今回の話は書いてて、なんかしっくり来ない事が多かったです。
言うなれば、詰め込みたい事が多過ぎて、纏まらない感じですね。
タイトルも無難に花見にしようと思いましたけど、やっぱり無難じゃ無いタイトルにしたい。
という訳で、こんなタイトルになりました。
しかし、後半は花見要素が皆無なんです…
春が訪れ、一部の場所では満開の桜が咲いているという情報がテレビで流れ始めるこの頃。
「提督、花見にいくわよ!」
朝食をとる芋太郎へ花見の要求をするのは雷。
いつものパターンで、やはり艦娘からの提案であった。
そんな要求を受け、手にしていた箸を丁寧に置くと、芋太郎は雷を正面に捉え話しかけた。
「花見に行くとして、どこに見に行くんだ?」
普段行く場所が、提督室・宿舎・食堂・広場、時たま海岸というパターンしか持っていなかった芋太郎は、外に出かけるかと思っていたのか場所を聞いた。
「去年も行ったじゃない?あそこよあそこ!」
あそこという抽象的な言葉を用いて、桜の場所を伝えようとする雷だったが、芋太郎は提督になってから今現在までの間で桜を見た事があったかどうか振り返る。
やはり花見に行った覚えはなく、申し訳なさそうな顔で口を開いた。
「昨年の花見、俺は参加していないと思うぞ?当時はまだ仕事自体慣れていなかったからな、だから場所も分からん」
「広場に出た所を歩いて10分程で、見事な桜が咲いていますよ」
そんな芋太郎に場所を教えるのは、隣で食事をする赤城であった。
「そうか、ここにも桜が植えられているのか。それなら、団子でも作ってもらうか」
残り僅かだった食事を平らげると、芋太郎は食堂の責任者にこの事を伝えるため、プレートを手に厨房へ入っていった。
食堂と厨房を仕切るのれんをくぐり抜けた芋太郎は、確認する事無く声をだす。
「すまないが、本日花見を行う事になったので、団子と軽食を頼みたいのだが」
厨房へ入っての第一声がこれであったが、厨房の中はガランとしていた。
芋太郎は辺りを見回し、確認のため再度口を開く。
「誰かいないのか」
そこで、ガシャンという物音が立つ、そこへ芋太郎は駆け寄る。
駆け寄った先には、寸胴鍋を床に置きながら頭を擦る女性の姿があった。
そんな女性に、芋太郎は声を掛ける。
「大丈夫か?」
「いたた…あれ?提督さん」
駆け寄った芋太郎の服装から瞬時に判断したのか、話を返す女性。
「そうだが、貴方は?」
芋太郎は未だ頭を擦る女性の名前を聞きながら手を伸ばす。
手を伸ばされた女性は、その手を掴み立ち上がると礼をし、自己紹介を始めた。
「はじめまして、補給艦 間宮です。よろしくお願いしますね」
芋太郎は腕組みをしながら、間宮と言う単語に聞き覚えがあったのか、考える素振りを見せる。
「間宮?たしか駆逐艦達がこの前行ってきた店名が間宮だったはずだが…」
それを聞いた間宮は微笑みかけ、口を開く。
「そこ、私が経営している甘味処なんですよ。機会があればお越し下さい」
「そうだったのか、今度時間があれば皆と一緒に来るとしよう。ところで花見の件についてだが、頼めるか?」
確認の為、芋太郎は再度花見と言う単語をつける。
しかし、最初の一声で聞こえていたのか、芋太郎が花見と言った時点で間宮は頷き、話し終えると同時に口を開く。
「了解しました。なんなら夜桜にしてみてはいかがですか?」
「夜桜か、それが良いかもしれないな。準備の時間も出来るうえ間宮の負担も減る」
花見の時間が決まると、芋太郎は厨房を後にしようと、元来た方向へ戻っていこうとした。
「時間がある以上は腕によりをかけて作りますね」
芋太郎の背後で間宮は意気込みを述べたのだった。
それを聞いた芋太郎は、足を止め振り向き笑顔を見せた。
