遊☆戯☆王ARC-V くず鉄決闘者のそれとない決闘記録   作:紅ハッサム

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第一話 出会いのデュエル後編

「オ、オレのターン、ドロー…」

 

遊矢くんにターンが渡ったのはいいが、なんたか力弱い感じになってしまった。まああんな事があればそうなるわな。しかもエースも倒されフィールドは焼け野原。やる気もダダ下がりになるというものだ。

 

(むぅ、励ます為のデュエルがまさかこのようなことになるとは…)

 

これからどうしたものかと悩んでいると、悩みの元凶たるスクドラさんがスクリと二足歩行で立ち上がった。

 

(え、君立てんの?)

 

それ以上にソリッドヴィジョンってこんなに自由なのかと驚愕していると、遊矢君を見据えながら片方の腕?で胸?と思わしき部分をトントンと叩く。

 

(胸を借りるつもりで思いっきり来い、とか言いたいのかな?)

 

いや、でもあの惨劇みた後じゃ流石に難しいんじゃ…って遊矢君深呼吸して拳を握り締めてる。案外大丈夫、なのか?

 

「オレのターン、ドローっ…!」

 

力強くドローした遊矢君は、ドローしたカードと手札を確認し、「よし」と小さく呟く。

 

「オレは、EMウィップ・バイパーを召喚!」

 

遊矢君のフィールドに、蝶ネクタイと小さめのジェントル帽子を被った紫色のコブラが現れた。

 

どうでもいいことだが、彼のモンスターは一々可愛いのが多いな。萌えっぽいのじゃなく、こう、気弱だが頑張ってます的な男の子の感じがする。…ウチのスクラップにも、その手のカードでないかなぁ。

 

ATK1700

 

「EMウィップ・バイパーの効果発動!モンスター一体の攻撃力と守備力をターンの終わりまで入れ替える!」

 

コブラが吐いた毒液がスクドラに当たるとクラクラとふらつき、ゆっくりと膝をついてしまった。

 

…無機物系かと思ってたんだけど、普通に毒は効くのか?それとも毒液が動作不良でも起こしたのかな?

 

ATK2800→2000

 

「さらに手札から永続マジック、強者の苦痛を発動!相手モンスターの攻撃力は、レベル×100ポイントダウンする!」

 

!?上手いな…今のスクドラの攻撃力は2000。更に強者の苦痛で800ポイントダウンするから、1200まで落ち込む、これならウィップ・バイパーでも倒せる。

 

「バトル!EMウィップ・バイパーで、スクラップ・ドラゴンに攻撃!」

 

「むぬっ!?」

 

くず鉄LP1700→1200

 

「よっし、これでーー」

 

「なんの!くず鉄はしぶとさに定評があんのよ!スクドラの効果発動!このカードが破壊され墓地に送られた時、シンクロ以外のスクラップモンスターを特殊召喚する!俺はスクラップ・キマイラを特殊召喚だ!」

 

最早瓦礫の山と化した元スクドラの中からキマイラが這い出てきた。

 

「うっ、でも、強者の苦痛があるから、キマイラじゃヴァイパーは超えられない。オレはカードを一枚伏せてターンエンド」

 

遊矢

手札0

モンスター1体

魔法・罠2枚

LP4000

 

「ふっ…」

 

俺は相棒であるスクドラを倒されたにも関わらず、ふと笑みが溢れてしまった。

 

「え、な、なに…?」

 

「あぁいやすまん。この決闘が楽しくてな」

 

「デュエルが…?」

 

あぁ、と頷き返し俺はさらに言葉を紡ぐ。

 

「俺が前いた所じゃ、こんな風にモンスターが動く技術なんてなくてな。だから、君のモンスターが現れ、自由に動き回る姿には感動させられたよ」

 

そして、長年使い続けてきた相棒達が俺の前で勇敢に現れては戦っていく姿に、涙すらしそうだった。

 

俺はふと、隣に立つスクラップ・キマイラの頭を優しく撫でた。

 

鉄の硬い感触が手に伝わるが、不思議と無機物には感じられない。そこに確固たる生命があるのだと、俺には実感できた。

 

「なんていうかな。そうやって自由に動き回るモンスター達と決闘するのを楽しく感じられるし、君の様な強い決闘者と戦えると、不思議と心も熱くなる」

 

