「さてぇ!そろそろ地上へ到着しますよお2人さん!」
「待ってましたー!」
手をパチパチと叩いてテンションを上げていく俺たち2人。実際に拍手の音は風によってほぼ聞こえない。
そんな俺達をよそに、若葉だけが不安気な表情をしていた。
「・・・なぁ廻兄様。」
「ん?どした?」
「・・・これって着地はどうするんだ?」
ピシッと葉月が固まった。口をパクパクと開閉してまるで餌を欲しがる金魚みたいだ。生憎餌は切らしている。
不安になるのも仕方ないか。
「安心しな2人とも。母さんが何も考えなしに上空5000mから俺達を放り出すと思うか?」
「「思う。」」
即答かよ。でも反論できないのが事実だから困る。
2人の意見が的中しているため苦笑を浮かべながら返事をする。
「今回は大丈夫だ。」
「・・・今回は?」
若葉の疑問により俺が初めてダイブした時のことが脳裏に過る。俺よく生きてるなぁ・・・。
「母さんが持たせた指輪は持ってるか?」
「これのこと?」
「・・・お守り的な意味じゃないのか?」
2人は右手の人差し指にハメられている銀色に輝く指輪を見つめる。
指輪にはアメシストかと思われる紫水晶がはめ込まれており、太陽の光を反射してキラキラと輝いている。
「実はこの指輪は母さんのお手製でな。もちろん神の力とやらが宿ってるんだ。」
「「へぇ〜」」
「反応薄いな。ま、今回は兄ちゃんに任せな。指輪についてはあとで詳しく教えるよ。」
「わかった!」
「・・・了解した。」
いい返事だ、と言い己の人差し指にハメている指輪に視線を移す。
残りの2人もこれから一体何をするのか何が起こるのかと興味津々に覗き込んでいる。
この感覚、悪くない。
地上衝突まであと500m程。この落下速度で地面に激突したら一瞬にして着地地点に真っ赤な花を咲かせるであろう。
今までは1人でダイブしていたから適当にやっていたが今回は違う。
腹に力を込め、絵面的にもかっこよくするため右腕を前に突き出す。そして、
――――叫ぶ。
瞬間、指輪にハメられた紫水晶が光を放ち、俺たちの視界を奪った。
★
鍵穴に鍵を差し込み右回りに捻る。ガチャりと音がなり、我が家の玄関を開ける。
扉をあけた途端、中からなんとも言えぬ優しい香りが胸をいっぱいにする。
我が家最高。この一言に限る。
俺たちは今、発展途上真っ最中のとある町にある一軒家、すなわち俺たちが地上で暮らすための家の玄関に立っている。
町はどちらかというと田舎寄りで、目の前には大きな田んぼや畑が広がっている。
我が家の香りと大地の香りが心に安らぎをくれる。実にいい場所だ。
さらに、徒歩10分圏内にはコンビニやデパート、駅だってある。俺がここ3年間地上で一人暮らしをしていて困ったことは全くと言ってなかった。
さすが神様だ。自然にも囲まれ、ちょっと歩けば生活用品を買う場所にもいける。良い場所に家を建ててくれたものだ。
着地地点は家の裏にある町一番の山の頂上だった。下山すれば即到着。完璧だ。
だが、不満そうにこちらを見つめている約2名はいまだに口を開いてくれない。
下山をし始めてからずっとこの調子ではこちらの気分も滅入るのだが...。
「ほら2人とも。ここが俺らが地上で暮らす家だ。」
手を広げて家を自慢するように声をあげ、2人の反応を待つように顔を覗き込む。
すると銀髪の少女が呟いた。
「・・・虫はもうたくさんだ。」
ムスッと不機嫌顔をし、少し潤んだ瞳で訴えられた。かわいい。実は若葉は大の虫嫌いなのだ。
山へ着地したまではいいが、そのあとが大変だった。虫を見る度に硬直するわ抱きついてくるわで一向に山から降りれなかった。
最終的には俺が途中で背負っていく形になってしまった。
「―――若葉ばっかりズルイ!そして疲れた!」
「あ〜はいはいわかったわかった。」
ピョン!!とその場で跳ね体全体を使って訴える金髪少女葉月。彼女は俺が若葉を背負いはじめてからずっとこの調子だ。
こちらだって、小学5年生を担いで下山をしたのだ。若葉の可愛さで内心ほっこりしているがしていたが身体的には疲れている。
まだ朝の9:50くらいだし、昼寝くらいはしたいものだ。
「とりあえず上がって休んでてくれ。俺はそのあいだに昼飯とか買ってくるから。」
「お金は?」
「家の中に母さんが転送してくれた荷物があるはずだ。その中に財布がある。」
「ホント?!」
頷いて肯定する。神様特有の何でもあり超能力の一つ。よく地上ではよく空間移動《テレポート》と言われるものがあり、俺たちの荷物はいつもそれにお世話になっている。
ただし、なんでも跳ばすことができると思ったら実は違う。母さんが使える空間移動《テレポート》は跳ばせるものに制限があり、本人と荷物くらいしか跳ばせないという完全にお一人様専用の仕様となっている。
もしこの制限がなかったら上空5000mからのスカイダイビングもしなくて済むのだが、贅沢は言えない。荷物だけでも感謝しなければ。
「なら買いに行く必要はないよ!」
「どういうことだ?」
俺の疑問に答えるより先に家に走って上がり込んでいく。数秒たつと葉月が用意したであろうキャリーバッグを抱えて戻ってきた。何故かドヤ顔をしている。
はて?何をしたいのやら?
「廻にぃが料理できないのは知ってるからね、持ってきちゃった!」
ガチャッとキャリーバッグの中身を見せびらかす葉月。
「どう?」
葉月がこちらの反応に期待するかのように覗き込んでくるが、その中身を見た俺は、顔を真っ青にして膝を地面につけた。
ルビとかいろいろ考えてますが何がなんだかw
案外ルビをふらない方がしっくりくるとかもありました。