「楽しみにしている。夜になったら皆で花見をしよう」
「はい!」
その言葉の意味を理解した間宮は嬉しそうに返事をしたのだった。
間宮の返事を聞いた芋太郎は他の皆に花見の時間を伝えるため、厨房を出ると、まずは発案者である雷へ時間を伝える事にし、先ほどの席へ戻ったのだが雷の姿はそこには無かった。
なので、芋太郎は未だ箸を運ぶ赤城へ雷がどこへ行ったのか問い掛ける。
「雷がどこに行ったか知らないか?」
そう聞かれた赤城は口に残る、食事を飲み込むと口を開いた。
「雷さんなら先ほどここを出て行ったばっかりです。たしか、皆に知らせてくると言っていましたので、第六駆逐艦隊の部屋に向かったと思います」
正確な情報ではなかったが、可能性としては、あり得なくはない情報だったので、芋太郎はとりあえず第六駆逐艦隊の部屋へ向かう事にした。
そして、芋太郎も食堂を出るため出口に向かおうと向きを変えたのだが、すぐに振り向き口を開いた。
「言うべきか、言わないべきか迷ったのだが…言う事にした。赤城、米粒ついてるぞ」
それを聞いた赤城は慌ててハンカチを取り出すと、米粒を掴み取った。
「恥ずかしい所を見せてしまいましたね…」
ハンカチについた米粒を確認した赤城は、顔を赤らめながらそう呟く。
「何、気にする程でもないだろう?よくある事だ」
芋太郎は普段から見慣れていたのか、そのような言葉を述べたが、当の本人は自覚が無かったようで、更に顔を赤らめるのだった。
赤城が恥ずかしさに悶える中、芋太郎は花見の開催時間を伝える。
「花見の件だが、夜桜を予定している余裕があれば他の皆にも伝えてくれると助かる」
それだけ言うと、芋太郎は雷を探すため食堂を後にしたのだった。
芋太郎が最初に向かった所は、赤城が推測で言った、第六駆逐艦隊の部屋だった。
芋太郎は扉をノックしてから、ドアノブを捻る。
ドアノブを捻った段階では、部屋から声は聞こえなかったのか芋太郎は2つの推測を導きだした。
それは、誰も部屋にいない、もしくは部屋に入るのを待ち構えているという2択だった。
芋太郎は後者である事を祈り、扉を開いた。
「やぁ、司令官どうしたんだい?」
そこにいたのは部屋を片付ける響だった。
部屋にいたのが響だった事に、芋太郎は内心ガッカリとしたが、伝えておいて損は無いという事で花見の件と雷の居場所について話し始めることにした。
「響、花見の件だが…」
花見と言う単語に反応したのか、芋太郎が話の続きを持ち出す前に答えたのだった。
「花見を行うのは知ってる、雷がさっき言いに来たからね」
芋太郎はそれについて、問い詰める。
「雷は花見をいつ頃やると言っていた?」
響は落ち着いた様子で淡々と答える。
「時間までは言ってなかったよ…ただ、戻ってくるかもしれないから、決まった事を教えてくれるかい?」
「もちろんだ。雷は今日花見を行うという事だけ伝え回っているみたいだが、間宮の負担も考えたうえで、夜桜にすることにした。参加するかしないかは自由だ」
それを聞いた響は頷き、了承したのだった。
「分かった、雷が戻って来たら伝えるよ」
「ありがとう。ついでに聞きたいんだが、雷がどこに言ったか分かるか?」
「甘味処にいるんじゃないかな?提督にどうしても食べてもらいたいものがあるから注文してくるって」
それを聞いた芋太郎は間宮に向かう事にしたのだが、場所のパターンにより、甘味処の場所が分からないため、響を頼る事にしたのだった。
「響、間宮までの道案内頼めるか?」
それを聞いた響は少し不機嫌な顔をした。
「部屋の片付けが終わってからで良いかい?」
遠回しに案内する代わりに部屋の片付けを手伝って欲しいと言ったのだ。
「そうか、なら手伝っても良いか?」
響の思惑に気づく事無く、芋太郎は手伝いを申し出たのだった。
