フォーリング!   作:春夏 秋

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投稿が遅い上に字数調節ができない。
どうも私です。前回の回想シーンからの始まりです。


第2話

――神は存在する。そして、空よりさらに高い向こう側から人間を見ているだけの傍観主義者だ。

 

だが俺はこれを訂正しなければならない。

 

数年前、正確には7年前に起こった事件に巻き込まれた俺を救ってくれたのは傍観主義者の神様だったから。

そして俺を高校に入学するまで育ててくれたのも神様だったから。

 

―――神は空よりさらに高い向こう側から人間を見ている。そして俺はその神に育てられた。

すなわち―

 

俺は今、地上から遥か高い、正確には上空5000mに浮かぶ浮遊島で暮らしている。

 

――数時間前――

 

3月の最終日曜日。春休み真っ只中の朝、浮遊島の1/5ほどの面積を埋める家の一室で俺は少し困っていた。

まだ朝の7:30といったところだろうか。本当ならもう少し寝ていたいのだが目が覚めてしまった。

なぜなら――

 

「おはよ!!廻くん!!」

 

朝早くから俺の寝ているベットの横から倒れ込むようにのしかかり攻撃を仕掛けてきている女性がいるからだ。

こんな朝早くからボディプレスモーニングコールとはいい性格してる。

眠気が完全に覚めてないため少し気だるい口調で一日の始まりの第一声を口にする。

 

「・・・母さんおりてくれ。重い。」

 

彼女の名前は雫。俺を救ってくれた命の恩人であり母さんであり、そして――

 

神様だ。

 

――――――――――――――――――――――

 

「「いただきまーす。」」

 

神様のボディプレスを受けた俺はとりあえず着替えをすませ、朝食が並べられている8人用長テーブルに母さんと対面になるように腰をかけ、母さんと一緒に手を合わせた。

長テーブルにはあと6人分のスペースがガランと空いている。この時間帯はほかのみんなはいないらしい。休日の早朝だ。仕方あるまい。

メニューはとても一般的だ。白いご飯にジャガイモと玉ねぎが入った味噌汁。おかずとしてさんまの生姜煮があり、隣には栄養バランスを考えて野菜炒めが添えてある。朝食としては充分な量がテーブルの上に並べられている。

 

「ほかのみんなは?」

 

この浮遊島には俺と母さんを含めて、天使から被害を受けた6人が暮らしている。こんなに大きいテーブルを俺と母さんだけで占領するのはとても寂しい風景に見えるだろう。

 

「若葉ちゃんは30分くらい前に外に散歩しに行ってるわよ。毎朝の習慣だもの。ほかの3人は寝てるわ。」

「若葉はえらいなぁ。」

 

休日の朝早くから外に出ているのか。関心だ。明後日くらいから同行してみようか。おそらく三日坊主になると思うが・・・。

 

「ごちそうさま。」

 

母さんと会話をしてはや20分。会話をして食べていたからこんなもんだろう。

自分が使っていた食べ終えた食器を持ち台所で洗い流す。もちろん、水で洗い流すだけではなく石鹸も使って洗い流した。

ベランダの窓から少し春に色づいた風が入ってきて髪の毛をくすぐる。とても心地のいい風だ。

 

「廻くん、今日のダイブは何時くらいにする予定かしら?」

 

窓から入ってくる風に髪を揺らしながら母さんが複雑そうな表情で言った。

ここは上空5000m。神様である雫にとってここで暮らすのは都合がいいかもしれないが人間である俺にとっては日常生活へ戻る壁でしかならない。

そんなことを心配してくれたのか母さんは“中学生からは地上で暮らすこと”と家の決まり事を作った。

そして今日は高校1年生になる記念に1度天界へ戻ってきた俺が再び地上へ降りる日だった。

なお当の本人は完全に忘れていた模様。

 

「あ~そうだなぁ・・・」

「午前中にするなら葉月ちゃん起こしてくるわよ?」

 

・・・そうだな。せっかく日曜日の朝早くに起きたんだ。そうさせてもらおう。

 

「じゃあ9:30くらいにしようかな。」

 

正直地上へ降りるのは嫌なので苦笑を浮かべて答えた。

ちょっと時間的に早すぎるかもしれないが、地上でもいろいろと準備が必要だ。このくらいがベストだろう。

 

「そっか。わかったわ。」

 

いつも通りの口調で、だがちょっとだけ表情を暗くして母さんは答えた。

 

「そんな顔しないでよ母さん。だいたい、地上で暮らすよう決めたのはお母さんだろ?」

「だってぇ〜・・・。家から急に3人も居なくなっちゃうんだよぉ?・・・ごちそうさまぁ。」

 

そう言ってしょぼくれながら席を立ち、リビングを出ていった。多分葉月を起こしに行ったのだろう。

机に残された綺麗に完食されている食器を回収し、台所で洗う。

料理はまったくできない俺だが、それ以外の家事ごとなら普通にこなせる。

料理を作ってくれる母さんのためにも、食器洗いくらいは俺がやらなければ。

 

