸奥は機嫌を良くし、笑顔をみせる。

それから自身の持っていた白い袋の中を漁り、長方形のケースを手渡した。

 

「私からのプレゼントよ、これであの子達とも仲良く演習できるはず」

陸奥からその箱を受け取った芋太郎は、その箱が持つ予想外な重量に、まず驚いた。

 

「開けてもいいか?」

 

「もちろんよ」

陸奥は頷く。

 

ラッピッグのされていないケースはアタッシュケースのような留め金が着いており、そこを押すと難なく開いたのだった。

中に入っていたのは、鈍い光沢を放つ長い何かだった。

芋太郎も一目見ただけでは何か理解できず、思わず声を漏らした。

「銃…なのか?」

そう言い、陸奥の方へ顔を向ける。渡した本人は反応が面白いらしくニコニコとしていた。

 

「そう、銃よ。しかもただの銃じゃないわ、S&W M500回転式拳銃10.5inchハンターモデルよ!」

陸奥はその拳銃が特別だと言う事をアピールする為にドヤ顔でそう言った。

対する芋太郎は首を傾げ、困った顔をしながら呟いた。

「銃か…う〜む、銃…どうやって使うんだ?」

 

「弾込めて、撃つだけよ」

 

「その弾が無いんだが…」

それを聞いた陸奥は、またもやハッとし袋を漁る。

 

「面倒くさいから、全部おいてくわね」

そう言いながら、ジャラジャラと音を立てる箱が数箱、ビニール袋に入った砂糖に包まれた何かと、いろいろ出て来た。

その中の砂糖に包まれた何かを陸奥は手に取り、芋太郎へ押し付ける様にして手渡した。

「箱は弾が入ってるわ、これはビスマルクに渡して頂戴、ドイツ式のクリスマスケーキよ」

「お…おぅ…」

急いでるような雰囲気になった陸奥に芋太郎はかける言葉を失う。

 

「それじゃ、私はこれで」

そう言い、足早に立ち去ろうとする陸奥を呼び止める。

 

「なにもそんなに急がなくても良いだろう?もう少しゆっくりしていけば良い」

 

「気持ちは嬉しいけど時間がないのよ。戻るのに7時間近く掛かるわ、私たちのクリスマスが終わってしまうもの」

それを聞いた芋太郎は苦笑いをうかべ、陸奥を見送った。

 

「お幸せに」

 

「今でも十分幸せよ」

振り向き再度笑顔を見せた陸奥は、前任の待つ港へ向け、出航していった。

 

こうして、相手が居なくなった芋太郎の元へ輸送船の乗組員が駆けつける。

「こちらの方にサインお願いします」

 

貨物の搬入手続きに関する書類であった。芋太郎はその書類にすぐさまサインをする。

「ありがとうございます。貨物の確認はどうされます?」

「あぁ、見ておこう」

陸奥からあのようなモノを貰ったのだ、芋太郎は一応貨物の確認を行う事にした。

 

乗組員に案内され、貨物コンテナの前へ来た芋太郎は、さっそく中身を確認する。

コンテナの中身は九一式徹甲弾や三式弾が奇麗に並べられていたのだった。

他のコンテナも装備等が詰められており、それを見た芋太郎は苦笑いを浮かべ呟いた。

「クリスマスに渡すようなモノじゃないだろ…」

それでも、あの手紙に書かれていた通り夜間に保管場所を示した紙を渡そうと決めたのだった。

 

 

そうして時が過ぎ、いよいよ始まるクリスマス。

「皆、準備は良いな!」

「「「おー!」」」

第二次聖夜作戦決行の声が食堂であがる。

 

「あとは提督が来るのを待つだけだ」

そう言いながら、皆で円錐状の何かを手に持ち、食堂の入り口へ構える。

 

しばらくして、足音が響き始め何者かが食堂の扉を空けた。

パンッパンッと音がして、テープが飛び交う。

「メリークリスマス!」

 

しかし、紙テープの洗礼を受けた人物は提督ではなく、赤城であった。

「メリークリスマス、皆さん」

 

クラッカーテープによって足を止めた赤城は、皆に言われた言葉に同じ様にして返す。

「どうした?赤城」

 

赤城の後ろから目的の人物である、芋太郎の声が聞こえる。

「提督!メリークリスマス!」

 

「あぁ、メリークリスマス。さっそくだがプレゼントを渡そうと思う」

こちらから声を掛けない限り、イベントを計画しない提督がプレゼントを渡すというので、あたりは騒然とし始めた。

 