そうして、2人きりでの部屋掃除が始まる。
とは言っても、古い書類の整理から、ゴミ箱の入れ替えと芋太郎が任されたのは単純な作業だけだった。
すこし時間が掛かったが掃除は終わり、約束通り響は間宮への道案内を始めたのだった。
響は芋太郎の前を歩いていく。
部屋を出て、食堂の横を通りそのまま広場へ出た。
「甘味処は外にあったのか」
広場に出たからか、芋太郎は少しばかり驚いた様子で声を漏らす。
しかし、響はそれに反応する事無く、間宮目指して歩き続ける。
そんな響を、芋太郎は素直に後を着いていくのだった。
しばらく響の後を歩き続けた芋太郎は、風景の変化に辺りを見回す。
散りゆく花弁が、潮風によってこちらへ流れて来たからだ。
「響、甘味処は桜の近くにあるのか?」
「そうだよ、春の間宮は人気スポットだね。風景も良いし、なにより美味しいから」
「そうか、そんなに良い花見場所なんだな。案内してくれた礼として、何か奢ろう」
「そんな、悪いよ…」
芋太郎の申し出を断る響、断られた芋太郎は納得がいかないのか、更にこう提案する。
「ならば、2人で早めの花見というのはどうだ?」
それを聞いた響は歩きながら黙り込んだ。
「それなら悪くない…かもしれない…」
ポツリと呟いた一言を潮風が打ち消す事は無く、しっかりと芋太郎は響の言葉を耳にした。
芋太郎は響が自分の提案を受け入れてくれた事で、満足したのか、これ以降口を開く事はなかった。
「着いたよ、司令官」
芋太郎は風によって流れてくる花びらを見ていた為か、目の前に建つ建築物に気付かないでいたが、響の一言によって花びらを見るのを止め、その建物を捉えた。
「ほう、ここが…」
芋太郎は眼前に広がる風景に、驚きの声をあげ立ち止まる。
桜の大木が近すぎず、離れすぎず立ち並び、元から花見をする目的で植えられたからか、桜に囲まれる箇所は木が立っておらずちょうど良い広さになっており、風によって散らされた花びらは見事にその箇所に花弁の敷物を作っていた。
また、甘味処もその景色を活かす為に、赤い敷物を被せた長椅子を設置していたのだ。
「司令官、早くいくよ」
声を掛けられ、芋太郎は声のした方を見る。
そこには、甘味処の入り口付近に立つ、響がいたのだった。
「あぁ、直ぐいく」
もう少しだけ、桜を楽しんでいたかった芋太郎だが、本来の目的を思い出すと、響のいる方へ歩いていった。
芋太郎がこっちへ来るのを確認した響は、先に甘味処の暖簾をくぐり入っていった、それに続いて芋太郎も入ってく。
「いらっしゃいませ。あら提督さん、もう来てくれたのですか?」
「まぁ、用があってな。雷が来なかったか?」
芋太郎は間宮に訪ねたが
「司令官、呼んだ?」
背後から雷の声が聞こえ芋太郎は振り向いた。
雷は暖簾をくぐった、すぐ右側の席でアイスクリームを食べていたのだ。
「雷、花見の件だが準備の為、夜行う事にした」
「毎年、夜桜じゃない?」
キョトンとした様子で、雷は呆れていた。
「ということは、俺の早とちりだったのか…」
芋太郎は自分の頭を掻きながら呟いた。
そんな芋太郎は、裾が引っ張られるのを感じ、そっちへ目線を移す。
そこには裾を掴む響がおり、響は芋太郎の顔をみると呟いた。
「司令官、約束した」
響は芋太郎の服を引っ張りながら、先ほどの件について持ち出して来たのだ。
「あぁ、忘れてない。好きなのを選ぶと言い」
「桜餅がいい」
響は道中で決めていたのか、桜餅と即決した。
芋太郎は始めて来たのでメニューを見たが、どうしても間宮の負担が気になってしまい響と同じメニューを頼む事にした。
「間宮さん、桜餅3つ頼めるか?」
「はい、大丈夫です」
幸いにも、先に作ってあったのか桜餅はすぐに出て来たのだった。