「・・・ただいま〜。」

 

玄関の方から扉の閉まる音と声が聞こえた。若葉が散歩から帰ってきた。

 

「おかえり〜。朝早くからご苦労さん。」

 

ニヒィと顔をゆるめ笑顔で迎えてやる。

早起きは三文の徳とも言うし、俺の笑顔で幸せになりやがれ。

 

「・・・あぁ、ただいま。廻兄様今日は随分と早いんだな。」

「母さんにボディプレスで起こされたよ・・・」

 

少し驚いたように、だが少し嬉しそうな表情を浮かべ若葉は小さく笑った。

 

「・・・ボディプレスが嫌だったなら私が起こしてやってもよかったのだぞ?」

「―――ッ!ホントか!?」

 

若葉がモーニングコールをしてくれるだと!?なんて新鮮なんだ!

いや、案外母さんに対抗してボディプレスじゃなくて関節技とかで起こされそうな気がする。

顎に手を当てて考え込む。すると母さんが頭だけをひょこっと出し、

 

「若葉ちゃんったら今日のダイブすごい楽しみにしてるのよ〜」

「――なッ!母様それ以上は―――」

「今日の朝なんて“廻兄様はまだ寝ているのか?起こさなくても良いのか?”ってずっとソワソワしてたんだから〜」

「―――う、うぐぅ・・・ 」

 

キャーカワイイー、と言いながらニヤニヤと顔を歪めて若葉をいじる母。

その発言を暴露されている本人は顔を赤らめて歯を食いしばり、母さんを睨んでいる。

やばいかわいい。

そんな若葉に俺は近づき若葉の肩をポンポンと叩き、

 

「そうかそうか、そんなに楽しみにしてたのか。朝起きるのが遅くてごめんな若葉ー」

「―――ッ!?ぐ、うぐぁぁぁ・・あぁ・・・!」

 

なお辱めを受けているからといって同情はしない。きっと今の俺の顔には母さんと同じくらいニヤニヤした表情が浮かんでいるであろう。

恥ずかしさのあまりに顔を赤らめ小さなうめき声をあげて頭を抱え込む若葉ちゃん。

あぁ、心が癒されていくぅ〜。

母さんと視線を合わせてビシッと親指を突き出してグッジョブサインを送り合う。

 

「そいえば葉月は?」

 

しゃがみこんでうめいている若葉をよそに母さんに尋ねる。母さんが起こしに行ったはずなのだが。

 

「起こしてきたわ。ダイブの時間には余裕で間に合うわよ。」

「ん。りょーかい。」

 

ダイブまであと1時間ちょっとはあるな。荷支度でもして時間をつぶすとするか。

 

「ほら若葉。いつまでもそうしてないで支度とかしちゃおうぜ。」

「・・・ぐ、わかった。」

 

頭を抱えている若葉に声を掛け部屋へ戻るように促す。少し不機嫌っぽいが素直に言うことを聞いてくれた。

えらいえらい。

 

「んっふっふ〜。ちょっと待ちたまえマイファミリー達。」

 

部屋に戻ろうとした俺と若葉にニコニコと母さんが声を掛けてきた。

 

「嫌な予感しかしないんだけど・・・。」

「や〜ね〜、そんなんじゃないわよぉ〜。」

 

ちょっと待ってて、と言ってニコニコと部屋を出ていきすぐに戻ってきた。

その背中には何かを隠している。若干隠しきれてない。

 

「で、どしたの?」

 

なんとなく言おうとしていることを察した俺は母さんに疑問を問いかけてやる。

 

「ふっふっふ。」

 

まさに笑顔満開といった顔でその疑問に答えようとする母さん。背中に隠しているものをバッと俺らに突きつけて―――

 

「ジャーン!!ついに届きました!!廻くんと若葉ちゃん達の制服でーす!」

 

背中に隠していた制服をまるで自分がこれから着るんだと言わんばかりに見せつけてくる。

母さん今何歳だよ・・・。まぁ、親ってそんなもんか。

そんなことより―――

 

「若葉達の制服って小学生の?そんなのあるのか?」

「あるんです!廻くんが通う高校の近くにある小学校がななななんと!制服着用を規則としている学校だったのです!!」

 

だんだんとテンションが上がっていくのが見てわかる。

小学校で制服を着用か。珍しいところもあったもんだ。

 

「・・・うぬぅ、制服か・・・。」

 

制服を目を懲らしめて眺めている若葉だが、少し嬉しそうな表情を浮かべている。

黒いブレザーといったとても一般的なものでこれといった意外性も何もない。

 

「若葉ちゃんの制服はリボンかネクタイか自由に選べられま〜す。」

 

母さんが俺の顔を見て補足をつける。その手には淡い紅色のリボンとネクタイが持たれていた。

黒のブレザーならネクタイの方が似合いそうだな。

 