「オレが…強い…?」

 

「あぁ、俺がライフポイント半分切ってるのに、遊矢君は1ポイントも削られていない。それが何よりの証拠さ」

 

そう俺が言うと、遊矢君は違うよと首を振った。

 

「それは、モンスター達が、オレの仲間達が、守ってくれたから…」

 

そう言って、遊矢君は墓地に送られたモンスター達を申し訳なさそうに見つめた。

 

「それはモンスター、いや、君の仲間達が、君の事を信じてくれていたからだろう?その仲間達を信頼して動けるってのは、それだけ君と、そのデッキとの絆が強いって事さ」

 

そう言う奴を、強い決闘者って言うんだぜ。そう続けて、デッキに手を伸ばす。

 

「怯え、動けなくなりそうだった君。それでも勇気を震わせ、立ち向かってきた。その時心の中にあった物は、一体なんなんだろうな」

 

「あっ…」

 

「そして俺は、そんな強い君に、君達に勝ちたい。いや、勝って見せる!俺のっ、タァーーン!!」

 

よっし、良いカードが来た。

 

「俺はフィールド魔法、スクラップ・ファクトリーを発動!」

 

俺の背後から一陣の風が吹き、周りの風景を工場の内部へと変化させていく。

 

「ここは、一体」

 

「フィールド魔法スクラップ・ファクトリーは、スクラップモンスター達が生まれた、言わばホームタウンとも言える場所だ。このカードがある限り、フィールド上のスクラップモンスター達の攻守は200ポイントずつアップする。更にフィールド上のスクラップモンスターがカード効果で破壊され墓地へ送られた時、デッキからスクラップモンスター1体を特殊召喚できる」

 

「!?」

 

「どうやら何が起こるか分かったみたいだな。俺は手札から2枚目のスクラップ・キマイラを召喚!効果でスクラップ・ビーストを特殊召喚する」

 

「チューナーモンスターが、またっ!」

 

「いくぞ、レベル4のスクラップ・キマイラに、レベル4のスクラップ・ビーストをチューニング!」

 

スクラップ・ビーストが緑色の輪となって空中に浮かび、その輪へ向けて、スクラップ・キマイラが飛び出していく。

 

「倒れし魂よ、再び集いて、鋼鉄の大地に顕現せよ!シンクロ召喚!出でよ、スクラップ・ドラゴン!!」

 

スクラップ・キマイラの身体が光り輝き、再び鋼鉄のドラゴンがフィールドにゆっくりと舞い降りた。

 

「スクラップ・ドラゴンのモンスター効果発動!スクラップ・キマイラと強者の苦痛を選択して破壊する!オイルショット、インパクトキマイラ!」

 

スクラップ・キマイラが光の粒子へと姿を変え、その粒子をスクラップ・ドラゴンが吸い取る。

 

口内に溜められたエネルギーは、やがて赤白い炎へと色を変え、解き放たれた炎はキマイラの形となって駆け抜け、遊矢君の場の強者の苦痛を破壊した。

 

「ぐっ!」

 

「そしてスクラップ・ファクトリーの効果を発動!俺はデッキから、スクラップ・コングを特殊召喚する!」

 

駆け抜けたキマイラの形の炎が溶鉱炉へと飛び込み、その中で白く光が発せられた。

 

そして溶鉱炉の下にあるゲートから、片手にチェーンソーを装備した、ドラム缶で身体を構成されたゴリラが現れた。

 

そしてなぜかそいつはサングラスをしていた…何故に?

 

スクラップ・コング

ATK2000→2200

 

「まあいいか。バトル!スクラップ・ドラゴンでEMウィップ・ヴァイパーに攻撃!えーと、スクラップ・ファイヤー!」

 

さっきのテイルによる惨劇を思い出し、二度目は洒落にならんと判断した俺は、取り敢えずファイヤーなら英語的にも小火だろうと思い、今度こそ手加減しろよと言う意味も込めて宣言した。

 

「!?…EMウィップ・ヴァイパーの効果を発動!相手メインフェイズに、スクラップ・ドラゴンの攻守を入れ替える!」

 

「相手のターンにも発動できる効果だったか。だが攻撃は続行だ!」

 