響は桜餅の乗る皿を持ち上げ、店を出て行く。
「司令官、どうせなら外で食べよう」
「あぁ、ちょっと待ってくれ。雷お前も来るか?」
芋太郎は後ろでアイスクリームを食べる、雷に声を掛ける。
雷はスプーンを片手に、芋太郎を見上げる。
「いいの?司令官」
「その為に3つ頼んだんだ、仲間はずれは良くないからな」
その言葉を聞いた雷は笑みを浮かべお礼を言った。
「ありがとう、司令官!」
3人で小さな花見を行った芋太郎達は、夜の準備とその為の呼びかけをするため、本館へ戻っていった。
そして、準備も終わりいよいよ始まる鎮守府での花見。
第六駆逐艦隊や赤城のおかげで、遠征組を除いた全員が参加でき、会場は賑わっていた。
その賑わいの中でも戦艦型を主として、ある計画が遂行されようとしていた。
「提督の過去を、酔わせて聞き出すぞ!」
そう叫ぶのは長門であった。
「他人の過去なんて聞き出すもんじゃないわよ」
そんな長門の計画をやんわりとした表現で止めさせようとするのは、ビスマルクだった。
そんなやり取りが行われる中、赤城を連れる芋太郎が花見の会場へ到着した。
「提督、今日は飲もう」
そう言いながら、一本の瓶を掲げる。
「その瓶は…」
「前にくれると言っていたからな、拝借してきた」
「まぁ、言ったな…だからといって無断拝借はどうかと思うがな」
「まぁ、今日くらい細かい所は気にするな」
長門は芋太郎の追求から逃れる為の口実を言ったのだった。
それに対して、芋太郎はこれ以上の追求はしなかった。
深海棲艦が現れてから、久しぶりの花見であったし、何より楽しい雰囲気を壊すような発言は控えたかったからだろう。
「そうだな、今日に限らずとも楽しい事に口を挟むつもりはない。長門、酌をしてくれるか?」
「あぁ、かまわない」
そう言い、瓶の栓を抜き長門は付近に置いてある紙コップへ並々と注ぐ。
「注ぎすぎに注意しろよ、その酒は強いからな」
そう言った時にはもう遅く、紙コップの8割方まで注ぎ終えた所だった。
「言うのが遅いぞ、提督」
長門は注ぎすぎたと思われるコップを片手に、芋太郎を非難する。
そんな長門に、芋太郎は溜め息をつき、近づく。
「久しぶりになるが、その量は飲めなくはない。せっかく注いでくれたんだ、貰おう」
芋太郎は、長門が持つコップを受け取ると、1口含み飲み込む。
「あぁ…この味だ」
酒の感想を言うと、会場付近に設置してあった長椅子へ腰掛ける。
そこへ、芋太郎が長門とやり取りをしている間に取って来たのか、赤城が芋太郎へ包みを手渡した。
「間宮さんが作ってくれた、お弁当です」
「すまない」
芋太郎は赤城の持って来てくれた弁当を受け取ると早速、酒と一緒に食べ始めた。
つまみにあたる食材を食べ、酒を飲む。
芋太郎は喉をアルコールが通り、焼けるような感覚を覚えると、空を見上げる。
「良い夜だな…雲一つ無くて、月がよく見える…」
それを聞いた赤城はクスクスと笑う。
「芋太郎さん、それでは花見ではなくて月見になってしまいますよ」
「桜に、満月良いじゃないか」
芋太郎はそう言うと、コップを傾ける。
それと同時に、このような事が続けば良いと思い耽る。
しかし、艦娘達には知られていないが過去に決めた方針を実行していた事によって、上層部から何度も作戦遂行を催促する文章が送られ続けているのが現状で。
上層部の作戦を無視し、資材蓄積に全力を注ぎ、現状は防衛戦のみに展開していたのだった。
これでは、上層部から反発の声が上がるのは組織として当然であり、それの対処を芋太郎は考えていたのだ。
思い耽る芋太郎に、突然の衝撃が加わる。
芋太郎は酒がこぼれない様に上手く身体をそらした。
「提督、ビスマルクはお前の事が好きらしいぞ」
