何故こんなにも世話を焼くのだろうか。
自分でもあまり分からない。むしろ私はこういう事についてはドライな筈だ。
それでも助けているのは、倒れていたのが彼___ルチアーノだったからだろう。別に一目惚れした訳ではない。確かに彼は顔が整っているが、私のタイプとは程遠い。メイド達によると命に関わる怪我ではないようだから、応急手当てをさせた。そして意識が戻ったら出ていってもらう筈だった。
最初は外傷がそれほど酷くないからすぐに意識が戻ると思われていたが、彼は夜中になっても起き出す事はなかった。私は心配になって彼の様子を見に行った。病院に送らずにウチで治療させたのだ。万が一怪我が悪化していたら後悔しかない。
客室のドアを開けると、彼は未だにベッドで眠っていた。私は医学には詳しくはないが、傷は開いてないし、呼吸もしっかりしているところを見ると大丈夫そうだ。
・・・・・・もしかしたら必要なのは目覚めのキスだったりして。彼は髪が長いので眠り姫にはぴったりだ。
「うぅ・・・・・」
「あら、起きた?」
下らない事を考えていたら彼が身じろぎした。どうやら目は覚めてないようだが、まるで「眠り姫」に抗議するようなタイミングだ。
「やめ、ろ・・・・・・」
今度は寝言で否定してきた。もしかしたら本当に人の思考が読める超能力者なのかも。そしたら相手の伏せカードや手札、デッキや戦略まで筒抜けだ。もしそんなデュエリストがいたらまさしく無敵だろう。まぁ、そんなインチキな人間はいるわけないが。
「ハァ、ハァ・・・・・・くる、な・・・・・!」
・・・・・・彼の様子がおかしい。額には汗が浮かび、呼吸は不規則に乱れ始めた。
「ちょっと、大丈夫?」
あまりに酷くうなされているので、彼を揺すり起こそうと肩に触れる。あまり怪我人に触っても良くないだろうけど、こんな状態では放っておけない。
「ッ!!」
触れられた瞬間、彼はビクリと身体を震わせた。
「痛っ!」
次の瞬間、彼が私の腕を掴んできた。しかも見かけによらず力が強い、万力の様に絞められて腕が悲鳴を上げる。
「ちょっとあなた、放しなさ___」
「パパ、ママ・・・・・・!」
見れば、彼は泣いていた。まだ意識は戻っていないが、その閉じられた両目からとめどもなく涙が流れていた。それはまるで両親にしがみつく幼い子供の様だった。離れて欲しくないと、私の腕を掴んでくる。
・・・・・・気がつけば、私も握り返していた。ここにちゃんといると、離れはしないと、しっかりと手を握る。・・・・・・すると、思いが伝わったのか彼の汗は段々とひき、呼吸が落ち着いたものへとなっていった。やがて完全に安心したのか、彼は私の腕を離すと規則正しい寝息をたてはじめた。
・・・・・・両親のいない寂しさは私もわかる。私のパパとママは仕事の関係でほとんど家にいない。今はもう慣れたが、幼い頃の私はそれがとてつもなく嫌だった。他の子の親は授業参観や運動会に来てくれるのに、私はいつも来てくれなかった。だから両親に気に入られるように、認められるように勉強やデュエルを頑張った。・・・・・・もしかしたら私がマルコ先生のような年上の男性が好みなのは、無意識のうちに親を求めているからかもしれない。
幸い、パパとママは家にいなくても、メイド達が居たためそこまで寂しくはなかった。
でもこの子は違う。両親と離ればなれの上に、身一つでボロボロに傷ついていたのだ。私はまだ恵まれている。
だから、この子を助けてあげたい。驕りかもしれない、偽善かもしれない、迷惑に感じるかもしれない。でも、あの孤独をもう彼に味わって欲しくない。私は周りのみんなに助けられた。だから今度は私が助ける番。
私は決意を胸に客室を後にした。
(上手くいくか分からない。でも、両親を求めていた子だ。きっと穏やかで優しい子に違いないわ。それならみんなも受け入れてくれるはず)
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「デュエル塾ぅ?・・・・・・ボクのこと馬鹿にしてるの?」
しかしいざ話してみると、ルチアーノのはかなり口が悪かった。あまりのギャップに真澄は少し頭が痛くなる。
「違うわよ。私が通ってるレオ・デュエル・スクール、通称LDSは業界最大手。世界中に支部を持っていて、最新の技術を用いた最高の講義が受けられるの。デュエリストとして不満が出るようなものではないわ」