「・・・リボンとネクタイ、どっちが廻兄様の好みだ?」

「え?俺?自分で決めなくていいのか?」

「・・・あくまでも参考までにだ。」

 

少し視線をそらして呟かれた。

そうだなぁ。若葉の制服姿を想像して考えてみる。うん、やっぱり―――

 

「ネクタイの方がいいな。付けるのが若葉ならなおお似合いだ。」

「・・・そ、そうか。」

「おう。」

 

若葉はクールな印象がお似合いだろう。だがそこに見せる可愛さがひとたまりもない。

若葉 is my angel。

 

「じゃあ、そんなわけで今日のダイブは制服姿で行ってもらいま〜す!」

 

ニコッと得意の笑顔。まるでこっちがそのまま言うことを聞くのを確信してるかのような笑みだ。

まぁ聞くんですけどね。

 

「制服姿と言っても母さんはこれ以来あんま見れなくなるからな。実際、俺と若葉も高校と小学校じゃ登校も下校の時間も違うから互いの制服姿はまじまじとは見れないしな。わかったよ。」

「・・・仕方のない母様だ。」

「ありがとーございますマイファミリー達!」

 

3人でクスクスと笑ってリビングをあとにする。

さて、下界へ降りる準備でもしますか。

 

――――――――――――――――――――――

 

現在9:25

俺は家の裏口にある大きな扉の前にいた。隣には母さんと制服に淡い紅色のネクタイをつけた若葉が並んでいる。

もちろん俺も制服(学ラン)に着替えてある。

そんなことより―――

 

「「・・・遅い。」」

「あ、あはは・・・。」

 

既にダイブ実行まで5分前になっているというのに葉月の姿が一向に見えない。

母さんなんてフォローができずに苦笑いを浮かべているじゃないか。

 

「ちゃんと起こしたのか?」

「起こしたわよ〜。・・・二度寝の可能性はあるけど。」

 

あぁ、こりゃ確定だわ。

 

「・・・はぁ。」

 

若葉が小さく溜息を吐いてスタスタと歩いていく。まぁそうなるわなぁ。

 

「もうちょっと待ってあげようぜ。実際、まだ5分時間はある。」

「・・・だが―――」

「確かに時間前に集合するのは大切だが、遅刻はしてないからな。待ってやろうぜ。な?」

「・・・わかった。」

 

若葉は何かとしら時間に厳しいタイプだ。集合時間に遅れるなんてもってのほかだ。

あと集合時間まで1分。ほんとに来るのか心配になってきたぞ。

 

「仕方ない。先に地上へ行こうか。」

「・・・うむ。」

「はぁ・・・。結局間に合わなかったわね。後でちゃんとそっちに行くように伝えとくわ。荷物は私がちゃんと家に転送しとくわね。」

「あぁ。頼むよ。」

 

ガチャリと大きい扉が開く。その扉の先に道はなく、快晴の青空が続いている。

そして、いざ飛び降りようとした時――――

 

「待ってぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

後ろから幼い叫び声が廊下に響いた。

息を切らしてこっちに走ってくる小さな人影がだんだんとこっちに近づいてくる。

やっと来たか・・・。

 

「はぁ、はぁ、只今葉月・・・到着しました・・・」

「「遅い」」

「い、いやぁ〜あはは。・・・ごめん。」

 

ジャスト9:30。やっと葉月が到着した。慌てて出てきたため、髪の毛はところどころはねている。

母さんの言われたとおり制服姿をしているが、若葉とは違って淡い紅色のリボンを首につけている。

外から入ってくる風で髪を揺らし、額の汗をぬぐい、ふぅと一呼吸。ニパッと笑って準備万端と告げてくる。

 

「んじゃ、時間にもなりましたし行きますか。」

「・・・了解。」

「はーい!」

「あ、待ってみんな。」

 

次は母さんにストップを呼びかけられる。グダグダだなぁ。

 

「はいこれ。」

 

そう言って手を差し出す。その掌には3つの指輪が握られている。あぁ、忘れていたわ。

 

「あいよ。確かに受け取ったよ。」

「・・・指輪? 」

「お母さんこれ何?」

「んふふ。説明は地上で廻くんから教えてもらいなさい。」

「え〜」

 

アハハと笑いウインクをしてきた。まったく、しょうがない母さんだ。

 

「じゃあ、愛しのマイファミリー達。地上でも元気でやるのよ?」

「「「了解」」」

 

みんなで笑顔を交わす。母さんとはしばらく顔が見れなくなるのは少し寂しいな。

でも―――

 

「よし、行きますか!」

 

扉に背を向け、3人で母さんに手を振りながら重力に身を任せる。

 

「行ってらっしゃ〜い!」

「「「行ってきまーす!」」」

 

こうして俺らは上空5000mから地上へ向かって落ちていった。




投稿ペース開きすぎましたすみません。
かわりに2次元に転移できた私が土下座します。
気長に待っていただけると幸いです。
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