「ここで渡せるものは渡すが、大きいものが多いため保管場所を示した紙を渡すのが多いと思う。今夜は消灯しないので各々で確認して欲しい。まずはビスマルク」

名指しされた、ビスマルクは提督の前へ移動した。

 

「メリークリスマス」

そう言われ、砂糖に包まれた何かが渡される。

受け取ったビスマルクはワナワナと震え始め、呟く。

 

「殴っていいかしら…?」

「どうしてそうなる!?」

「あの人ならまだしも、貴方まで私をおちょくる気なの!?シュトーレンはもっと前に渡すものでしょ!」

「まて!俺が用意した訳じゃない。前任が手紙と一緒に送って来たんだ!」

 

そう言いながら、芋太郎は手紙を見せる。

証拠を見せられたビスマルクは振り上げていた拳を下ろす。

「あの人もあの人なら、貴方も貴方ね…」

「それはどういう意味だ?」

「あの人は変な所で真面目、貴方は真面目だけど気が利かないって事よ」

「悪いか?」

芋太郎は少し心配気味に問い掛ける。

「さぁ?私にも分からないわ。なんせ、色々な人が居るもの。でも貴方は嫌いじゃないわ」

「そうか、よかった」

ビスマルクの言葉に笑みを浮かべた芋太郎は、残りのプレゼントも同じ様に名指しで配っていった。

戦艦型には九一式徹甲弾と三式弾の保管場所と配分数。

駆逐艦には爆雷投射機、空母には艦載機、その他魚雷等多くの兵器がプレゼントされた。

 

粗方プレゼントもしくは紙を配り終えた芋太郎の元へ吹雪が駆け寄る。

「提督、ツリーも見ていってください!」

「あぁ、分かった。赤城も着いて来てくれ」

「わかりました」

「でわ吹雪、案内頼む」

その一声で吹雪は芋太郎の前を進み始めたのだった。

 

 

吹雪に案内され芋太郎は広場へやって来たが、夜のため暗く、ツリーに電球等の装飾はされていなかった為、芋太郎は見る事が出来なかった。

「ちょっと待っててくださいね」

吹雪が何やら準備を行う。

 

しばらくして、吹雪が自分の持つ探照灯でツリーが照らしはじめる。

「どうですか?提督」

「悪くはないが、地味だな」

「仕方ないですよ、手榴弾や弾帯ですから…」

そう言いながら、吹雪は少し寂しそうな目でツリーを眺める。

そんな吹雪の頭に手が添えられる。

「来年のツリーも楽しみにしている。サプライズも良いが、寂しそうな目をしながらやるものではない。戦うのはお前達だ、もう少し我が侭を言ってもいいんだぞ」

数秒感撫でると、芋太郎は手を離す。

「もう少し、時間を割いてやりたいが今日は時間が無いんでな…すまない」

芋太郎は詫びると、赤城を連れて広場を歩き始める。

「提督、どこへ行かれるのですか?」

「今日は赤城と過ごそうかと思ってな、外に店を予約してあるんだ」

後ろめたさも残る中、芋太郎は打ち明ける。

「はじめてですよね?楽しんできてください」

「悪いな…」

そう言いながら、広場に止めてあった車に乗り込みエンジンをかけると、その店目指し鎮守府を離れていったのだった。

 

 

「あれで良かったのだろうか…」

芋太郎は運転をしながら、助手席へ座る赤城へ問い掛ける。

しかし、赤城はその問に答える事無く、黙っていた。

戦友であり身内同然の彼女達を優先するか、上官であり思い人を優先するか迷っていたからだ。

それは芋太郎とて同じで、だからこその問い掛けだったのだろう。

赤城も沈黙を続ける中、芋太郎も考えながら赤城もしくは自分の気持ちの整理が終わるまでの間黙っていた。

結局、店に着くまでの間はお互いに口を開く事は無かった。

 

店の食事も食器が擦れる音だけが響いていた。

「道中の事忘れてくれ。今日に限って辛気臭い話は無しだ、乾杯」

そう言いグラスを掲げる。

赤城も同感なのか、グラスを掲げ芋太郎のグラスとぶつける。

芋太郎のグラスには微発砲の透明な液体、赤城のグラスは紫色の液体が注がれており、乾杯によってお互いのグラスに注がれている液体は揺れた。

「食事が終わったら寄りたい所があるが良いか?」

「いいですよ」

唐突な頼み事だったが、ここに連れて来たのは芋太郎なので、赤城はその要望に従うことにしたのだった。

 

