TFからあのキャラが登場です。
デュエリストは常にデュエルの事を考えているが、その内容は様々だ。ひたすら高い攻撃力を求める者、大量展開からの速攻を狙う者、相手をロックして自分の戦略を進める者、相手のデッキを削る者。デュエリストも人間であり、好みも千差万別だ。
そして中には変わった好みもおり・・・・・・
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「その、なんつーか・・・・・・すまん」
「・・・・・・別に」
刃の気まずそうな謝罪に対して、ルチアーノはぶっきらぼうに答えた。横向きに椅子に座り、刃には興味がないと言わんばかりにそっぽを向いていた。
場所はLDSの休憩スペース。デュエルや筋肉トレーニングの後にクールダウンするために設けられた、喫茶店とフードコートを合わせたような施設である。そこでルチアーノと刃達はテーブルを囲んでいた。しかしそのテーブルは休憩をするような雰囲気ではなく、気まずい空気が流れていた。
[ねえ、もしかして思い当たらないだけで、他にも何かやらかしたんじゃない?]
[んなこと言ってもよ、俺は普通に接してたぜ?]
真澄がルチアーノに聞かれぬように小声で刃に尋ねるが、刃にもそんな心当たりは無い。
[刃の不良っぽさに気圧されたとか?]
[不良って・・・・・・まぁ、そうだとしてもよ、ルチアーノがそんなのにビビる奴か?]
[うーん、それもそうか]
北斗から奇抜な案が出るが否定する。というかそんなに俺って不良っぽいか?たしかに竹刀は持ち歩くけど、それなりにTPOはわきまえてるつもりなんだがな・・・・・・。
[となると、原因はやっぱりさっきのデュエルね]
[いやまあ、俺も少しやり過ぎたとは思ったけど、あそこまでショックを受けるとはなあ・・・・・・]
遡ること数分前、ルチアーノと刃でデュエルをしたのだった。その際、ルチアーノがやけに対抗心を燃やしてきたので刃も本気を出したのである。
しかし怒濤の連続シンクロ召喚にハンデスをさせられ、録な抵抗も出来ずに惨敗してしまい、ルチアーノは屈辱のあまり泣いてしまったのである。正確には泣いてはいないが、目尻には大粒の涙が溜まり、《火の粉》のような僅かなダメージで決壊しそうな有り様だった。
刃達3人は共に過ごした中で、ルチアーノは負けても悔しがりはすれど、泣き出すタイプではないと思っていたのでひどく動揺したのだった。今はもうルチアーノは普通を装っているが、機嫌が悪いのは明らかだった。
[なんか地雷でも踏まなきゃ、ああはならないでしょ?]
[そういえば、シンクロ召喚がどうとか言ってなかった?]
[あ~・・・・・・たしかに、そんな感じの事を言っていたな。でも何でシンクロが嫌いなんだ?]
刃達はようやく原因らしきものに辿り着くが、新たな疑問が湧く。というか理解不能である。これならまだ刃が個人的に嫌いの方が納得できる。
[まぁ、融合使いからしてみると、シンクロ召喚は《融合》カードを使わずに上級モンスターを出すところがズルいわね]
[おいおい、それをいうならエクシーズ召喚も同じじゃねえか!ルチアーノはエクシーズコース所属だぞ?]
