お久しぶりです。74です。
初期の順調さが嘘の様に文章が書けませんorz
なんとか書けましたが、長期明けでも気にせず読んでくださると嬉しいです。
轟side
どうしたもんか。
相手の騎馬の騎手、石弦を見つつ考える。
(俺達の騎馬の常に左側対角をキープしてやがる。これじゃ最短で凍らせようにも飯田が引っかかるし、上鳴の電撃も石の個性で防がれる。流石によく見てる。 )
「残り時間約1分!!」
(そろそろ動かねぇとな。)
そうは思いつつも打開策が浮かばず眉間に皺が寄る。プレゼント・マイクの実況を聞きながら思考する。
石side
そろそろ時間的にも轟くんも動くよね。
原作でも動いてたし。
あぁ~、攻めるよとかカッコつけた事言ったけど、本音はやっぱ攻めあぐねて時間切れが理想なんだよね。でも順位とか轟くんの性格とか考えると時間切れとか一番有り得ないからな。
とりあえずは、今の位置をキープしつつ向こうの出方をうかがうとしますか。
noside
膠着状態の中で、飯田天哉は迷っていた。
(今のままでは石くん達が時間切れで逃げ切ってしまう。)
チラッと自分達の騎馬の騎手の顔を見るが、冷静な性格の轟には珍しく眉間に皺を寄せている。その様子から打開策が浮かんでいない事を察する。
(決勝まで隠しておきたかったが、このままでは決勝以前に負けてしまう。)
飯田は相手の騎馬の騎手の石を強く見据えた。
飯田は石の事を同じくヒーローを志す者として尊敬し、そしてライバル視している。
飯田が石のことを初めて知ったのは小学校四年生の時のニュースからだ。
ニュースでは事件の起きたショッピングモールの監視カメラの映像が流れていた。その映像では、同い年のそれも女の子が自分の倍はある大きさの敵に立ち向かい、見事に捕まえていた。
その姿に当時の飯田少年は強く憧れた。
あんな、大きな敵に怖がりもせずに向かっていって襲われそうな幼い子を助ける。敵から弱者を守るその姿は、飯田少年の憧れるヒーロー像そのものだった。
飯田少年はその同年代の子供に比べて賢い子供だった。故に、今の自分の実力ではこの石弦という少女の様に敵を捕まえる事は出来ないと理解できた。そして、理解した直後に幼い飯田少年の胸を占めたのは悔しいという感情だった。
飯田少年は代々ヒーローの家系に生まれ、幼い時から身近にあり、憧れでもあったヒーローになるべく修練を積んできた。それ故に同年代の子供の中では抜きん出た実力で、当時の飯田少年は端的に言って敵なし状態だった。
飯田少年は両親や兄など、身近に自分よりも実力が上の存在が常にいた為、それで天狗になる事はなかったが、飯田少年の中には自然と自分は同年代の中では実力は上なのだという自負が生まれていた。
だからこそ、飯田少年にとって石弦という少女の存在は何よりも強い衝撃を与えた。
同年代の、それも女の子で自分よりも実力が上の存在。
まだ小学生の飯田少年のプライドは見事に砕けた。そして、飯田少年は自分が知っていた世界の狭さと、自分の知らない世界の広さを知った。
そして、まだ小学校四年生の飯田少年の心に強く火が灯った。
自分ではまだ勝てない存在に対して負けず嫌いの飯田少年は、素直に悔しい!と強く思い歯を食いしばった。そして今まで同年代の中では実力は上だと天狗になっていたと思い、飯田少年は自身を恥じた。
飯田少年は立ち上がり、テレビに映る石を強く睨みつけ、指をさすと声を張り上げた。
「認めよう!石くん!君は確かに僕よりも強い!!悔しいが今の僕では君には勝てない!!
しかし!勝てないのは今だけだ!
同じくヒーローを志す者として此処に宣言する!!
僕はっ!
君に!
絶対に負けないヒーローになってみせる!!」
そうしてこの宣言は、飯田少年自身の心に深く、深く刻まれたのだった。
「どうしたんだ天哉大声出して…って、お前なんでソファーの上に立ってるんだ!」
「あっ!うわ、兄さんこれは違っ!ごっごめんなさい!!」
刻まれたったら刻まれたのだった。
ともかく、飯田天哉にとって石弦は同年代の中で初めて知った格上の存在であり、それと同時に飯田天哉にとっての初めてのライバルという存在なのだ。
飯田はクラスで石に初めて直に会った時、本当はめちゃくちゃ緊張していた。
「俺は私立聡明中学出身の飯田天哉だ。」
「私は市立名部中学出身の石弦。よろしく。」
たったこれだけのやりとりですら、飯田は声が震えないように細心の注意をして言っていた。
「私も負ける気はないよ。」
飯田の宣言に、石がこの一言を返してくれて飯田は心底嬉しかった。石自身にライバルとして認めて貰った様な気がしたのだ。
しかし、だからこそというべきか、その後の授業での結果は飯田にとって不甲斐ない結果でしかなかった。
個性把握テストでは、石は2位、飯田は5位。
実技授業では同じチームではあったものの、飯田が爆豪にチームプレイをさせようとするのに対して、石は冷静に爆豪の状態からチームプレイは不可能と判断し、爆豪の独断専行すらも踏まえて作戦を立て結果、勝利を得ている。
もっと言えば、入試の結果から石は2位、飯田は7位で順位で負けていた。
飯田は自らの不甲斐なさに怒っていた。
(石くんを前に、なんたる無様な…!!
こんな体たらくで彼女のライバルだなんて、おこがましいにも程がある!!)
飯田はまだ15歳の少年だ。
自分よりも勝っている相手に、さらには自身がライバル視している相手に明確に結果で負けていると分かり、自分の感情に振り回されるのは当然のことだった。むしろ嫉妬しないだけ上等というものだ。
しかし、いやだからこそ飯田はこの雄英体育祭に並々ならぬ思いを持って挑んでいた。
石の、彼女のライバルとして胸を張れる結果を残す。飯田は強く意気込んだ。
意気込んだはいいものの第一種目の障害物競争では、石は1位で飯田はトップ争いにも参加出来なかった。
多くの歓声の中で石は1位だというのに、まるで表情を変えず冷静そのものだった。
それは1位といってもこれはまだ第一種目であるため喜ぶのはまだ早いと言っている様に飯田は感じ、その石の姿に悔しい思いを落ち着かせたのだった。
飯田は決意を固めて顔を上げた。
その目には強い光があり、迷いは消えていた。
「皆、残り1分弱…。この後俺は使えなくなる。頼んだぞ。」
「飯田?」
轟の声にも飯田は応えない。
轟ならば説明せずとも合わせられると信じているからだ。
「しっかり掴まっていろ。
奪れよ、轟くん!」
踏み込み
「トルクオーバー!」
ただひたすらに
「レジプロバースト!!」
駆け抜けた。
DRRRR!!
飯田のエンジン音がフィールドに響いた。
今回は飯田に焦点を当てて見ました。
当初はこれを轟くんで書こうかと思ったのですが、轟くんの幼少期の状況とか考えるとライバル視よりも、良くて無関心、悪くて憎しみ(妬み?)等の感情を抱きそうで却下しました。
轟くんの幼少期だけ重すぎんねんよ(-ω-;)
質問・感想お待ちしております!
読んでいただき、ありがとうございます!