再び負けじとウィップ・ヴァイパーはスクラップ・ドラゴンに毒液を吐きかけたが、少し蹌踉めく程度で勢いは衰えそうにない。

 

スクラップ・ドラゴンの口内で溜め込まれ吐き出された炎球は、目に見えないスピードで放たれ、直撃した瞬間にウィップ・ヴァイパーごと消え去っていた。

 

そこにいて、そして攻撃を受けたということがわかる証拠は、蛇1匹分の小さなクレーターと、黒焦げだ跡のみ。…色々言いたいけど、取り敢えず、小さけりゃ早くてもいいってわけじゃねぇんだぞ……

 

「ウィップ・バイパーが破壊された時、速攻魔法イリュージョン・バルーンを発動!デッキから5枚めくり、その中の、EMモンスターを1体だけ特殊召喚する!」

 

遊矢君の周りに大小様々の、カラフルな風船が5つ現れた。

 

「いいねぇそういうの。何が出るかは分からないなんて、すごいワクワクするじゃないか!」

 

「うん!オレもスゴく楽しい!少し怖いけど、仲間と一緒に味わえるこのドキドキが、楽しい!いくよ!1枚目、ドロー!」

 

赤の風船が弾け、その中から現れたカードがくるくると回転しながら出てくる。

 

そのカードの色は、赤紫。罠カードだ。

 

「まだまだ!2枚目、ドロー!」

 

青色の風船が弾け、現れたカードは緑。魔法カードだ。

 

「なんの!3枚目、ドロー!」

 

今度は黄色い風船が弾ける。

 

(懐かしいな、この感覚。相手も、自分もドキドキするこの感じ。まるで昔兄貴が使っていた、シューティング・スターみたいだ)

 

あの時は、思ってもなかった程のチューナーの数に驚かせられたっけ。アニメでも、遊星が引く1枚1枚を、兄貴や友達と息を呑んで見ていたな。

 

そんな事を考えながら見ていた、現れたカードは………茶色、モンスターカードだ。絵柄はロバのカード。

 

「よっし!4枚目ドロー!」

 

水色の風船からは、緑色、魔法カードだ。

 

(まあでも、最低限壁を確保できたと考えれば悪くはーー)

 

そこまで思いかけて、俺は遊矢君の違和感に気づいた。

 

(ん?胸元のペンダントが光って、揺れている?)

 

彼の胸元の細長いペンダントらしき首飾りが、水色に淡く光り始め、ひとりでに小さく揺れていた。

 

(それにあの目。彼はまだ、モンスター1体だけで満足していない)

 

しかも、なんだ、あの強き瞳は。まるで彼は、この次に来るカードを確信しているかのようなーー

 

(まさか彼は、彼がこの世界のーー)

 

「5枚目、ドロー!!」

 

彼の最後のドロー、それはまるで虹のような、美しい軌跡。幻などではないそれが、かすかにだが俺には見えた。

 

「……よし来た!俺の求めていたカード!EMソード・フィッシュ!オレはソード・フィッシュを守備表示で特殊召喚し、残りのカードをデッキに戻す!」

 

彼が選んだのは、剣を思わせるようにピンっと背を伸ばしきった、サングラスを掛けた水色の魚のモンスターだった。

 

EMソード・フィッシュ

DFE600

 

「EMソード・フィッシュの効果発動!このカードが召喚、特殊召喚に成功した時、相手フィールドの全てのモンスターの攻撃力と守備力を600ポイントダウンさせる!」

 

「モンスター全てを!?」

 

ソード・フィッシュが無数の剣となり、俺の場のスクラップ達に雨の如く降り注いだ。

 

俺のスクラップモンスター達はそれを弾き飛ばすが、何本かは捌ききれず、腕や翼に刺さってしまった。

 

スクラップ・ドラゴン

ATK3000→2400

スクラップ・コング

ATK2200→1600

 

「ぐっ…だけど攻撃は続行だ!行け、スクラップ・コング!」

 

コングは自分の腕に刺さっていた剣を引き抜くと、それを空中に向かって投げ、未だ空中に浮かんでいたソード・フィッシュに突き刺さり、そのまま爆散した。

 

「ごめんソード・フィッシュ、そしてありがとう…」

 