[うーん、謎は深まるばかりか・・・・・・]
そもそもルチアーノは刺々しく、あまり自分のことを語りたがらない。そのためルチアーノのことを推し量ろうにも、判断材料が少ない事を再認識する3人であった。
「真澄ー!」
その時、真澄を呼ぶ女子の声がとどいた。こんなときに誰だろうと声の聞こえた方を向くと、3人とも予想外の人物に固まった。
その少女は真澄に駆け寄ると、座ったままの真澄にハグをした。
「真澄、久し振りね!」
「え、ええ、あなたも元気そうね、ナオミ」
ニコニコと真澄と触れあっていたナオミだが、刃達に気付くと途端に顔をしかめた。
「もう、真澄ったらまた汚いのと一緒にいるの?ばっちいのが移るからダメよ!」
「いや、私は別に気にしないから・・・・・・」
「ダ~メ!女の子が汚い男子といるなんて、不摂生!不衛生!不健全!」
(これさえ無ければ悪い子じゃないのに・・・・・・)
ナオミの暴言に真澄は思わず溜め息が出る。ナオミは成績優秀で容姿端麗。男子が放っておかないような美少女だが、その本人は男子が嫌いという変わった女の子だ。
「あなた達も、真澄にはまとわりつかないこと!」
「はいはい」
「わかったわかった」
ナオミは刃達にも注意するが2人は気にすることなく受け流す。最初の頃こそ汚物呼ばわりされて怒った2人だが、話せば話すほど深まるナオミの男性汚物理論に匙を投げたのだった。
「まったくもう・・・・・・。ところで、そっちの子は?見かけない子ね」
ナオミは明らかに話を聞いてない刃達にあきれつつ、さっきからずっとそっぽを向いているルチアーノを真澄に尋ねた。
「私の親戚のルチアーノよ。最近になってこっちに来たのよ」
「ふうん・・・・・・」
するとナオミはジロジロとルチアーノを見定め、近づいた。ルチアーノはそれまで我関せずと考え事に耽っていたが、ナオミが近づいてきた事に気付くと視線を向けた。
「私は総合コースの大庭ナオミ。よろしくね」
「・・・・・・よろしく」
ナオミが手を差し出してきたので、ルチアーノもしぶしぶ握手に応じた。
「なん・・・だと・・・!?」
「あの大庭ナオミが男に触れた!?」
「男嫌いは治ったの!?」
この行為に刃達が驚く。《カタストル》も太鼓判を押すであろう、あの「男嫌いのナオミ」が自ら握手を求めたのである。
「何言ってんの。こんな可愛い子が男のわけないじゃない」
しかしナオミは気にする事なくルチアーノに触れている。というか握手がなんだか卑猥な触りかたに変化してた。
「ち、ちょっと、離せよ!それにボクは男だ!」
「そんなわけないわ。私は匂いで男女の区別が出来るの。クンクン、この香りはバッチい男の匂いじゃないわ!」
(な、なんだコイツ!?)
変な握手をしてくるのでルチアーノは手を離そうとするが、ナオミはガッチリと掴んで離さない。それどころか匂いまで嗅いできたナオミにルチアーノはドン引きした。
「ちょっと!ルチアーノは男よ、ナオミ」
「え?・・・・・・本当?」
「ええ、本当よ」
あくまでルチアーノを女だと主張するナオミに見かねて真澄が助け船を出した。この時ばかりは、ルチアーノも真澄にほんの少し感謝した。具体的に言うと《モウヤンのカレー》ぐらいには。
「・・・・・・」
ナオミがルチアーノを見つめ直す。
ルチアーノはナオミの反応を伺う。
真澄達はその様子を固唾を呑んで見守る。
重苦しい空気が場を包んだ。
「・・・・・・アリだわ」
「へ?」
「可愛いから大丈夫よ!」
「わわっ!?」
沈黙を破ったナオミはそのままルチアーノをハグしてしまう。その様子に見守っていた面々は驚く。てっきりルチアーノを突き飛ばすかと思ったからだ。
「これは・・・・・・予想外な結果だな」
「まぁ、いいんじゃないか?これを切っ掛けに男嫌いも治れば___」
「黙りなさい!ルチアーノきゅんをあなた達みたいな汚ならしいものと一緒にしないで!」
「・・・・・・治りそうにないな」
「・・・・・・ああ」