そう言いながら、芋太郎の背中へ長門がもたれ掛かかっていた。
予想していなかった突然の衝撃に、芋太郎は思わず口を開く。
「重い…」
「なんだとー!」
重いという言葉に、軽い怒りを覚えたのか、長門はすぐに立ち上がり芋太郎のそばを離れる。
呂律こそ回っているものの、長門の顔は赤く、そして足下はおぼつかない様子だった。
そんな長門の片手には瓶が握られており、中身は開けたときより半分になっていた。
また、先ほどの発言が聞こえていたのか、長門はビスマルクに絡まれていた。
「何勝手な事言ってるのよアンタは!?」
「紛れも無い事実だろう!」
よく見る2人のやり取りを目にした芋太郎は、苦笑いを浮かべるしかなかった。
そんな二人を他所に、雷が何かを紙皿にのせて持って来た。
「司令官、響から話はきいたでしょ。これが、私が司令官に食べてもらいたいものよ!」
その皿には、少しばかり透ける黒色の物体が乗っていた。
「甘味処、間宮名産の間宮羊羹よ!」
雷は切り分けられた羊羹の内、爪楊枝の刺さったものを芋太郎へ突き出した。
芋太郎はそれを受け取ると、口へ運ぶ。
「旨いな…」
その一言を聞いた雷は、紙皿を芋太郎の座る長椅子へ置くと、いつもの3人がいる所へ戻っていった。
残りの羊羹を食べ終えた芋太郎は、酔が回る中、間宮へ羊羹供給の交渉をしに立ち上がったのだが。
「今回はたまたま予約されていた鎮守府から譲って頂けただけですので、供給の確立となると難しいと思います」
予約の多い嗜好品だという理由で、供給するのは常時供給するのは不可能だと断られたのだった。
楽しい時間は直ぐ過ぎていくとはよく言うもので、花見も終わりを迎えていた。
駆逐艦達は花見ででたゴミを片付けており、天龍・龍田の軽巡コンビはその駆逐艦の指導にあたっている。
また、照明などの機材は長門を除く大型艦と潜水艦が片付けたのだった。
芋太郎は皆が片付ける中、コップに残る酒をゆっくりと飲んでいた。
その横には、赤城が座っており、少し離れた所には酔いつぶれた長門が眠っているのだった。
「長門さん、どうしましょう…」
赤城は眠る長門を心配そうな声で、どう対処するか芋太郎に聞く。
艦娘たちは片付けに徹しているため、必然的に長門の対処は提督がやる事になったのだろう。
「俺が部屋まで運ぶしか無いだろう?だが、まだ飲み終わってないからな…待ってくれ」
そう言い終えると、芋太郎はコップに残る酒を飲み干し立ち上がる。
そして、眠る長門へ近づくと背負い歩き始めた。
「戻るぞ、赤城」
「はい」
赤城は芋太郎に呼ばれ、後ろへ続く。
そして、前から気になっていた事を聞くのだった。
「芋太郎さんはどうして、ここに来たのですか?」
そう聞かれた芋太郎は、一瞬足を止めたが、悟られない様にするため、すり足で無理矢理足を動かすと、その問について答えた。
「言わなくてはダメか…?」
その答えは、言いたくないとう心境がハッキリと伝わり、それを感じた赤城は、両手を振りながら話を終わらせようとした。
しかし、芋太郎は例の約束を思い出し、口を開いた。
「どこから話せば良いか…まぁ、流れだな。周りに流されてここに来たと言えばいいか?」
「流されて…ですか?」
赤城は芋太郎の会話へ相槌を打つ。
「深海棲艦が現れてから、海岸が危険になったから両親を内陸へ送る為に金が必要だった」
「芋太郎さんは親孝行者ですね。ところでご両親は今でも?」
話から湧き出る疑問を赤城は問い掛ける。
芋太郎は俯き足を止めた。
「…死んだ」
それを聞いた赤城は、申し訳なくなり謝罪の言葉を述べる。
「なに、過去の事だ気にするな」
そう言い、歩くのを再開したのだった。
しばらく歩いた所で、芋太郎は口を開いた。
「さっきの話だが、アレは作り話だ」