「やるな遊矢君。俺からの攻撃を防ぎきるとはな。俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

くず鉄

手札5枚

モンスター2体

魔法・罠2枚

LP1700

 

今伏せたのはスクラップ・ポリッシュ。もしライフポイントを超える攻撃力差のあるモンスターを出されても、破壊して避けることができる。ファクトリーの効果は壁発動できないが、スクラップ・コングの効果でキマイラを回収すれば、3体目のスクラップ・ドラゴンを出せる。スクラップ・ドラゴンに攻撃が向く可能性があるが、一撃で倒しきれないならジリ貧になるだけだし、一撃で倒すにも5100以上の攻撃力を持って来ないといけない。そんなこと、手札1枚では不可能だ。

 

そう、普通なら、な。

 

「………」

 

遊矢君は俺からターンエンドの宣言を受けたのにも関わらず、じっ、と目を閉じてデッキにてを置いている。

 

まるで何かが来るのを、待っているかのようにーー

 

「ーードロー!」

 

彼は引いたカードを確認し、そして直ぐさま俺に見せてきた。

 

「魔法カード、マジシャンズ・カードを発動!手札がこのカード1枚で、自分フィールドにカードが存在しない場合、オレは相手フィールドのカードの数だけ、ドローし、 そのカードを相手に見せる!くず鉄お兄さんの場のカードは4枚!よって俺は4枚ドローする!」

 

「な、なんだと!?」

 

俺は遊矢君のカードのハイリスク・ハイリターンな効果に驚愕し、それを土壇場で引き当てた彼の強運に戦慄を抱いた。

 

(いや待て。本当に運なのか?)

 

そう疑問を抱くと同時に、彼の胸元のペンダントが輝きを増した。

 

(先ほどよりも揺れ幅が大きくーーいや、更に大きく揺れている!?)

 

「揺れろ、魂のペンデュラム…」

 

次第に揺れ幅は大きくなり、肩にまで届くようになるが、彼は気にも止めず、小さく呟く。

 

(な、なんだ、カードも光っーー!?)

 

「大きく、もっと大きくー!!」

 

彼は勢いよく4枚のカードを同時に引く。瞬間、辺りは白い光に包まれーー

 

『やれやれやっとか。待ちくたびれたぜ、遊矢』

 

聞いたことのない、第3者の声が聞こえてきた。

 

 

ーーー

 

光が晴れ、真っ先に目に入った光景に、俺は困惑した。

 

『ったく、いつまでも泣きじゃくりやがってよーこの鼻垂れ坊主が。俺たちの声も耳に入れようとすらしないなんて、このっこのっ』

 

「わ、いて…お、オッドアイズ…?」

 

先ほど俺が倒した筈の、鶏顏のドラゴンが遊矢君を小突き、

 

『止めないかオッドアイズ。遊矢殿申し訳ない。彼は嬉しさのあまり少しじゃれついてるだけです。危害を加えるつもりはありません』

 

「えっ、あ、うん…って星読みも…?」

 

小突いているドラゴンを、見たこともない白い魔術師が嗜め、

 

『どうでもいいが早くデュエル進めねぇか?彼方さんも困惑してるみてぇだぞ?』

 

「と、時読みまで…」

 

これまた見たことのない黒い魔術師が、彼等にデュエルを進めるように促し、

 

『俺たちも力になりまっせ!』

 

『ワイの突っ込みを、もう一度叩き込んだる!』

 

『遊矢ーガンバレー!』

 

『応援するわよー!』

 

先程まで倒れていったモンスター達の他にも、象やらバッタやらトカゲやら亀やらなんやらと、様々な動物や魔術師達が、彼の事を応援していた。

 

「みんな…」

 

『お前は一人なんかじゃねぇよ。いつだって、お前の事見てんだよ。だから、まあ、なんだ。前を向けよ。いつまでも親父さん事で泣いてんなって。お前には、俺たちがついてんだから』

 

オッドアイズの言葉に感極まったのか、遊矢君はボロボロと、大粒の涙を零し始めた。

 

『うぉっ、お、おい、大丈夫か!?腹でも痛いのか!?』

 

『きっと嬉しき泣きでしょうな。私達も、漸く遊矢殿がデッキと、私達と向かい合ってくれて、嬉しいですよ』

 

