コネクティブ、SAO!   作:楢橋 光希

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1話 夢と少年

 

 

 

 全くもって状況は理解できない。あの少年、剣でモンスターを切った。そんなのはファンタジーの世界での出来事だ。今まで未来でロボットに乗って戦争してたって言うのも現実離れした出来事だったけど、違うベクトルで離れていて訳が分からない。

 

「とりあえず、ここは何処なんだ?」

 

 俺がそう訪ねると黒ずくめの少年は驚いた顔をして、頭を掻きながら答えてくれた。

 

「どこって…24層のフィールドダンジョンだけど…。あんたどうやってきたんだ?」

 

 フィールドダンジョンと来た。なんだか目眩がしそうだ。これはもしかして、もしかしなくても元の時代の頃やっていたRPGの世界なのか。…と言うことはつまり…。

 

「夢か。」

 

 特異点に入り込んでどうやらリアルな夢を見ているらしい。激しい戦闘の後だ。無理もない。それなら雛もいなくて当然だ。なんせ、俺の夢の中なんだから。きっと目が覚めればすべて忘れて元の時代に戻っているはずだ。そう信じたかった。

 

「あんた…大丈夫か?」

 

 しかし目の前の少年は夢にしては大分俺に失礼な感じで本気で心配をしてくる。チンッと音を立てて大きな剣を背中にしまうと、右手を縦に動かし何かのパネルを表示させた。

 

「なんだそれ?」

 

 いよいよ本当にゲームなんだなとしげしげ見つめると、少年はさらに驚いた顔をする。

 

「なんだ…って知らないのか?」

「なにが?」

「あんたも右手を縦に振ってみろよ。」

 

 言われるがままに少年の真似をすると、手のひらより少し大きい画面が俺の目の前にも現れる。

 

「なんだこれ! すっげー!!!」

 

 そうか、ゲームの中の主人公たちはこうやって装備を調えていたのか。使い方はよく分からないが、自分にも出来たことに感動し、まじまじと見つめた。少年はそんな俺に大きくため息をつき、口を開く。

 

「あんた、記憶がないのか?」

「記憶? いや記憶喪失ではないけど。」

 

 俺の時代でのこと、未来での出来事、しっかり覚えている。夢の中なのに変なことを聞くやつだ。それに夢の中にしてはやけにリアルな反応。

 

「…名前は?」

「名前? 渡瀬青葉。」

「ばばばばばばばばっか! リアルネームじゃなくてプレイヤーネームだよ! ここでは現実のことは御法度なんだから。」

 

 当然のようにそう答えた俺に、突然慌て出した少年。リアルネームにプレイヤーネーム。現実は御法度。いよいよゲームの中であることは間違いなさそうだ。

 

「プレイヤーネームって、そんなの設定してないし。」

 

 夢なんだから。設定した場面は見てない。ちゃんと教えてくれればいいのに不親切な夢。

 

「その、ステータスウィンドウに書いてあるよ。」

 

 言われるがままに開いていた画面を見ると、そこには―aoba―の表示が見えた。

 

「aoba、アオバだな。折角夢なんだからもうちょっとカッコいい名前つけてくれれば良かったのに。」

「夢? 夢だと思っているのか?」

「へ?」

 

 少年の反応は神妙だ。

 

「えっと…。」

「俺はキリト。なんであんたが夢だと思ってるのかは分からないけど、これは夢なんかじゃない。」

「なに、言ってるんだ?」

 

 キリトと名乗った少年は続けた、

 

「ここはアインクラッド。茅場晶彦の作ったSAO(ソードアート・オンライン)と言うゲームの世界だ。」

「ゲームの世界…。」

「クリアしなきゃ現実には帰れない、おまけにここでHPが0になったら死ぬ。俺たちにとっては今はここが()()だ。」

 