LDSへの入塾を進めたら「1からやり直せ」と受け取られたようなので訂正する。
「最新の技術・・・・・・」
きちんと説明したらルチアーノが何やら考え込む。どうやらLDSに興味を持ってくれたようね。
「もっとも、先行ドローに関してもしっかりと教えてくれるわよ?」
「なっ!?だからあれは・・・・・・!」
少し茶々を入れたらルチアーノは顔を真っ赤にした。これは暫くの間、弄るネタになりそうだ。
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どうやらここはボクがいた世界とは別の次元のようだ。ホセ達と連絡をとることが出来ないし、なによりデュエル塾が流行っている歴史なんて見たことがない。
「どう?なかなか良い施設でしょ?」
確かに設備は充実していた。なかでもソリッドビジョンに質量を持たせた「アクションデュエル」を行うというセンターコートはなかなかのものだった。あれならデュエルアカデミアといった学校より塾の方が重要視されるのも頷ける。
「まぁ、良いんじゃないかな」
でもそのまま褒めるのは癪に障るので適当に答えておく。
「そういえば、あなたはどのコースに入りたいのかしら?」
「コース?」
疑問を口にすると真澄が壁に掛かっているボードを指差した。
「LDSでは召喚方法別にコースが設定されているの。何を極めたいか決まっていない子は大抵総合コースをとるわ」
ボードを見ると様々なコースが示されている。総合に融合、・・・・・・そして忌々しいシンクロ。やはりこの世界でもシンクロ召喚が行われているようだ。ホセ達と連絡をとれない今はどう対応すべきか・・・・・・
ふと横に目をやると見慣れない文字が目にはいる。
「・・・・・・エクシーズ?」
「ああ、それね。LDSでも最近導入されたコースよ。なんでもエクシーズ召喚っていう新しい召喚方法を習うのよ」
エクシーズ召喚。元の世界では存在しなかった召喚方法。もしかしてこれに未来を救う鍵があるかもしれない・・・・・・
「よお、何してるんだ真澄?」
「あら、刃に北斗じゃない」
考え事をしていたら何やら二人組が近付いてきた。どうやら真澄の知り合いらしい。
「紹介するわ。竹刀を持っている方が刀堂刃。初手プレアデスをしそうな方が志島北斗よ」
「よろしくな」
「おいおい、そんな紹介はないじゃないか!」
志島北斗とかいう方が抗議をあげる。
「でもするでしょ?」
「まぁ、するけどさ・・・・・・。よろしく」
初手プレアデスは何だか分からないけど、会話の感じからすると北斗が使用するメタ戦略か何かだろう。
「こっちは親戚のルチアーノよ」
「・・・・・・よろしく」
勝手に親戚にされた。そっちの方が都合は良いけどさ。でもボクを家に居させる事もそうだけど、何でこいつはボクの得になるようにしてくるんだ?
全く裏が分からない。近々探りでも入れてみようか。
「暫くの間うちで預かる事になってね。それでLDSに入れようと思ったのよ」
「新入生ってわけか。どのコースに入るんだ?」
刃が興味ありげに聞くと3人の視線のがルチアーノに集まる。
「・・・・・・エクシーズかな。前の所だと無かったし」
「だよね、良いよねエクシーズ!僕も好きなんだよ!エクシーズコース同士よろしくね!」
召喚コースを答えると北斗が嬉しげに話し掛けてきた。鼻に掛けた感じが少しウザい。
「悪いな真澄、ルチアーノ君には僕がたっぷりとエクシーズを教えといてあげるよ」
「・・・・・・別に。ただ、北斗が変な事を吹き込まないか心配しただけよ」
「なっ!?」
「そうだな。エクシーズは人が少ないから、頼れる先輩がいなくて大変だぞ」
「刃までっ!」
2人に弄られて北斗がよろめく。なんとなく3人の関係が分かった気がする。
そのあと色々話しながらも入塾の手続きを終わらせた。塾だと学校ほど必要書類が無くて楽だ。身元も怪しく思われにくくて良い。
それから、LDSからの帰り道で電気屋に寄った。そこで左利き用のデュエルディスクを真澄が買った。昼食の時にボクが左利きだと気付いたんだとか。
・・・・・・なんでこんなにボクに構うんだ?
別にお金目当てじゃ無さそうだし・・・・・
親切心?ないない!あいつにそんな思い遣りなんてものは一切ないね!ことあるごとにボクをからかいやがって~~!いつか絶対に這いつくばらせてやるからな!!