オッドアイズが心配そうにする中、白い魔術師が優しい顔で背中を摩る。他のモンスター達も、肩を優しく叩いたり、首に乗っかってみたりしながら、思い思いの言葉をかける。

 

「みんな……ぼんどうに……ありがどう……オレ…オレッ」

 

『積もる話はまた後にしようぜ。彼方さんももいい加減待ちくたびれてるだろうし』

 

黒い魔術師の言葉に反応し、遊矢君は涙を手で拭いながら前を見る。

 

「……ふふっ、デュエルモンスターズの精霊、か……なんともまあ、珍しい物を見せてくれるな……」

 

『あー、兄さん、まずドバドバに流れてる涙やら鼻水やらは拭いなって』

 

おっと失礼。いやはや、最近は涙もろくていけねぇや……スビーッ

 

「失礼…さて、君のモンスター達で、俺のスクドラを超えられるかな?」

 

「うん!超えられるさ!みんなと一緒なら!オレはマジシャンズ・カードの効果で手札を公開する」

 

公開手札

星読みの魔術師

EMドクロバット・ジョーカー

時読みの魔術師

貪欲な壺

 

(……ん?)

 

遠目から見る程度なのだが、気の所為でなければ、あまり見慣れないカードが、上下の色が違うカードが見えるような…

 

「って、なんだこれ!?」

 

どうやら遊矢君自身も知らなかったらしい。もしかして、さっきの光が原因でカードが書き変わった?………うん、まあ、いつもの遊戯王だね(白目)

 

『私達は今、遊矢殿の力でペンデュラムという新たな存在に変わったのです』

 

「ペン…デュラム…?」

 

『あぁ。魂を共鳴させ合わせ、現在(いま)へと続く新たな扉を開く存在。それが今の俺たちだ』

 

『っても俺ら、さわりしか知らねぇんだけどなぁ』

 

『兎に角遊矢、まずはそのカードを使え』

 

「え、あ、うん。オレは手札から魔法カード、貪欲な壺を発動!墓地のオッドアイズ、ソードフィッシュ、シルバークロウ、ディスカバーヒッポ、ウィップ・バイパーの5枚をデッキに戻して、2枚ドローする!」

 

遊矢君の場に、凄まじい顔をした壺が現れ、選択したカード5枚が、その中へと吸い込まれた後、姿を消した。

 

『おっし、これで俺がデッキに加わった』

 

『ってことは、あっしの出番でやんすね〜!遊矢殿、あっしをちゃちゃーと召喚しちゃってくだせぇ!』

 

「わかった。俺はEMドクロバット・ジョーカーを召喚!」

 

『ひゃっはー!出番だ出番だー!』

 

遊矢君の場に、やかましいながらも愉快そうな、黒の魔術師、というよりは手品師の風貌な男が高速回転しながら現れた。服や帽子の所々にツギハギや縫い跡が見られるが、彼の振る舞いから、年季の入ったベテランであることが伺えた。

 

「ドクロバット・ジョーカーが召喚に成功した時、デッキから新たな仲間を手札に加える。俺は、オッドアイズを選択!」

 

『帽子をくるりと回しましてぇ、帽子の中を弄ってみると〜、まさかの、オッドアイズの旦那が帽子から飛び出てきたぁ!』

 

「物理法則色々無視してないかい!?」

 

というか、いつの間にあの中に入ってたんだオッドアイズとやらは…

 

『だぁ〜狭かったぜぇ!』

 

オッドアイズがなんとかあの小さな帽子から這い出ると、そのまま消えて、カードとなって遊矢君の手札に加わった。

 

『これで準備が整いました。私と、時読みをモンスターゾーンより端にセットして下さい』

 

「モンスターゾーンより端…ここら辺?」

 

『そうそう、あのお兄さんに高らかに宣言してやりな。スケール1の星読みの魔術師と、スケール8の俺をペンデュラムゾーンにセッティングって』

 

「うん!オレは、スケール1の星読みの魔術師と、スケール8の時読みの魔術師を、ペンデュラムゾーンにセッティング!」

 

高らかに宣言して、遊矢君が勢いよくカードを置くと、二柱の、青い光の柱が彼の場に出現した。柱の上の方へ目を向けると、その中に、星読みの魔術師と時読みの魔術師が入っているのが見られた。

 

『これでレベル2から7のモンスターが同時に召喚可能となります』

 

『後は宣言するだけだ。ペンデュラム召喚ってな』

 

「ペンデュラム…召喚…」

 

そう言って、彼は此方を見た。まるで何かに戸惑うかのように。本当にしていいのかを確認する、童の様に。

 

(だがすまんな。俺は、俺たちは今、一人のデュエリストなんだ。こんなワクワクする展開に、お預けなんて我慢できないぜ!)

