遊☆戯☆王ARC-V くず鉄決闘者のそれとない決闘記録 作:紅ハッサム
今回様々な遊戯王二次小説に憧れ、初投稿させていただきました。
亀更新な上、拙い描写が多いかもしれませんが、どうかよろしくお願いします。
舞網市のとある川辺にて、一人の少年が蹲っていた。
赤い髪に数本の緑色の髪と不思議な髪色を持つ少年は愛用である星が描かれたゴーグルを深く被り、その中に涙を溜め込んでいた。
少年の名は榊遊矢。今世界を賑わせているアクションデュエル、そのパイオニアの榊遊勝の息子であり、たった一人の父親を失った小さな少年である。
「うぅっ……どうざん……どこ行っちゃんだよ……ヒックっ」
父は大事な試合の前に失踪し、尊敬する父を馬鹿にされ、そして非難の矢は此方まで向かい、堪らず家から飛び出して来てしまった彼は、良く父と行った川原へと向かったのだ。
父との繋がりを求めて来たこの場所は、結果として失った者との思い出と、その喪失感とが重なり、幼き少年の重りとなって顔を上げられなくなってしまったのだ。
父も母も友も、今はこの場にはいない。急に飛び出して来た反動が、こうして泣く事で寂しさとして出て来てしまったのだ。
(オレ、このまま一人ぼっちになっちゃうのかな……)
そんな被害妄想を浮かべていた彼の頬に、突如としてヒヤリとした感触が走った。
「うひゃ!?」
「のわっ!す、すまん!」
遊矢が飛び上がるのと同時に、冷たい感触、缶ジュースを頬に当てた男が後ずさった。
遊矢が当てられた方を見ると、頭に白いタオルを巻き、紺色に白の線が入った甚兵衛に草履という珍しい格好をした青年がそこに立っていた。
「おじさん……誰?」
遊矢の至極まともな質問に、青年はなんと答えたものかと一瞬詰まるが、すぐに名を名乗る。
「俺は大原鉄心。親しい奴からくず鉄って呼ばれてるからくず鉄のおっちゃんでいいぞ」
「くず鉄……おじさん?」
「あぁそうだ。良けりゃ飲むか?其処で買ってきた奴だ」
「いいの……?」
「もちろん。その変わりと言っちゃなんだが、お前さんが泣いてた理由、話しちゃくれねぇか?」
そう言って缶ジュースを差し出すくず鉄に、遊矢はくず鉄はコクリと頷いて受け取る。母から知らない人から物を受け取っては駄目と言われていたが、何故かこの人のことは信用出来た。
「そんで、何があったんだ?ーーってあぁ、飲んでからか、落ちついてからでいいぞ?」
ドカリと座り込むくず鉄に、遊矢は一口飲んでからポツリポツリと自身の身の上を語り出した。父親の事、試合の事、謂れの無い誹謗中傷、そして父を失った悲しさ。一つ言う度に涙をゴーグルに溜め込んで、ジュースを飲む。それを繰り返した。
「父さんは、本当は凄い人なんだ。なのに周りの人達は勝手に悪口ばかり言って。悔しくて、悲しくて……」
遊矢の話を、くず鉄相槌を打ちながらも黙って聞いていた。時々背中を摩り、よしよし、と頭を撫でる。
「そっかそっか。お前さん、頑張ってたんだな……」
優しい顔をするくず鉄に、彼は何処となく安心感を覚え、少しばかり落ち着きを取り戻す。
「ねぇ、くず鉄おじさん。どうやったら父さんは帰って来るのかな?どうやったら、悪口を言う奴らを見返せるかな?」
「そればっかりは、俺もわかんねぇなぁ……」
「そっか……」
「だけどな」とくず鉄は続ける。
「ただ立ち止まってたら、前には進めない。それだけはわかるぜ?」
それはお前も分かってるんだろ?
その問いに、遊矢は静かに頷く。
「でも、怖いんだ……。進まなくちゃ行けないのは分かるのに、そう思うと、足が震えて……」
「少年、それは別にこわがってるんじぁねぇぜ。ただ分からないだけなんだ」
「分からない?」
「あぁそうだ。本当にこれでいいのか。分かってはいても、進み方が分からない。ただそれだけなんだ」
「じゃあオレ、どうしたらーー」
問おうとした遊矢を遮る様に、くず鉄は立ち上がって言葉を紡いだ。
「デュエルさ」
「デュエル?」
「あぁ。デュエルはいつだって、俺たちを導いてくれる。辛い時でも、悩んでる時でも、俺たちの行きたい道を示してくれる」
ニカッと笑う彼の腕には、かなり古い、初期型のデュエルディスクがついていた。
「だからさ、やろうぜ!」
000
(うーむ、ノリと勢いだったのだが、まさか乗って来るとはなぁ)
俺はぎこちないながらも平常心を保とうとして石段からゆっくり降りて来ている少年、榊遊矢君の事を見ながらそう思った。
(まさかあのセリフでデュエルに応じるとは……本当に遊戯王の世界に来たんやなー)
今更だが、俺はこの世界の住人じゃない。ただただ遊戯王がカードゲームの一つとして広まっている世界、ようするにコンマイがある世界から来た訳だ。しかも唐突に。
いやー、びびったのなんのって。だってゼアルの最終回が終わって、興奮覚めぬまま兄貴とデュエルディスク着けてコスプレデュエルしようとした瞬間に意識が途切れて、気が付いたら知らない場所にいるんだもんなー。ビックリしたよホント。
そんでもって河原付近で販売してた屋台型のラーメン屋のおっちゃんの小型テレビ見たらデュエルディスクとタイラント・ドラゴンとかが映ってて目を丸くしたね。しかもモンスターに乗ってるし。
無愛想っぽいおっちゃんにこれはなんだと聞いたら「戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が、モンスターと共に、地を蹴り、宙を舞い、フィールド内を駆け巡る。見よ、これぞデュエルの最強進化系!アクショーン・デュエル!!」とポーズを決めて顔を真っ赤にして黙りこくってしまった。うん、おっちゃんがあれ好きなのはわかったよ。
そして使い物にならないおっちゃんの他に誰かいないかと周りを見て見ると、蹲ってる少年榊遊矢君、以降遊矢君としよう、の人生相談を受けつつ情報収集をして今に至ると言うわけだ。因みにジュースはおっちゃんがら優しい目をしつつタダでくれた。やったぜ。でも俺の分も欲しかったなー。
「さて、準備はいいかな遊矢君」
「う、うん。どんと来い!」
うーむ、無理矢理気張ってるように見えるなー。まあそれが可愛らしくもあるのだが。
「よし、先攻はーー」
「あ、ちょいと待った」
待ったを掛けたことにより、遊矢君は出鼻を挫かれた表情をする。
「そのまま始めるのも味気ないし、なんか掛け声かけてから始めようよ」
「え?それってどんなーー」
ふふっ、聞いて驚け見て驚け。おっちゃん直伝の掛け声をみせてやる!
それに、彼の気持ちに区切りをつけるにも、いいセリフのはずだ。
俺は思いっきり息を吸って言い放った。
「戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が!」
遊矢君の表情が、目に見えて変わった。驚きのような喜びのような。
「モンスターと共に、地を蹴り、宙を舞い!」
「フィールド内を駆け巡る!」
俺のセリフに、彼も重ねるように紡いできた。
「「見よ、これぞデュエルの最強進化系!アクショーン…」」
「「デュエル!!」」
遊矢4000vsくず鉄4000
一応言うが、地も蹴らないし、宙も舞わないとか無粋な突っ込みはなしな。