北斗が希望的観測を言うが当の本人にバッサリと否定される。どうやらルチアーノが例外なだけのようだ。
「この、いい加減にしろ!」
抱き付かれてしまい、中々抜け出せなかったが身を捩ってなんとかナオミの抱擁から脱出する。
「ああん、待って!」
ナオミも再びルチアーノを捕らえようと手を伸ばす。しかしルチアーノはその手を逃れて、近くにいた北斗の後ろに回り込んでしまった。
「おいおい、本人が嫌がっているじゃないか」
北斗が見かねてナオミを止めようとする。しかしナオミは男なんかの手では止まらなかった。
「邪魔よ!」
「い"つ"ぅ"っ!!」
なんとナオミは北斗のスネを思いっきり蹴ったのである。ナオミからすれば男に触れたくないが故の蹴りだが、北斗にとってはたまったものではない。いくらデュエリストといえどベンーKの泣き所を蹴られてはただではすまない。北斗は地砕きを喰らったモンスターよろしく崩れ落ちた。
男では壁にならないと悟ったルチアーノは慌てて真澄の後ろに隠れる。
「フフフ、大人しく私に捕まるのよ!」
流石にナオミでも真澄に乱暴をするつもりは無いらしく、左右にフェイントを入れつつ回り込むタイミングを伺う。
「おい、コイツをどうにかしろよ!」
このままでは時間の問題と思ったルチアーノは真澄に助けを求めた。
「でも女の子同士より健全だし・・・・・・」
「この変態の何処が健全なんだ!」
「・・・・・・それもそうね」
ルチアーノの指摘を受けて真澄も同意する。
「ナオミ、無理矢理じゃなければOKみたいよ!」
「本当!?ルチアーノきゅんマジ天使!」
「違あああう!」
真澄の予想外の提案に思わず突っ込みをいれる。勝手に変な話を進めるな!
「いやね、私もナオミの男嫌いを治して欲しいのよ」
「大丈夫!あんなバッチいのは好きにならないわ!」
真澄が変な話を進めた理由を言うも、すかさずナオミが否定してしまった。
「おい、本人が否定してるぞ」
「・・・・・・僅かでも可能性に賭けてみたいのよ」
これはダメだ、生け贄にされるだけだ。ルチアーノは救いを求めて残りの人物__刃に視線を向ける。しかし刃は無情にも、お手上げと言わんばかりに首を振っただけだった。
(どいつもこいつも・・・・・・ッ!)
「別に変な事はしないわ。ちょっとしたスキンシップよ」
しかしナオミの手はワキワキと怪しく動いており、ちっとも安心できない。
「こうなったらデュエルだ!ボクが勝ったらその気持ち悪い言動をやめてもらうからな!」
「デュエル?いいわ、クリーンなデュエルでキレイにしてあげる!私が勝ったら・・・・・・ウフフ」
ナオミの言葉にルチアーノはゾクリとする。ナオミの眼は獲物を狙う猛獣の眼になっていた。そして勝負が待ち遠しいのか、先にデュエルコートに行ってしまった。
(・・・・・・何も問題は無い、勝てば良いだけだ!)
ルチアーノは自分を鼓舞しつつ、デュエルコートへと向かって行った。
「なぁ。ルチアーノの奴、大丈夫か?」
残された刃が真澄に尋ねた。
「まぁ、とりあえず元気は出たんじゃないの?」
「いや、そうじゃなくてナオミの方だ。あいつ、デュエルもかなり強いぞ」
そう、大庭ナオミはあんな性格だがデュエルの腕前はかなり高い。というかデュエルが強いからこそ余計に厄介である。ナオミを戒めようとした人間は数多くいたが、そのことごとくが返り討ちにあっているのだ。
「デュエルにかこつけて変な要求でもしてくるんじゃないか?」
そう言って刃はいまだに脚を抑えて悶えている北斗を見る。いきなり相手のスネを蹴るなんて常識的には考えられない。そんな人間がデュエルに勝ったら何を要求するのやら。
「そうね。一応、酷い事にならないように見ておくわ」
いくらデュエリストといえども、デュエルで決めることに限度がある。
「頼む。俺は北斗を救護室に連れていってくる。大したことないと思うが、念のためだ」
「わかったわ」
真澄は手短に答えると、デュエルコートへと駆け出したのだった。