 

「さぁ見せてくれ遊矢君。君の新たな可能性を。俺が見せたような、いや、俺よりも先に進んだ、新たな世界を!」

 

俺は彼に手を広げて言って見せた。あぁそうとも、見せてくれ、新たな世界を!

 

遊矢君は、そんな俺の我儘に笑顔で、頷いて応えてくれた。

 

「レディースエンジェントルメーン!これより榊遊矢による新たなエンターテイメントの世界、ペンデュラムをご覧いただきます!」

 

彼は芝居ががった口調で、大きく手を広げて言って見せた。それはまるで、誰か、憧れの人を真似るような動作で…

 

(なるほど、それが君の、父さんなんだね…)

 

「揺れろ、魂のペンデュラム。天空に描け光のアーク!」

 

遊矢君が手を上空にかがげると、上空に浮かんでいた、遊矢君のペンダントと似た形の巨大なペンデュラムが、上空で揺れ始めた。

 

そのペンデュラムは、時読みと、星読みの間を行き来し、段々とその勢いを増していく。そしてついには、彼らの間を高速で円状に回り始めた。

 

それを頃合いと見たのか、彼は高らかに宣言した。

 

「ペンデュラム召喚!現れろ、オレの仲間達!」

 

ペンデュラムの回転によって、ワープゾーンのような穴が天空に現れ、そこから、2つの魂が降りてきた。

 

「EMウィップ・バイパー、そして、オッドアイズ・ペンデュラムドラゴン!」

 

降り立った竜と蛇は歓喜の雄叫びを上げ、屑鉄の竜と対峙する。

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン

ATK2500

 

EMウィップ・バイパー

ATK1700

 

「これが、ペンデュラム召喚か…」

 

デュエルの世界において、革命をもたらすであろう召喚方法を真近で見れた俺は、自然と、顔に笑みを浮かべていた。

 

「さあ行くよ!EMウィップ・バイパーの効果発動!お兄さんのスクラップ・ドラゴンの攻撃力と守備力を入れ替える!頼むよ、ウィップ・バイパー」

 

『任せて!どぉっりゃぁ!』

 

再び毒を吐きかけられ、スクラップ・ドラゴンはヘタリ込みそうになるが、なんとか踏ん張り相手を見据えようとしている。

 

スクラップ・ドラゴン

ATK2200→1400

 

「フィナーレだ!オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンで、スクラップ・ドラゴンを攻撃!」

 

『うおおおぉ!いくゼェ!』

 

遊矢君の宣言と共に、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンはこちらに向けて走り出した。

 

「エース同士での勝負か。だがスクラップ・ドラゴンは、破壊されても別のスクラップモンスターを残せる。このターンの決着はつかないよ」

 

「それはどうかな?」

 

「なに?」

 

「進化したオッドアイズは、今までの力を凌駕する!オッドアイズ・ ペンデュラム・ドラゴンが戦闘ダメージは、通常の2倍になる!」

 

「なんだって!?」

 

ということは、このままでは1100ダメージの2倍で、2200のダメージがっ!

 

「そうはさせない!速攻魔法、スクラップ・ポリッシュを発動!自分フィールド上のスクラップ・コングを破壊し、エンドフェイズまで、スクラップ・ドラゴンの攻撃力を1000ポイントアップさせる!」

 

『そうはさせませんよ。ホロスコープディビネイション!』

 

星読みの魔術師が杖を一回転させて魔力を込めると、俺が発動しようとした魔法カードが再びセットさせられてしまった。

 

「こ、今度は一体何が!?」

 

「星読みの魔術師のペンデュラム効果!ペンデュラムモンスターが攻撃する場合、そのバトルのダメージステップ終了時まで、相手は魔法カードを発動できない!」

 

「な、なんにぃぃぃ!!?」

 

