十分間の大車輪   作:七瀬 遥

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さて、大車輪は動き始めました。




 

 

 

 

 

 気持ちの良い日差しが照り、まだ冬の名残がある風が僅かに吹いている三月終盤のある日に私たちは紫坂学園高校を卒業しました。

 

 私たち紫坂学園三年は学校からそんなに遠く離れていない、自転車で二十分くらいの『勝浦PARK(パーク)』に集まりました。ちなみに、三年というのは私たちの学校は一(ひと)クラスしかないからです。

 

 その遊園地は本当に小さなものでそんなにお客さんがたくさん来るようなところではありませんでした。あ、でもそこのジェットコースターが怖いってこの辺では有名なんです。もちろん、富士急やUSJなんかには到底及ばないですけど、途中に連続して上下にくねっている所があるんです。そこでは無重力を体感できるんです。それに直角に落ちる所もあるんです。どうですか?面白そうだと思いましたよね!!・・・・・・。

 

 

 

 さて、遊園地の説明はこれくらいにしてと。私の学校は元々そんなに生徒がそんなに多くなく三年も32人と小規模なものでした。といっても遊園地でみんなが同時に、全員で遊べるアトラクションはないので、普段からのグループで遊んで、二次会のカラオケをみんなで遊ぼうってことになりました。私は別にそれほど遊びたーい♪っていう気分でもなかったので勝原っていう男子と一緒にいました。え?恋愛関係?ち、違います!!その勝原は小さい頃に足に重傷を負ったそうで、今は下半身不随なので車椅子に乗ってるんです。私はその車椅子を押していたんです。

 

 

 

「悪いな、小夜。車椅子を押してもらって」

 申し送れましたが、私は安藤 小夜と言います。

「ううん、いいの。別に乗りたいやつもなかったし」

 それを聞いても尚、勝原はまだ申し訳そうな顔をしていました。

「だがーー」

「いいの、言ったでしょ。乗りたいやつがなかったの。だって、それぞれもう千回は乗ってるから!!」

「え!?」

 あ、いけない。言うはずじゃなかったのに。

「コホン。そういえば、勝原はここのジェットコースターは初めてだったわよね。どうだった?」

 私は上手に(できてるかわからないけど)話を逸らしました。

勝原は今まであまり遊園地に行ったことがなかったそうです。やはり、足のことがありますのでそういうテーマパークでは制限があります。勝原はそういう所にあまり行きたがりませんでした。前にふと漏らしていたのですが、勝原はそういう制限がある場所には行きたくなかったようです。自分はもちろん足の状態を受け入れている。でも、心の奥底にはそれを認めたくないという思いがあったのではないかと思います。

 

 

「あぁ、すっげぇ面白かったわ」

 どうやら勝原はとても気に入ってくれたようで嬉しく思いました。

「小夜の悲鳴が」

「え!?」

「小夜の声さ、普段そこそこ低いけど、それがジェットコースターに乗ってるときの声(ひめい)はもっと低くなってるんだから、痛っ!!」

 思わず手が出てしまいました。

「痛ってぇー。まあでも泣き顔は可愛かったぞ」

「うそ、本当!?」

「あぁ、北川 恵子みたいだったぞ」

「やだ、うれしい!!」

「……んな訳あるか、痛っ!!」

 また思わず手が出てしまいました。

 

 そんな他愛もない話をしていると私たちの前に一組の男女がやってきました。私が見た所ではどちらも私と同じくらい。

「……まだ閉園まで時間ありますし、観覧車など如何ですか?」

「結構です」

「そうですか。あ、じゃあ冷たい飲み物なんてどうですか?実はとーてもおいしいジュースを売っている自動販売機、知ってるんですよ」

「いらない」

「え……じゃあ」

「今日は楽しかったわ。さよなら、永遠に」

 女の子は男の子の頬を思いっきり引っ叩いて駆けていってしまいました。映画のようなシーンでした。

 

 男の子はその場で支える力がなくなってしまったかのように崩れ落ちました。するといつのまに来ていたのか、その男の子の前に松宮がいました。松宮は私と同じ学年だった子でした。「ちょっとそこの君さ、美味しい自動販売機のこと、俺少し興味あるな。どこにあるの?ね!ね!」聞いてわかりますよね。そう、松宮はお節介キャラでした。これは良く言ってです。悪く言えばウザいキャラでした。私も松宮がみんなを笑わせよう、楽しませようと思ってるのは何となくわかってはいました。でも、ドジな男の子で大抵が裏目に出てしまうのです。

「うわーーーーーー!!」

 男の子は松宮に気圧されて走り去ってしまいました。原因の松宮はその後ろ姿を追って同じく走り去ってしまいました。

 

「また始まったよ」

 そう言ったのは勝原。

「松宮(あいつ)が関わると碌なことがない」

「まあまあ」

 私は思わず興奮してしまっている勝原を宥める。

「もう修学旅行の時のようなことは本気で御免だわ」

「あはは、あれは本当に大変だったものね」

 修学旅行で一日中、自由行動になった時のことでした。

 

 

 

 

 




▼ 次話予告 ▼

松宮が起こした災難をお伝えします。

お楽しみに!!


※作中の言葉の解説

・富士急→ドドンパ (コースター)

スタートからわずか1.8秒で最高速度172km/hに達するという爆発的な加速力を実現しているジェットコースター。ギネス記録認定。


・USJ→ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド

地上43メートルの高さから落下。 ファーストドロップは地上43メートルから59度の落下角度で一気に落下する。


※解説終わり


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