そう言うと、夜だというのに大笑いを始めた。
噓だと言われた赤城は安堵の表情で、その噓の感想を言った。
「びっくりしましたよ。ですが、良かったです。芋太郎さんが暗い過去を持っていなくて」
本当は赤城も分かっていた、先の話が噓ではない事を。
しかし、本人を傷つけない為にわざと問い詰めるような事はせず、感想を言ったのだった。
芋太郎が噓だと打ち明けた時には宿舎の入り口の付近まで来ており。
宿舎へ入った二人は別れる事にしたのだった。
赤城は自室へ、芋太郎は長門を部屋へ送る為に別々の道を進む。
芋太郎は長門の部屋に着くと、すぐ扉を開き、長門をベッドへ運んだ。
そして部屋を出ようとした時に、後ろから声を掛けられる。
「赤城と話していた、両親の話…噓なんだろう?」
その声を聞いて、芋太郎は振り向く。
「噓とは、作り話だった事か…?」
背後から急に話しかけて来た長門に芋太郎は答える。
そんな芋太郎を長門は酔いが続く中、鋭い目線で捉え話を続ける。
「噓だと言った事が噓だ。違うか…」
「噓だと言う確証が無いだろ?」
両親が死んだ事は事実であったが、何とか隠し通そうと芋太郎は証拠の提示と言う要求をする。
もちろん、芋太郎の過去を知らない長門に、当時の風景をどうこう言う事は出来なかったが、それでも諦めずに問い詰めた。
「脈だ、背負ってもらっていた時、あの話をしていた間だけ脈に変化がみられた。それではダメか?」
それを聞いた芋太郎はフーッと長い溜め息を付き、頭を掻き話し始めた。
「お前の言う通りだ、長門…俺の両親は奴等に殺されたさ…だがな、もう諦めもついてる、過去を変える事なんて誰にも出来ない。だからこそ、こんな御時世でも楽しい事を優先しようと生きて来た…」
長門は黙ってそれを聞いていた。
「だがな、ここに来た理由はくだらないが、今ここに留まり提督をやる理由は全人類を守る為だとかそんな大層な理由じゃない。お前達といるこの時間を守るためだ。お前達と出会って、一緒に過ごしてきて、俺の心は救われたんだ」
芋太郎は喋り始めたときより大きな声で語る。
そして、前任が何故自分を提督として受け入れたかを理解したのだった。
前任がなぜ上層部の弱みをあれだけ収拾していたのか、前任が思い描いていた提督像とはなんなのかを、芋太郎は自分の思いと照らし合わせることによって気付く事が出来た。
そして、芋太郎の意思を理解した長門は、座っていたベッドから立ち上がり、近づく。
「提督の意思は重々に理解した。それだけの意思があれば私たちを導く事も可能だろう。だからこそ、今度からは提督の裁量に任せる、旗艦としての役目は果たすが出撃前の決定は提督自らが決めろ」
「今までのようなイベントは少なくなるし、演習が増えるぞ…」
「なに、覚悟はできてる」
「その為には皆に説明しなければならないな」
提督としての自覚を持った芋太郎は長門と握手を交わし、長門の部屋を後にした。
後日、演習回数増加の件は、特に否定されるような事無く皆に受け入れてもらえたのだった。
読んで頂き、ありがとうございます。
花見したけれど、上層部からの圧力が掛かっているという事が書きたかっただけですね。
また、今まではまだ艦娘達のカバー無しでは作戦立案出来なかった芋太郎ですが、今回以降は1人でやれと言われたようなもんです、そのための最後付近にある「演習が増えるぞ…」という台詞ですね。
次回を書くにあたってアンケートがあります。
1:このまま数回の演習風景を書いて欲しい
2:もう少しだけ、楽しいと思われるイベントを書いて欲しい
この2択です、現状ノーコメントだった場合は1へ移行します。
内容は同じですが、アンケートは活動報告の方へおねがいします。
*票が同数だった場合はサイコロの奇数・偶数で決めます。