そこまで厳しい制度がないパワフル高校では、新一年生も雑用などはあるが基本的に練習に参加できる。
そんななか、ノック練習の中に大地たちの姿もあった。
ファーストを守っている大地は返球を受けつつ、自分の番が来ると少なくとも体で止められるように低く構える。
「おらっ、行くぞ小波っ」キンッ
「はいっ」パシッ、ビシュッ
大地の送球はサードを守っていた選手のグローブに収まる
矢部の尽力があって大地は一応塁間ならしっかりと投げられるまで上達していた。
その後も次々と内野手のノックが終わり、外野手のノックに移りセンターの番をまわしていく。
「バッチこーいでやんすっ!!」
「よしっ、行くぞ矢部っ!!」カキーンッ
一際元気な矢部の声に気合いが入った監督の打球は鋭く右中間に飛んで行く。
「セカンッ、ショート追いかけろっ!!三つだっ!!」
キャッチャーが右中間を抜けると判断し、セカンドとショートに中継の指示を飛ばす。
「うりゃーっでやんすっ!!」パシッ、ズザザザーッ
「「「「なぁっ!?」」」」
しかしそれを飛びこみながら捕った矢部のファインプレーに選手たちはもちろん、打った監督も目を見開いて驚いた。
「矢部君っ、二つ」
大地がそれを二塁にカバーに入り、ボールを呼ぶ。
「分かったでやんすっ」ビシュッ
「ナイスボールっ!!」
矢部の返球を受けた大地はボールをキャッチャーに投げ返すと、先ほどまで茫然としていたキャッチャーは慌ててそのボールを捕球する。
選手たちが茫然としている中で監督はあの矢部の足の速さ、ボールに飛び付く度胸、そして何より一歩目の早さに感嘆の声を上げていた。
「(矢部か・・・・。これはいい外野手になりそうだな・・・)」
そんな監督に、キャッチャーでキャプテンの三年生が話しかける。
「監督、そう言えば明日予定している二年の紅白戦のメンバーが二人、野手が足りません」
「おう、そういや二年には外野手とファーストが一人ずつだけだったか?」
「ええ、それで明日予定してる二年の紅白戦に・・・」
「そうだな・・・。俺もあいつ等の実力は知っておきたいしな、いいぞ」
「分かりました」
監督とキャプテンはニヤリと笑いながら今も声を出している選手達を眺める。
「あいつ等の三年後が楽しみだ」
「ですね」
遠い、だが直ぐにやってくるだろう未来を眺めるように二人は眼を細めた。
次の日、キャプテンが選手たちの前で二年の紅白戦のオーダーを発表していく。
紅組の発表が終わり、白組の発表に移る。
「じゃあ、次は白組な。一番セカンド旭川」
「はいっ」
「二番センター矢部」
「はいっでやんす!?」
いきなりの指名に矢部の鉄壁の眼鏡がずり落ちかける。
「二年の外野が少なくてな。今回はお前を使ってみようと監督が思ったんだ。期待してるぞ?」
「任せるでやんす。オイラのスーパ「次行くぞ」やんす・・・・・」
その後もコールが続いていく。
「八番ファースト小波」
「は、はいっ」
「九番ピッチャー田中」
「はいっ」
「以上だ。成績が良かった奴はベンチ入りもあり得るから頑張れよ」
「「「「「はいっ!!」」」」」
青く晴れた空に声が響き渡った。