新たに現れたペンデュラム効果というものに驚愕している間に、オッドアイズは空高く跳躍し、口に溜めていた黒いエネルギーをこちらに向けた。

 

「頼むよ、オッドアイズ!」

 

『おう、いくぜ遊矢!』

 

「『螺旋の、ストライクバーァァァァァスト!!』」

 

オッドアイズの口から、黒い、螺旋状のエネルギー波が放たれた。

 

スクラップ・ドラゴンはそれに受けて立つかの様に炎弾を放つが、一瞬の均衡の後、黒い波動は炎弾を飲み込んでしまい、そのままスクラップ・ドラゴンへ、そして俺へと直激し、膨大な衝撃が俺たちを襲う。

 

スクラップ・ドラゴンは耐えきれず爆散し、俺は足が地面から離れ、吹き飛ばされた。

 

「ぬっ、ぐあああぁぁぁ!」

 

くず鉄LP1700→0(−500)

 

000

 

「鉄さん!大丈夫!?」

 

吹き飛ばされた状態のまま今のデュエルの余韻に浸り、夕焼け色の空を仰ぎ見ていると、遊矢君が心配そうな顔で走って近寄ってくるのが見えため、俺はゆっくりと上半身だけ起こした。

 

「大丈夫、生きてるよ。初めてのソリッドヴィジョンに驚いたけどね…」

 

そんな俺の答えに、遊矢君はホッとしたか、安堵の表情を作る。

 

俺はそんな遊矢君にニッと笑って手を差し出すと、遊矢君も自然と手を出してくれて、握手をする。

 

「面白いデュエルだったよ。ありがとう」

 

「オレも、久しぶりにデュエルができて、楽しかった。それに、みんなとも会えて、嬉かったよ」

 

目に涙の跡を残しながらはにかむ遊矢君に、自然と笑みが深まるのを感じながら立ち上がる。

 

「しっかしなんだったんだろうな、あのペンデュラムってのは」

 

「うーん、オレもいつの間にかカードが変わってて。みんなはなんか知ってる?」

 

『『『さあ?』』』

 

元凶、というか、書き換えられた当人(人じゃないのもいるけど)に聞いてみた所、全員揃って首をかしげるのみだった、っておい、いいのかそれで。

 

『俺たちも、気がついたら姿が変わっててな』

 

『先ほど行なった事以外の事は、何もわからないのですよ』

 

『僕みたいに、変わってない子もいるけどね〜』

 

「成る程な」

 

つまり現状では、2枚のカードを使って、一気に特殊召喚ができるってことと、ペンデュラム効果ってのがあるって事くらいか。

 

「こりゃあれだな遊矢君。もっともっとデュエルして、その仲間達の事を知っていく他ないな!」

 

「!うん、もう一回、もう一回やろう!」

 

俺がニヤリと笑うと、遊矢君もその言葉を待っていたと言わんばかりに両手をギュッと握りしめて目をキラキラさせた。そしてそれは彼の仲間達も同じらしく、『やってやるぜー!』『今度こそ活躍するであります』『オメェら元気ねー。まぁ、悪かないけどさ』などなど様々な反応を見せていた。

 

「よっしゃ!じゃあもう一度「遊矢ーー!!」って何事!?」

 

「あ、柚子!それに母さんや塾長、権現坂まで。おーい!」

 

唐突に響いてきた声にビックリしながらもそちらを振り向くと、ショートツインの女の子とがたいの良い少年、オレンジ色のジャージを着た男性に金髪の女性が、息を切らせながらも心配そうにこちらを見ていた。そして、彼らの姿を見つけた遊矢君は、そのままそちらへと駆け出して行った。

 

「やれやれ、なんだかよくわからない事だらけだが、取り敢えずは一件落着、ってとこかね」

 

頭を掻きながらそう言うと、遊矢君の仲間達もうんうんと頷いた。

 

俺はそんな彼らと共にゆっくりと、遊矢君達の元へ向かうのであった。

 

(ーーって、あれ?俺、いつの間に精霊が見える様になったんだ?)

 

俺のデッキの中の、スクラップ・ドラゴンが、目を細めて笑っているのに気がつかないまま。




余談ですが、鉄心の初期手札の内2枚はスクラップ・ゴーレムでした。
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