 何を言っているのかさっぱりだ。夢だと思って納得し、片付けようとしたがどうもそう言うわけにはいかないらしい。しかもHPが0になったら死ぬってなんだ。ゲームならコンティニューしてセーブポイントからやり直しだろ? ただ目の前にいる少年、キリトは夢の登場人物にしては見たこともないし、やたらリアルだし。…夢って言うのは確か深層心理の表れだとか記憶の整理だとか言う説があるから見たことも、聞いたことも考えたことすらないことがこう並び立てるのはおかしい。

 

「よし、分かった。取り敢えずさ、キリト。悪いんだけどこの世界のこと、俺に教えてくれないか?」

 

 未来に行ったときはマユカちゃんが一生懸命俺に講義をしてくれたな…と思い出す。もちろん、みんな本当に過去から来ただなんて思ってなかったみたいだけど。それでも受け入れてくれたあの人たち。そこに別れを告げてでも元の時代に戻ろうとしたのにこんなわけの分からないところで死んでしまうのは嫌だ。

 ややあって頷いてくれたキリトにひとまず感謝した。

 

 

 

 

「アインクラッドは1層から100層まであって、上に行けば行くほど面積は狭くなる円錐形の構造をしている。」

 

 フィールドダンジョンはモンスターが出て危ないからと、町の方へ案内してもらう。キリトと確認したところ、俺のレベルは1、所持金は1,000コル、装備品はスモールソードにバックラー。初期ステータスそのもの…のようだった。大体のモンスターレベルは階層とリンクするようで、ここは24層といったからそれ前後の敵が出るらしい。そんな敵にと普通に考えたらレベル1の俺がやりあえるわけはない。さっき生き残ったのもキリトが助けてくれたのも幸運だった、と言うことか。

 しかし…

 

「100層か…途方もないな。」

 

 聞いたところ2022年の11月に開始し、今はそこから5ヶ月程経ったらしい。5ヵ月で24層。単純計算で1年半はかかるということか。ここも俺のいた時代よりも未来だ。あと数年もすればこんな世界が人為的に作られるのか…すごいな。

 

「1層にいた頃は俺もそう思ったさ。だけどクリアできない訳じゃない。」

 

 1層の頃から最前線で戦ってきたと言うキリト。言葉には重みがあった。レベルは40を越えていると言う。死ねないと言う条件から安全マージンとして階層プラス10程は余裕を見ると言うのが通説らしいが、それならば前線プレイヤーの平均は35程度だろう。と言うことはかなりのハイレベルプレイヤーであることがこの世界についてなんにも知らない俺にだって推測できた。

 

「しかし分かんないのがこの《連結》ってやつだよな。」

 

 全くもって初心者な俺は基本的な手解きをキリトに受けた。その中で見つけたのが《連結》の文字だった。スキルの一部として存在したそれだったが、キリトも聞いたことのないものらしい。大体ここに来たばかりの俺がそんな特別なものを持っているのはおかしい。スキルスロットが2つしかないため、1つは《片手剣》で取り敢えず埋めた。2つ目はこのわけの分からない《連結》がセットされている。だからってどうってことはないのだが、正体を知るためには使ってみるしかないと言うキリトの判断だ。

 

「アオバ、それが何なのかは分からないけど他のやつには言うなよ。」

「なんで?」

「ネットゲーマーは嫉妬深いからな。エクストラスキル使いは妬まれる。」

「エクストラ???」

 

 使ってみろと言うわりには隠せと言うのも訳が分からないが取り敢えず頷いておく。この世界でのキリトは先生だ。あいつとはよく衝突したがキリトはどうやら普通にイイヤツだ。…ディオも素直じゃないだけでイイヤツだったけどな。

 

 しかしなんだって元の世界に戻れずに俺は未来の、しかもゲームの中に迷い混んでしまったんだろう。未来に行く時はヒナが『ディオが待ってる…。』と言った。未来から来たヒナが俺を救い、今度は俺が未来で仲間たちを助けることになった。

 ここにも俺を必要とする何かがあるのだろうか。話は半分ぐらいしか分からないし、完全に夢じゃないと信じたわけでもなかったけれど、キリトを信用できそうなことは確かだったため、取り敢えず導かれるままに彼の後を追った。

 

 

 

 

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