食事を終え、店を出ると、芋太郎は車に乗り込み、車を出す。

そして、戻りの途中にある店に立ち寄ったのだった。

「ここは…?」

「直ぐ戻る、中で待っててくれ」

そう告げると、車に鍵を掛け、店へ入っていった。

 

「いらっしゃいませ。提督さんですか?」

「あぁ、ぬいぐるみをこれだけ、今日中にここへ届けてくれ。ラッピングも頼む」

芋太郎は店員に紙を見せ、ぬいぐるみの必要数と場所・時間を伝える。

「ありがとうございます、良い夜を」

芋太郎は自らの財布から料金を払う。

「釣りは要らない、良い夜を」

そう言い店を後にし、車へ戻っていった。

 

「早かったですね」

「まぁ、直ぐ終わらせて来たからな」

そう言いながら車に乗り込むと、帰路へついた。

 

 

鎮守府に着き、車を広場へ止めるとエンジンを切る。

「赤城、着いたぞ」

返事は無い、ただ静かな寝息が聞こえるだけであった。

「起きろ、着いたぞ」

再度呼びかけるが、赤城が起きる事は無く、芋太郎は溜め息をつきながら眠る赤城を背負うと彼女の部屋目指し歩いていった。

 

赤城を部屋へ送り届け、ベッドへ眠らせた芋太郎は、宿舎の様子を見回る。

消灯無しと宣言していたが、言葉に従って簡単に生活習慣を変えれる訳も無く、大体の部屋は就寝のため消灯されていたのだった。

それを、確認した芋太郎は再度広場へ向かう。

そこには、1台の軽トラックがエンジン音をあげながら待機していたのだった。

 

「どうもどうも、ご注文の品を届けに参りました」

そう声を掛けるのは、帰りに寄った店の店主だった。

 

「ご苦労」

芋太郎もそんな店主に労いの言葉を掛けると、不意に店主から何かが手渡された。

それを確認した芋太郎は、店主の意図を理解し苦笑いを見せる。

「冗談だろう?」

「クリスマスなのにサンタクロース姿でプレゼントを配らないアンタの方が可笑しいですぜ」

「いや…そうは言ってもだな…」

提督がサンタ服を着ると言うおかしな状況になりかねない状態に、芋太郎はやや否定気味の声を漏らすが、店主はさらに詰め寄る。

「こういうのは勢いが大事ですぜ、なんなら特性ブーツも付けましょうか?消音機能付きの優れものですぜ」

「ぬぅ…」

さすがに、そこまで詰め寄られると弱いのか渋々とブーツを受け取り、トラックの荷台に乗る袋を担ぐと、宿舎へ戻っていったのだった。

 

着替えを済ませた芋太郎は、袋を担ぎながら例のブーツで静かに宿舎を回り。

彼女達の部屋という部屋のドアの前へラッピッグされたぬいぐるみを置いていく、その時間はただ袋の擦れる音と、ぬいぐるみを置いた際の音だけが響いていたのだった。

 

 

全てのプレゼントを配り終えた芋太郎は、元の服装に着替えると、一人提督室で時間を過ごしていた。

彼の手には、陸奥から貰ったリボルバーがあり、それをじっくり眺めていた。

「こんなもの、使わない日々が続けば良いのだが…」

そう呟きながら向きを変え、弾倉を見たりしていたが、同じく陸奥から貰った専用ホルスターへ収めると、机の引き出しへ押し込んだ。

 

リボルバーを仕舞うと、芋太郎は机の上を見渡す。

万年筆にインク瓶、書類の束、そして普段見慣れない物体。

それは、昼頃に長門が開きから取り出した自作の酒であった。

「ここ最近飲んでなかったが、今日くらい飲むか…」

瓶の栓を抜くと、口に含み飲み込む。

何度か酒を飲むと酔がまわって来たのか、瓶を机に置くと、帽子を深く被り座りながら眠りに入ったのだった。

 

その日の朝、鎮守府に歓喜の声が響いたのは言うまでもない。

だが、プレゼントを置いていった人物は特定されておらず、戦艦もしくは空母によるサプライズとして騒ぎは収まったのだった。




読んでくださり、ありがとうございます。

報告していた話が書き終わったので、次は何を書こうか悩んでいます。
よって、今まで以上に更新が遅くなる可能性もありますが、気長に待って頂ければ幸いです。
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