高層ビルが建ち並び、道にはDホイールに溢れ、人々はライディングデュエルで盛り上がる。それがこの街の日常であり世界の常識だ。
だが、この日は違った。
____やめろ
突然モーメントが動かなくなり、Dホイールを含む様々なものが使用不能になった。人々は原因を探すために外に出ると、その疑問に答えるように「ソレ」は現れた。
____やめろ、来るんじゃない
何百何千という空を埋め尽くすロボット。ロボットロボットロボットロボットロボット。
やがてロボット達は狙いをつけるように腕を地面に向けた。
____やめろおおおおおおおお
ロボット達の腕から閃光が走り、街を破壊した。ビルを、道を、家を、そして人間も。乗り物も兵器も動かず、人々は全く抵抗することが出来なかった。ただひたすら自分の足で逃げ回るしかなかった。どこにも安全な場所はない。隠れたとしてもほら、ロボットがこちらに気付いて腕を向ける。
「ッッ!!」
慌てて飛び起きて周りを確認する。しかしそこはロボットに怯える廃墟ではなく、小洒落たアンティーク調の部屋だった。そこでようやく頭が理解した。
「ハァッ、ハァッ・・・・・・夢、か」
恐怖が現実のものでなかった事に安堵し、動悸がおさまる。あんな光景を見るのは二度とごめんだ。例えそれが夢や幻覚であっても・・・・・・
「あら、ちょうど目が覚めたようね」
扉が開き、少女が部屋に入ってきた。褐色の肌に黒のストレート、年頃の子にしては珍しい、きりりとした表情が印象的な女の子だ。
「あんまりにも目が覚めないものだから、やっぱり病院に連れていこうかと思ってたところよ」
ふとルチアーノが自分の身体を見ると、包帯が巻かれていた。しかしこれはいささか不味い。手当てをしてくれたことはありがたいが、自分の身体が機械であることに気づいたかもしれない。一応普通の人間には機械だと気付かないような作りをしているが、なにしろ時空間での事故の後だ。身体が負荷に耐えきれなくて破損でもしていれば一発でバレる。
「・・・・・・この手当ては君が?」
そう聞くと少女はフッと自嘲と申し訳なさが混ざりあった笑みを浮かべる。
「ほとんどはメイドの人達がやったわ。私は倒れているあなたを見つけただけ」
何も尋ねてこないところを見ると、どうやら身体のことは気付かなかったようだ。
「・・・・・・そう。感謝するよ」
ルチアーノはぶっきらぼうにお礼を言うと徐にベットから抜けて部屋を出ようとする。こんな所に長居する理由はない。早くホセ達のもとへ戻り、サーキットの完成に勤しむべきだ。なにより普通の人間と一緒にいると能力を隠す必要があり、色々と面倒だ。
しかしルチアーノの前に件の少女が立ち塞がる。
少女を避けて通ろうとするが、その前に少女に道を塞がれてしまった。
「・・・・・・邪魔なんだけど」
「邪魔してるのよ」
少女の当然だと言わんばかりの態度に少しムッとする。
「まだ横になっていないと怪我が治らないわよ。第一、ここから出て行っても何処にも宛なんてないんでしょ?」
「・・・・・・お前には関係ないだろ」
だんだんとムカついてきて刺のある返事をする。よくよく見ると、この部屋の調度品は質が良くて値段が高そうだ。それに目の前のコイツもどことなく品がある。つまりコイツは満たされている人間だ。全てを失ったボクとは違う。
こういう何も知らない様なヤツが一番ムカつくんだ。
「拾ったからにはきちんと面倒を見ないと寝覚めが悪いのよ」
どうにもボクを引き留めたいようだが、余計なお世話だ。こうなったら実力行使で・・・・・・
よからぬことを考えていたら顔に出ていたのか、少女は諦めたようにため息をついた。
「わかったわ」
「・・・・・・へ?」
突然の言葉にすっとんきょうな返事をしてしまう。
「こうなったらデュエルで決着をつけましょう。あなたが勝ったら出て行ってもいい。その代わり、私が勝ったらウチに留まること」
「へぇ~、大した自信じゃん」
「当たり前よ、こう見えてもデュエルは得意なのよ」
そう言って少女は髪をかきあげる。まるで自分の勝利を疑ってないようだ。
じゃあその生意気なプライドをへし折るとしようかな、キシシシ
「いいよ、受けてあげるよ。その勝負」
「・・・・・・そういえばまだ名前を聞いてなかったわね。私は光津真澄。あなたは?」
これから打ち負かしてあげるのに良い気なもんだ。だから言ってやる。
「ここから直ぐに出ていくのに、教える名前はないよ」
それを聞くと真澄は満足そうに笑みを浮かべた。
「じゃあデュエルで聞くとするわ!」
デュエルは次回やります。